平成21年度11月 全校集会 校長講話

 先月はインフルエンザの流行に伴い、急遽放送での朝礼に変えた。全員が集まるのは久しぶり。3年生は正念場、1,2年生も進路研究や文理選択、部活動の新人戦と重要な時期。全力で頑張ってほしい。  

部活での表彰

 たった今、部活で頑張るたくさんの生徒諸君を表彰することができた。素晴らしいことである。もちろん、文武両道の実現は容易なことではない。しかし、一日24時間しかない中で、25時間、26時間分の取り組みをしようとするところに、両道の意義がある。20時間や21時間分の生活しかしていなければ、自然にそれで満足してしまう。君たちはやればできるだけの能力がある。そのためには、常に自分をコントロールできなければならない。大切なこととそうでないこと、今すべきこととそうでないこと、我慢すべきこととそうでないことを冷静に判断する必要がある。

誰でもできる人権教育

 今日は人権教育の話をする。人権教育といえば、去る6月の2年生の同和教育の講演会で、講師の方が「君たちは人権教育の勉強をしているが、机上で学ぶだけなら、かならず差別をする。本当に差別をしない人間になるには単に学ぶだけでなく、それを実行しなければならない」と言っておられたのを思い出す。まったく同感である。人権教育は知識だけではだめで、行動が伴わなければならない。もちろん、知識を行動に移すにはある程度の心理的ギャップがあるのも事実である。しかし、行動というものを、何か重くて勇気やエネルギーのいるもの … 例えば、市民人権講座の勉強会に出るとか、人権を守る運動のボランティア活動に参加するとか … と考えるとどうしても敷居が高くなってしまう。しかし、決してそうではない。誰でもできる。
 ところで、人権問題といえば同和問題という、いまだ厳然と残る絶対に解決させなければならない重要な問題があるが、それだけではない。女性や子ども、高齢者、外国人、障害者、ハンセン病元患者、アイヌの人々、ホームレスの人の人権などたくさんあり、いわば、我々の社会はまさに人権問題に囲まれているとも言える。

簡単にできる行動として

 こうした中、誰でも簡単にできる行動とは何か…。私は大阪や東京に行くと必ず買う雑誌がある。それは「ザ・ビッグイシュー」と言う繁華街の路上で男性が売っている1冊300円の雑誌である。単なる情報誌であるが、他の出版物と異なるのは、この本はホームレスの人しか販売できず、そのうち160円が売り手の収入になるということである。ホームレスの人については今、最近大きな社会問題になっている。もちろん誰も好き好んでなっているわけではないが、ちょっとしたつまずきから、非常に厳しい生活に入らざるを得ないケースもある。人間として最低限度の衣食住も保証されず、常に危険と隣りあわせの日々を過ごしている。よく公園のベンチなどで昼間から寝ているので怠け者のように思われるが、あれは夜寝ていると野犬や心無い人に襲われる危険があるので人通りの多い昼間寝ているのである。そして、夜は空き缶回収などの仕事をしている。そうした人に少しでも経済的な支援をするため、支援団体が発刊しているのがこの本である。ホームレスの人の知識を本から得ることも大切だが、それで終わったのでは何にもならない。些細な額かもしれないが、ビッグイシューを買うという行動がホームレスの人への支援や、彼らを思いやる気持ちのつながりになるのではと思う。そして、皆がそうなれば小さなことでも大きな成果となる。

ちょっとした行動でも

 こうしたちょっとした行動は他にも考えられる。例えば、見知らぬ障害者への介助や声がけ、道路の点字ブロック上におかれた障害物の除去などいくらでもある。行動だけでもない。言葉遣いでも行動はできる。人権侵害につながる恐れのある言葉を使わないこともそのひとつ。例えば、明らかな差別用語は論外として、何気なく使いそうな言葉の中に、使うべきでない言葉がたくさんある。例えば「手短に」「足がない」「片手落ち」などの身体の障害や嫌がられる特徴を連想させるような言葉、「外人」「くろんぼ」といった外国人を排除したりさげすむような言葉・・・これらは人権侵害につながる言葉・表現として、今の社会では使われなくなっている。人権に正しい認識を持つ人間として、明日から使わないと決心すること。これも立派な行動の1つ。  メールも同じ。メールでは相手の表情が見えない。言葉なら相手の表情で、言い直したり、誤ったりできる。しかし、メールは不可能。そのつもりがなくても、気配りのないメールで誤解を与えたり、傷つけることは往々にしてある。ぜひ送信ボタンを押す前に一度読み返すという行動をして欲しい。

小さな行動の積み重ねが大切

 こうしたちょっとしたことで十分。小さな行動が積み上げにより、はじめて人権尊重の気持ちを自分のものにできる。勉強ができることは非常に大切。部活との両立ができるのも重要。しかし、もっと大切なこと人に迷惑をかけたり、傷つけたり、ルールを破るような人にならないこと。つまり、一社会人として真っ当であること。ちょっとしたことでよいので小さな行動を積み上げて欲しい。

校長 島田政輝
(2009.11.02)

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Last-modified: 2009-11-09 (月) 15:01:14