心のなかで
野村英夫
陽を受けた果実が熟されてゆくやうに 心のなかで人生が熟されてくれるといい。 さうして街かどをゆく人達の 花のやうな姿が それぞれの屋根の下に折り込まれる 人生のからくりと祝福とが 一つ残らず正しく読み取れてくれるといい。 さうして今まで微かだつたものの形が 教会の塔のやうに 空を切つてはつきり見えてくれるといい。 さうして淀んでゐた繰り言が 歌のやうに明るく 金のやうに重たくなつてくれるといい。
安保条約の差別構造を考える 書き手*伊藤成彦 中央大学教授
−「シリーズ現代の差別を考える」138月刊同和教育1995.12 より−