H30~R04の校長室から

令和3年度1学期終業式式辞(7月20日(月))

2022年3月21日 09時34分

 早くも1学期が終わろうとしている。この間を、「長い」と感じた人はどれくらいいるだろうか。多くの人が、「あっという間だった」と思っているのではないか。「少年老い易く学成り難し」と先人が言ったように、一日一日を一生懸命に生きていかないと、本当に何も身につけずに生涯を終えることになりそうである。自戒の意味を込めてである。これからの夏休み、どう過ごせばいいか、各自が一番わかっているはず。二度とない時間を、計画的に使ってほしいものである。 さて、今日はまず、今シーズン大リーグで驚異の活躍をしている大谷翔平選手について話したい。先日のアメリカ大リーグのオールスターゲームに投打の二刀流として、さらには前日のホームラン競争にも出場した大谷選手。ファン投票で、圧倒的な票数で指名打者としての出場が決まっていたが、先発投手としての出場は選手間投票で決まったものであると聞く。さらに、ホームラン競争は大リーグ機構からの依頼ということである。つまり、ファンのみならず、プロの選手と大リーグの運営団体からも支持されての出場ということである。プロの野球人として、これほどの名誉なことがあるだろうか。

 そして、皆さんもニュースですでに知っているとは思うが、その結果について。ホームラン競争では、惜しくも一回戦で敗れたものの、いわゆる延長戦にまでもつれ込んだ。また、オールスターゲームでは「1番指名打者」かつ「先発投手」として出場し、ヒットこそ出なかったものの、投手としては「勝ち投手」となった。このような出場形態が許されたのは、大谷選手のためのルール変更だとのこと。アメリカのメディアもこぞってこの話題を取り上げたようで、大谷選手の人気は、大リーグで活躍した多くの日本人選手の中でも過去に例がないほどである。この人気沸騰の一つの理由が、彼の野球人としての活躍に加えて、球場(グランド)にゴミが落ちていたらさりげなく拾ってユニホームのポケットに入れたり、自分が打ち取ったバッターの折れたバットを拾って渡してあげたりするところにもあるようである。まさに、人間というのはトータルで判断されるものであることを如実に示していると言えよう。 しかし、私は5年前に、「大谷選手が大リーグに挑戦」という話を聞いたとき、少々ショックだった。それは、大谷選手が当時所属していた北海道日本ハムファイターズの栗山英樹監督が「二刀流」を認め、その起用法に大変苦心しながらも、大谷選手の意向に沿い、成長を見守るという姿勢であったことがとても印象に残っており、果たして大リーグにそのような理解のある監督がいるのだろうかと思ったことが主な理由であった。しかし、実際には私の心配は杞憂に終わった。大リーグエンゼルスの監督も、大谷選手を投打の二刀流として育てるように配慮してくれたからである。ここで翻って考えると、スカウトされてプロ野球の道に進むような人というのは、少年野球から始めている人が多いと思うが、そもそも「エースで4番」という人が非常に多いはずである。それがどこかの時点で、投手を選ぶのか打者を選ぶのかという選択を迫られて、どちらかを選択したという人がほとんどではないか。それは、投手か打者のどちらかだけでも、十分に食べていけると言うか「高給」が取れるのだから、当たり前の選択だろう。選手としての寿命も延びることだろうし。しかし、投打の二刀流を現在でも貫き、結果を残すことによって周囲を納得させている大谷選手は本当にすごい人だと思う。

 私が彼を「すごい」と思うのは、その実績はもとより彼の人柄や考え方である。人柄については、先ほど言ったゴミ拾いやバット拾いにもよく表れている。大谷選手の言葉から、私が感心し、自分では到底まねできないのは、大谷選手の切り替えの良さである。言葉を換えれば、一喜一憂しないところである。例を挙げると、今年の6月30日。ヤンキースタジアムで投手として先発した試合でのこと。早々に打ち込まれ、いきなりの7失点。当然のごとく敗れた試合後のインタビューで、このように語った。「いい投球ができればよかったが、長いシーズンの中でこういう難しいゲームは必ず来る。そこで一つ切り替えられるかも大事」。皆さんはこういうものの考え方ができるだろうか。恥ずかしながら、私にはできない。私なら自分の投手としての未熟さを反省するとともに、「チームが負けたのは自分のせい」というふうに考えて、落ち込んでしまうところである。自分の性格なら、間違いなくそうなると思う。これは、完全にマイナス思考である。大谷選手は、「長いシーズンの中では、うまくいかないことある。いつもいい時ばかりではない」と言っているわけである。まだ27歳の大谷選手が、そんなものの考え方ができるのはなぜだろう、と不思議であるが、こういった考え方、プラス思考で生きることができるということが、彼の活躍の一因であることは間違いないと思う。今後とも、彼の活躍と言動に注目していきたいと思う。皆さんにも注目してほしい選手である。

 今日はもう一点、野球とは全く話が違うが、夏休み前ということで話をしておく。特に3年生の皆さんに。私がこれまで勤務した、ある学校の終業式の校長講話の中で、頭から離れない講話がある。それは、「3年生の皆さんは、この休み中には1日に15時間は勉強しなさい」という言葉である。私自身も高校時代には勉強に時間を割き、休みの日は12時間勉強を継続していた。「どこまでならできるんだろう」という好奇心もあり、徹底的に自分を追い込んで最高に勉強したのは1日に13時間半だった。さすがに翌日はしんどかったが、それでも12時間の勉強時間は欠かさなかった。それで、今言った「ある学校」というのは高松高校のこと。私は高松高校には通算で12年間勤務したが、学級担任をしていて思ったのは、高松高校の生徒は、決して「自分は勉強している」とは言わないが、実はものすごく勉強しているということである。「いやいや、あの学校に合格する子はみんな元から頭がいいんだろう」と考えるのは大間違い。12間勤務した中で、いわゆる「天才」と呼んでいい生徒には1人しか会ったことがない。その生徒は、まさに授業で勝負しているような生徒で、「一度聞いたことは忘れない」と話していた。現役で東大の理科Ⅱ類に合格した。東大や医学部に合格していった生徒は数えきれないくらいにいるが、共通しているのは、非常に真摯に勉強に取り組んでいたことと、最後まで諦めずに粘ったことである。高松高校の話を出したのは、皆さんにもそうあってほしい部分があるから。即ち、最大限の努力をすることと、最後まであきらめないこと。初めに「特に3年生」と言ったが、大学受験の準備はいくら早く始めても早すぎるということはない。1年生、2年生の皆さんにも頑張ってもらいたい。先月放送が終わってしまったが、日曜日の夜に放送されていた「ドラゴン桜」。あの番組は、見ていて共感できる部分があった。簡単に言えば、「大学受験を通して人間は成長する」ということ。これは、私がこれまで教えてきた学校のほとんどの生徒に共通して見られることである。受験はただの競争ではない。自分と向き合う絶好のチャンスであり、成長の機会である。逃げることなく立ち向かってほしい。

 以上、大きく2つの話をした。いまだにコロナの終息が見えない中での「オリンピック開催」、本校にとっては2年ぶりの「坂高祭」となる。感染対策を行いながらも、質の高いクラス展示ができるように、計画的な準備に期待している。