校長室から

校長室から(R04~R05)

240408校長退任式

2024年4月8日 17時00分

※本文は、ホームページ管理者が記載しております。

説明がありません

昨年度をもちまして、真下拓也校長先生がご退職されました。
教諭として教務主任のお仕事をされ、
教頭先生としての責務を果たされ、
再び校長先生として本校を導いてくださった真下校長先生は
まさに教員人生の大半を坂出高校に捧げてくださいました。

坂出高校に対する愛情は計り知れないものがございました。

長年にわたり、本校を支えてくださり、
誠にありがとうございました。

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次なる人生でも益々のご発展をお祈りいたします。

240305卒業式式辞(校長室から)

2024年3月5日 16時16分

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式辞

 校庭の木々の蕾もほころび始め、春の息吹が感じられるこの佳き日に、香川県教育委員会教育委員・木下敬三様、香川県議会議員 尾崎道広様を始めとする、ご来賓の方々のご臨席と、保護者の皆様のご列席を賜り、令和5年度香川県立坂出高等学校卒業証書授与式を挙行できますこと、感謝の念に堪えません。

 只今、卒業証書を授与した 241名 の皆さん、卒業おめでとう。心からお祝い申し上げます。

 皆さんの高校生活を語るときに、新型コロナウイルス感染症を抜きに語ることはできません。皆さんが入学したときには、部活動の公式戦以外では県外の選手との交流ができないなど多くの制約がありました。その後、感染症対策は緩和されてきましたが、今年度5月に、5類感染症の扱いに変わるまで、緊張した生活を送らざるを得ないところがありました。そのような厳しい環境で、皆さんは前向きに学校生活を送り、今日の卒業を迎えました。教職員一同敬意を表します。

 この3年間には、新型コロナウイルス感染症以外にも、多くの人命が失われるつらいできごとがありました。ロシアのウクライナ侵攻、武装組織ハマスとイスラエルとの軍事衝突では、私たちは絶対に戦争をしてはいけないという強い意志を持つことの大切さを感じました。また、能登半島地震では、自然を前にしたときの人間の非力さを感じました。しかし、戦争や自然災害を前にしても、助けあう人間の素晴らしさも感じました。

 さらに、この3年間は、若い人の活躍に励まされることもありました。藤井聡太さんや大谷翔平さんの活躍は言うまでもありませんが、本校卒業生も活躍しています。向畑憲良さんは、生成AIを使い対話で注文できる日本初の買い物支援システムの構築に坂出市で取り組んでいます。本多達也さんは、聴覚障害者だけでなく、多くの人にとって役に立つエキマトペを開発し評価されました。遠山将吾さんは、ビスケットブラザーズを結成し、キングオブコント2022で優勝するなど、多くの人に笑いを届けています。先輩たちも生活と心を豊かにするために、さまざまな分野で活躍しています。卒業する皆さんも、社会の創造者として羽ばたいて欲しいと切に願っています。

 孔子は「知これに及ぶも、仁能くこれを守らざれば、これを得といえども、必ずこれを失う(どんなに多くの知識を得ても、胸に仁愛を宿していなければ、いつかは知の働きもだめになる)」と教えてくれています。AIが人間を超える日も近いのではと言われていますが、AIにはない、優しさ、しなかやさ、共感する力、楽しむ力、勇気を奮う力を発揮してください。皆さんにはこれらの力が備わっています。また、真面目でコツコツ努力することができる人もたくさんいます。ぜひ、その良さを、誰かのために生かしてください。

 そのためにも、学び、行動し続けてください。変化し続ける社会において、新しい情報を学ぶことは大切ですが、すぐに役に立つものばかり学ぶのではありません。先人たちの思考や研究を通して「新しい視点を手に入れる」ことも学びです。それは、自分の判断のよりどころとなります。そして、自分が正しいと思うことを試してください。失敗に終わる可能性もありますが、成功よりも失敗から学ぶことのほうが多いのです。ですから、悲観することなく行動してください。その人が学んできたこと、チェレンジしたこと、失敗したことが、その人のオリジナリティであり他の人にはないもの、自分を支える強いバックグラウンドになっていきます。

 さらに、本校で培った「社会の変化に柔軟に対応し主体的に行動できる力、心豊かでたくましい心」が、これからの人生を力強く生きていく力となると信じています。これからの社会では、助け合って生きていくことが今まで以上に求められます。ぜひ、まわりの人に対する優しさや感謝の気持ちを忘れないでください。今日の卒業を迎えることができたのも、ご家族を始めとする多くの人の支えがあってのものです。

 終わりになりますが、保護者の皆様、お子様が卒業を迎えられましたことに、心からお喜びを申し上げます。また、これまで賜りました、さまざまなご支援に、この場をお借りし、全教職員を代表し、厚く御礼を申し上げます。そしてこれからも、大きく成長するお子様をあたたかく見守りください。

 卒業生の皆さんが、「高邁自主」・「パティマトス」の精神を忘れず、それぞれがめざす理想に向けて、邁進すること、そして、健康で幸多からんことを心から祈って、結びとします。

令和6年3月5日

香川県立坂出高等学校長 真下拓也

241109 3学期始業式 式辞(校長室から)

2024年1月9日 17時00分

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3学期始業式式辞

令和6年、2024年がスタートしました。

年の初めに、能登半島地震や羽田空港での航空機衝突事故という痛ましい出来事がありました。お亡くなりになった人への哀悼の気持ちを持つとともに、天災の恐ろしさ、コンピュータを駆使した安全管理がまだまだ完全ではないことを、改めて思い知らされました。また、能登地方では、厳しい状況下で被災者同士が助け合っています。羽田空港の事故では、客室乗務員の対応と乗客が落ち着いて行動したことで、死者を一人も出さずに避難できました。そこから、人間の強さやしなやかさを実感することにもなりました。私たちも震災で被災した人のためにできることにしていかなければと思いました。

年末年始の新聞には、この1年を総括したり、新年の展望を記したりしたコラムや、専門家の意見が多く掲載されました。その記事を紹介しながら話をします。

まず、令和5年の大きな出来事を「コロナ明け」としたコラムをもとに話をします。新型コロナウイルス感染症対策で人類は、団結の心を学んだはずだ。それまでバラバラであった世界中の人の心が、新型コロナという人類共通の敵に一致団結して立ち向かった。マスクをつける、ソーシャルディスタンスを保つなど、世界が1つの目標に向かって歩みはじめた。コロナをきっかけに、世界は1つの目標、すなわち平和に向かって歩み始めたのかもしれない。そう思い始めた矢先の2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、さらに、昨年の10月にはイスラエルとハマスとの軍事衝突も開始され、人類の悪い部分がクローズアップされるようになった年でもあったと、コラムは記していました。(朝日新聞12月13日掲載の東海林さだお氏の寄稿をもとにしました)

年末年始も二つの紛争のことがニュースで取り上げられています。今日は、イスラエルとハマスの軍事衝突を見てみます。ガザ地区を実効支配している、ハマスと呼ばれる軍事組織が、イスラエルに侵攻し人質を取ったことが、直接的な原因です。イスラエル政府は、人質の救出とハマスを壊滅させるために、ハマスの拠点となっているガザ地区を攻撃しています。1月3日時点でのガザ地区での死者数は2万3000人に迫っていて、ガザ地区の人口220万人の1%にあたります。この惨状に対して、イスラエルに住むユダヤ人がどう捉えているかというと、イスラエル民主主義研究所が行った世論調査によると、ガザ地区の人たちの苦しみを考慮する必要がないと回答した人が81%にのぼっていて、人質の解放やハマスの壊滅のために、軍事攻撃は仕方がないと考えているユダヤ人が多くいます。ロシアのウクライナ侵攻以降、軍事行動による問題の解決もやむを得ないという考えが世界に広まることを私は懸念します。

軍事行動を容認する風潮に対して、「答えを急がない力」が大切なのではと指摘する学者の意見がありました。世の中には明確な答えのある問題ばかりではありません。むしろ、〇か×かのように簡単に答えを出すことができない問題のほうがはるかに多くあります。だからこそ、先が見えずどうしようもない不安に耐えながら、考え、問題に挑み続ける力が必要とされます。特に、国際社会では、複雑で入り組んだ問題が多数あります。国の指導者に、「答えを急がない力」が欠如すると、戦争で解決する選択につながるおそれがあります。また、答えが出なくても問題に挑み続ける力は、人に対する寛容さとしても現れると指摘していていました。(朝日新聞1月3日掲載の帚木蓬生氏へのインタビュー記事をもとにしました)

なるほどなと思いながら記事を読みました。坂高生は、「人に優しい」と褒めてもらえることがよくあります。新年早々に坂出警察署から、陸上部の生徒2名が故障して動けなくなったダンプカーを移動させる手伝いをしてくれて助かったと、感謝の電話をもらいました。私もみなさんの様子を見ていて、坂高生は人に優しいと思います。ただ、人は、既知のもの・自分の考えに近いものには寛容になりやすいが、未知のもの・自分の考えと異なるものには不寛容になりやすい傾向があります。自分の仲間内だけの優しさでなく、自分と違う意見や考え方を持つ人に対して、この人は違うと関係を絶つのではなく、否定せずに受け入れたり、一緒に考えたりして、人とのかかわりを今まで以上に大切にしてほしいと思います。みなさん方の良さでもある「優しさ」をさらによいものできれば、明確な答えがない社会において、みなさんの力が遺憾なく発揮されると信じています。

3学期は1年間の総決算の学期です。3年生は、卒業すること、そして自分の進路を決めるという、3年間の総決算です。1・2年生は、1年間の総決算に加えて、新学年に向けての準備期間、新学年のゼロ学期ともなります。2年生であれば、受験生に向けての準備期間、1年生であれば、後輩を迎え、部活動や学校行事などで学校の中心となる2年生への準備期間です。3学期は祝日や高校入試の休業日があり、みなさんに任せる時間も多くなります。3年生は2月から家庭学習となります。それだけに、自分は何のために、何をしなければいけないのか、再確認して、新学期をスタートさせてください。そして、生活の基盤となる「遅刻しない」「あいさつをする」「掃除をする」も心がけてください。

3年生のみなさん、通常の高校生活を送ることができる日はわずかです。1日1日を大切に過ごしてください。

 以上で式辞を終わります。

231222 2学期終業式式辞(校長室から)

2023年12月22日 17時00分

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 おはようございます。ただいま、多くの生徒に表彰状を渡すことができました。運動部では新体制での大会、文化部と音楽科では、総文祭をはじめとしたコンクールに取り組み、成果をあげくれました。先週は音楽科の卒業演奏会、2年普通科の探究学習の発表会があり、素晴らしい演奏、発表を聞くことができました。また、校舎内では、普通科生徒の芸術の授業の成果物、グローバルスタディーズプログラムや人権学習会のレポート、1年2組の教室の窓には、遠足で行った大塚美術館の鑑賞レポートが掲示されています。いろいろな形でみなさんのがんばりを実感することができ、うれしく思います。

 このように、2学期にもうれしかったことがたくさんありました。今日はそこから話をします。1つ目はビーチクリーンアップ活動です。この活動は岡内先生の呼びかけで始まった活動で、自然科学部の活動としてだけでなく、校内の希望者も参加できるボランティア活動です。今年の2月に開始して、すでに11回実施して、のべ443人が参加しています。この活動を自然科学部の生徒がまとめて、神戸市で開催された「瀬戸内海環境保全特別措置法制定50周年記念式典」で発表しました。発表では、活動に参加した生徒へのアンケート調査の結果が紹介されていました。私が注目したのは「この活動に参加して何か変化したことがありますか」という質問に対する回答です。日常の行動が変わった19%、日常の生活で心がけることが変わった60%、変化無し21%で、約80%の人が何らかの変化があったと答えています。たとえば、自販機で飲み物を買うのではなく水筒を持つようになった、プラスチックゴミを減らしたいと思うようになりできるだけ包装の少ないものを買うようになった、買い物をするときにビニール袋をもらわないようになった、ゴミが落ちていたら拾うことが多くなった、ゴミ問題のニュースに関心を持つようになった、プラスチックの削減に関心を持つようになった、などです。ビーチクリーンアップ活動に参加して、ゴミの問題を自分の問題として捉え、行動や心がけが変わった生徒がたくさんいることをうれしく思います。世の中にはさまざまな問題があり、大人たちはその解決に向けて努力していますが、簡単には解決しません。社会にある問題を自分の問題として捉え、行動などが変わる人が増えれば、社会は必ず良い方向に向かいます。ビーチクリーンアップ以外でも、献血、子育て支援施設、社会福祉関係などに120人ほどの生徒がボランティア活動に参加しています。その体験から、何かが変わった人も多いと思います。

 学校の学びも、受験に役に立つという視点だけでなく、世の中の役に立つという視点も是非持って欲しいところです。総合的な探究の時間では、地域課題を見つけて解決策を考えてもらう学習を行っていますし、教科の学習でも、社会やみなさんの生活に関連付けた学びがあります。その学びから、自分の生活に取り入れるなどのちょっとした変化が生まれることを期待しています。

 うれしかったことをもう一つ話します。それは、全校生で校歌を歌えたことです。感染症対策や熱中症対策で校歌を歌うことが延ばし延ばしになっていました。今いるみなさんの中には、校歌を聴くだけで歌ったことがない人がたくさんいます。どうにかして全校生で歌いたいという気持ちがいっぱいで、2学期中間考査最終日にようやく歌うことができました。3年生は今日を含めて全員で歌うのは、あと数回です。思いっきり歌って欲しいです。12月2日に5年ぶりに坂出高校の同窓会の総会が開催され、160人ほどの本校の卒業生が集まりました。同窓会の最後は校歌斉唱です。高校生活を送った仲間との共通の財産です。みんなうれしそうに元気に歌っていました。10年後、30年後、50年後、みなさんもそうあって欲しいです。

 明日から冬休みです。冬休みは部活動もまとまった休みをつくりますので、みなさんが家族と過ごす時間がたくさんあると思います。大学に進学したり就職したりしたら、家族と過ごす機会が減ってきます。大掃除を手伝うなどして、家族との時間を大切にしてください。

 最後に3年生へ。みなさん方はまだまだ伸びしろがあります。この時期の追い込みでかなり結果が変わります。みなさんの健闘を期待しています。

 以上で式辞を終わります。

230901始業式講話(校長室から)

2023年9月1日 14時00分

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 みなさんおはようございます。

 夏季休業中の約40日間、どのように過ごしましたか。夏季休業中、みなさんが活躍したことを見たり聞いたりすることがたくさんありました。今日はそこから話を始めます。

 インターハイでのカヌー部、弓道部、テニス部の活躍、そして吹奏楽部、合唱部の活躍が新聞にも掲載されました。今日の表彰状の伝達では賞状を渡せませんでしたが、テニス部の堀家さんは、インターハイのシングルスで8位になりました。堀家さんは昨年度の『白壁』に次のようなことを記していました。「今年は、勝たなければいけないプレッシャーの中で思うような成果を出すことができずに悔しい思いをした。来年のインターハイに出場するために、今まで以上に努力する。」そして今年、その成果が出てうれしく思います。

 また、校外でのボランティア活動に参加した人もたくさんいました。これもうれしいことでした。

 そして、校内では希望者を募った活動ですが、「Global Studies Program」 と「海ゴミリーダーに学ぶ! 世の中をほんの少し面白くする方法」が実施されました。「Global Studies Program」では、外国人の大学生と本校生徒が英語を使って、自分自身や社会について考え意見交換を行いました。「海ゴミリーダーに学ぶ! 世の中をほんの少し面白くする方法」では、海ゴミをなくす取り組みをしている大人と本校生徒が、環境問題について考えていることなどについて、コミュニケーションゲームを行いました。2つの活動の主旨には異なる部分がありますが、さまざまな人と話をすることで、自分を受け入れてもらえた喜びが高まること、視野が広がること、他者への理解が深まるなど、コミュニケーション活動の大切さを学ぶという点は共通していました。 

 また、8月4日には一日体験入学が実施されました。前日の準備でトイレ掃除をしてくれた部活動(野球部、陸上競技部)、案内や学校紹介で活躍してくれたみなさん、吹奏楽部をはじめ暑い中、部活動を行ってくれたみなさん、ありがとう。630人の中学3年生が来校しました。坂高生の姿が、坂出高校の評判や評価をつくっています。それだけに、坂出高校に関心を持っている中学生がたくさんいることをうれしく思いました。

 まだまだ暑いですが、2学期がスタートしました。2学期は、4か月の長丁場です。そして、1年生は文系・理系のコース選択の時期、2年生は進路を具体的に絞り込む時期、3年生は進路を決める時期にもなり、決断が求められる時期です。高校生にとって、進路に関わることは大きな問題です。自分はどのような目的を持って、何を目標とするのか。そして、目標を実現するためには何をしなければならないのか、できていないことは何か。こういったことが突きつけられます。非常にしんどいことですが、向き合ってください。

 進路や学習に関することは個人の問題になりがちですが、集団としても考えてください。「受験勉強は団体戦」という言葉を聞いたことがあると思います。3年生だけでなく、1年生からすべての坂高生が、自己実現のために努力しています。高邁自主とパティマトスという坂高スピリットを持つ仲間を支援する集団であって欲しいと思います。そのためには、まわりの人に関心を持ってください。これから坂高祭の準備も活発になります。その中で、あまり関わりのなかった同級生の良さを知ることもあると思います。関心を持つことができれば、人に優しく、自分がどうすべきか考えることができるようになります。また、話ができる人を増やしてください。自分一人で考えることはしんどいことです。自分の価値観なり世界観だけで考えていると行き詰まり、しんどくなります。しんどいと思うことがあれば、大人でも友人でもいいです。その気持ちを言葉にしてください。

 最後に、私の夏休みの話をします。8月24日~25日にPTAの全国大会で仙台市に行きました。8月24日は、夏の高校野球で準優勝した仙台育英高校が仙台市に帰ってきた日でした。そして、福島第一原子力発電所での処理水を海洋へ放出し始めた日でもありました。これから原子炉の廃炉に向けて対処すべき問題はまだまだ出てきますし、廃炉まで30年以上かかると言われています。福島第一原子力発電所の問題は、東北だけの問題ではなく、日本全体で考えなければいけない大きな問題です。PTAの全国大会の2日目、25日は、仙台育英高校の須江航(すえ・わたる)監督の講演会でした。参考になる話をたくさん聞けましたので、そこからいくつか紹介します。

●長所と短所の関係について

人生の多くの場面において短所が長所を消してしまう。だからこそ苦手なものに丁寧に向き合える人間であって欲しい。

●失敗との向き合い方について 

失敗した後に、1度変える取り組みをしてみてください。ここで言う1度とは、「one time」ではなく、「degree」角度の1度です。大きく変えるのではなく、ほんの少し変えることだけで、それが続けば、長い時間が経つと大きな変化になっています。

●「時を守り」「場を清め」「礼を正す」

時間を守ること、生活の場を整えること、挨拶はもちろんお世話になっている人への感謝の気持ちを伝えること。これができない人は、まわりからの信用を得られない。どこかで痛い目に遭う。これは常々私もみなさんにお願いしていることです。

 それでは、みなさんが充実した学校生活を送ることができるよう、先生方も全力で支援します。がんばっていきましょう。

230720終業式式辞(校長室から)

2023年7月20日 18時00分

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1学期終業式式辞

 みなさん、おはようございます。

 1学期が終わりました。ここで自分の立てた目標に対する中間評価をしてください。何ができて、何ができなかったのか、できていないことがあれば、何が原因でできなかったのか、できるようにするためには、どうしたらいいのかしっかりと振り返りをしてください。

 明日から夏休みです。ゼミや部活動があるとはいえ、多くの時間の過ごし方を皆さんに任せます。そこで、みなさんの過ごし方の参考となる話をします。

 まず、ニュース映像を流します。ここで紹介される「エキマトペ※注)を開発したのは、坂出高校を2009年に卒業した本多達也さんです。

 では、映像を見てください。

(映像が流れる)

 本来であれば、昨年の向畑さんのように学校にお招きして講演をしてもらいたいのですが、現在、本多さんはデンマークにいるため、それができません。「エキマトペ」を開発するに至った経緯などを、本多さんがまとめた本「SDGs時代のソーシャル・イントラプレナーという働き方(日経BP)」※注)が出版されましたので、その内容から話をします。

 大学に進学したものの、将来何をするか決めてない状況下で一つの出会いがありました。1年の大学祭で道に迷った2人のろう者(耳の聞こえない人)を見かけ、身振りや携帯電話を使い説明しました。その方が、函館ろうあ協会会長で、兼平さんという方でした。二人は週1回ほど、一緒に温泉などに行く友人となります。一緒にいるなかで、自分は犬が吠えてもびっくりするけど、兼平さんはびっくりしない。音楽番組を見ているときに自分は音楽を鑑賞しているけど、兼平さんは歌詞をじっと見ているなど、音に対するギャップを感じるようになりました。

 そこから、ろう者と一緒に音を楽しむことができないか、在学中に研究を始めました。研究を進めるために、経済産業省が行っている、若手IT人材育成プログラムに応募し、予算と指導者を得ます。音を振動に変えて身体に伝える技術を開発し、ヘアピンのようなものを頭につけて音を感じる機械の原型をつくり、「オンテナ※注)と名付けました。残念ながら、在学中には商品化には至りませんでした。

 そこで、入社した富士通で商品化をめざします。社内には「できないことがあたりまえ」と思い込んでいる社員(優秀ではあるが、指示待ちになっている人)が多かったようです。商品化は本多さん一人ではできません。さまざまな分野(テクノロジー、デザイン、広告など)の人たちの協力が必要です。そこで、本多さんは、「ろう者と音を楽しむ」という明確なビジョンとその実現に向けた思いを素直に伝え、協力者を増やし、会社にも開発を認めてもらい、試作品をつくります。使った人からは、「サッカー観戦で、会場の盛り上がりを感じられただけでなく、PKの時の静かさや緊張感を感じることができた」とか、「映画鑑賞で雨の音の違いを感じられた」などの感想を得ます。そこから、ろう者だけの商品ではなく、多くの人と楽しめる商品にできるのではないかと、考え方を広げることにしました。そうすることで、商品単価を下げ、ろう者が購入しやすくなりますし、ろう者への理解も広がります。こうして、「オンテナ」の商品化に成功します。

 次に本多さんは、「エキマトペ」の開発に乗り出します。ろう者から、「どのようなものがあれば便利か」考えてもらった時に出てきた「電車通学の不便さ」をもとに、ろう者に便利なだけではなく、多くの人が見ているだけで楽しめるものをつくろうという考えで生まれたのが、「エキマトペ」です。

 本多さんの活動から見えてくるのは、「ろう者と音を楽しみたい」という、強い気持ちです。その気持ちが本多さん自身を動かす大きな力になりました。自分の将来を考えたときに、理屈で自分を納得させたものであれば、困難に直面すると諦めてしまうかもしれません。やはり、人間を強く動かすのは、心からわいてくる気持ちです。

 みなさんは、社会をよくするために、人を幸せにするために、人に喜んでもらうために、環境のために、このようなことをしたいという強い気持ちはありますか。もし、そのような気持ちを持っているのであれば、大切にして欲しいです。まだ、このようなことをしたいというものがないのであれば、経験(部活動、生徒会活動、ボランティア活動、海や山に行くなど)をたくさん積んで欲しいです。実体験から得た感情は強いです。総合的な探究の時間で立てた問いに関して、実社会で調査することも考えてください。また、自分で経験できることは限られているので、それを補うものとして読書を勧めます。本を読むことで社会や人間の考え方を知るよい経験となります。

 しかしながら、高校時代に自分の将来の仕事につながる強い動機付けを持つことができるとは限りません。本多さんのように大学に入ってからかもしれません。自分の感性(引っかかり)を高くするものとして、基本的な教養(現在みなさんが取り組んでいる学習)があります。高校での学びはさまざまな学問の基盤となります。受験のために勉強する以前に、高校生として学ぶべき教養なのですから、学校での学びを大切にして欲しいです。1学期に学習面で足りていない部分があれば、夏休み中に補ってください。

 3年生については、教養としての勉強にプラスして受験勉強がスタートしています。この夏休みは勉強一色になって欲しいところです。人生のなかで、このような経験をすることも意味があります。勉強の成果はすぐには現れませんが、秋には成果が現れてきます。それを信じて、この夏はとことん勉強してください。また、部活動を続けている3年生のみなさん、まさに文武両道を実現して欲しいところです。

 最後に、9月初めには坂高祭があります。久しぶりに一般公開での坂高祭です。多くの人が坂高生のレベルの高い展示・発表を期待して来校してくださります。みなさんの力の見せ所です。どれだけできるか期待しています。

 それでは、9月にみなさんにお会いできることを楽しみにしています。

※注)本校卒業生の功績として、本校のホームページ管理者が関連サイトにリンクいたしました。

230407 入学式式辞(校長室から)

2023年4月7日 13時00分

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式  辞

 爛漫の花に彩られ、新しい季節がめぐってまいりました。本日、PTA会長 柴田孝一郎 様のご臨席と、保護者の皆様のご列席を賜り、香川県立坂出高等学校 令和5年度入学式がこのように盛大に挙行できますことを、教職員一同を代表し、心から御礼申し上げます。

 只今、普通科228名、音楽科23名、計251名の入学を許可しました。皆さん、入学おめでとう。心からお祝い申し上げます。

 皆さんが入学した坂出高校は、大正6年、1917年に、香川県立坂出高等女学校として開校しました。戦後の昭和24年、高等学校再編成により現在の校名となり、男女共学の学校となりました。また、昭和42年には音楽科が設置され、現在の学校の形になりました。今年度、創立107年目を迎え、国内外の様々な分野で活躍する29,000人を超える卒業生を輩出してきた伝統校です。そのような坂出高校の一員として、本日皆さんを迎えることができ、大変うれしく思います。

 さて、坂高生となった皆さんが、高校生活の指針として欲しい言葉があります。それは、坂出高校のモットーであり、校歌にも歌われている「高邁自主」という言葉です。「高邁」とは、「高潔なこころざし」という意味ですから、「高邁自主」とは、「高いこころざしを掲げ、自らの判断で自ら行動を起こす」姿を現します。坂高生はこの言葉を胸に、学業、部活動、学校行事などに向き合い、成果をあげてきました。「高邁自主」が坂高生の精神、坂高スピリットと言えます。「高邁自主」を実践するうえで、大切となる心構えが「パティマトス」です。「パティマトス」とは、正門に入って正面にある石組みに刻まれた言葉です。今から58年前に、創立50周年を記念して、当時の校長が本校で学ぶ生徒に贈った言葉です。「パティマトス」はギリシア語で、「英知は苦難を通じて来たる」という意味です。つまり、楽しいことばかりではなく、つらいことやしんどいことに向き合って、高い志は実現できるのです。

 現代社会では、情報通信技術の進歩により、社会変化のスピードが急激に早まりました。さらに、ロシアのウクライナ侵攻のように、予想もしなかった事が起きるなど、私たちは、不確実な社会を生きています。このような社会では、新たに生じた問題に対する解決策を考え、実行する力が求められます。具体的には、自分の事として、社会の問題に向き合い、解決に向けて他者と協力して粘り強く取り組んでいく力です。この力は、「高邁自主」を基盤においた本校の教育活動によって培うことができると確信しています。「遅刻をしない」「あいさつをする」「掃除をきちんとする」といった生活習慣の基本ができたうえで、学業、部活動、学校行事や生徒会活動に十分に励み、社会で活躍する人材に成長することを望んでいます。

 保護者の皆様、お子様の入学、おめでとうございます。民法の改正により、18歳になると、法律的には、成人、大人として扱われ、自分で判断し行動することが求められるようになります。それだけに、高校3年間でお子様に自立する力をつけることが求められます。ご家庭におかれましても、ほどよい距離をおきながら、お子様に対して、時にきびしく、時にあたたかく見守ってください。また、ご家庭と学校が十分に連絡を取り合い、お子様の教育を進めてまいりたいと思いますので、ご理解とご支援を賜りますよう、お願いいたします。

  最後に、新入生の皆さんが今日の感激と感謝を忘れることなく、学業に、また人間形成に大いに励み、充実した素晴らしい学校生活を送ることができるよう期待し、式辞とします。

  令和5年4月7日

 

香川県立坂出高等学校長 真下拓也

230317 終業式式辞(校長室から)

2023年3月17日 18時00分

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3学期終業式式辞

 昨日のWBC準々決勝戦観ました。大谷選手すごいですね。一球一球、声を上げながらの全力投球、セーフティバントなど、勝とうという気迫が感じられました。その姿に選手も引っ張られるし、応援している私たちも引き込まれました。やはり、何かに一生懸命に取り組んでいる姿に人は魅了されます。本校でも、多くの生徒が部活動に全力に取り組み、その姿に元気づけられている家族や友だちがいるのだと思います。

 この1年、ことあるたびにみなさんに語りかけてきたこと、わかりますか。「掃除をする」「あいさつをする」「遅刻をしない」といったあたりまえのことができるようになることです。坂出高校は、あたりまえのことができたうえで、学習、部活動、学校行事などで、さらに成長しようと切磋琢磨している学校です。4月から新入生が入学します。坂高生のあるべき姿を、みなさんが示し、新入生にも受け継いで欲しいと考えています。学校の姿とは、先輩から後輩に受け継がれて、つくられるもので、先生方がつくるものではありません。ですから、あたりまえのことをあたりまえにできる坂高生であって欲しいと強く望んでいます。卒業した3年生は皆勤賞(無遅刻、無欠席、無欠課)受賞者が59名いました。コロナ禍で大変ななか、立派なことで、その姿を見てきた皆さんもそうあって欲しいです。

 皆さんは、坂出市にイスラーム教の礼拝所(モスク)があることを知っていますか。ちょっとローカルな話になりますが、坂出市のマルナカ、ボーリング場、坂出警察署、かまど本店のある道を東に進んだところにあります。私もよく通る道路沿いにあるので気になっていましたが、昨年の秋には外から見てもモスクとわかるようになりました。設立の中心となったのは、インドネシア人のイスラーム教徒のフィカルさんです。設立に向けて奔走する様子を取材した本が出版されましたので読んでみました。

 フィカルさんは技能実習生として来日し、日本人女性と結婚、現在は溶接工として坂出市で暮らしています。フィカルさんは、日本人と話をしたいと思っても、関わって欲しくないという雰囲気を強く感じましたし、怖がられたり、テロリスト呼ばわりされたりすることもありました。そこで、フィカルさんは、モスクを設立することを決意します。香川県で生活するイスラーム教徒が集う場とすることは当然として、日本人にイスラーム教のことを知ってもらい、日本人との交流の場にしたいと考え、モスク設立に向けて活動を始めました。まず、モスクに使うことを前提として、建物を売ってくれる人を探すのに苦労しました。それ以上に苦労したのが、建物を買う資金集めでした。購入資金を集めるために、まず、県内のインドネシア人に呼びかけて、資金集めを開始しました。県内には900人ほどインドネシア人がいますが、それだけでまかなうことはできませんでした。そこで、SNSを駆使して、全国のインドネシア人にも呼びかけ資金を集め、今から2年ほど前の2021年2月23日建物を取得しました。そして、内装や外観を整え、今では外から見てもモスクとわかるようになりました。

 この本を読んでみると、私とは異なる世界観を持った人が、自分たちの宗教を大切にしつつも、地域社会に溶け込もうとする様子が伝わってきましたし、多様性を受け入れる姿勢を学びました。これからの社会では、多様性を受け入れる姿勢はますます大切になっていきます。そのためにはどうあったらいいのか、フィカルさんの活動から話をします。まずは、人への優しさです。フィカルさんは、坂出市に一人で暮らしているお年寄りがすごく多いことに心を痛め、力になりたいと考えます。やはり優しい気持ちが他者を受け入れる大前提となります。そしてもう一つが、自分の考えを相手に伝えようとすることです。フィカルさんはイスラーム教のことを日本人にわかって欲しいと強く思っています。私たちの多くは、自分の意見をはっきりと示すことが苦手なのかもしれません。多様な価値観や考え方が存在する中では、自分の意見や考え方をしっかりと伝えることも必要となってきます。

 年度替わりは、新しい出会いがあります。新しい出会いから、皆さんの世界が広がるチャンスとなります。私もそうですが、4月の新しい出会いを楽しみに迎えたいです。

230303 卒業式 校長式辞(校長室から)

2023年3月3日 16時00分

式 辞

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 校庭の梅の花が満開となり、春の訪れを感じられるこの佳き日に、香川県教育委員会・西部教育事務所長 十河聖司様、香川県議会議長代理・香川県議会議員 植條敬介様を始めとする、ご来賓の方々のご臨席と、保護者の皆様のご列席を賜り、令和4年度香川県立坂出高等学校卒業証書授与式を挙行できますこと、感謝の念に堪えません。

 只今、卒業証書を授与した 244名 の皆さん、卒業おめでとう。心からお祝い申し上げます。

 皆さんの高校生活を語るときに、新型コロナウイルス感染症を抜きに語ることはできません。入学後、わずか3日間の学校生活で臨時休業。臨時休業は2度、延長され、5月31日まで続きました。6月から学校は再開しましたが、体育祭、坂高祭が中止となり、少し寂しい学校生活となりました。2年次から、日常に戻りつつありましたが、感染対策を徹底し、緊張した生活が続いたことに変わりはありませんでした。しかし、皆さんはこの困難な状況を乗り切り、今日の卒業を迎えました。教職員一同敬意を表します。

 皆さんが、坂出高校で学んだ3年の間に、世界は劇的に変化しました。国内では、感染症対策の陣頭指揮を執った安倍総理が令和2年9月に辞任し、その後、総理大臣は菅総理、岸田総理と交代しました。そして、令和4年7月には、安倍元総理が蛮行により暗殺されました。国際社会では、トランプ・アメリカ大統領からバイデン大統領への政権交代時の令和3年1月に、政権交代に反対するトランプ支持派が連邦議会議事堂に乱入する事件が起きるとともに、主張の異なる勢力の対立が激しくなり、民主政治を危ぶむ声が高まりました。さらに、昨年2月からのロシアのウクライナ侵攻により、世界の対立は激化し、話し合いによる解決が難しくなっています。

 現在、ウクライナの問題以外にも、環境問題、貧困の問題など数多くの問題への対応により、民主政治が試されています。民主政治では、ただ多数決で物事を決めるのではなく、多様な立場や考え方の異なる人たちの意見をもとに、議論し納得解を見いだすことが必要です。ただ、解決すべき課題があまり多く、それぞれが難しい課題であるため、諦め、思考停止になる人もいるのかもしれません。しかし、皆さんは、本校の学びの中、総合的な探究の時間、ホームルーム活動、部活動、そして感染症対策をとりながらどのような生活を送るべきかなど、身の回の問題に取り組み、解決策を見いだしてきました。それは、自分事として問題に向き合ってきたからできたことです。最近では、フェアトレードのカカオ豆を使ったチョコレートが、バレンタインの売れ筋商品になっていることが紹介されていました。フェアトレードは貧困をなくすというSDGsがめざす取り組みにつながります。大きなことはできなくても、各自が世の中のことに関心を持ち、自分事として社会に参画することはできます。民主政治は、そのような個々人によりつくりだされるのであり、皆さんにはそうあって欲しいのです。

 これからも社会は劇的に変化し続けることが予想されます。皆さんは、刻一刻と変化する社会の中で、自己と社会の結びつきから進路を考え、自分がめざす道を見いだしたと思います。そして、それがこれからの長い人生の指針となることを望んでいます。指針がゆらいできたときには、立ち止まり、「なぜ、自分はそうありたいのか」見つめ直してください。また、理想に向かい邁進する中で、うまくいかないことや失敗することもあろうかと思います。しかし、皆さんが学び続けることをやめなければ、やり直すことは可能です。

 日本の近代経済社会の基礎を築いた渋沢栄一は次のように語っています。
「卒業後に真の勉強が始まる。学校を出た後でも研究を怠らない者は、思いどおりにならないことがあっても、そのうち必ずうまくいくようになる。世の中に出てから、絶えず情熱と勉強の心がけを失わないようにする。こういう人は向上心をなくした秀才なんかとは、全く比べものにならない。学校で学ぶことは、社会に出てから現実に対応していくための準備に過ぎないのである。」

 本校で培った「社会の変化に柔軟に対応し主体的に行動できる力、そして、心豊かでたくましい心」が、これからの人生を力強く生きていく力となると信じています。また、これからの社会では、助け合って生きていくことが今まで以上に求められます。ぜひ、まわりの人に対する優しさや感謝の気持ちを忘れないでください。今日の卒業を迎えることができたのも、ご家族を始めとする多くの人の支えがあってのものです。

 終わりになりましたが、保護者の皆様、お子様が卒業を迎えられましたことに、心からお喜びを申し上げます。また、これまで賜りました、さまざまなご支援に、この場をお借りし、また全教職員を代表し、厚く御礼を申し上げます。そしてこれからも、大きく成長するお子様をあたたかく見守りください。

 卒業生の皆さん、皆さんが、「高邁自主」・「パティマトス」の精神を忘れず、それぞれがめざす理想に向けて、邁進すること。そして、健康で幸多からんことを心から祈って、結びとします。

令和5年3月3日
香川県立坂出高等学校長 真下拓也

230110 3学期始業式(校長室から)

2023年1月10日 10時00分

3学期始業式式辞   

 令和5年、2023年がスタートしました。

日本漢字能力検定協会が発表した2022年の「今年の漢字」は「戦」でした。ロシアのウクライナ侵攻という本当の戦争、そして、新型コロナウイルス感染症や物価高との戦いなど、暗い空気が世の中を覆っていました。その空気を吹き飛ばしたのが、北京冬季オリンピック、サッカーワールドカップでの日本の活躍など、スポーツでの戦いでした。今年の見通しもそう明るくありませんが、坂高生が生き生きと学校生活を送ることで、活気ある学校になればと期待しています。

さて、「一年の計は元旦にあり」とことわざがあります。その年にすべきことは、元旦に計画を立てるべきである、という意味から、何事もはじめに計画を立てるのが肝要であるという意味で使われたりします。皆さんも、新しい年を迎えて、自分が何をめざしているのか、そのために何をしなければいけないのか確認するよいタイミングです。

3年生の多くは、4日後に迫った共通テストのことで頭がいっぱいで、それどころではないと思っているかもしれません。共通テスト後には、予備校などが発表するデータを参考にしながら、出願先を考え直すこともあろうかと思います。その時に、自分のやりたいこと、なりたい自分を見失うことなく、これから自分の進むべき道を考えてください。

1・2年生の皆さんにとっても、3学期は重要な時期となります。短期的な視点で見たら、1年間の総決算の時期です。この1年でやっておくべきことはしっかりとできているのか、キャリアパスポートなどに記した自分の目標を達成することはできたでしょうか。中期的な視点で見たら、新年度に向けての準備期間、新学年のゼロ学期となります。2年生であれば、受験に向けての準備期間、1年生であれば、後輩を迎え、学校行事などで学校の中心となる2年生への準備期間です。先を見据えて、自分は何をめざしているのか、そのために自分がすべきことは何なのか、再確認してください。

そのヒントとして、アップル社を創業し、後にiphoneなどを世に送り出したスティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学の卒業式で行った有名な演説の一部を紹介します。

まずは、自分が創業したアップル社から解雇を宣告され、呆然としていた時にたどり着いた境地として、次のように語っています。

「アップルを追われなかったら、今の私は無かったでしょう。非常に苦い薬でしたが、私には、そういうつらい経験が必要だったのでしょう。最悪のできごとに見舞われても、信念を失わないこと。自分の仕事を愛してやまなかったからこそ、前進し続けられたのです。皆さんも大好きなことを見つけてください。仕事は人生の一大事です。やりがいを感じることができるただ一つの方法は、すばらしい仕事だと心底思えることをやることです。好きなことがまだ見つからないなら、探し続けてください。決して立ち止まってはいけない。本当にやりたいことが見つかった時には、不思議と自分でもすぐに分かるはずです。だから、探し続けてください。絶対に、立ち尽くしてはいけません。」

 そして、がんを宣告されて「死」を意識したジョブズ氏は次のように語ります。

「あなた方の時間は限られています。だから、本意でない人生を生きて時間を無駄にしないでください。ドグマにとらわれてはいけない。それは他人の考えに従って生きることと同じです。他人の考えに溺れるあまり、あなた方の内なる声がかき消されないように。そして何より大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。あなた方の心や直感は、自分が本当は何をしたいのかもう知っているはず。ほかのことは二の次で構わないのです。」

そして、演説の最後に「ハングリーであれ。愚か者であれ。」と結んでいます。

 皆さんには、自分のやりたいことを探し続けることを諦めて欲しくないですし、まわりの人の言葉に従うのではなく、自分の心に従い、やりたいことに突き進む勇気を持って欲しいのです。

冒頭に話をしましたが、日本の見通しが明るくないのも事実です。それもあって、「私なんかが社会を変えることはできない」とか、「これからの社会はよくならない」と感じている人もいるかもしれません。しかし、自分が前向きに行動することで、何かは確実によい方向に向かいます。その積み重ねで社会を変えていくことができると信じて、社会に出ていく準備を進めて欲しいですし、今できることがあれば、やってみてください。

 大切な時期となる3学期、皆さんが充実した生活を送ることができるよう、先生方も全力でサポートします。皆さんも前向きに学校生活を送ってください。その基盤となることとして、「遅刻しない」「あいさつをする」「掃除をする」を意識してください。そして、3年生の皆さん、通常の高校生活を送ることができる日はわずかです。1日1日を大切に過ごしてください。

 最後に、感染症対策についての確認です。感染者が増えています。学校での学びを止めないためにも、マスク着用、換気、黙食、手指消毒への協力をお願いします。

 以上で式辞を終わります。

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221223 2学期終業式(校長室から)

2022年12月23日 16時30分

2学期終業式式辞

坂高祭・音楽科研修旅行、修学旅行という大きな行事が、始まりと終わりにあった2学期ですが、9月中旬から12月にかけて、運動部では、新体制での大会、文化部と音楽科では、総文祭をはじめとしたコンクールに取り組み、成果をあげました。学習面ではどうでしたか?

 私は2学期にもうれしかったことがたくさんありました。今日はその1つである先輩講演会から話をします。

 坂出商工会議所の人から、坂高の卒業生にすごい人がいると教えてもらったのが、向畑憲良(むかいはたけ かずよし)さんです。向畑さんは、早くにネットショッピングがこれから発展する産業と見抜き、ネットショッピングのシステムを構築し、そのシステムを会社に使ってもらう事業を立ち上げました。そして現在では、向畑さんの会社のシステムを使ったネットショッピングの売上額が、10年連続国内第1位を維持するまでになりました。是非、この人の話を生徒に聞かせたいと思ったし、こんなすごい先輩がいることをみんなに知って欲しいと思いました。そこで、かわいい後輩のために話をして欲しいと、ダメ元で会社にメールを送りました。すると、広報担当者が丁寧に対応してくださり、講演が実現しました。
316101225_457723869828875_8755070057472004040_n 3年生は参加できませんでしたので、講演で私が聞き取って解釈したことを話します。向畑さんの主旨をきっちりと伝えられないところがあるのは許してください。

●求められる人材(どのような人と仕事をしたいか)について、向畑さんは5つ挙げました。

 ・1つ目は「誠実」であること。誠実な人とでないとビジネスはできません。
  人としても一番重要です。

 ・2つ目は「主体的」であること。
  何か問題があった時に自分ごととして取り組む人がいるほどチームはうまくいきます。

 ・3つ目は「積極的」な人。
  前向きな気持ちが大事です。消極的な人よりも、積極的な人と仕事をしたいです。

 ・4つ目は「他人を尊重」すること。
  仕事と割り切って接するよりも、相手を尊重することで、より大きな成果につながります。

 ・最後が「人間性と知性のバランス」。
  人柄だけ、もしくは知性だけでは不十分です。授業や部活動、コミュニケーションなど、
  学生生活でしっかり学んでください。

●高校時代にすべきこととして、次のようなことを挙げました。

 ・世界に関心を持ってください。
  いつもの集団での関わりだけでなく、他の集団と関わってください。
  少しずつでいいから自分の世界を広げることに挑戦してください。

 ・勉強すること。
  基礎知識は、ものごとを解決するために役に立ちます。
  知識がないと判断が難しい局面が、社会では必ず出てきます。

●自分が変わることを信じて欲しいと、次のようなメッセージをくれました。

 ・昨日よりも今の自分、そして10年後の自分。
  現在よりもどれだけ変化するか、その変化量を自分軸で意識して欲しい。
  自分軸とは自分の信念や価値観と言い換えることができます。

 ・いきなり10年後の自分軸を見つけることは難しいので、
  今は、勉強や部活動に一生懸命に取り組むべきです。
  そうすることで自分軸が少しずつ変わっていき、10年先の自分軸を見つけることができます。

●そして、向畑さんの自分軸として、起業した思いを次のように語ってくれました。

 ・世界に目を向けて世界の状況を知れば、自分さえよければという狭い視野ではいられない。
  だから、「社会をよくしたい」という思いで起業した。
  まだまだ満足していない。社会をよくするための努力はこれからも続けていく。

と話して講演を終えました。関心のある人は「向畑憲良 ブログ」で検索してください。
講演の内容が挙げられています。(https://note.com/muka_ms2004/n/n6e4ea5cafc79

 向畑さんの話にあった、高校で学ぶことについて、私もそう思いました。経験から学ぶことは大切です。しかし経験から学ぶことができるのは、狭く限定的なものです。身近な問題に対応するだけであれば、自分の経験だけで大丈夫かもしれません。しかし、新しい世界に飛び込んだ時や、全く新しい問題に対応する場合には、自分の経験だけでは対応できません。やはり、学校での学びは必要となります。授業などから学ぶ内容は、すぐには役に立たないことが多いのかもしれませんが、学んでいる内容は、先人たちの思考や研究を通して得られたものであり、それを学ぶことによって、皆さん方は「新しい視点を手に入れる」ことになります。その視点をもって、新しい世界で活躍できるのです。

 明日から冬休みです、3年生は間近に迫った共通テスト、その後の私立大学の試験や、国公立大学の個別試験に向けて、待ったなしです。そして、現在行っている演習は学んだことの再確認です。高校での学びの総決算として、しっかりと取り組んでください。

 1年生は、学習支援アプリを使って、学習時間の確認をすると聞きました。2年生は、各自に任されていると思いますが、自分の行動を振り返り、記録することは重要です。なんとなく1日を過ごすのではなく、振り返りをしながら、今日できたこと、できなかったことは何か、明日は何をすべきなのか、見通しを持った生活を送ってください。

 最後にプライベートなことから話します。私は一旦、地元宮崎県で就職しましたが、香川県に来ることになり、家族と会うことは少なくなりました。30歳を過ぎた頃から、家族との時間をもっと大切にすればよかったなどと思ったりします。皆さん方の中にも、ゆくゆくは県外で就職する人も多いのではないかと思います。県外で働くようになると、今、皆さんと一緒に暮らしている人、親、祖父母など、あなたたちの生活を支えている人と、ゆっくりと過ごす時間は、ほとんどなくなってしまいます。この冬休み、大掃除を手伝うなどして、家族との時間を大切に過ごしてください。3年生も、気分転換を兼ねて少しでもいいですから、家の手伝いをしてください。

 それでは、いい冬休みにしてください。以上で式辞を終えます。

2201003 10月全校集会(校長室から)

2022年10月3日 17時26分

10月全校集会講話

 ちょうど1年の折り返し点となりました。ここまでを振り返って、後半の過ごし方を考えて欲しいところです。今日はそのヒントとなることを話します。

 この半年間、皆さん方には具体の場面がわかるような話、皆さん方の生活に結びつくような話を主にしてきました。今回は、抽象的な話をします。頑張ってわかりやすく話をしますから、しっかりと聴いてください。

 皆さんは生きていくなかで、さまざまな場面で決断や判断が必要となります。生きることは、判断の積み重ねで、その結果が今の人生となっています。そして、これからどのような判断をしていくかで、今後の人生を決めていくことになります。

 そこでちょっと考えてみてください。さまざまな場面で判断するときに、何をもとに判断していますか。効率(こっちの方が楽だとか、有利だから)、まわりの多くの人がそうしているから、親が言うからなどで、判断をしている人もいるのではないでしょうか。そのような判断では、一貫性がなく、いきあたりばったりの判断になってしまい、後で後悔することもあるかもしれません。そこで、自分なりの判断基準を持てば、迷ったときにはそこに立ち返り判断することができます。

 今日は、稲盛和夫氏の考え方を紹介します。稲盛氏は、半導体や太陽電池などの製造で有名な京セラという企業を創業し、後に通信事業にも乗り出し、auをブランドとするKDDIも創業し、50年以上、経済界に大きな影響を与えた人物です。また、稲盛氏はしっかりとしたものの考え方を持ち、会社経営にあたったので、その考え方に惹かれ、若手経営者が教えを請いに集うようになり、多くの経営者にも影響を与えました。稲盛氏は8月末にお亡くなりになりました。ご逝去のニュースで、稲盛氏の考え方が再注目され、2004年の初版ながら稲盛氏の著書『生き方』は宮脇書店の週間ランキング(9月15日~21日)で4位にランクインしていました。

 稲盛氏の考え方を端的に表しているのは、人生や仕事の結果は、考え方×熱意×能力 によって得られる。というところです。仕事などの結果は、考え方、熱意、能力の3つの要素のかけ算によって表すことができるというのです。足し算ではなくかけ算です。能力が高くても熱意がなければよい結果は得られません。逆に能力が高くなくても熱意が高ければ、能力が高い人よりもよい結果が得られることもあります。そして、3つの要素の中で最も重要なのが「考え方」です。考え方とは、理念とか哲学という言葉で表すことができる、心のあり方をさします。数値化した場合、能力と熱意は、0~100で表すことができます。一方、考え方は、マイナス100~プラス100で表します。つまり、能力と熱意にあふれていても、考え方が間違っていると、結果はマイナスになってしまうのです。では、プラスとなる考え方にはどのようものがあるのかというと、思いやり、優しい気持ち、努力を惜しまないこと、みんなと一緒にやっていこうとすること、利己的でないことなどをあげています。これらはあたりまえの道徳です。ただ、それを頭で理解するだけでなく、常に実践し、体にしみこませることで、考え方となっていくと説いています。わかっているだけで実行できないことは、その人の考え方とは言えないのです。

 この公式を持つに至った経緯には、稲盛氏の挫折の多い人生経験があります。中学受験に失敗、その直後に結核にかかります。大学受験にも失敗、就職活動もうまくいかず、自分の不幸を呪い、ヤクザになろうと思ったこともあるようです。ようやく、小さな碍子製造メーカーに就職します。いつつぶれてもおかしくない会社で、同期入社の仲間は次々と辞めて、稲盛氏のみが残されてしまいます。そこで吹っ切れて、自分の運命を呪うことをやめて、前向きにやってみようと研究開発をはじめた。するとよい結果が出て、さらに前向きになって、ますます仕事に熱中し、さらによい結果が生まれる好循環が生まれてきた。考え方を変えることで、悪い循環をたって、よい循環が生まれだした。この経験によって、稲盛氏は、人生は自分の考え方で良くも悪くもできるという境地に至ります。

 稲盛氏はこうも言っています。原理原則に基づいた考え方に従って生きることは、物事を成功に導き、人生に大きな実りをもたらすが、それは楽な道とは限らない。己を律することで苦しみを伴うこともあるからです。しかし、長い目で見れば確固たる考え方に基づいて起こした行動は、決して損にはならない。一時的には損に見えても、やがて必ず利になって返ってくるし、大きく道を誤ることもありません。その場限りで見れば損をしているが、それでも守るべき考え方、苦を承知で引き受けられる覚悟、それが自分の中にあるかどうかが、成功できるかどうかの分かれ道となっていると語っています。

 「苦を承知で引き受けられる覚悟」、これを皆さん方の身近な言葉に言い換えると「パティマトス 英知は苦難を通じてきたる」です。坂高生の大半は、道徳心がある程度、身についているように思われます。ただ、その場限りで見れば損をしているが、それでも実行しようとする覚悟「パティマトス」は、まだまだ備わっていないようです。ここにたどり着くには、まだ時間がかかるのかもしれません。稲盛氏にしても、2学期の始業式で紹介したファミリーマート元社長の澤田貴司氏も、高校生のころには、うまくいかず、苦しい思いをしていました。

 まずは一つ一つの行動から変えていきませんか。その時に、目の前の損得勘定ではなく、正しいと思ったこと実行することを心がけてみましょう。そうした判断の積み重ねによる行動が増えてくれば、よりよい「考え方」は、皆さん方の中にしっかりと定着し、人生がより良いものになると信じています。

 稲盛氏の著書「一日一言(いちげん)」を図書室で購入してもらいました。私が話したこと以外、たくさん稲盛氏の考えが記されています。関心を持った人は是非読んでください。

220901 2学期始業式(校長室から)

2022年9月1日 12時47分

令和4年度二学期始業式講話(放送による)

                         R04.09.01

 みなさんおはようございます。

 夏季休業中の約40日間、どのように過ごしましたか。私は学校以外で仕事をする機会がありました。その中で特に印象に残っていることから皆さんに話をします。1つ目は香川県も会場となったインターハイ、2つ目は東京で開催された全国高等学校総合文化祭、そして3つ目が石川県の金沢市で開催されたPTA活動の全国大会です。

1つ目のインターハイについては、出場した生徒の活躍もうれしかったのですが、競技を支える裏方として多くの生徒、先生方が、バスケットボール、バレーボール、カヌー、登山、新体操の大会を支えてくれました。私が参加したカヌー競技では、出場選手、応援の家族がとても満足した様子でした。全国のカヌー競技の会長さんも、こんなに運営がスムーズな大会は珍しいと、運営にあたった方々をねぎらっていました。カヌー競技では、高校生と教員の競技役員に加えて、香川県カヌー協会の皆さんが大会運営にあたっていました。カヌー協会の皆さんは大人でご自身の仕事もありますが、インターハイを成功させるため、6日間も自分の仕事を休んで大会運営にあたってくれました。しかもカヌー協会のメンバーの大半はカヌーの経験がなく、子どもがカヌー部に入部したことがきっかけでカヌー協会のメンバーとなり、子どもが卒業した後も、今回のインターハイだけでなく、県総体や県新人大会、国体予選など、カヌー部が出場するすべての大会を支えてくれています。それぞれの部活動でも、部活動の顧問の先生以外に、大会運営を支えている人たちがいると思います。このようにボランティアとして動いてくれる人がいて、社会活動はうまくいっていることを再確認しました。皆さん方高校生も社会を支える人材として期待されています。学校へは、さぬき子どもの国や県立ミュージアム、坂出市社会福祉協議会、そして子育て支援施設などでのボランティア活動募集の案内が来ます。この夏は感染症罹患者が増えたため、子育て支援施設でのボランティア活動が中止したことは残念に思います。しかし、これからも社会の出来事に関心を持って、ちょっと気になることがあれば、自分にできることはないかという意識を持ち、可能であれば行動してみてください。

2つ目は全国高等学校総合文化祭についてです。今回は総合開会式、パレードなどを見てきました。それは令和7年度に、香川県で全国高等学校総合文化祭が開催されるから、その準備のためです。令和7年度ですから、次に入学した1年生が3年生になる時に開催される大会で、皆さん方に直接の関係はありません。ただ、もう準備が始まっています。1学期にはスローガンの募集がありました。本校生徒の作品ではありませんが、スローガンは「讃岐に咲は才の花たち」に決定しましたし、大会ポスターの募集が始まっています。そして、東京大会などを参考に香川大会をどのような大会にするのか検討も始まっています。このように、先人の取り組みを参考にし、積み重ねていくことから伝統は築かれます。学校も皆さん方の生活の積み重ねが、坂出高校の伝統となっていきます。後輩は先輩がやってきたことを参考としながら高校生活を送っています。2学期であれば次のようなことがあります。3年生がクラスの仲間たちと切磋琢磨しながら受験勉強に取り組む姿、2年生がクラスで団結して文化祭に取り組んでいる姿や文武両道を実現させようと努力する姿は、下級生に大きな影響を与えます。今までの先輩方も実現してきた坂高生としてのあるべき姿、今年も積み重ねてください。

3つ目は、PTA活動の全国大会についてです。大会で、ファミリーマート元社長の澤田貴司氏の講演を聞きました。澤田氏はユニクロに入社しフリースの開発にも関わり、その後ファミリーマートの社長に就任、サークルKサンクスとの統合を実現させ、ファミリーマートを業界第2位のコンビニに育て上げた方です。澤田氏は、「自分がやりたいことをやる」という信念を持つに至り、ファミリーマートの社長時代には、「客のためそして加盟店のためになっているか」という視点から正しいことは何なのか判断し、「自分がやる」と決断します。そして、自分がやりたいことをやるためには、周囲の理解と協力が必要ですから、自分の考えを周囲に伝えることにも力を入れたそうです。高校では部活動を途中でやめ、なにをするでもない中途半端な生活を送ったのですが、浪人生活を経て、大学でアメリカンフットボール部のキャプテンを務めたこと、最初に入社した総合商社、そしてユニクロでの経験などから「やりたいことをやる」という信念を持つに至ったように、話を聞いて感じました。高校生の皆さんに急にそんなことを要求しても難しいかもしれませんが、「まわりのせい、人のせい」ではなく、「自分なりの明確な考えを持ち、失敗しても成功しても自分のせい、だから自分のやりたいことをやる」という覚悟が持てるようになって欲しいです。特に3年生は実際の進路、1年生は文系と理系の選択について決めていく必要があります。その時に「親が言うから」ではなく、「自分はこうしたい」と言えるようになって欲しいのです。

最後に、学業に全力を注ぐことは当然として、「あいさつ」「遅刻をしない」「掃除をする」といった社会の一員として必要なマナーの徹底、そして、学校生活の中で何かに主体的に取り組むこと、これを意識して今学期も学校生活を送ってください。私たち教職員も全力で応援します。まずは、坂高祭を自分たちの力で成功させてください。

あいさつについては、学校周辺の人から、坂高生がよくあいさつをしてくれてうれしいとのお褒めの言葉をいただきます。坂出高校を応援してくれる人が増えることは、うれしいことです。

以上で、式辞を終わります。

2207201学期終業式(校長室から)

2022年7月20日 14時47分
1学期終業式式辞(校内放送による)

みなさん、おはようございます。

学校生活に全力を注ぎながらも、新型コロナウイルス感染症対策にくわえて、梅雨が早く明けたことにより、渇水対策、熱中症対策と、多くのことに気遣いしながらの1学期だったのではないでしょうか。

さて、終業式を迎えるにあたり、自分自身が頑張ったこと、出来ていなかったことなど、各自でしっかりと振り返りをしてください。始業式で、皆さん方に求めることとして、社会の一員として生活するために当然必要とされるマナーである「あいさつ」「遅刻しない」「掃除をする」こと、そして、学校生活の中で、何かに主体的に取り組むことにつて、しっかりとやって欲しいと話をしました。現時点でどうでしょうか。振り返りをすることは大切です。その節目として終業式があります。

私も、1学期の振り返りをします。うれしかったことが多かったので、そのいくつかを紹介します。

●地域の人から感謝されたこと(ソフトテニス女子の部員が自転車で転倒して出血しているお年寄りを助けてくれました。また7月にも音楽科3年生がお年寄りを助けてくれました)学校にお礼の連絡があったもの以外にも、きっと他にも、このようなことをしてくれているのだと思います。

●ボランティア活動や国際交流の校外での活動を呼びかけたら、多くの生徒が手を上げたこと。

●インターハイの運営のためにも多くの生徒が協力してくれること。高校運動部の最高の舞台を支えてくれて、ありがとうございます。

●あいさつをしてくれる生徒が増えたこと。みんなと元気にあいさつを交わすことで、私はさらに元気になれます。

●部活動では、結果だけでなく、みんなの頑張っている姿をみることができたこと。

●負けてはしまいましたが、野球応援で多くの生徒が一緒に喜びを分かち合うことが出来たこと。感染症対策で一堂に会して活動する機会が減っています。それだけにみんなとメガホンをたたいて応援できて、私はうれしかったです。

明日から夏休みです。現在はエアコンが整備され、夏休みを短くすることは可能なのかもしれません。しかし、夏休みを40日間とる学校がほとんどです。それはなぜか。皆さん方の自主性を育てたいからです。ゼミや部活動があるとはいえ、かなりの時間の過ごし方を皆さん方に任せます。

3年生はやるべきことは当然わかっていることと思います。6月のマーク模試の結果を見ましたが、自分の志望校に手が届かない人もいました。しかし、それは、県総体が終わった直後の模試での判断です。この夏休みで、どれだけやったかで大きく変わります。学習の成果はすぐには現れませんが、秋には成果が現れてきます。それを信じて、この夏はとことん勉強してください。また、部活動を続けている皆さん、まさに文武両道を実現して欲しいところです。

1年生と2年生ですが、学校が出す課題をすることは当然として、残りの時間をどう使うのかが重要です。1学期の学習で不十分であったところをやり直すことや、さらに力を付けるための学習に加えて、部活動、文化祭の準備と、やることはたくさんあります。自分は何をすべきなのか、しっかりと考えておいてください。そして、1~2年生には、もう一つやって欲しいことがあります。総合的な探究の時間で取り組んでいる内容(2年生なら自分たちが調べて気になったこと、1年生なら職業について)、とことん調べてみてください。必要であれば、実際の会社などに出向いて調べてください。学校での学習、友達同士から入ってくる情報以外の、実際の社会の情報にふれて欲しいのです。

 先日、学校評議員会が開かれました。これは坂出高校を支援してくれる外部の有識者(坂出市役所の職員、保育士、香川大学の先生、坂出商工会議所の役員)から構成され、本校の活動について報告し、助言をもらうための会議です。評議員さんから、生徒が実社会で学ぶことは大切で、高校で学ぶ意欲が高まることや、大学進学などでのミスマッチを防ぐことにもつながる大変意義があることだと、助言をいただきました。また、坂出高校の活動であれば、是非協力したいとおっしゃっていただけました。これは、本校の卒業生と皆さん方が築いてきた信頼のおかげです。

最後に、7月8日、参議院選挙の応援演説中に安倍元総理大臣が射殺されました。そのことについて話をします。容疑者の意図は言論を封じることではなかったようですが、選挙運動中に起きた蛮行で、民主主義の根幹を揺るがす出来事です。民主主義を十分に機能させるための重要な要素の一つが、言論の自由です。制限されることなく自分の考えを自由に発することができることです。言論の自由によって、多様な意見が発せられ、その多様な意見をもとに話し合い、答えを出していくことが、民主主義での、ものごとの決め方です。自分と異なる考えを暴力で封じたり、全く受け入れることがなかったりする状況は、健全な民主主義とは言えません。時間はかかりますが、多様な意見をもとに話し合い、答えを導き出すことが、社会の発展、住みやすい社会の形成に必要不可欠なことです。それが出来ることが、現代社会を生きる私たちに求められている力です。

皆さん方の日常生活、たとえば、部活動、文化祭の準備など、自分たちで考えて行動する機会がたくさんあります。そのような場面で、意見を言うことが尊重され、そこから納得する答えを導き出すことができる集団であって欲しいと思います。

それでは、9月に充実した表情の皆さん方に会えることを楽しみにしています。

220407入学式(校長室から)

2022年4月7日 12時00分
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式  辞

桜花爛漫となった本日、ここに、PTA会長 大林朋美 様のご臨席と、保護者の皆様のご列席を賜り、香川県立坂出高等学校 令和4年度入学式がこのように盛大に挙行できますことを、教職員一同を代表し心から御礼申し上げます。

只今、普通科230名、音楽科19名、合計249名の入学を許可しました。皆さん、入学おめでとう。心からお祝い申し上げます。

皆さんが入学した坂出高校は、大正6年、1917年に、香川県立坂出高等女学校として開校しました。戦後の昭和24年、高等学校再編成により現在の校名となり、男女共学の学校となりました。また、昭和42年には音楽科が設置され、現在の学校の形になりました。今年度、創立106年目を迎え、国内外の様々な分野で活躍する29000名を超える卒業生を輩出してきた伝統校です。そのような坂出高校の一員として、本日皆さんを迎えることができ、大変うれしく思っています。

さて、坂高生となった皆さんが、高校生活の指針として欲しい言葉があります。それは、坂出高校のモットーであり、校歌にも歌われている「高邁自主」という言葉です。「高邁」とは、「気高く高潔な、こころざし」という意味ですから、「高邁自主」とは、「高いこころざしを掲げ、自らの判断で自ら行動を起こす」姿を現します。坂高生はこの言葉を胸に、学業、部活動、学校行事などに向き合い、成果を挙げてきました。「高邁自主」が坂高生の精神、坂高スピリットと言えます。

 「高邁自主」を実践するうえで、大切となる心構えが「パティマトス」です。

「パティマトス」とは、正門に入って正面にある石組みに刻まれた言葉です。今から57年前に、創立50周年を記念して、当時の校長が本校で学ぶ生徒に贈った言葉です。「パティマトス」はギリシア語で、「英知は苦難を通じて来たる」という意味です。つまり、楽しいことばかりではなく、つらいことやしんどいことに向き合って、高い志は実現できるのです。「高邁自主」だけでなく、「パティマトス」も心にとどめ、高校生活を送ってください。

現代社会は、情報通信技術の発展により、社会変化のスピードが急激に早まりました。さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大やロシアのウクライナ侵攻など、私たちが予想しなかったことが起き、その対応に苦慮しています。新たな生じた問題に対して解決策を考え、実行する力が求められる時代となっています。

具体的には、自らの問題として、社会の様々な問題に向き合い、解決に向けて他者と協力して粘り強く取り組んでいく力です。この力は、「高邁自主」を基盤においた本校の教育活動によって培うことができると確信しています。皆さんが、学業、部活動、学校行事や生徒会活動に十分に励み、社会で活躍できる人材に成長することを望んでいます。

保護者の皆様、お子様の入学、おめでとうございます。民法の改正により、18歳になると、法律的には、成人、大人として扱われ、自分で判断し行動することが求められるようになります。それだけに、高校3年間でお子様に自立する力をつけさせることが求められます。ご家庭においては、べったりや突き放しではなく、少しの距離を置くことで、お子様の様子を、時にあたたかく、時に毅然と見守ってください。また、家庭と学校が十分に連絡を取り合い、お子様の教育を進めてまいりたいと思いますので、ご理解とご支援を賜りますよう、お願いいたします。

最後に、新入生の皆さんが今日の感激と感謝を忘れることなく、学業に、また人間形成に大いに励み、充実した素晴らしい学校生活を送ることができるよう期待し、式辞とします。

令和4年4月7日

香川県立坂出高等学校長 真下拓也

校長室から(H30~R03)

平成30年度2月全校集会講話(2月1日(金))

2022年3月21日 09時09分

 普通、カレンダーでは1年は12の月に分けられているが、1年を24等分する24節季という季節の表し方がある。そのうち、多くの皆さんになじみがあるのは、「夏至」「冬至」「春分」「秋分」の「二至二分」というものと、「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の「四立」(しりゅう)ではないかと思う。 そのほかにも、「冬ごもり中の虫が目を覚まし姿を現す」日とされる「啓蟄」(3月上旬)や、「穀物を育てる雨が降り、芽を出させる」日とされる「穀雨」(4月下旬)、「寒さが最も厳しい」とされる「大寒」(1月下旬)などは耳にしたことがあるのではないかと思う。

 今日(2月1日)、最も近いのはそのうちの「立春」である。今年のカレンダーでは、2月4日が立春に当たる。「立春」の意味というのは、読んで字のごとく「春の始まりであり、春の気始めて立つ」ということである。「この真冬に」と思う人が多いであろうが、この日から、いや今日から春が始まったという気持ちを持ってもらいたい。

 今日から3年生が「家庭学習」の期間に入った。よく3学期というのは「1つ上の学年の0学期」というようなことが言われるが、それはそういう気構えを持って学校生活を送りなさいという意味である。

 2年生の皆さんにあっては、ちょうど今日から1年後には3年生と同じく「家庭学習」が始まる。ということは、高校生活は実質的に残り1年という意味である。1年生の皆さんは2年生になるということで、後輩ができる。勉強にも部活動にも、また文化祭のような学校行事にも中心となって頑張る高校生活の中核となる学年を迎える。そういうこときちんと意識した生活を送ることを希望する。

 さて、半年近く前の話になるが、校長協会の方からちょっとしたアンケートを依頼され、あるクラスに回答をお願いした。そのアンケート自体は、本校にとって大きな意味を持つものではなかったのだが、パソコンを使って回答の集計処理をして驚いた。それは2つの事柄について。1つは、「あなたの集会での態度はどうですか。」という問に対して、「よく話を聞いている」という答えが4割、後の6割は「静かにしているが、あまりよく聞いていない」というものであった。これには正直、がっかりした。しかし、そのことを言ったある先生から、「じゃあ、先生は高校生の時、校長先生が何を言うかなと、期待していましたか?」と言われた。絶句であった。しかし、この問いは校長の講話だけについて尋ねているものではなく、生徒指導や進路指導の先生方の話、ひいては授業中の先生方の話にも通じているものと考えて「ぞっ」とした。皆さんはそれほどまでに、「人の話を聞いていない」ということか。

 もう一つは、「公共の場(バス・電車等の車内・路上等)での飲食についてどう思いますか。」という問に対して、4割の人が「迷惑な行為だと思うのですべきではない」と答えたのに対して、6割の人が「後片付けをきちんとすればしてもよい」と回答した。断言しておくが、これはしてはいけないことである。私は、若者の文化、若者特有の行動パターンや言葉遣い等をすべて否定するつもりはないが、この行為は明らかに「迷惑行為」である。このアンケートをお願いしたクラスでは、「あなたがルールを守る要因は何ですか」との問に、75%の人が「法律や校則で決まっているから」と回答したが、この行為は、6割の人が回答した「守ることが当然」の行為だからなのである。

 皆さんは、「高校には「道徳」の時間がないから、高校では道徳は教えないんでしょ。」と、思っている人がいるかもしれない。しかし、それは大きな間違いである。高校では、道徳の時間はないけれども、「教育活動全般の中で教える」と規定されている。私は、高校というのは、人生で最後の「教育機関」であると考えている。大学等ではなかなかそこまで面倒を見てくれない。行動の仕方まで注意してくれない。このアンケート結果を参考に、先生方とともに皆さんの今後の指導の在り方を考えていかなくてはならないと考えている。非常に残念な結果であったと認識している。

 皆さんの人生の先輩である先生方(先生というのは本来、先に生まれた人という意味だそうである。)、そして言うまでもないが保護者の言うことをよく聴いて「2年生0学期」「3年生0学期」のスタートとしていただきたい。

平成30年度3学期始業式講話(1月8日(火))

2022年3月21日 09時08分

   皆さん、あけましておめでとう。今年も皆さんが、まずは事故なく健康で、様々な分野で活躍してくれることを期待する。  さて、2学期の終業式で話したこと。「変わる」ということ。どのくらいの人「変わる」ために冬休みを利用できただろうか。急には変革できなかった人の方が多いとは思うが、「変わる」ということは大切なこと。今後とも心に留めておいてほしい。

 今日は3学期始業式にあたり、プロ野球の北海道日本ハムファイターズの監督である栗山英樹さんの著書『栗山魂』から話をする。私としては、栗山さんは同学年で、昭和36年生まれの57歳。しかも、私の中学時代の同じクラスの友だちと東京学芸大学の同級生であるということから、かねてから興味を持っていた方。2017年に出版された『栗山魂』(本校図書室にあり)を読み、彼の生き方、あるいは彼の考え方・言葉が皆さんの参考になると思い、年頭の講話に当たりこの話をすることにした。

 まずは栗山英樹さんという人について。

 小学校時代は自分のお父さんが監督を務める少年野球チームで活躍。エースで4番という絵に描いたようなエリート野球少年。中学に入っても野球を続けるつもりだった。しかし、進学した中学校の野球部は素人の監督率いるレクリエーションのような部。そこで、その学校で強く、当時人気もあったバレーボール部に入部。ところが、途中でけがのためバレーボールを断念。今度は、学校外の硬式野球のチームに入って活躍。 甲子園に出場したいと思っていたので、高校は昨年巨人の監督になった原 辰徳 氏が活躍した名門、東海大相模高校に進学しようと考えた。しかし、上背もない栗山さんが野球人としてのみ生きることを両親に反対され、創価高校へ入学。その学校は東大にも合格者がいる進学校だったようである。また、ちょうど野球にも力を入れ始めていた。 高校ではまずまずの成績を残せた。そこで役立ったのはバレーボール部での経験。跳躍や屈伸の動き、また、身体を投げ出してのダイビングキャッチなどが生かされた。しかし結局、甲子園には出場できず。 ならば、大学は「東京6大学」の1つである明治大学進学を心に決める。しかし、東京学芸大学にも合格し、「生涯野球に携われる指導者=部活動顧問」になるよう両親に説得され、兄も通っていた東京学芸大学に進学。身長も160cm足らず。そこでいったんは教師を目指して頑張ろうという気になったものの、プロへの未練が完全には捨てきれず、教員採用試験を受験せず。  たまたま大学の練習を見に来ていた野球解説者(佐々木進氏=「プロ野球ニュース」のキャスター)の口添えで、西武ライオンズとヤクルトスワローズの入団試験を受けるところまでこぎつけた。そして最終的には、ヤクルトが「面倒を見よう。」と言ってくれた。 「いきなり1軍では無理でも、2軍でならなんとかやれるだろう。」と思っていた考えはあっさり打ち砕かれる。それほど「プロ」の世界は人材が豊富であるということ。そんなことで、栗山さんは、「イップス」という、精神的なものが原因でスポーツの動作に支障をきたす運動障害に陥った。それでも当時の2軍監督が猛特訓してくれたおかげもあり何とか蘇り、ついに1軍に上がった。そこでさらに、若松勉さんという当時の名バッターからスイッチヒッターへの転向をすすめられ、それにも挑戦して成し遂げた。 ところが今度は、難病である「メニエール病」にかかってしまう。この病気は、原因不明のめまいに襲われるそうで、ひどい時には3日に1度、2時間以上も続いたそうである。それでもあきらめることなく練習に励み、入団3年目に1軍に定着した。 そして29歳、プロ野球選手としての実働はわずか9年で現役を引退し、その後は野球解説者に転身した。引退してからはコーチも務めていない、そんな栗山さんが、50歳の時に現在のチームの監督に就いた。プロ野球選手をやめてから21年後のことであった。 監督就任5年目の2016年には途中までの11.5ゲームという大差を大逆転して、パリーグ制覇、そして日本シリーズ制覇を成し遂げた。日本ハムファイターズには、皆さんも知ってのとおり、大谷翔平がいた。高校卒業と同時にメジャーリーグ入りを表明していた大谷選手をドラフト会議で1位指名し、投打の「二刀流」で育成する方針を打ち出して、見事成功に導き、メジャーリーグへと送り出したのも栗山監督である。

 栗山氏は著書の中で、たくさん素晴らしいこと述べているが、その中から2つだけ紹介したい。

 1 「なりたい」と「なる」は、似ているけれども違うものです。「なりたい」という気持ちには、うまくいかないと弱い気持ちが入り込んできます。「ああ、やっぱり僕には無理かなあ」というものです。でも、「なる」という気持ちは、簡単にはぐらつきません。失敗したらもっと頑張らなきゃいけないと自分自身を奮い立たせるし、別の考え方を考えるはずです。両親や先生、監督や友だちといった周りの人たちにアドバイスを求めたりもするでしょう。それが大事なのです。大きな志を抱いていれば、周りの人たちは必ず助けてくれます。夢を一緒に追いかけてくれます。それがまた、「なる」という気持ちをたくましくしていく。夢に向かって突破口が開けてくる。あきらめなければどこかに道があるのです。

 2 中学時代の僕は、プロ野球選手に「なりたい」と思っていました。でも大阪桐蔭高校からドラフト1位でファイターズに入団した中田翔に話を聞くと、「中学時代から俺はプロ野球の選手になると信じていました」と言うんです。大谷翔平は高校生で「プロ野球選手」はもちろんのこと、「世界一の選手になる」と思っていたと。だから彼は、高校卒業と同時にメジャーリーグへ行こうと真剣に考えた。「なりたい」と「なる」には、似ているけれど決して交わらない違いがあるのです。

 もっと詳しく知りたい皆さんは、図書室で本を借りて読んでみてほしい。 年頭に当たり、皆さんの志をさらに高めてもらうきっかけになればと思い、今日はこの話をした。

平成30年度2学期終業式講話(12月21日(金))

2022年3月21日 09時07分

 平成最後の年末が近づいている。平成という時代は、私にとっては教員生活の中核をなす時代だったわけで、この元号があと数か月で終わるということには万感の思いがある。 さて、「歳月人を待たず」の格言どおり、私たちがどのように日々を過ごそうが、月日は無慈悲に過ぎていくもので、過去を振り返った時に「あの時のこうしておけばよかった。」とはだれもが思うことである。私もそれは例外ではない。 しかし、今から話す二つの点だけはこれまで生きてきた中で後悔がないことである。

 一つ目は高校時代の過ごし方。小学生のころから、地元に帰って仕事をしたいと考えていた私は、小学校時代の担任の先生にあこがれて、「小学校の先生になりたい。」と思っていた。しかし、中学校時代の終わり頃までは、勉強にも部活動にも一生懸命になることもなく、日々漫然と過ごしていた。中学3年生になって、いよいよ高校受検が近づいてきたとき、次のように考え始めた。

 「やはり将来は教員になりたい。そのためには、教員免許状を取得しなければならないので、大学に行く必要がある。うちの家庭状況からいって、私立大学はありえないから、国立大学に行かなくてはならない。そのためには小豆島高校のトップクラス(選抜クラス)に入らなければならない。」と。つまり、将来の鳴りたい自分を描いて、そこからが逆算して「今」何をなすべきか、というように考えたわけである。

それが中学3年のいつの時期だったかははっきりとは覚えていないが、夏休みにはまだ火がついていなかった。おそらくは秋ごろだったのではないかと思う。はっきり言って、高校受検は3~4か月一生懸命勉強すれば、かなり結果は変わって来る。私の場合も、平日3~4時間程度の家庭学習を習慣化してから、面白いように成績が伸び、小豆島高校のトップクラスに入ることができた。

 いざ入ってみると、当時小豆島島内3つの中学校から秀才がたくさん集まっており、気後れした。当時は、小豆島から高松高校に出るのは、土庄中学校の上位5名程度だったはずである。したがって、当時の小豆島高校には非常に優秀な生徒がおり、私の2学年上では、現役で京都大学薬学部、大阪大学工学部・基礎工学部(双子での合格で新聞に載った)、1学年上では岡山大学医学部医学科に合格者が出ていたた。神戸や広島、岡山といったところではあまり記憶がないほどである。

 中学後半から火が付いた私の学習への取り組みは、高校入学後も変わることなく、多くの秀才と肩を並べてやっていけるように頑張った。具体的には7月の坂高新聞にも書いたとおりである。その甲斐あって、第1志望校に合格した。現在私がこの場にいて皆さんに話をしているのは、高校時代の頑張りのおかげであると思っている。「江戸時代のように、身分が固定化されていた時代ではない。勉強で人生は変わる。」というのが私の信念の一つである。特に普通科の皆さん、皆さんは基本的には勉強のほかに身を立てる術はないのである。本校普通科に来たというのはそういう意味であることを、改めて確認しておきたい。

 二つ目。これは勉強とは全然違う話である。私は、かつてはヘビースモーカーだった。1日最低でも1箱、多ければ1箱半(30本)くらいタバコを吸っていた。平成15年4月2日、この日付まではっきりと覚えているが、この日突然タバコをやめた。

 特に病気をしたわけではない。きっかけは、当時勤務していた学校でも「分煙化」がなされており、タバコを吸うためには別の小部屋に移動する時間が必要だった。勤務時間中に「15本吸う」場合、移動時間も含めれば1日40分から45分程度の時間を、タバコを吸うために充てていたことになる。今考えると、これは地方公務員法の「職務に専念する義務」違反ではないかと思う。実際にこれが話題になっている自治体もあるようである。

 とにかく、今は「タバコをやめて本当に良かった。」と思っている。それはお金だけの問題でなく、家族を含め他人への迷惑をかけることがなくなったからというのが一番の理由である。また、現在では喫煙は非常に制限された場所でしか認められなくなってきていることも、そう思う理由である。ただ、タバコをやめることは本当に苦しかった。タバコに含まれている成分であるニコチンの含まれたガムというのがあるのだが、それを何箱も噛んだ。当時の額で2万円ほども費やしたと記憶している。

 今話した「勉強」と「タバコ」。私の場合にはそれまでの生活態度や習慣を「大きく変えた」わけだが、それでも「今日までしてきたことを明日から急に」というのは現実としては難しく、普通は「助走期間」というのか「準備期間」が必要なものだろうと思う。

 私の場合にも、勉強を必死で始める前にも、タバコをやめる前にも、やはり「自分は本当にこれでよいのか?」という疑問を相当の期間、持ち続けていた。11月の全校集会の折に「三省」ということについて話した。やはり我が身を振り返るというのは非常に大切なことである。皆さんにはこの冬休みに、ぜひこれまでの自分の「在りよう」について今一度振り返り、変えなければならないことを変えるための準備期間としてほしい。そして3学期から何かしらの自己変革が生じたというようにしていただきたい。余り学校に来ないからこそできることではないかと思う。

 そして、「変わる」ことこそが生き抜くこと。『進化論』で有名なチャールズ・ダーウィンの言葉。「生き残るものは、強いものではない。変化に柔軟に対応できるものである。」生き残る、すなわちこれからの社会で活躍する、もっと普通の表現を使えばこれからの社会で普通に生活していくためには、皆さんも変化し続けなければならない。

 さて、最後になったが、3年生の皆さん。大部分の人が「大学入学センター試験」を控えてラストスパートの時期である。担任の先生方から聞いているとは思うが、いわゆる「現役曲線」。最終の全国模擬試験が終わった11月からまだまだ学力が伸びるのが現役生の強み。それをはかる模擬試験がないだけのこと。「現在も伸びている。そして、これからもまだまだ伸びる」ことを信じて、最後まであきらめることなく、自分で限界を決めることなく、体調に気を付けて頑張ってほしい。

 3学期始業式で、皆さんの元気な姿を見られることを期待している。

平成30年度11月全校集会講話(11月1日(木))

2022年3月21日 09時05分

 平成30年も残すところあと2か月となった。歳月は人がどのように過ごそうが、いつも「あっ」という間に過ぎてしまうもの。かねてから話しているが、この全校集会を一つの区切りとして、これまでの1か月を「反省」し、これからの生活、少し大げさかもしれないが、自分の在りように結び付けてほしい。 今「反省」という言葉を使ったが、「反省」というと、えてして「自分の過去について考察し、批判的な評価を加えること」という意味でよく使われるが、その前に「自分の行いをかえりみること」という意味がある。(「広辞苑」による。)私がいま皆さんに話しているのは、おもに後者の意味である。 皆さんは「三省」という言葉を知っているか。「三省」というのは、論語の第1章「学而第一」の中にある言葉である。それはこのようなものである。 「曾子曰く、吾れ日に吾が身を三省す。人の為に謀りて忠ならざるか。朋友と交わりて信ならざるか。習はざるを伝へしか」と。 いくつか解釈があるようだが、これを現代語訳すると、おおよそ次のようなものになる。「曾子(孔子の弟子)は言った。私は毎日何回も自分の行いについて反省している。人の相談相手になって、真心を尽くしていたか。友だちと付き合って、うそをついてないか。自分が十分に理解できていないことを、人に伝えたり教えたりしていないか。」出版社の三省堂という会社は、この言葉を社名にしたと聞く。我が身を振り返るというのは大切なこと。皆さんにも習慣化してもらいたい。  今日は、最初に2つの事柄について、皆さんをほめたい。  10月23日夕刻、一人のおばあさんが来校された。先日坂出駅付近で転倒したところを、本校3年生の女子生徒に助けてもらい、無事に列車に乗れたとのことでお礼に来られた。  もう一つも似たようなこと。先月の24日の朝、学校に電話があった。土曜日(おそらく10月20日)の夕方、犬を連れて散歩中に、本校の通用門付近で転倒。本校生と思われる高校生に助けてもらったのでお礼を言いたいとのこと。  昨年度も、このような電話があった。「坂出駅で自分の子どもが泣いて困っていたら、本校生が上手にあやしてくれて、助かった。」と。  皆さんのこのような行いは、先ほど述べた「三省」の、「人に真心を尽くしていたか」に相当する部分であり、今話した3件については、まさにこれを実践できたということであり、大変立派なことである。今後とも、自然とこのような行動ができる人であってもらいたいと願っている。  さて、今日皆さんに一緒に考えてもらいたいと思っていたのはここから。 このところ、テレビや新聞などで「カタカナ言葉(英語)」を見聞きすることが多くなったと実感している。特に、官僚や閣僚の答弁、ニュースの解説者などが多用しているように感じる。長年英語を教えてきた私が常々疑問に思うのは、「このような表現が、テレビの視聴者や新聞の読者に正しく伝わっているのだろうか」ということだ。  枚挙にいとまがないが、今から20の例を挙げるので、いくつ日本語に直せるか数えてほしい。

  1 アセスメント(査定・評価)
  2 インバウンド(訪日外国人旅行者)
  3 コンセンサス(合意)
  4 コンプライアンス(法令順守)
  5 ダイバーシティ(多様性)
  6 スペック(仕様)
  7 パブリックコメント(意見公募)
  8 ワーキンググループ(作業部会)
  9 アーカイブ(古文書)
  10 インセンティブ(動機づけ)
  11 エコノミスト(経済学者)
  12 ガバナンス(統治・管理)
  13 エビデンス(証拠)
  14 アカウンタビリティー(説明責任)
  15 アジェンダ(議題)
  16 コミット(約束)
  17 リスク(危険、危機)
  18 コラボ(協働)
  19 ペンディング(保留)
  20 サステナビリティ(持続可能性)

 さらには、「サブスクリプションモデル」(一定期間、継続的に受け取る商品やサービスに対して対価を払うことを意味する。「定額制」の料金形態がこのモデルである。例:月額3,000円払えばコーヒー店で一日一杯のコーヒーが飲める。)とか、「シェアリングエコノミー」(共有型経済:個人間の中古品売買)という表現も新聞等で見かける。 また、アルファベットの頭文字をとった、CEO(最高経営責任者)、IoT(物のインターネット)、iDeCo(個人型確定拠出年金)、NISA(小額投資非課税投資)などという表現も普通に使われるようになったという印象を持つ。 特定の分野の専門家同士でのやり取りにおいて、このようなカタカナ言葉が使われるのは構わない(世間に害はない)と思うが、テレビや新聞という「人に情報を伝える手段(これをメディアというのだが)」において、これらのカタカナ言葉を使うことはいかがなものか。 先月の全校集会でも話をしたが、コミュニケーションというのは意思疎通である。相手にきちんと伝わらないような言葉を使うことは、あってはならない、というか、それはコミュニケーションとはいえない。  皆さんには、しっかりとコミュニケーションができる人になってもらいたい、つまり、皆さんがコミュニケーションの発信者側に立った時には、できるだけこのような分かりにくいカタカナ言葉は使わないようにしてほしいものである。 しかし、とは言え、これらのわかりにくいカタカナ言葉が使われている現状は、今後もある程度は続くものと考えられる。それらのほとんどは、英語に由来している。英語できちんと意味が通じるものとそうでないものに分かれるのだが、コミュニケーションにおいて「受信者側」になるときには、英語を知っていることは、カタカナ言葉(英語)を理解するときには必須である。そういった意味でも、英語の勉強は不可欠である。大学入試は抜きにしても、である。 いつも英語の話になるが、現在は国(文部科学省)の方でも、今後到来が見込まれる「高度情報化社会(Society 5.0)」において、「文理融合」ということを1つのキーワードとして、これからの教育施策が考えられつつある。 英語だけでなく、高校で学ぶどの教科・科目もしっかり学び、「学びが浅かった・十分でなかった」がために、皆さんがこれから生きていかなければならない「高度情報化社会」の中で、取り残されることのないように、「学び」に対して高い意識を持っておいてほしい。  冒頭でも述べたが、平成30年の残り2か月。一日一日を大切に過ごしてもらいたい。

平成30年度10月全校集会講話(10月1日(月))

2022年3月21日 09時04分

 近頃、どうも「漢字が思い出せなくなった、書けなくなった。」ということを強く実感するようになった。その原因を考えるに、パソコンの普及というものを抜きにすることはできないと思う。  学校に始めてパソコンが入ったのは、(少なくとも自分自身の経験からでは)昭和59年12月であったと記憶している。(今年は「昭和」で言うと、昭和93年だから、34年も昔になってしまった。)当時、デスクトップ型のパソコンが仰々しく学校に入ってきた様子が今でも思い出される。ちなみに、ワードプロセッサー、今で言うワープロはパソコンではなく、ワープロ専用機で、当時70万円ほどするというのを聞いたことがある。何人かの先輩は持っていた。  それで、パソコンの話だが、その年の4月に教員になった頃には、どういう仕組みかいまだにわからないが、テープレコーダーのテープに記憶されたプログラムを、コンピュータらしきものに覚えこませ、それからデータの入力を行うという、現在から考えると想像もつかないような方法で成績処理を行っていた。  しかも、その入力したデータは保存できなかったらしく、私が一度、校内実力テストの成績入力の当番になった時、同僚の一人がコンピュータからコンセントにつながったケーブルを足でひっかけて抜いてしまい、200人ほどの3教科(国数英)の成績を一から打ち直したことを覚えている。

 近頃では、スマートフォンの登場(平成23年初期型?)によりさらにコンピュータが身近なものとなり、日常生活の中で「少しでも時間があればスマホをいじる」人が中高生をはじめとする若い世代だけでなく、大人世代にも及んでいるという記事を新聞で読んだ。  本校では、進路指導部を中心に「隙間時間を利用した学習」を呼び掛け、実際にその成果が卒業生の進路状況にも表れているところである。坂出高校では、携帯電話・スマートフォンは、電源を切ったうえで校内に持ち込みを認める、「許可制」をとっていることから、校内では「隙間時間を使ったスマホいじり」は決してないと考えているが、電車で登下校する皆さん。隙間時間をスマホに奪われてはいないだろうか。

 先に話した新聞記事の中では、60分以上の隙間時間・待ち時間があれば、「本を手に取る」という回答の方が多く、自分としては少し安堵した。

 現在、コンピュータは実に様々なところで-素人には想像さえつかないようなところで-使用されていると考えられるので、「コンピュータの使用をやめる」などという話はあまりにも非現実的なものであろう。したがって、私たちが心しておかなければならないのは、その利用の仕方であろう。高校である皆さんには、「コンピュータ(電子機器)を使わないでいい時には、それを使わない」ということを徹底して行ってほしいと願う。例えば、「電子辞書でなくて紙の辞書を使う」こと。これは私が英語を教えてきた経験から言うことであるが、国語の場合にも同様ではないかと考える。紙の辞書を引くことによって、その周辺にある単語が見える。調べた語の派生語がその周辺に掲載されている、というようなことがよくある。これは、電子辞書では得ることのできない「恩恵」である。  また、「Lineではなく、対面して話す」ことも重要である。コミュニケーションというのは、実は言葉によるものは非常に小さく、表情であったり、口調であったり、話す人の醸し出す雰囲気であったりと、言葉以外の要素が言葉以上の役割を果たすものである。Lineによる言葉は、何の感情もこもらない「ただの言葉(文字?)の羅列」に過ぎない。その言葉に真の意味を与えるためには、対面による話以外にはない。Lineによる言葉のやり取りを真のコミュニケーションと考えている人は多いと思う。私ははっきり、「それはコミュニケーションとは言えない。」と断言したい。繰り返しになるが、コミュニケーションというのは、「自分がどう思っているかということを相手に分かってもらうこと」が目的である。例えば、友達と前から約束していたことについて、「明日は、どこそこで、何時ね。」という確認程度ならLineでやり取りしても構わないと考える。自分の気持ちをLineという道具で文字にして送って、相手に理解してもらう、ということはあり得ない。また、皆さんが社会人になった時、上司に「今日は熱があるので休みます。」とLineで(電子メールも同様だが)送るなどということはあり得ない。私は今話していることがどの程度皆さんの共感を得ているかについて、大変不安である。「校長は何を言よるんや?」と思っている人がいてもらっては困る。すべての人の共感を得なければならない。なぜなら、「Lineによる言葉のやり取りがコミュニケーションである」と考える人が日本人の多数派になってしまうとき、「日本という国は崩壊するのではないか」という危機感さえ覚えるからである。

 これは私も皆さんにそんなに偉そうに言えないけれど、「手書きで済ませられるときには手書きする」ことをすすめたい。最初に言った「漢字が出てこない」というのは、まさにこれに尽きる。漢字は中国伝来ではあるが、日本人が大切にして後世に伝えなくてはならない最も貴重な文化の一つである。しかし、私も年賀状は手書きの一言を添えるだけである。それが自分自身の考え-本来年賀状は全て手書きすべきである-に対するささやかな言い訳である。なぜなら、ワープロ打ちしただけの年賀状は本気で見ることはないからである。また、近頃では「絵文字」というのが日常的に使われているようであるが、ともかく、自分で漢字を書くということが非常に重要な意味合いを持つものであると考える。

 私は、高校というのは皆さんが社会に出るにあたって、きちんとした教育を施す最後の砦であると自負して教育に当たってきた。この姿勢は最後まで貫くつもりである。大学は「教育機関」であるとともに「研究機関」であるため、皆さんの教育にどれほど力を入れているかどうかは大学によりまちまちだからである。皆さんのほぼ全員が進学する坂出高校であるから、本日はあえてこういう話をした。

平成30年度2学期始業式講話(9月3日(月))

2022年3月21日 09時02分

 暑さも少々和らいできたので、少し話をさせてもらう。 1学期終業式、異常な暑さのため、講話では一言「勉強しなさい。」と言った。実践できただろうか。3年生だけでなく、1年生2年生も同じ。夏休みは終わったが、今後とも学校生活の軸足は、常に学業に置くこと。

 夏休み中に目についた新聞記事を2件紹介する。

1 早稲田大学の入試改革

  30.8.1の朝日新聞朝刊に早稲田大学の2020年度入試における改革の記事が掲載されていた。  2020年度入試というのは、現在の1年生が受験することになる平成33年の入学試験を指すものである。その年から、現在行われている「大学入試センター試験」に代わって「大学入学共通テスト」が始まる。 特に英語では、共通テストを受験することに加えて、「英語検定」や「GTEC」などの民間の検定試験を受験することも義務化され、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能が、実際にどの程度身についているかということも大学入試の合否判定に加わるなど、大変大きな「変革」の年になる。  また、詳細は発表されていない部分も多く、現時点で断定的な言い方をすることは1年生の皆さんの不安を煽ることにもなりかねないが、大学への出願時に、「自分が学校や地域等でどのような活動を行ってきたのか」を申告するというようなことも、一般的になっていくことが予想されているようだ。  さて、話は早稲田大学。私立大学の雄として、その名前は日本のみならず世界にも知れ渡っており、香川県にも卒業生が多く活躍している。大変影響力のある大学である。  その早稲田大学が、2020年度の入試から、次のようなことを行うと発表した。 (1)政治経済学部は数学必須 (2)3つの学部(政治経済、国際教養、スポーツ科学)で「大学入学共通テスト」を課す (3)独自試験(いわゆる個別試験)では、日英の長文読解問題を出題  (1)について  ⇒ 数学の基礎がないと、大学の授業にはついていけない。経済だけでなく政治分野でも「統計」を使う授業が増えている。数学必須化で受験生は減るかもしれないが、必要な人材をとりたい。  (2)について  ⇒ 基礎学力を問い、その上で思考力や判断力を見たい。センターテストは良問が出ている。(それを引き継ぐ共通テストでもそうだろう。)  (3)について  ⇒ 英語力を重視する。(特に政治経済学部。)生きた英語学ぶ科目を必修化した。(教員1人に学生4人の授業。)  今日このような話をした理由。 ① 大学入試改革は急速に進んでいる。今の1年生からは大きく変わることが決定している。その移行措置で、現2年生への影響も考えられる。また、現2年生は1年間浪人した場合、もろに新しいシステムの下での入試にさらされることになる。入試に関する情報に敏感になること。特に、「大学入学共通テスト」(現、大学入試センターテスト)を受けるという意識は全員が持っておくこと。 ② 早稲田の政治経済学部が公表したように、「文系だから数学はいらない」というような短絡的な発想はもはや通用しない。高校で学ぶ教科・科目は社会人として必要とされる基礎力である。こういう意識をもって、日々の学習や自己の学力向上に努めてほしい。特に、2年生3年生。「いらない教科・科目」などという呼び方は言語道断であると認識すること。

2 東京医科大学の不正入試

 30.8.3の四国新聞朝刊の第1面(トップ記事)に目を疑うような見出しがあった。それは、「女子受験者を一律減点」~東京医大、入試で不正操作~というものだった。 記事はこう続いていた。東京医科大学が医学部医学科の一般入試で、年度ごとに決められた係数を掛け、女子受験者の得点を一律減点していたとみられる。女性は結婚や出産を機に職場を離れるケースが多いため、女子合格者を全体の3割前後に抑え、系列病院などの医師不足を回避する目的があったという。得点操作は2010年前後に始まっていたとみられ、2011年度入学者の試験以降、女子の合格率が男子の合格率を上回ることはなかった。 その数日後の新聞記事に、ある男性医師の話があった。「世間全体に、『男は仕事、女は家庭』という考え方が根強く、男はいつまで職場にいても責められないが、女性は仕事をしながら家事・育児をやるのが当たり前だというような風潮がある。そういった考え自体をただす必要がある。」私は、この男性医師の考え方が極めてまっとうな考え方であると考える。

 一方で、8月下旬のテレビニュースで、驚くべき内容が放送された。それは、このような男性医師中心の医学界全体を「仕方がない」と容認している女性医師が65%ほどもいることである。取材を受けた女性医師は、妊娠を機に、上司から職場のチームリーダーの職を、後輩の男性医師に譲るように言われたとのことであった。「大変悔しい」と言っていたその女性医師の涙が目に焼き付いている。

 それに関連して、私は以前から大変違和感を覚えている呼び方がある。それは、夫婦のお互いを指す呼び方。正しいとされているのは、「夫」と「妻」。ただし、「ツマ」というのは本来「添え物」という意味。「刺身のつま」というものがあり、刺身に添えられた大根を細く切ったものやシソの葉、わさびを指す。あくまで「添え物」という意味がいまだに女性に対して使われている。  憲法14条で「すべて国民は、法の下に平等であって、・・・性別によって差別されない」と規定され、さらには、男女共同参画社会基本法というのが、男女平等を推し進めるべく、1999年(平成11年)に施行された日本の法律。男女が互いに人権を尊重しつつ、能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現のために作られた。 このような法整備も進められてきた中での、この不正入試事件。特に坂出高校は、女子が圧倒的に多い学校。皆さんが進学し、就職し、結婚さらには出産して子育てを行うのもそう遠い先の話ではない。こういった出来事に憤慨し、自分の意見や生き方をしっかりと持ってほしい。

 まだ、残暑が残る中だが、まずは、文化祭準備をしっかりやり遂げ、地域の方々に101年目の坂出高校の姿を披露してほしい。