NO.7
1996.7.19

履歴書から家族欄が削除されることになった。そして志望の動機・本人の長所・推薦事由等個人をPRするスペースが大いに増えた。以下に掲載した2つの新聞記事は、この履歴書の書式が大きく変わったことについて述べられたものである。近い将来、あなたがたの多くが履歴書を書かなければならないだろう。このことについて、あなたがた自身はどう考えるだろうか?


『家族軽視する風潮には疑問』 朝日新聞「声」H8.6.20掲載


就職の履歴書から家族欄を排除することになる、という新聞記事を見て、果たしてこれが適切なことなのかと疑問に思わざるを得なかった。人間は家族(家庭)の中で生まれ、育まれ、生活していく。その人間を家族から切り離して、単なる個としてのみ認識しようとすることが、正当な認識の仕方であろうかという疑問である。そんなに家族を軽視してよいのだろうか?そもそも個人の尊重を無限に広げて個人主義の徹底を期そうとするのは、西欧文化の所産である。アジアは違う。アジアのどの地域でも家族を大切にする風習は続いている。日本はますます西欧社会に従属し、アジアに対しては背を向けることになると思うのは考え過ぎであろうか?その西欧社会でも、個人主義の行き過ぎを憂え、家族の価値を見直そうという風潮が一部に起こっていると言うではないか。


『就職差別排す家族欄の削除』 朝日新聞「声」H8.7.6掲載

6月20日の本欄に掲載された、就職の履歴書から家族欄を排除することに疑問、という記事を読んで、ペンを取った。結論から言えば、履歴書から家族欄を排除することに賛成であるし、当然のことであると考えている。考慮されるべきことは、その個人の能力や実績であるからだ。そこで家族の構成や職業は関係ないし、削除されるからといって、それが家族を軽視することにはならないと思う。家族欄を書くことで、本人の能力以外のことで判断され、就職差別を受ける可能性があることを考えたことがあるだろうか?本人の力の全く及ばないところで判断され、就職が有利になったり、不利になったりすることが今まで起こっていた。そして今、やっと社会が一人ひとりに対して平等になろうとしている。個人を尊重 する西欧の考え方から、私たちが学んだことは大きい。でも、家族を大切にするという心を忘れてはならないことも確かだ。


各学年ごとに同和教育LHRがそれぞれのテーマで実施されましたので、その内容をお知らせします。
1年生LHRより 『人権』について考える

5月29日(水)のLHRで、1年生は今最も私たちの身近にあり、最も深刻な問題の1つである「いじめ」について考えた。事前に行ったアンケートの結果によると、驚くべきことに、ほとんどのクラスで半数近くの人が今までに何らかの形でいじめを受けたことがあるということでした。そして、更に驚かされたことは、ビデオ「子供たちのSOS」を見て、そのいじめの実態が極めて陰湿で、悪質なものであるということです。共に学び、周りとの関わりによってより人間性を高め合う所であるはずの学校で、このようなことが起こっているのは本当に許されないことです。いじめが起きる原因は様々でしょうが、基本的に「自分と異なっていること」に対する認識の不足が、攻撃的行動につながっていくのではないでしょうか。「我々はみんな同じであるはずだ」といった誤った平等意識を拭い、他人の個性をもっと尊重する社会をひとりひとりが自覚して作っていくことが大切です。そして、いじめを見たら絶対に許さないという周りの正義感がいじめをなくす最大の解決策であるはずです。21世紀は、私たちひとりひとりが、人と人、国と国の依存関係の重要性をいかに認識できるかにかかっていると思います。他人の痛みを理解できる−−これこそ人間に与えられたすばらしい本能ではないでしょうか。

2年生LHRより 『同和問題』について考える

6月26日(水)のLHRで、私達2年生は初めて同和問題に取り組みました。 昨年学んだ、日本国憲法第14条で保障されている「法の下の平等」が理由もなく侵害されていることを改めて思い出しました。同和地区出身の友人を持つ中学生を主人公としたビデオ「Cherry Blossom」を視聴し、同和問題を自分のごく身近なものとして捉え、この問題を積極的に考えようとしました。更に、@自分には関係のない問題か? Aそっとしておけば自然に解決するのか? B自分には何ができるのか? C絶対に解決しない問題か?の4つの質問を掲げ、これから同和問題学習を進めていく上での課題としました。最後に、LHRで学んだことを感想文にまとめたものの中から1つ紹介します。

差別のあるこんな世の中を変えるのは差別をしている人自身だ。自分が、「部落
出身でなくてよかった」それだけですむ問題じゃない。人間らしい心を持ってい
ない人は人間ではない。みんな平等だというあたりまえのことがあたりまえにな
っている世の中を私達が作っていくべきだと思う。
 
3年生LHRより 『部落解放への歩みU』について考える

6月12日(水)でのLHRでは、戦後の部落解放運動の歩みをビデオや資料を使って学びました。オールロマンス事件をきっかけに行政の責任を問う運動に変わっていき、同和教育も始まりました。こういう中で、右のグラフのように世の中の人の意識も次第に偏見から解放されてきています。でも依然として就職や結婚に際しての差別には根深いものがあります。私たちは差別を見抜く目を養い、差別をしない・させない・許さないという勇気を持ちたいと思います。

部落の現状はいま
−総務庁・全国同和地区調査結果−」より

7月17日(水)のLHRには、3年生が直面している就職差別の問題を取り上げました。この勉強を通じてこれは他人事ではなく、私たち自身の問題でもあるのだということを理解しました。これからも折に触れ、社会の点検・自分自身の点検をしていきたいと思います。