平成21年度9月 第二学期始業式 校長式辞

最近のニュースから

 今日から2学期。この夏、多くのニュースがあった。まず、一昨日の衆議院選挙で、長年続いた自民党政権がついに交代することになった。君たちはこの歴史的瞬間に居合わせている。政治に関心をもち今後、日本がよくなるのか、悪くなるのか、しっかり見極めて欲しい。また、タレントの酒井法子容疑者が覚せい剤で逮捕された。覚せい剤が厳しく禁止されている理由は、その後遺症と依存性のためである。一度手を染めれば9割の人が再び手にすると言われ、どんなに意志が強くても絶対抜け出せない。そして、これを放置すれば当人だけでなく社会全体が崩壊するため厳禁している。

坂出高校では〜規律と節度ある生活習慣の確立を〜

 一方、坂高にも色々なことがあった。今年の坂高祭のテーマは「クロニクル」。これは年代記、つまり歴史に残ることを書き連ねることを意味する。先月の総体でカヌーの小原さん、新岡さん、水泳の高畑さんの3人の日本一が出た。また、吹奏楽部が結成以来初の全国出場を果たした。これらは紛れもなく坂高のクロニクルである。こうした素晴らしい力を持った君たち、文武両面での2学期の活躍を祈っている。特に3年生は勝負となる大切な時期。不安な気持ちもあるだろうが、周囲の状況に左右されたり、安易に妥協したりせず、自信を持って全力投球して欲しい。今踏ん張るか、妥協して易きに流れるか一生に関わる。1、2年生にとって2学期は最も充実した日々が送れる時期。しかし、十分な成果をあげるためには、規律と節度ある生活習慣の確立が絶対条件。早く学校中心の生活に戻してがんばって欲しい。

人がいるのに話さない、話さなくても不都合がないという状況

 さて、私もこの夏、見たり感じたりしたことが色々あった。この夏、何度かコンビニに行ったが、そこでいつも思うことは、買い物の際、ほとんどの人が店員さんに何も口をきいていないということ。普通のお店では、ものを買うときは「これください」とか「お願いします」とか言うが、コンビニでは会話はない。これはスーパーマーケットも同様で、セルフサービス特有の現象と思われる。セルフサービスはアメリカが発祥地とのことであるが、アメリカは多民族国家のため言葉の通じない人が多く、そのため会話の不要なセルフが流行ったとも聞く。我が国では、言葉の問題ではなく、おそらく、わずらわしさを避けたいという現代人の要求からきたものであろう。コンビニだけではない。電車のキップ、食堂の食券、銀行のATM、更には、ネット販売による買い物など、人とかかわりを持たず、わずらわしさを避けても何の不都合なく生活が送れる社会になっている。確かにある意味では社会の進歩かもしれないが、人がいるのに話さない、話さなくても不都合がないという状況は本当にいいことなのか。

返事をしない人、横柄なもの言いをする人、「すみません」が言えない人

 さすがに「暖めましょうか?」と尋ねられるとたいていの人は「お願いします」とか「いいです」ときちんと言葉で返している。しかし、中には首を縦や横に振るだけの人も見掛ける。これは挨拶を言葉で返さないのと同じで、非常に不愉快である。また、「ええわ!」「いらん!」などと乱暴に言う人すらいる。よく、レストランなどで、立派な身なりをした人が店員さんに横柄なものの言い方をするのを見ることがあるがそれと同じ。人は間違い電話の切れ際と店員さんとの対応に本心が見えると言うが、よく当たっていると思う。
 先日、電車に乗っていると、隣に若いお母さんが2、3才の子どもを連れて乗ってきた。そのうち、子どもが座席の上に靴を履いたまま上がった。ところがお母さんは何も言わない。そのうち、私のズボンに靴が当たったので、「脱がせてください」といったところ「すみません」とも言わず、黙って脱がせた。もしかしたら、恥かしかったのかもしれないが、何とも不愉快な気持ちになった。

暖かい社会や暖かい人間性を創り上げるために

 このように、最近、まともに会話や挨拶ができない人や、マナーを守れない人が次第に増えているが、これもセルフサービス社会の作り出した弊害に思えてならない。しかし、よく見ると、マーケットで、多くの人が口をきかない中で、軽く「お願いします」「はい」、おつりに「どうも」と小さな声を出すか、軽くうなずくかしている人が確実に何人かいる。そういう人は、店員さんに対して、心できちんと対話をしていると言える。こうした相手の存在や行為を認識する仕草があれば、それは必ず伝わる。こうしたちょっとした行為が暖かい社会や暖かい人間性を創り上げるのである。

礼儀やマナー、思いやりのある誠実な人間になってほしい

 君たちにとって勉強はもちろん非常に大切である。また、部活動にも期待している。しかし、本当に大切なことは、社会人として求められる礼儀やマナー、相手への思いやりのある誠実な人間になること。それができると自然に、人にやさしく、迷惑をかけまいという気持ちが芽生えてくる。すると人は自然に前向きになる。前向きになると、自分を伸ばし、嫌なことから逃げ出さなくなる… とすべて良い方向に進み出す。この2学期は、それぞれの目標があると思うが、こうした観点から、今一度自分を見直し、一人一人が成長できるよう努力することを期待する。

校長 島田政輝
(2009.09.01)

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Last-modified: 2009-09-03 (木) 08:19:18