お知らせ/校長室から

令和3年度3学期終業式講話(3月18日(金))


 最初に紹介しておく。皆さんの先輩である本校卒業生同窓会「松濤会」の支部、「関東松濤会」から10万円相当の図書が寄贈された。皆さんの憩いの場でもある2階の松の間に置くので有効に活用してほしい。関東松濤会の総会50回記念だとのことである。  さらにあと一つ。1年2組の矢野さんが全国高校生読書体験記コンクールで、一ツ橋文芸教育振興会賞を受賞したことで、本校に集英社文庫100冊が贈られた。2階の廊下「松の間」に置かれているので、時間があるときにぜひ一冊手に取ってほしい。

 学年が終わった。年度当初に立てた目標はどのくらい達成できたか。キャリアパスポートへの記入は終わっていると思うが、この休み中は令和3年度を総括し、令和4年度に向けての準備を怠りなく行ってほしい。大人の世界では、「PDCAサイクル」ということが言われ始めて久しい。20年は経っていないと思うが、それ近くになろうとしている。Pとはplan計画を立てるということ、Dとはdoやってみること、Cとはcheck検証すること、Aというのはaction更新・検証した結果をもとに次の一手に出ることである。皆さんも就職したら必ずこれを聞かされると思う。そういう意味でも、今からこういう考えのもとに一年間を振り返り、次年度に向けての目標を明確にしなければならない時期である。

 さて、皆さんにこのような講話を行うのも今回で最後になった。最後に話すのにふさわしい講話として何を話すかは数か月前から決めていた。それは、人間として大切なことである。  私の大学の大先輩で、本香川県で高等学校の教員をした大先輩の言葉を紹介したい。その先生はすでに数年前にお亡くなりになったが、高松北高等学校の初代校長を務めた畠山武史先生という方である。高松北高等学校は、昭和58年に当時の木田郡牟礼町、現在の高松市牟礼町に開校した新設校であった。その学校の創設時から関わられ、初代校長として勤務された畠山先生は、高松北高校を日本一の学校にすると公言してはばからない方であったと聞く。学校の電話番号は2155(日本一の高校)である。その先生が、北高生に常々仰っていたのが、人間として大切なことは、健康・人柄・実力の三つであるということ。

 まずは健康。私はかねてより畠山先生のこの話をいつかはしたいと考えていたが、「健康が大事」と声高に言うことが、病気を抱えている人に対して何か排除するような感じを与えるのはよくないと考えて、公言するのをためらってきた。しかし、何かを為すに際して、やはり必要なものであるというのは事実である。しかし、それでも念のために断っておくが、フルマラソンを走りきるほどの健康を言っているのではなく、日常の生活を送れる、毎日登校できるというくらいの健康で十分である。

 次に人柄。これについて、皆さんはどうだろうか。自分で自分を人柄がよいと思えるか。あるいは、友達や先生方から「君は人柄がいいね」と言われたことはあるか。ほとんどの人がそういう経験はないと思う。そもそも「人柄がよい」というのは漠然としており、何が根拠なのかわかりづらいのは確かである。私が考えるに、「人柄がよい人」というのは、他人の立場に立って物事を考えることができる人とか、陰ひなたなく地味な仕事にも黙々と取り組むことができる人のことを指すのではないかと思う。それに加えて、いつも笑顔とかコミュニケーション能力の高さも加われば、最強の「人柄のいい人」ということになると考える。いずれにせよ「人柄がよい人」というのは、多くの周囲の人から好感を持たれるような人物であるということになるのではないかと考える。  ここでハタと考えるに、「人柄がいい人=勉強ができる人」ではないことが分かる。坂出高校のような進学校に来ると、えてして勉強ができる(と言っても、実際にはペーパーテストで点が取れることを指す場合が多いと思うし、音楽科の皆さんであれば専門が得意なこと)を良しとし、それだけできれば自分がすべてにおいて優れているような錯覚に陥っている人はいないか。また逆に、テストで点が取れないことや専門分野で行き詰っていることで、自分を過小評価して委縮している人はいないか。両方ともばかげたことであると言いたい。そもそも世の中に出てしまえば、皆さんが振り回されている「偏差値」などというものは存在しない。音楽の世界でも、専門性が高いだけでは生き残れないだろう。いかに周囲の人たちと良好な人間関係を築いてやっていくことができるか、そのことは皆さんが思っているよりも相当に大きな意味を持つものである。私自身は坂高では学級担任をする機会はなかったが、廊下ですれ違う時に挨拶をしてくれる人、校長室に掃除に来て丁寧に掃除をしてくれる人、授業中に見て回ったときの皆さんの真剣に授業に臨む姿、ペアワークをしている姿、これらを見ていて、坂高生には人柄がよい人が多いという印象を持っている。皆さんの立ち居振る舞いに、それはよく表れていると思う。「テストが、偏差値が、、、。」ということで人間の価値が決まるものではない。このことをしっかりと胸に刻んでおいてほしい。  そして、最後に実力。これはその名のとおり、自分が選んだ道でどこまでの力を身につけられるかである。高校時代のテストの得点を挙げることとは全く違う。高校時代の勉強は、進学する人にとってはまず大学に行くために必要な知識であり、就職する人にとっては将来の学びの基礎である。決して誤解してはいけない。私が今言っている実力というのは、皆さんが社会に出てからの職業人としての実力であり、ペーパーテストで点が取れることを言っているわけではない。私も英語教師として30年間教壇に立ったが、恥ずかしながら「英語のことは黒島先生に質問しろ」と言われた時期は極めて限定的であったと思う。教員としての後半は、管理職になる道を選んだ。その結果、坂出高校という素晴らしい学校に勤務することができたので、それに後悔はない。ただ、校長や教頭というのは、実力があるかどうかが客観的には分からないので、自分がやってきたことが、勤務した学校にどの程度貢献したのかを知る術がない。つまり実力を知る術がないということだ。たまに、管理職にはならずに、専門の英語を極める生き方もあったのではないかと考えるときもある。

 もう一度繰り返す。健康、人柄、実力。この3つが備われば、人間として最強になれると考える。皆さんの中にはこの3つが全然ないという人はいないと思う。1つの人は2つに、2つの人は最終的にすべてを果たすことができるように、今後とも精進を重ねてほしい。勉強だけでは不十分だ。と言って、勉強ができることを否定しているのではない。また、勉強ができる出来ないといったことだけで自己評価をしてはいけない。はっきり言ってしまえば、そんなのだけではくだらない。すべての皆さんがさらなる高みを目指してくれることを期待している。

 最後に。20日ほどの休みである。この時期をいかに過ごすか。これが皆さんの将来にかなり大きく影響する。「高邁自主」の精神のもと、充実した日々を送ってほしい。




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Last-modified: 2022-03-18 (金) 11:36:38