250307卒業式式辞(校長室から)
2025年3月7日 17時00分式辞
厳しい寒さもしだいに和らぎ、芽ぐみはじめた校庭の木々の梢に、確かな春の息吹が感じられる、この佳き日に、香川県教育委員会事務局人権・同和教育課長平尾浩一郎様、香川県議会議員尾崎道広様を始め、ご来賓の方々のご臨席と、保護者の皆様のご列席を賜り、令和6年度香川県立坂出高等学校卒業証書授与式を挙行できますことを、教職員一同を代表し、心からお礼申し上げます。
ただ今、卒業証書を授与いたしました241名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
今、皆さんの脳裏には、この坂出高校で過ごした3年間の、数えきれないほどの思いが去来していることでしょう。振り返ってみますと、皆さんは、まだ何かと制約があったコロナ禍の、厳しい環境のなかで入学し、一昨年の5月に、5類感染症の扱いになってからは、しだいに平常の学校生活を送ることができるようになりました。そのような3年間において、皆さんは常に前向きに高校生活を送り、さまざまなことを学んできたことと思います。
日々の学業や部活動はもちろんのこと、多くの学校行事や生徒会活動に勤しむなかで、継続することの大切さや、困難に立ち向かい挑戦する勇気、そして仲間たちと喜びや悲しみを分かち合いながら、ともに支え合い、最後まであきらめずに、やり遂げようとする強靱な精神力など、本当にたくさんのことを経験し、身につけてきました。
こうして今、皆さんの、頼もしく、凜とした姿を眺めていると、皆さんの成長を感じずにはいられません。皆さんは、私たちの自慢の生徒であり、坂出高校の誇りです。
さて、現在、社会はグローバル化やAIをはじめとする技術革新が急速に進み、未来を予測するのが非常に困難な時代を迎えています。さらに、世界各地で多発する紛争や内戦では多くの尊い命が奪われ、いまだに終わりが見えません。また、国内においても、昨年の能登半島地震のような未曾有の自然災害に見舞われたり、目を疑うような事件・事故が毎日のように報道されたりと、世の中は混沌とした様相を呈しています。皆さんがこれから飛び込もうとしている世界は、必ずしも明るいものとは言えないかもしれません。
しかし、一方で若い人たちの活躍に励まされる場面もありました。メジャーリーガーの大谷翔平選手や、将棋の藤井聡太さんの活躍は言うまでもありませんが、パリオリンピックでの日本選手の、特に若手選手の躍進は記憶に新しいところです。
以前、東京大学の入学式で名誉教授の上野千鶴子さんが、現代社会を「正解のない問いに満ちた世界」だと言われました。確かに、皆さんは、これまでの学校生活では、テストに象徴されるように、「正解のある知」を求めてきました。しかし、人生を渡っていくうえでは、むしろ正解があることの方がまれです。特に、多様化・複雑化する価値観が交錯する現代社会においては、その傾向はより顕著になっていると言えるでしょう。知識だけではなくそれを活用する知恵を、インプットするだけではなくアウトプットする術を養わなければなりません。
そのためには、何事も失敗を恐れず「挑戦する力」を、まわりの人と協働し助け合う「人間力」を、そして何より、いかなるときも学び行動し、探究し続ける「情熱」をもつことが大切だと思います。これらの力を身につけることは、坂出高校が教育目標として掲げる「社会の変化に柔軟に対応し主体的に行動できる、心豊かでたくましい人間の育成」につながるものと確信しています。
最後になりましたが、保護者の皆様、お子様が卒業を迎えられましたことに、心からお喜びを申し上げます。また、これまで賜りましたご支援・ご協力に、この場をお借りして、全教職員を代表し、厚く御礼を申し上げます。少し寂しくはなりますが、これからは手を離して、目を離して、しかし、心は離すことなく、新しい世界へと羽ばたいていくお子様をあたたかく見守り、応援してあげてください。
卒業生の皆さん、皆さんはいろいろな人たちのおかげで、今日の日を迎えることができました。ご家族の方はもちろんのこと、地域の方々や多くの先生方、そして友だちや先輩、後輩など、陰になり日向になり、皆さんを励まし、支えてくれたすべての方々に、感謝の気持ちを忘れないでください。
そして坂出高校で培った「高邁自主」・「パティマトス」の精神を、これからも強く持ち続け、高い志を掲げて、それに向かって邁進してください。意志あるところに道は開けます。
惜別の情は尽きませんが、卒業生の皆さんの洋々たる前途を祝福し、式辞といたします。
令和7年3月5日
香川県立坂出高等学校長 渡邉 謙