第3回「海外E&S研修」を終えて

教 頭  田 山 棟 信

学校としては3回目、私としては2回目の海外E&S研修が、今年度もこれまでと同じ南オーストラリア州のエリザベス市で、18日間の日程で実施されました。

一度体験して勝手の分かっている海外E&S研修とはいえ、今回参加した生徒にとっては初めてのことであり、昨年5月に行った最初の実施計画の説明会では、保護者と生徒諸君の期待と不安の入り交じった視線を感じたものです。

ところで、実施に向けてこれからが大詰めという11月になって思いもよらなかった研修日程の変更が生じたのである。当初計画していた日程の航空機便が年末・年始の予想以上の海外旅行者の混雑で確保できなかったのである。取扱い旅行会社のISA(株)とともに、安全で当初の研修内容が維持できるよう懸命に日程の組み直しを行った。今回の研修全体を通じて一番苦しい思いをした時期である。たまたま、今回の引率が2回目ということで、行程と現地の状況が良く分かっていたのが役に立ち、18日間の研修計画を準備日程ぎりぎりの11月末に再編成できたのである。再編した研修計画では、訪問国のオーストラリア以外に、帰路の一泊ながら韓国も垣間見て来られるという国際文化類型の生徒の研修として願ってもない旅程になった。

このような研修計画の変更があったものの、無事に研修が実施できたのは、組み直しをしている段階で、適切な指示と助言をいただいた校長先生、共に心配して協力をしてくれた関係の諸先生方、計画変更を快く理解していただいた保護者の方々などの全面的な支援があってのことであった。それに、何よりも有り難かったのは、教育委員会のかかる事情の理解と実施に向けての配慮をいただけたことであった。

このような状況での実施であったので、韓国を回って岡山空港に帰って来た時の安堵感と成就感は、一昨年の1回目の研修を終えて関西空港に帰着した時とはひと味もふた味も違うものであった。

こうして、無事に研修を終えて今回の研修全体を準備等も含めて振り返ってみると、事前研修と準備は、これまでの2回の経験を生かして、手落ち無く進めることができたと思っている。現地入りしてからの日々の研修は、今回も天候に恵まれて順調であった。到着した夜に雨があって、研修初日のワイルドライフパークを訪問し、コアラを抱かせてもらっている時にパラパラと少しの降雨があったぐらいで、次の雨はシドニーから韓国へ向かう飛行機に搭乗する時であった。このように、研修地に滞在中はほとんど連日快晴で、気温も現地に着いた頃は24度前後で過ごしやすかったし、2週間滞在してエリザベス市を発つ頃は38度にもなったものの、気温の変化を徐々に体験したので、体調を崩すこともなく元気で研修に励むことができた。

又、指導に当たってくれたアリソンさんをはじめ4人のコーディネーターが今回も熱心で心温かなすばらしい方々であった。その内の一人リエンさんは、3年連続して本校のコーディネーターを務めてくれたのである。研修はクリスマス休暇2日と週末休暇を除いて、クリスマス・イブの日も、大晦日の日も行われ、新年は2日からしていただいた。それに、生徒諸君を預かっていただいたホストファミリーの方々も全体的に申し分なく、生徒諸君を親身に世話をしていただいたと思う。研修目的を十分に

達成できて全員元気で帰ってこられたのは、お世話になった4人のコーディネーターと40家庭のホストファミリーのお陰であったと感謝の気持ちでいっぱいです。

生徒諸君もそれなりによく頑張ったと思う。殊に研修最後のさよならパーティは予想以上に良くできたと思う。盛り上がりかかった時に終了時間となり、折角準備していた紙芝居やラジオ体操、それに全員で楽しむ計画であった阿波踊りが出来なかったことは残念であったけれども、出席してくださったホストファミリーの方々は結構楽しんでいただけたと思っている。

研修日程の思わぬ変更があったものの、全体を見れば順調に計画が運んで、所期の研修目的を達成する研修ができたと思っているが、すべてが満点という訳ではない。多少の問題を見たり聞いたりしたが、この研修は本校の国際文化類型だからできることであり、過去2回の先輩達が現地の方々と良好な関係を築いてきているからこそ親しみを持って迎えてくれたのである。欲を言っているのかもしれないが、研修の取り組み方によっては魅力いっぱいのこの研修機会をもっともっと積極的かつ効果的に生かしてもよかったのではないかという思いも少なからず抱いている。1回目の研修時には、まったく未知の地を訪問するのであったから、とにかく無事に行って全員揃って元気で帰ることに心があったが、今回は2回目ということで、気持ちの上で多少のゆとりもあって日々の研修状況をとおしてそんなことを思いながら帰国した。 ところで、今回の研修参加は、本来の引率用務と私自身の研修に加えて、私にとって懐かしい楽しみがあった。それは、前回の研修時に親しくしていただいた方々に又会えることであった。それに、前回に見た美しい州都アデレード、荘厳なセントピータース教会、広大なバロッサバレー、スタディセンターを設けたエリザベスとゴーラの町等々をもう一度見られることであった。

そんな期待もあって現地に着いた時、見える限りの物がなんと懐かしかったことか。ほとんどが変わっていないように見えた。今回も前回と同じエリザベス・モーター・インに滞在したが、ここも少しも変わっていなかった。フロントのエレンさんが覚えていてくれたし、コインランドリーの乾燥機の時間までが同じであった。再会できた方々からは親しく迎えていただいた。そんな周囲の状況の下で、何時の間にか不安が薄れて、“来た”と言うより“帰って来た”と言う気持ちになり、前回と同様に十分な研修ができるだろうという安堵感を覚えたものである。それほどこの研修地は、本校にとっても私にとっても、かけがえのない所になっているのである。

今回の海外E&S研修も無事に終えた今、私なりにこれまでに劣らぬ成果のある研修ができたと思っている。これも、現地の方々、教育委員会、校長先生をはじめ本校の職員、保護者の方々そしてISA等々の理解と支援があってのことと感謝している。そして忘れてはならないのは、添乗員の矢部さんに細やかな配慮と豊かな経験に基づくサポートをしていただいたことである。心からお礼申し上げたい。

 


海外E&S研修を終えて

1年3組担任 今川 直

本校第3回海外E&S研修に1年3組の39名とともに参加し、それぞれの感動を土産に全員無事帰国でき、ここにその成果を報告できることをたいへんうれしく思っている。今回の海外研修は一人の病人も出ず(乗り物酔いは数名いたが)、天候にも恵まれ(帰りのシドニー発の飛行機の中で雨を見ただけ)、全員計画通りの研修をこなし、日頃の学校生活や日本国内では体験できない数多くの体験を積むことができた。

これは本人の努力、御両親の日頃の家庭での食生活.健康管理はもちろん、オーストラリアのホストファミリーの方々の細かな配慮のお陰である。ホストファミリーやグループコーディネータの方々は、生徒諸君が快適に滞在し、有意義な研修が出来るよう何カ月も前から準備をしてくれ、滞在中は横の連絡を取りながら、お世話して下さっていた。心からお礼を言いたい。本当に素晴らしい友人がオーストラリアに出来たと思う。大切にしてもらいたいものだ。

また、本人の努力と言ったが、生徒諸君の健康の原因は緊張感以外に食事と睡眠であったと思う。食事をたくさん残すのではと思っていたが、よく食べるので感心した。特に関空からシドニーまでの機内で朝食は2回出たが、ほとんどの生徒が平らげていた。また、帰りの韓国での夕食の韓国料理プルコギもみんなでぺろりと平らげてしまった。これが元気の源になったと思う。睡眠もバスの中や飛行機の中で睡眠不足の解消をしていたようだ。この健康、この体力、この元気は、みんなの財産である。周囲の人たちに感謝しながら、慢心せず、この財産をこれからの高校生活で大いに生かしてもらいたい。

さて、本校3回目を迎えた海外E&S研修は、過去2回の反省の上に立ち、よく配慮された研修計画が立てられていた。ホストファミリーと過ごす休日とスタディセンターに通う日がバランスよく配置され、フィールドトリップも興味深い場所が選ばれていたように思う。

今回の海外研修では、私もホームステイをさせていただき、一般の観光旅行では得られないような経験をさせてもらった。ホームステイで私が気づいたことを述べてみたい。

私がステイした家庭は退職した老夫婦と2匹の犬がいました。奥さんは若い頃、近くの小学校で教師をしていたが、脳の病気のため手術をし、左目が見えなくなり、右手足が麻痺し、退職されたそうだ。今はリハビリのお陰で日常生活にはほとんど支障がないが、疲れやすく細かい調理はできない。だから、料理も洗濯もほとんど夫の Wolfgang がしていた。日本なら、身障者がいる家庭では、「十分世話が出来ないから」と言って、ホストファミリーを引き受ける家庭は少ないと思うが、彼らは逆に、いろいろな人に来てもらって、世話をし、話をしたいと思っているのである。ホームステイについての意識の違いに驚くとともに、身体障害者についての考え方の違いに感心した。

また、水など資源を大切にする姿勢にも驚いた。エリザベスという町は計画的に作られた町である。土地はあるから、水さえあれば人は住める場所にある。雨は少ないから遠くマレー川からパイプで運び、ため池に貯めてそれを少しずつ使っている。だから、家庭の水道水もあまり勢いよく出てこない。シャワーを使っても、水は勢いがないのでシャワーの真下に頭をもっていかなければならないのである。日本へ帰って、朝、顔を洗おうと蛇口をひねったら、水があまりに勢いよく出るので驚いてしまった。水道管自体が日本より細いようである。水は貴重だが、庭木も大切なので潅水しなければならない。朝夕、水道水を使っていたが、台所で使った水も終わったら、たらいを持って庭木にかけていた。また、雨水のための集水タンクに雨樋からの水を集めるようにしてある。水の大切さが生活のサイクルの中に組み込まれていると感じた。

また、日本語に対する興味・関心の高さも想像以上であった。訪問した家庭で2人の小学生から矢継ぎ早に質問された。「日本のどこから来たのか」「そこは東京に近いのか、大阪に近いのか」「いつ日本人は着物を着るのか」「『こんにちは』『ありがとう』『さようなら』この日本語は正しいですか」と尋ねてくる。聞いてみると小学校で週2回日本語を勉強しているそうだ。しかし、それをすぐに使ってみようという意欲はすごいと思う。私たちも間違いを恐れず、習った英語をすぐに使ってみるというようにすればもっと英語力は向上すると思う。オーストラリアには世界各地からたくさんの移民が移り住んでおり、さまざまな言語が周りで話されており、英語以外の言語に対する障害はないようだ。英語は単なる「共通語」という感覚のようである。今回お世話になったアリソンやサンドラも現在日本語の学習に熱心であった。

最後に、私自身生徒を海外へ引率するのは初めてであるにもかかわらず、生徒たちの思い出に残る海外研修を成功させることが出来たのは田山教頭先生のきめ細かな御指導と古川先生の御協力、添乗員の矢部さんの御配慮のお陰であると思う。また、校長先生始め諸先生方の御指導・御協力とISAの御配慮および保護者の皆さまの御協力にお礼を申し上げます。

 


オーストラリアの感動

古川 はるみ

今回、海外研修の引率でオーストラリアに行き、18日間を過ごしたことは、私にとっても普通の海外旅行では味わえない、貴重な経験となった。私は英語の教員ではないし、英会話もできないので、ホームステイはしなかった。しかもたった2週間余りの滞在である。とてもオーストラリアの人々の生活に深く入り込んだとは言えない。しかし,グループコーディネーターやアシスタントの人々と接したり、ホストファミリーが生徒を送り迎えしてくれる時の様子を見たり、また何軒かの家庭を訪問することによって、オーストラリアの国民性が日本人のそれとは随分違うな、ということを肌で実感したのである。

オーストラリアの人々と接して私がまず感動したことは、人々がとても親切で好意的なことだった。生徒の受け入れは全くボランテイアであること、クリスマスホリデーやニューイヤーズホリデーを含む時期であるにもかかわらず、毎年ホストフアミリーになってくれる家族が多くいること、外国人としての私たちを距離をおくことなく、まるで身内のような親しさで接してくれることなど、オーストラリアの人々の心の広さや温かさ、スケールの大きさが感じられるようなことはいくらでもあった。それは同時に日本の社会、あるいは日本人としての自分のあり方を強く意識させられ、反省させられることでもあった。とりわけ日本人の閉鎖性は、国際化社会といわれる今日の時代の中では、まず第一に克服されなければならない日本人の欠点のように思われた。

また、オーストラリアの人々の暮らしぶりを見ると、日本人が失いつつある心の豊かさを感じることが多くあった。目が合うと、なじみの人はもちろん、見知らぬ人でもニコッと笑いかけてくれる。“Hello.”や“Thank you.”や“Sorry.”という言葉がすぐに出てくる。ちょっと道を尋ねても、身を乗り出すようにして本当に丁寧に、一生懸命に教えてくれるし、最後に“Have a nice trip!”のような一言をそえる心遣いを忘れない。オーストラリアの人々にとって笑顔と挨拶はあたりまえのことのようだ。そしてそれが、人間関係をとても気持ちのよいものにしている。また、生活は質素であるが、どの家庭にも家族の写真が多く飾られ、家族と過ごす時間をとても大切にしている。スーパーヴァイザーのクリスさんの家を訪問したとき、息子さんとそのガールフレンドや友人もまじえて夕食をごちそうになった。日本では、自分の友人や恋人と親をまじえて交際することはあまりない。親子が一緒に食事をすることさえ、あたりまえではなくなってきつつある。そう言うと20歳の息子さんは、「それはおかしい。こういうふうにするのはあたりまえのことだ。」と答えたが、それがとても印象に残った。どの家庭を訪問しても、帰るときはすがすがしくほのぼのとした思いを味わった。教えられることも多かった。人間同士の絆が大切にされていることが感じられて、とても羨ましかった。

このようなことを、ホームステイをした生徒たちはもっと強く実感したことであろう。高校時代という若い時期に、外国人と生活をともにし、外国の文化や違った民族性にふれることができたということは、大きな意識革命にもつながる貴重な経験になったと思う。一時的な感動に終わらせることなく、これから先の自己育成や進歩につなげていってくれることを心から願っている。