平成20年度 3学期始業式校長あいさつ

年のはじめに

始業式

 各人それぞれに有意義な冬休みを送り、新しい年を迎えることができたと思う。特に3年生諸君は、全力で頑張っていることと思う。入試での大いなる健闘を祈る。年のはじめに2つのお願いをする。

君たちはこの正月、様々に目標を立てたと思うが、3日坊主というように、目標の実現は、なかなか難しい。しかし、人間は習慣の生き物と言われるように、習慣化すると意外に容易にできる。まずは1週間、次に1ヶ月、そこまでできれば大丈夫。今年の成長を祈る。

私の考えた10年後

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 さて、正月には、新聞等で今年の予測や未来の予測に関する記事が多く出ていたが、私の考えた10年後を話したい。何と言っても科学技術が大きく進歩するだろう。時代を表す言葉として、19世紀は産業の時代、20世紀は情報の時代、そして21世紀は環境とも量子の時代とも言われるが、今、量子コンピュータというものが注目を浴びている。量子とは電子や光子などのもつ性質のことで粒子と波の二重性をもっている。この量子の性質上、今のコンピュータは後10年もすれば原理的にこれ以上、高速化や小型化が不可能という限界に達する。ここで登場するのが、逆にこの量子の考えを応用した量子コンピュータである。コンピュータは0か1かを区別することで様々な演算をするが、量子コンピュータは0と1の中間値をも演算の対象とする。これが完成すると、今のスーパーコンピューターで1千万年かかる計算を数十分で行うことができる。

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 その結果、例えば、天気予報では、坂出市内に何時から何時までどのくらいの雨が降るとかいった限りなく正確な予測ができるかも知れない。また、人の皮膚細胞から遺伝子情報を読み取り、その人の将来の病気の発症可能性を予測できるかもしれない。さらには、人間の精神活動を脳波の変化から読み取って解析し、人の心を読み取ることができるかもしれない。

 これが私の描く10年後である。

日本はどうあるべきか

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 ここで紹介した量子コンピュータは10年後の最先端技術といわれているが、今、しのぎを削っているのが日本とアメリカである。このほか、材料科学、生命科学など、現在、日本には世界最先端の科学技術がたくさんあり、すべて、世界の第一線で厳しい競争を繰り広げている。昨年夏以降の世界的な金融危機の中で、今後、日本はどうあるべきかということが最大の課題であるが、アメリカ、EC、中国という世界の3極化が進む中で、日本の生きる道はいうまでもなく科学技術。しかし、単なるものづくりでは、圧倒的な人口と低賃金を背景にした中国には絶対勝てない。それどころかそのあとには、考えようによっては中国以上に怖いインドが追っている。インドの怖さは、人口の多さと若年層が多いという人口分布、そして、IT産業の強さである。そうした、世界の発展途上国が追い上げる中、このままでは、食料も、石油も、レアメタルもすべてこうした国にもって行かれる恐れすらある。日本の切り札は、他国にまねのできない高度な科学技術である。幸い、今はそれがある。今後、これを維持・発展させ、豊かな日本社会を作っていくのは、これからの日本を担う君たちである。

海底資源が活用できれば

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 また、日本という国を考えたとき、残念ながら、面積では世界61位、資源のほとんどない小さな国であるが、先ほど述べたすばらしい知的資産に加え、意外と知られていない大きな地理的資産がある。例えば、国が優先的に資源利用・開発を行うことの出来る排他的経済水域は国土面積の12倍の447万平方キロもあり世界第6位である。ここの水産資源やメタンハイドレードなどの海底資源が活用できれば海洋国家として活路を見出せるかも知れない。

日本の高校生、中国・アメリカのの高校生

 こうした世界情勢の中で、アメリカも欧州も中国も国をあげて科学技術の発展に取り組んでおり、若者も懸命に勉強しているが、残念ながら少し気がかりなデータがある。例えば、「将来の夢」について、各国の高校生は、

            中国米国日本
科学の分野で発見をしたい21%16%7%
先端的技術者になりたい30%27%9%
 
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といずれも日本の高校生は特に低い。これは科学だけでなく文科系方面の学問も同様だと思う。このままでは将来が大変不安であると言わざるを得ない。しかし、幸い日本の高校生は大変すぐれた資質と高い教育レベルを有している。これからの日本を担っていく君たちは、大いに将来を展望し、多方面に視野を広げ、様々なものに関心を持ち、夢を持ち、その実現に向け、持てる力を十分に伸ばして欲しい。そのためには、前向きな探究心や問題意識、苦しいことにも耐える辛抱の気持ちをもつことが特に重要。君たちの一層の活躍を期待する。

校長 島田政輝
(2009.01.08)

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Last-modified: 2009-01-08 (木) 17:42:24