250319 終業式式辞(校長室から)
2025年3月19日 17時00分3学期終業式 式辞
07.03.19
おはようございます。
今日で3学期も終わりますが、令和6年度は皆さんにとってどんな年だったでしょうか。
1年生の皆さんは、中学校から高校に入学して、はや1年が経ちました。
入学当初は、いろいろと戸惑ったこともあったのではないでしょうか。でも、日が経つにつれ、いつの間にか、その戸惑いや緊張感も薄れ、どこかで要領を覚え、手抜きをしている自分はいないでしょうか。もちろん入学当初の緊張感を持続する必要はないと思いますが、人間というのは弱いもので、易きに流れるのが人の常です。気をつけているようでも、無意識のうちに楽な方、楽な方へと舵を切ってしまいます。もし、心当たりがある人は、今なら十分間に合います。この春休みにもう一度、自分自身を見つめ、自分の弱点や苦手とする教科の復習をして、新しい学年を新たな気持ちで迎えてほしいと思います。
2年生の皆さんは、勉強に、部活動に、学校行事にと、学校の中心的存在として活躍してくれたことと思います。そして、来年度はいよいよ3年生、最上級生です。この間、卒業していった3年生たちに負けないように、高い目標を持って邁進してください。まさに「高邁自主」の精神です。むやみに焦る必要はありませんが、計画的に着実に歩んでいってほしいと思います。
私は1学期の始業式で、皆さんに2つのことをお願いしました。
1つ目は、「何事にもチャレンジ精神で前向きに取り組んでほしい」、そのためには「自分に自信を持つこと」だと言いました。そして、自分に自信を持つには、自分との約束を守っていくことだと言いました。小さなことでも、少しずつコツコツと成功体験を積み上げていくことが自信につながり、前向きにしてくれるはずだと。誰も最初から完璧な人はいません。ぜひ、何事にもチャレンジ精神で、前向きに取り組んでいってほしいと思います。
2つ目は、「感謝のこころを持つ、そして、ことばにする」ということです。何気ない毎日の中で、私たちは気づかないうちに、多くの人に支えられて生きています。当たり前のように日常を送れているということに、感謝の気持ちを持ち、そして、ささやかな場面においても、素直に「ありがとう」という言葉を口にしてください。「ありがとう」という言葉は、不思議なもので、自然と私たちを笑顔にしてくれます。笑顔は笑顔を生み、そうして笑顔の輪が広がれば、坂出高校はもっともっとすばらしい学校になると思います。
さて、高校生活において、3月といえば、やはり受験や卒業といったものが頭に浮かびますが、私もこの2つにまつわる、思い出に残る生徒がいます。今日は、その生徒たちについて、少しお話をしようと思います。
1人目の生徒は、私が若いころに勤めていた学校にいた生徒で、当時その学校の応援部で部員がいなくなり、なかば強制的に集められたのですが、みんなやめていき、1人の男子生徒だけが残りました。普段、その生徒はどちらかというと大人しい感じの生徒で、みんなの前で声をあげるどころか、クラスでもあまり目立たない存在の生徒でした。ところが、毎日毎日、運動場の片隅や、雨の日には体育館の軒下で大きな声で練習に励んでいました。最初は声が裏返ったり、文句を間違えたりして、その様子を見ている生徒たちからは少し笑われていました。でも、その生徒は本当に一生懸命、たった1人の応援部員と して、日が暮れるまで来る日も来る日も練習に励んでいました。そうすると、しだいにその生徒の姿を見て笑っていた者がいなくなり、むしろ彼の声が校庭に響いているのが日常になり、彼の存在が他の部活動の部員たちを鼓舞する ようになりました。そして、その年の卒業式の日、すべての式次第が終わったあと、生徒、先生方、保護者全員が体育館に残り、みんなが見守る中で、その生徒がステージに上がり、頭にはちまきを巻いて、白い手袋をして、大きな声で、応援エールを披露しました。その声はもう裏返ったりすることもなく、体育館中に響き渡る、とてもすばらしく、たくましいものでした。私はあの時の彼の姿が、今も忘れることができません。
思い出に残る、もう1人の生徒は、大学受験をめざし、私のところに毎日のように添削指導に来ている女子生徒でした。最初のころは、その大学のレベルにはほど遠く、志望校を代えてもいいぐらいでしたが、彼女は決してあきらめず、過去問や問題集を一生懸命解いて、私のところに持ってきました。そのうち、力もみるみる着いてきて、うまくいけば合格できるかも、というレベルにまでなりました。そして、受験をし、結果がどうだったのか、私も彼女の報告が気が気ではありませんでした。すると、しばらくして彼女が報告に来ました。その顔は笑顔だったので、私は良かった、合格したんだ、と思いました。ところが、彼女の口から出た言葉は不合格だったとのことでした。そして、一生懸命に指導していただいたのに、自分の力不足で申し訳ありませんでした、本当にありがとうございましたと、しっかりした口調でお礼を言ってくれました。私の方こそ自分の指導力不足を侘びましたが、普通、合格してお礼を言いに来る生徒はいても、不合格だったという報告を、しかも笑顔でお礼を言いに来る生徒はなかなかいないように思います。その生徒は笑顔のまま、頭を下げて帰って行きましたが、よく見ると目は少し腫れぼったく、赤みがかっていたのを、私は今も忘れることができません。
3月の、受験シーズン、卒業シーズンになると思い出される2人の生徒であり、私は教師ではありますが、この生徒たちからとても大切なことを学ばされたような気がします。この話を聞いて、皆さんの心にも何か残るものがあればうれしく思います。
それでは、また4月に、新しい学年となり、ひとまわり成長し、たくましくなった皆さんと、元気な姿でお会いできることを楽しみにして、私の話を終わりたいと思います。