校長室から

校長室から(R04~R05)

240408校長退任式

2024年4月8日 17時00分

※本文は、ホームページ管理者が記載しております。

説明がありません

昨年度をもちまして、真下拓也校長先生がご退職されました。
教諭として教務主任のお仕事をされ、
教頭先生としての責務を果たされ、
再び校長先生として本校を導いてくださった真下校長先生は
まさに教員人生の大半を坂出高校に捧げてくださいました。

坂出高校に対する愛情は計り知れないものがございました。

長年にわたり、本校を支えてくださり、
誠にありがとうございました。

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次なる人生でも益々のご発展をお祈りいたします。

240305卒業式式辞(校長室から)

2024年3月5日 16時16分

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式辞

 校庭の木々の蕾もほころび始め、春の息吹が感じられるこの佳き日に、香川県教育委員会教育委員・木下敬三様、香川県議会議員 尾崎道広様を始めとする、ご来賓の方々のご臨席と、保護者の皆様のご列席を賜り、令和5年度香川県立坂出高等学校卒業証書授与式を挙行できますこと、感謝の念に堪えません。

 只今、卒業証書を授与した 241名 の皆さん、卒業おめでとう。心からお祝い申し上げます。

 皆さんの高校生活を語るときに、新型コロナウイルス感染症を抜きに語ることはできません。皆さんが入学したときには、部活動の公式戦以外では県外の選手との交流ができないなど多くの制約がありました。その後、感染症対策は緩和されてきましたが、今年度5月に、5類感染症の扱いに変わるまで、緊張した生活を送らざるを得ないところがありました。そのような厳しい環境で、皆さんは前向きに学校生活を送り、今日の卒業を迎えました。教職員一同敬意を表します。

 この3年間には、新型コロナウイルス感染症以外にも、多くの人命が失われるつらいできごとがありました。ロシアのウクライナ侵攻、武装組織ハマスとイスラエルとの軍事衝突では、私たちは絶対に戦争をしてはいけないという強い意志を持つことの大切さを感じました。また、能登半島地震では、自然を前にしたときの人間の非力さを感じました。しかし、戦争や自然災害を前にしても、助けあう人間の素晴らしさも感じました。

 さらに、この3年間は、若い人の活躍に励まされることもありました。藤井聡太さんや大谷翔平さんの活躍は言うまでもありませんが、本校卒業生も活躍しています。向畑憲良さんは、生成AIを使い対話で注文できる日本初の買い物支援システムの構築に坂出市で取り組んでいます。本多達也さんは、聴覚障害者だけでなく、多くの人にとって役に立つエキマトペを開発し評価されました。遠山将吾さんは、ビスケットブラザーズを結成し、キングオブコント2022で優勝するなど、多くの人に笑いを届けています。先輩たちも生活と心を豊かにするために、さまざまな分野で活躍しています。卒業する皆さんも、社会の創造者として羽ばたいて欲しいと切に願っています。

 孔子は「知これに及ぶも、仁能くこれを守らざれば、これを得といえども、必ずこれを失う(どんなに多くの知識を得ても、胸に仁愛を宿していなければ、いつかは知の働きもだめになる)」と教えてくれています。AIが人間を超える日も近いのではと言われていますが、AIにはない、優しさ、しなかやさ、共感する力、楽しむ力、勇気を奮う力を発揮してください。皆さんにはこれらの力が備わっています。また、真面目でコツコツ努力することができる人もたくさんいます。ぜひ、その良さを、誰かのために生かしてください。

 そのためにも、学び、行動し続けてください。変化し続ける社会において、新しい情報を学ぶことは大切ですが、すぐに役に立つものばかり学ぶのではありません。先人たちの思考や研究を通して「新しい視点を手に入れる」ことも学びです。それは、自分の判断のよりどころとなります。そして、自分が正しいと思うことを試してください。失敗に終わる可能性もありますが、成功よりも失敗から学ぶことのほうが多いのです。ですから、悲観することなく行動してください。その人が学んできたこと、チェレンジしたこと、失敗したことが、その人のオリジナリティであり他の人にはないもの、自分を支える強いバックグラウンドになっていきます。

 さらに、本校で培った「社会の変化に柔軟に対応し主体的に行動できる力、心豊かでたくましい心」が、これからの人生を力強く生きていく力となると信じています。これからの社会では、助け合って生きていくことが今まで以上に求められます。ぜひ、まわりの人に対する優しさや感謝の気持ちを忘れないでください。今日の卒業を迎えることができたのも、ご家族を始めとする多くの人の支えがあってのものです。

 終わりになりますが、保護者の皆様、お子様が卒業を迎えられましたことに、心からお喜びを申し上げます。また、これまで賜りました、さまざまなご支援に、この場をお借りし、全教職員を代表し、厚く御礼を申し上げます。そしてこれからも、大きく成長するお子様をあたたかく見守りください。

 卒業生の皆さんが、「高邁自主」・「パティマトス」の精神を忘れず、それぞれがめざす理想に向けて、邁進すること、そして、健康で幸多からんことを心から祈って、結びとします。

令和6年3月5日

香川県立坂出高等学校長 真下拓也

241109 3学期始業式 式辞(校長室から)

2024年1月9日 17時00分

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3学期始業式式辞

令和6年、2024年がスタートしました。

年の初めに、能登半島地震や羽田空港での航空機衝突事故という痛ましい出来事がありました。お亡くなりになった人への哀悼の気持ちを持つとともに、天災の恐ろしさ、コンピュータを駆使した安全管理がまだまだ完全ではないことを、改めて思い知らされました。また、能登地方では、厳しい状況下で被災者同士が助け合っています。羽田空港の事故では、客室乗務員の対応と乗客が落ち着いて行動したことで、死者を一人も出さずに避難できました。そこから、人間の強さやしなやかさを実感することにもなりました。私たちも震災で被災した人のためにできることにしていかなければと思いました。

年末年始の新聞には、この1年を総括したり、新年の展望を記したりしたコラムや、専門家の意見が多く掲載されました。その記事を紹介しながら話をします。

まず、令和5年の大きな出来事を「コロナ明け」としたコラムをもとに話をします。新型コロナウイルス感染症対策で人類は、団結の心を学んだはずだ。それまでバラバラであった世界中の人の心が、新型コロナという人類共通の敵に一致団結して立ち向かった。マスクをつける、ソーシャルディスタンスを保つなど、世界が1つの目標に向かって歩みはじめた。コロナをきっかけに、世界は1つの目標、すなわち平和に向かって歩み始めたのかもしれない。そう思い始めた矢先の2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、さらに、昨年の10月にはイスラエルとハマスとの軍事衝突も開始され、人類の悪い部分がクローズアップされるようになった年でもあったと、コラムは記していました。(朝日新聞12月13日掲載の東海林さだお氏の寄稿をもとにしました)

年末年始も二つの紛争のことがニュースで取り上げられています。今日は、イスラエルとハマスの軍事衝突を見てみます。ガザ地区を実効支配している、ハマスと呼ばれる軍事組織が、イスラエルに侵攻し人質を取ったことが、直接的な原因です。イスラエル政府は、人質の救出とハマスを壊滅させるために、ハマスの拠点となっているガザ地区を攻撃しています。1月3日時点でのガザ地区での死者数は2万3000人に迫っていて、ガザ地区の人口220万人の1%にあたります。この惨状に対して、イスラエルに住むユダヤ人がどう捉えているかというと、イスラエル民主主義研究所が行った世論調査によると、ガザ地区の人たちの苦しみを考慮する必要がないと回答した人が81%にのぼっていて、人質の解放やハマスの壊滅のために、軍事攻撃は仕方がないと考えているユダヤ人が多くいます。ロシアのウクライナ侵攻以降、軍事行動による問題の解決もやむを得ないという考えが世界に広まることを私は懸念します。

軍事行動を容認する風潮に対して、「答えを急がない力」が大切なのではと指摘する学者の意見がありました。世の中には明確な答えのある問題ばかりではありません。むしろ、〇か×かのように簡単に答えを出すことができない問題のほうがはるかに多くあります。だからこそ、先が見えずどうしようもない不安に耐えながら、考え、問題に挑み続ける力が必要とされます。特に、国際社会では、複雑で入り組んだ問題が多数あります。国の指導者に、「答えを急がない力」が欠如すると、戦争で解決する選択につながるおそれがあります。また、答えが出なくても問題に挑み続ける力は、人に対する寛容さとしても現れると指摘していていました。(朝日新聞1月3日掲載の帚木蓬生氏へのインタビュー記事をもとにしました)

なるほどなと思いながら記事を読みました。坂高生は、「人に優しい」と褒めてもらえることがよくあります。新年早々に坂出警察署から、陸上部の生徒2名が故障して動けなくなったダンプカーを移動させる手伝いをしてくれて助かったと、感謝の電話をもらいました。私もみなさんの様子を見ていて、坂高生は人に優しいと思います。ただ、人は、既知のもの・自分の考えに近いものには寛容になりやすいが、未知のもの・自分の考えと異なるものには不寛容になりやすい傾向があります。自分の仲間内だけの優しさでなく、自分と違う意見や考え方を持つ人に対して、この人は違うと関係を絶つのではなく、否定せずに受け入れたり、一緒に考えたりして、人とのかかわりを今まで以上に大切にしてほしいと思います。みなさん方の良さでもある「優しさ」をさらによいものできれば、明確な答えがない社会において、みなさんの力が遺憾なく発揮されると信じています。

3学期は1年間の総決算の学期です。3年生は、卒業すること、そして自分の進路を決めるという、3年間の総決算です。1・2年生は、1年間の総決算に加えて、新学年に向けての準備期間、新学年のゼロ学期ともなります。2年生であれば、受験生に向けての準備期間、1年生であれば、後輩を迎え、部活動や学校行事などで学校の中心となる2年生への準備期間です。3学期は祝日や高校入試の休業日があり、みなさんに任せる時間も多くなります。3年生は2月から家庭学習となります。それだけに、自分は何のために、何をしなければいけないのか、再確認して、新学期をスタートさせてください。そして、生活の基盤となる「遅刻しない」「あいさつをする」「掃除をする」も心がけてください。

3年生のみなさん、通常の高校生活を送ることができる日はわずかです。1日1日を大切に過ごしてください。

 以上で式辞を終わります。

231222 2学期終業式式辞(校長室から)

2023年12月22日 17時00分

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 おはようございます。ただいま、多くの生徒に表彰状を渡すことができました。運動部では新体制での大会、文化部と音楽科では、総文祭をはじめとしたコンクールに取り組み、成果をあげくれました。先週は音楽科の卒業演奏会、2年普通科の探究学習の発表会があり、素晴らしい演奏、発表を聞くことができました。また、校舎内では、普通科生徒の芸術の授業の成果物、グローバルスタディーズプログラムや人権学習会のレポート、1年2組の教室の窓には、遠足で行った大塚美術館の鑑賞レポートが掲示されています。いろいろな形でみなさんのがんばりを実感することができ、うれしく思います。

 このように、2学期にもうれしかったことがたくさんありました。今日はそこから話をします。1つ目はビーチクリーンアップ活動です。この活動は岡内先生の呼びかけで始まった活動で、自然科学部の活動としてだけでなく、校内の希望者も参加できるボランティア活動です。今年の2月に開始して、すでに11回実施して、のべ443人が参加しています。この活動を自然科学部の生徒がまとめて、神戸市で開催された「瀬戸内海環境保全特別措置法制定50周年記念式典」で発表しました。発表では、活動に参加した生徒へのアンケート調査の結果が紹介されていました。私が注目したのは「この活動に参加して何か変化したことがありますか」という質問に対する回答です。日常の行動が変わった19%、日常の生活で心がけることが変わった60%、変化無し21%で、約80%の人が何らかの変化があったと答えています。たとえば、自販機で飲み物を買うのではなく水筒を持つようになった、プラスチックゴミを減らしたいと思うようになりできるだけ包装の少ないものを買うようになった、買い物をするときにビニール袋をもらわないようになった、ゴミが落ちていたら拾うことが多くなった、ゴミ問題のニュースに関心を持つようになった、プラスチックの削減に関心を持つようになった、などです。ビーチクリーンアップ活動に参加して、ゴミの問題を自分の問題として捉え、行動や心がけが変わった生徒がたくさんいることをうれしく思います。世の中にはさまざまな問題があり、大人たちはその解決に向けて努力していますが、簡単には解決しません。社会にある問題を自分の問題として捉え、行動などが変わる人が増えれば、社会は必ず良い方向に向かいます。ビーチクリーンアップ以外でも、献血、子育て支援施設、社会福祉関係などに120人ほどの生徒がボランティア活動に参加しています。その体験から、何かが変わった人も多いと思います。

 学校の学びも、受験に役に立つという視点だけでなく、世の中の役に立つという視点も是非持って欲しいところです。総合的な探究の時間では、地域課題を見つけて解決策を考えてもらう学習を行っていますし、教科の学習でも、社会やみなさんの生活に関連付けた学びがあります。その学びから、自分の生活に取り入れるなどのちょっとした変化が生まれることを期待しています。

 うれしかったことをもう一つ話します。それは、全校生で校歌を歌えたことです。感染症対策や熱中症対策で校歌を歌うことが延ばし延ばしになっていました。今いるみなさんの中には、校歌を聴くだけで歌ったことがない人がたくさんいます。どうにかして全校生で歌いたいという気持ちがいっぱいで、2学期中間考査最終日にようやく歌うことができました。3年生は今日を含めて全員で歌うのは、あと数回です。思いっきり歌って欲しいです。12月2日に5年ぶりに坂出高校の同窓会の総会が開催され、160人ほどの本校の卒業生が集まりました。同窓会の最後は校歌斉唱です。高校生活を送った仲間との共通の財産です。みんなうれしそうに元気に歌っていました。10年後、30年後、50年後、みなさんもそうあって欲しいです。

 明日から冬休みです。冬休みは部活動もまとまった休みをつくりますので、みなさんが家族と過ごす時間がたくさんあると思います。大学に進学したり就職したりしたら、家族と過ごす機会が減ってきます。大掃除を手伝うなどして、家族との時間を大切にしてください。

 最後に3年生へ。みなさん方はまだまだ伸びしろがあります。この時期の追い込みでかなり結果が変わります。みなさんの健闘を期待しています。

 以上で式辞を終わります。

230901始業式講話(校長室から)

2023年9月1日 14時00分

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 みなさんおはようございます。

 夏季休業中の約40日間、どのように過ごしましたか。夏季休業中、みなさんが活躍したことを見たり聞いたりすることがたくさんありました。今日はそこから話を始めます。

 インターハイでのカヌー部、弓道部、テニス部の活躍、そして吹奏楽部、合唱部の活躍が新聞にも掲載されました。今日の表彰状の伝達では賞状を渡せませんでしたが、テニス部の堀家さんは、インターハイのシングルスで8位になりました。堀家さんは昨年度の『白壁』に次のようなことを記していました。「今年は、勝たなければいけないプレッシャーの中で思うような成果を出すことができずに悔しい思いをした。来年のインターハイに出場するために、今まで以上に努力する。」そして今年、その成果が出てうれしく思います。

 また、校外でのボランティア活動に参加した人もたくさんいました。これもうれしいことでした。

 そして、校内では希望者を募った活動ですが、「Global Studies Program」 と「海ゴミリーダーに学ぶ! 世の中をほんの少し面白くする方法」が実施されました。「Global Studies Program」では、外国人の大学生と本校生徒が英語を使って、自分自身や社会について考え意見交換を行いました。「海ゴミリーダーに学ぶ! 世の中をほんの少し面白くする方法」では、海ゴミをなくす取り組みをしている大人と本校生徒が、環境問題について考えていることなどについて、コミュニケーションゲームを行いました。2つの活動の主旨には異なる部分がありますが、さまざまな人と話をすることで、自分を受け入れてもらえた喜びが高まること、視野が広がること、他者への理解が深まるなど、コミュニケーション活動の大切さを学ぶという点は共通していました。 

 また、8月4日には一日体験入学が実施されました。前日の準備でトイレ掃除をしてくれた部活動(野球部、陸上競技部)、案内や学校紹介で活躍してくれたみなさん、吹奏楽部をはじめ暑い中、部活動を行ってくれたみなさん、ありがとう。630人の中学3年生が来校しました。坂高生の姿が、坂出高校の評判や評価をつくっています。それだけに、坂出高校に関心を持っている中学生がたくさんいることをうれしく思いました。

 まだまだ暑いですが、2学期がスタートしました。2学期は、4か月の長丁場です。そして、1年生は文系・理系のコース選択の時期、2年生は進路を具体的に絞り込む時期、3年生は進路を決める時期にもなり、決断が求められる時期です。高校生にとって、進路に関わることは大きな問題です。自分はどのような目的を持って、何を目標とするのか。そして、目標を実現するためには何をしなければならないのか、できていないことは何か。こういったことが突きつけられます。非常にしんどいことですが、向き合ってください。

 進路や学習に関することは個人の問題になりがちですが、集団としても考えてください。「受験勉強は団体戦」という言葉を聞いたことがあると思います。3年生だけでなく、1年生からすべての坂高生が、自己実現のために努力しています。高邁自主とパティマトスという坂高スピリットを持つ仲間を支援する集団であって欲しいと思います。そのためには、まわりの人に関心を持ってください。これから坂高祭の準備も活発になります。その中で、あまり関わりのなかった同級生の良さを知ることもあると思います。関心を持つことができれば、人に優しく、自分がどうすべきか考えることができるようになります。また、話ができる人を増やしてください。自分一人で考えることはしんどいことです。自分の価値観なり世界観だけで考えていると行き詰まり、しんどくなります。しんどいと思うことがあれば、大人でも友人でもいいです。その気持ちを言葉にしてください。

 最後に、私の夏休みの話をします。8月24日~25日にPTAの全国大会で仙台市に行きました。8月24日は、夏の高校野球で準優勝した仙台育英高校が仙台市に帰ってきた日でした。そして、福島第一原子力発電所での処理水を海洋へ放出し始めた日でもありました。これから原子炉の廃炉に向けて対処すべき問題はまだまだ出てきますし、廃炉まで30年以上かかると言われています。福島第一原子力発電所の問題は、東北だけの問題ではなく、日本全体で考えなければいけない大きな問題です。PTAの全国大会の2日目、25日は、仙台育英高校の須江航(すえ・わたる)監督の講演会でした。参考になる話をたくさん聞けましたので、そこからいくつか紹介します。

●長所と短所の関係について

人生の多くの場面において短所が長所を消してしまう。だからこそ苦手なものに丁寧に向き合える人間であって欲しい。

●失敗との向き合い方について 

失敗した後に、1度変える取り組みをしてみてください。ここで言う1度とは、「one time」ではなく、「degree」角度の1度です。大きく変えるのではなく、ほんの少し変えることだけで、それが続けば、長い時間が経つと大きな変化になっています。

●「時を守り」「場を清め」「礼を正す」

時間を守ること、生活の場を整えること、挨拶はもちろんお世話になっている人への感謝の気持ちを伝えること。これができない人は、まわりからの信用を得られない。どこかで痛い目に遭う。これは常々私もみなさんにお願いしていることです。

 それでは、みなさんが充実した学校生活を送ることができるよう、先生方も全力で支援します。がんばっていきましょう。

230720終業式式辞(校長室から)

2023年7月20日 18時00分

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1学期終業式式辞

 みなさん、おはようございます。

 1学期が終わりました。ここで自分の立てた目標に対する中間評価をしてください。何ができて、何ができなかったのか、できていないことがあれば、何が原因でできなかったのか、できるようにするためには、どうしたらいいのかしっかりと振り返りをしてください。

 明日から夏休みです。ゼミや部活動があるとはいえ、多くの時間の過ごし方を皆さんに任せます。そこで、みなさんの過ごし方の参考となる話をします。

 まず、ニュース映像を流します。ここで紹介される「エキマトペ※注)を開発したのは、坂出高校を2009年に卒業した本多達也さんです。

 では、映像を見てください。

(映像が流れる)

 本来であれば、昨年の向畑さんのように学校にお招きして講演をしてもらいたいのですが、現在、本多さんはデンマークにいるため、それができません。「エキマトペ」を開発するに至った経緯などを、本多さんがまとめた本「SDGs時代のソーシャル・イントラプレナーという働き方(日経BP)」※注)が出版されましたので、その内容から話をします。

 大学に進学したものの、将来何をするか決めてない状況下で一つの出会いがありました。1年の大学祭で道に迷った2人のろう者(耳の聞こえない人)を見かけ、身振りや携帯電話を使い説明しました。その方が、函館ろうあ協会会長で、兼平さんという方でした。二人は週1回ほど、一緒に温泉などに行く友人となります。一緒にいるなかで、自分は犬が吠えてもびっくりするけど、兼平さんはびっくりしない。音楽番組を見ているときに自分は音楽を鑑賞しているけど、兼平さんは歌詞をじっと見ているなど、音に対するギャップを感じるようになりました。

 そこから、ろう者と一緒に音を楽しむことができないか、在学中に研究を始めました。研究を進めるために、経済産業省が行っている、若手IT人材育成プログラムに応募し、予算と指導者を得ます。音を振動に変えて身体に伝える技術を開発し、ヘアピンのようなものを頭につけて音を感じる機械の原型をつくり、「オンテナ※注)と名付けました。残念ながら、在学中には商品化には至りませんでした。

 そこで、入社した富士通で商品化をめざします。社内には「できないことがあたりまえ」と思い込んでいる社員(優秀ではあるが、指示待ちになっている人)が多かったようです。商品化は本多さん一人ではできません。さまざまな分野(テクノロジー、デザイン、広告など)の人たちの協力が必要です。そこで、本多さんは、「ろう者と音を楽しむ」という明確なビジョンとその実現に向けた思いを素直に伝え、協力者を増やし、会社にも開発を認めてもらい、試作品をつくります。使った人からは、「サッカー観戦で、会場の盛り上がりを感じられただけでなく、PKの時の静かさや緊張感を感じることができた」とか、「映画鑑賞で雨の音の違いを感じられた」などの感想を得ます。そこから、ろう者だけの商品ではなく、多くの人と楽しめる商品にできるのではないかと、考え方を広げることにしました。そうすることで、商品単価を下げ、ろう者が購入しやすくなりますし、ろう者への理解も広がります。こうして、「オンテナ」の商品化に成功します。

 次に本多さんは、「エキマトペ」の開発に乗り出します。ろう者から、「どのようなものがあれば便利か」考えてもらった時に出てきた「電車通学の不便さ」をもとに、ろう者に便利なだけではなく、多くの人が見ているだけで楽しめるものをつくろうという考えで生まれたのが、「エキマトペ」です。

 本多さんの活動から見えてくるのは、「ろう者と音を楽しみたい」という、強い気持ちです。その気持ちが本多さん自身を動かす大きな力になりました。自分の将来を考えたときに、理屈で自分を納得させたものであれば、困難に直面すると諦めてしまうかもしれません。やはり、人間を強く動かすのは、心からわいてくる気持ちです。

 みなさんは、社会をよくするために、人を幸せにするために、人に喜んでもらうために、環境のために、このようなことをしたいという強い気持ちはありますか。もし、そのような気持ちを持っているのであれば、大切にして欲しいです。まだ、このようなことをしたいというものがないのであれば、経験(部活動、生徒会活動、ボランティア活動、海や山に行くなど)をたくさん積んで欲しいです。実体験から得た感情は強いです。総合的な探究の時間で立てた問いに関して、実社会で調査することも考えてください。また、自分で経験できることは限られているので、それを補うものとして読書を勧めます。本を読むことで社会や人間の考え方を知るよい経験となります。

 しかしながら、高校時代に自分の将来の仕事につながる強い動機付けを持つことができるとは限りません。本多さんのように大学に入ってからかもしれません。自分の感性(引っかかり)を高くするものとして、基本的な教養(現在みなさんが取り組んでいる学習)があります。高校での学びはさまざまな学問の基盤となります。受験のために勉強する以前に、高校生として学ぶべき教養なのですから、学校での学びを大切にして欲しいです。1学期に学習面で足りていない部分があれば、夏休み中に補ってください。

 3年生については、教養としての勉強にプラスして受験勉強がスタートしています。この夏休みは勉強一色になって欲しいところです。人生のなかで、このような経験をすることも意味があります。勉強の成果はすぐには現れませんが、秋には成果が現れてきます。それを信じて、この夏はとことん勉強してください。また、部活動を続けている3年生のみなさん、まさに文武両道を実現して欲しいところです。

 最後に、9月初めには坂高祭があります。久しぶりに一般公開での坂高祭です。多くの人が坂高生のレベルの高い展示・発表を期待して来校してくださります。みなさんの力の見せ所です。どれだけできるか期待しています。

 それでは、9月にみなさんにお会いできることを楽しみにしています。

※注)本校卒業生の功績として、本校のホームページ管理者が関連サイトにリンクいたしました。

230407 入学式式辞(校長室から)

2023年4月7日 13時00分

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式  辞

 爛漫の花に彩られ、新しい季節がめぐってまいりました。本日、PTA会長 柴田孝一郎 様のご臨席と、保護者の皆様のご列席を賜り、香川県立坂出高等学校 令和5年度入学式がこのように盛大に挙行できますことを、教職員一同を代表し、心から御礼申し上げます。

 只今、普通科228名、音楽科23名、計251名の入学を許可しました。皆さん、入学おめでとう。心からお祝い申し上げます。

 皆さんが入学した坂出高校は、大正6年、1917年に、香川県立坂出高等女学校として開校しました。戦後の昭和24年、高等学校再編成により現在の校名となり、男女共学の学校となりました。また、昭和42年には音楽科が設置され、現在の学校の形になりました。今年度、創立107年目を迎え、国内外の様々な分野で活躍する29,000人を超える卒業生を輩出してきた伝統校です。そのような坂出高校の一員として、本日皆さんを迎えることができ、大変うれしく思います。

 さて、坂高生となった皆さんが、高校生活の指針として欲しい言葉があります。それは、坂出高校のモットーであり、校歌にも歌われている「高邁自主」という言葉です。「高邁」とは、「高潔なこころざし」という意味ですから、「高邁自主」とは、「高いこころざしを掲げ、自らの判断で自ら行動を起こす」姿を現します。坂高生はこの言葉を胸に、学業、部活動、学校行事などに向き合い、成果をあげてきました。「高邁自主」が坂高生の精神、坂高スピリットと言えます。「高邁自主」を実践するうえで、大切となる心構えが「パティマトス」です。「パティマトス」とは、正門に入って正面にある石組みに刻まれた言葉です。今から58年前に、創立50周年を記念して、当時の校長が本校で学ぶ生徒に贈った言葉です。「パティマトス」はギリシア語で、「英知は苦難を通じて来たる」という意味です。つまり、楽しいことばかりではなく、つらいことやしんどいことに向き合って、高い志は実現できるのです。

 現代社会では、情報通信技術の進歩により、社会変化のスピードが急激に早まりました。さらに、ロシアのウクライナ侵攻のように、予想もしなかった事が起きるなど、私たちは、不確実な社会を生きています。このような社会では、新たに生じた問題に対する解決策を考え、実行する力が求められます。具体的には、自分の事として、社会の問題に向き合い、解決に向けて他者と協力して粘り強く取り組んでいく力です。この力は、「高邁自主」を基盤においた本校の教育活動によって培うことができると確信しています。「遅刻をしない」「あいさつをする」「掃除をきちんとする」といった生活習慣の基本ができたうえで、学業、部活動、学校行事や生徒会活動に十分に励み、社会で活躍する人材に成長することを望んでいます。

 保護者の皆様、お子様の入学、おめでとうございます。民法の改正により、18歳になると、法律的には、成人、大人として扱われ、自分で判断し行動することが求められるようになります。それだけに、高校3年間でお子様に自立する力をつけることが求められます。ご家庭におかれましても、ほどよい距離をおきながら、お子様に対して、時にきびしく、時にあたたかく見守ってください。また、ご家庭と学校が十分に連絡を取り合い、お子様の教育を進めてまいりたいと思いますので、ご理解とご支援を賜りますよう、お願いいたします。

  最後に、新入生の皆さんが今日の感激と感謝を忘れることなく、学業に、また人間形成に大いに励み、充実した素晴らしい学校生活を送ることができるよう期待し、式辞とします。

  令和5年4月7日

 

香川県立坂出高等学校長 真下拓也

230317 終業式式辞(校長室から)

2023年3月17日 18時00分

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3学期終業式式辞

 昨日のWBC準々決勝戦観ました。大谷選手すごいですね。一球一球、声を上げながらの全力投球、セーフティバントなど、勝とうという気迫が感じられました。その姿に選手も引っ張られるし、応援している私たちも引き込まれました。やはり、何かに一生懸命に取り組んでいる姿に人は魅了されます。本校でも、多くの生徒が部活動に全力に取り組み、その姿に元気づけられている家族や友だちがいるのだと思います。

 この1年、ことあるたびにみなさんに語りかけてきたこと、わかりますか。「掃除をする」「あいさつをする」「遅刻をしない」といったあたりまえのことができるようになることです。坂出高校は、あたりまえのことができたうえで、学習、部活動、学校行事などで、さらに成長しようと切磋琢磨している学校です。4月から新入生が入学します。坂高生のあるべき姿を、みなさんが示し、新入生にも受け継いで欲しいと考えています。学校の姿とは、先輩から後輩に受け継がれて、つくられるもので、先生方がつくるものではありません。ですから、あたりまえのことをあたりまえにできる坂高生であって欲しいと強く望んでいます。卒業した3年生は皆勤賞(無遅刻、無欠席、無欠課)受賞者が59名いました。コロナ禍で大変ななか、立派なことで、その姿を見てきた皆さんもそうあって欲しいです。

 皆さんは、坂出市にイスラーム教の礼拝所(モスク)があることを知っていますか。ちょっとローカルな話になりますが、坂出市のマルナカ、ボーリング場、坂出警察署、かまど本店のある道を東に進んだところにあります。私もよく通る道路沿いにあるので気になっていましたが、昨年の秋には外から見てもモスクとわかるようになりました。設立の中心となったのは、インドネシア人のイスラーム教徒のフィカルさんです。設立に向けて奔走する様子を取材した本が出版されましたので読んでみました。

 フィカルさんは技能実習生として来日し、日本人女性と結婚、現在は溶接工として坂出市で暮らしています。フィカルさんは、日本人と話をしたいと思っても、関わって欲しくないという雰囲気を強く感じましたし、怖がられたり、テロリスト呼ばわりされたりすることもありました。そこで、フィカルさんは、モスクを設立することを決意します。香川県で生活するイスラーム教徒が集う場とすることは当然として、日本人にイスラーム教のことを知ってもらい、日本人との交流の場にしたいと考え、モスク設立に向けて活動を始めました。まず、モスクに使うことを前提として、建物を売ってくれる人を探すのに苦労しました。それ以上に苦労したのが、建物を買う資金集めでした。購入資金を集めるために、まず、県内のインドネシア人に呼びかけて、資金集めを開始しました。県内には900人ほどインドネシア人がいますが、それだけでまかなうことはできませんでした。そこで、SNSを駆使して、全国のインドネシア人にも呼びかけ資金を集め、今から2年ほど前の2021年2月23日建物を取得しました。そして、内装や外観を整え、今では外から見てもモスクとわかるようになりました。

 この本を読んでみると、私とは異なる世界観を持った人が、自分たちの宗教を大切にしつつも、地域社会に溶け込もうとする様子が伝わってきましたし、多様性を受け入れる姿勢を学びました。これからの社会では、多様性を受け入れる姿勢はますます大切になっていきます。そのためにはどうあったらいいのか、フィカルさんの活動から話をします。まずは、人への優しさです。フィカルさんは、坂出市に一人で暮らしているお年寄りがすごく多いことに心を痛め、力になりたいと考えます。やはり優しい気持ちが他者を受け入れる大前提となります。そしてもう一つが、自分の考えを相手に伝えようとすることです。フィカルさんはイスラーム教のことを日本人にわかって欲しいと強く思っています。私たちの多くは、自分の意見をはっきりと示すことが苦手なのかもしれません。多様な価値観や考え方が存在する中では、自分の意見や考え方をしっかりと伝えることも必要となってきます。

 年度替わりは、新しい出会いがあります。新しい出会いから、皆さんの世界が広がるチャンスとなります。私もそうですが、4月の新しい出会いを楽しみに迎えたいです。

230303 卒業式 校長式辞(校長室から)

2023年3月3日 16時00分

式 辞

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 校庭の梅の花が満開となり、春の訪れを感じられるこの佳き日に、香川県教育委員会・西部教育事務所長 十河聖司様、香川県議会議長代理・香川県議会議員 植條敬介様を始めとする、ご来賓の方々のご臨席と、保護者の皆様のご列席を賜り、令和4年度香川県立坂出高等学校卒業証書授与式を挙行できますこと、感謝の念に堪えません。

 只今、卒業証書を授与した 244名 の皆さん、卒業おめでとう。心からお祝い申し上げます。

 皆さんの高校生活を語るときに、新型コロナウイルス感染症を抜きに語ることはできません。入学後、わずか3日間の学校生活で臨時休業。臨時休業は2度、延長され、5月31日まで続きました。6月から学校は再開しましたが、体育祭、坂高祭が中止となり、少し寂しい学校生活となりました。2年次から、日常に戻りつつありましたが、感染対策を徹底し、緊張した生活が続いたことに変わりはありませんでした。しかし、皆さんはこの困難な状況を乗り切り、今日の卒業を迎えました。教職員一同敬意を表します。

 皆さんが、坂出高校で学んだ3年の間に、世界は劇的に変化しました。国内では、感染症対策の陣頭指揮を執った安倍総理が令和2年9月に辞任し、その後、総理大臣は菅総理、岸田総理と交代しました。そして、令和4年7月には、安倍元総理が蛮行により暗殺されました。国際社会では、トランプ・アメリカ大統領からバイデン大統領への政権交代時の令和3年1月に、政権交代に反対するトランプ支持派が連邦議会議事堂に乱入する事件が起きるとともに、主張の異なる勢力の対立が激しくなり、民主政治を危ぶむ声が高まりました。さらに、昨年2月からのロシアのウクライナ侵攻により、世界の対立は激化し、話し合いによる解決が難しくなっています。

 現在、ウクライナの問題以外にも、環境問題、貧困の問題など数多くの問題への対応により、民主政治が試されています。民主政治では、ただ多数決で物事を決めるのではなく、多様な立場や考え方の異なる人たちの意見をもとに、議論し納得解を見いだすことが必要です。ただ、解決すべき課題があまり多く、それぞれが難しい課題であるため、諦め、思考停止になる人もいるのかもしれません。しかし、皆さんは、本校の学びの中、総合的な探究の時間、ホームルーム活動、部活動、そして感染症対策をとりながらどのような生活を送るべきかなど、身の回の問題に取り組み、解決策を見いだしてきました。それは、自分事として問題に向き合ってきたからできたことです。最近では、フェアトレードのカカオ豆を使ったチョコレートが、バレンタインの売れ筋商品になっていることが紹介されていました。フェアトレードは貧困をなくすというSDGsがめざす取り組みにつながります。大きなことはできなくても、各自が世の中のことに関心を持ち、自分事として社会に参画することはできます。民主政治は、そのような個々人によりつくりだされるのであり、皆さんにはそうあって欲しいのです。

 これからも社会は劇的に変化し続けることが予想されます。皆さんは、刻一刻と変化する社会の中で、自己と社会の結びつきから進路を考え、自分がめざす道を見いだしたと思います。そして、それがこれからの長い人生の指針となることを望んでいます。指針がゆらいできたときには、立ち止まり、「なぜ、自分はそうありたいのか」見つめ直してください。また、理想に向かい邁進する中で、うまくいかないことや失敗することもあろうかと思います。しかし、皆さんが学び続けることをやめなければ、やり直すことは可能です。

 日本の近代経済社会の基礎を築いた渋沢栄一は次のように語っています。
「卒業後に真の勉強が始まる。学校を出た後でも研究を怠らない者は、思いどおりにならないことがあっても、そのうち必ずうまくいくようになる。世の中に出てから、絶えず情熱と勉強の心がけを失わないようにする。こういう人は向上心をなくした秀才なんかとは、全く比べものにならない。学校で学ぶことは、社会に出てから現実に対応していくための準備に過ぎないのである。」

 本校で培った「社会の変化に柔軟に対応し主体的に行動できる力、そして、心豊かでたくましい心」が、これからの人生を力強く生きていく力となると信じています。また、これからの社会では、助け合って生きていくことが今まで以上に求められます。ぜひ、まわりの人に対する優しさや感謝の気持ちを忘れないでください。今日の卒業を迎えることができたのも、ご家族を始めとする多くの人の支えがあってのものです。

 終わりになりましたが、保護者の皆様、お子様が卒業を迎えられましたことに、心からお喜びを申し上げます。また、これまで賜りました、さまざまなご支援に、この場をお借りし、また全教職員を代表し、厚く御礼を申し上げます。そしてこれからも、大きく成長するお子様をあたたかく見守りください。

 卒業生の皆さん、皆さんが、「高邁自主」・「パティマトス」の精神を忘れず、それぞれがめざす理想に向けて、邁進すること。そして、健康で幸多からんことを心から祈って、結びとします。

令和5年3月3日
香川県立坂出高等学校長 真下拓也

230110 3学期始業式(校長室から)

2023年1月10日 10時00分

3学期始業式式辞   

 令和5年、2023年がスタートしました。

日本漢字能力検定協会が発表した2022年の「今年の漢字」は「戦」でした。ロシアのウクライナ侵攻という本当の戦争、そして、新型コロナウイルス感染症や物価高との戦いなど、暗い空気が世の中を覆っていました。その空気を吹き飛ばしたのが、北京冬季オリンピック、サッカーワールドカップでの日本の活躍など、スポーツでの戦いでした。今年の見通しもそう明るくありませんが、坂高生が生き生きと学校生活を送ることで、活気ある学校になればと期待しています。

さて、「一年の計は元旦にあり」とことわざがあります。その年にすべきことは、元旦に計画を立てるべきである、という意味から、何事もはじめに計画を立てるのが肝要であるという意味で使われたりします。皆さんも、新しい年を迎えて、自分が何をめざしているのか、そのために何をしなければいけないのか確認するよいタイミングです。

3年生の多くは、4日後に迫った共通テストのことで頭がいっぱいで、それどころではないと思っているかもしれません。共通テスト後には、予備校などが発表するデータを参考にしながら、出願先を考え直すこともあろうかと思います。その時に、自分のやりたいこと、なりたい自分を見失うことなく、これから自分の進むべき道を考えてください。

1・2年生の皆さんにとっても、3学期は重要な時期となります。短期的な視点で見たら、1年間の総決算の時期です。この1年でやっておくべきことはしっかりとできているのか、キャリアパスポートなどに記した自分の目標を達成することはできたでしょうか。中期的な視点で見たら、新年度に向けての準備期間、新学年のゼロ学期となります。2年生であれば、受験に向けての準備期間、1年生であれば、後輩を迎え、学校行事などで学校の中心となる2年生への準備期間です。先を見据えて、自分は何をめざしているのか、そのために自分がすべきことは何なのか、再確認してください。

そのヒントとして、アップル社を創業し、後にiphoneなどを世に送り出したスティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学の卒業式で行った有名な演説の一部を紹介します。

まずは、自分が創業したアップル社から解雇を宣告され、呆然としていた時にたどり着いた境地として、次のように語っています。

「アップルを追われなかったら、今の私は無かったでしょう。非常に苦い薬でしたが、私には、そういうつらい経験が必要だったのでしょう。最悪のできごとに見舞われても、信念を失わないこと。自分の仕事を愛してやまなかったからこそ、前進し続けられたのです。皆さんも大好きなことを見つけてください。仕事は人生の一大事です。やりがいを感じることができるただ一つの方法は、すばらしい仕事だと心底思えることをやることです。好きなことがまだ見つからないなら、探し続けてください。決して立ち止まってはいけない。本当にやりたいことが見つかった時には、不思議と自分でもすぐに分かるはずです。だから、探し続けてください。絶対に、立ち尽くしてはいけません。」

 そして、がんを宣告されて「死」を意識したジョブズ氏は次のように語ります。

「あなた方の時間は限られています。だから、本意でない人生を生きて時間を無駄にしないでください。ドグマにとらわれてはいけない。それは他人の考えに従って生きることと同じです。他人の考えに溺れるあまり、あなた方の内なる声がかき消されないように。そして何より大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。あなた方の心や直感は、自分が本当は何をしたいのかもう知っているはず。ほかのことは二の次で構わないのです。」

そして、演説の最後に「ハングリーであれ。愚か者であれ。」と結んでいます。

 皆さんには、自分のやりたいことを探し続けることを諦めて欲しくないですし、まわりの人の言葉に従うのではなく、自分の心に従い、やりたいことに突き進む勇気を持って欲しいのです。

冒頭に話をしましたが、日本の見通しが明るくないのも事実です。それもあって、「私なんかが社会を変えることはできない」とか、「これからの社会はよくならない」と感じている人もいるかもしれません。しかし、自分が前向きに行動することで、何かは確実によい方向に向かいます。その積み重ねで社会を変えていくことができると信じて、社会に出ていく準備を進めて欲しいですし、今できることがあれば、やってみてください。

 大切な時期となる3学期、皆さんが充実した生活を送ることができるよう、先生方も全力でサポートします。皆さんも前向きに学校生活を送ってください。その基盤となることとして、「遅刻しない」「あいさつをする」「掃除をする」を意識してください。そして、3年生の皆さん、通常の高校生活を送ることができる日はわずかです。1日1日を大切に過ごしてください。

 最後に、感染症対策についての確認です。感染者が増えています。学校での学びを止めないためにも、マスク着用、換気、黙食、手指消毒への協力をお願いします。

 以上で式辞を終わります。

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221223 2学期終業式(校長室から)

2022年12月23日 16時30分

2学期終業式式辞

坂高祭・音楽科研修旅行、修学旅行という大きな行事が、始まりと終わりにあった2学期ですが、9月中旬から12月にかけて、運動部では、新体制での大会、文化部と音楽科では、総文祭をはじめとしたコンクールに取り組み、成果をあげました。学習面ではどうでしたか?

 私は2学期にもうれしかったことがたくさんありました。今日はその1つである先輩講演会から話をします。

 坂出商工会議所の人から、坂高の卒業生にすごい人がいると教えてもらったのが、向畑憲良(むかいはたけ かずよし)さんです。向畑さんは、早くにネットショッピングがこれから発展する産業と見抜き、ネットショッピングのシステムを構築し、そのシステムを会社に使ってもらう事業を立ち上げました。そして現在では、向畑さんの会社のシステムを使ったネットショッピングの売上額が、10年連続国内第1位を維持するまでになりました。是非、この人の話を生徒に聞かせたいと思ったし、こんなすごい先輩がいることをみんなに知って欲しいと思いました。そこで、かわいい後輩のために話をして欲しいと、ダメ元で会社にメールを送りました。すると、広報担当者が丁寧に対応してくださり、講演が実現しました。
316101225_457723869828875_8755070057472004040_n 3年生は参加できませんでしたので、講演で私が聞き取って解釈したことを話します。向畑さんの主旨をきっちりと伝えられないところがあるのは許してください。

●求められる人材(どのような人と仕事をしたいか)について、向畑さんは5つ挙げました。

 ・1つ目は「誠実」であること。誠実な人とでないとビジネスはできません。
  人としても一番重要です。

 ・2つ目は「主体的」であること。
  何か問題があった時に自分ごととして取り組む人がいるほどチームはうまくいきます。

 ・3つ目は「積極的」な人。
  前向きな気持ちが大事です。消極的な人よりも、積極的な人と仕事をしたいです。

 ・4つ目は「他人を尊重」すること。
  仕事と割り切って接するよりも、相手を尊重することで、より大きな成果につながります。

 ・最後が「人間性と知性のバランス」。
  人柄だけ、もしくは知性だけでは不十分です。授業や部活動、コミュニケーションなど、
  学生生活でしっかり学んでください。

●高校時代にすべきこととして、次のようなことを挙げました。

 ・世界に関心を持ってください。
  いつもの集団での関わりだけでなく、他の集団と関わってください。
  少しずつでいいから自分の世界を広げることに挑戦してください。

 ・勉強すること。
  基礎知識は、ものごとを解決するために役に立ちます。
  知識がないと判断が難しい局面が、社会では必ず出てきます。

●自分が変わることを信じて欲しいと、次のようなメッセージをくれました。

 ・昨日よりも今の自分、そして10年後の自分。
  現在よりもどれだけ変化するか、その変化量を自分軸で意識して欲しい。
  自分軸とは自分の信念や価値観と言い換えることができます。

 ・いきなり10年後の自分軸を見つけることは難しいので、
  今は、勉強や部活動に一生懸命に取り組むべきです。
  そうすることで自分軸が少しずつ変わっていき、10年先の自分軸を見つけることができます。

●そして、向畑さんの自分軸として、起業した思いを次のように語ってくれました。

 ・世界に目を向けて世界の状況を知れば、自分さえよければという狭い視野ではいられない。
  だから、「社会をよくしたい」という思いで起業した。
  まだまだ満足していない。社会をよくするための努力はこれからも続けていく。

と話して講演を終えました。関心のある人は「向畑憲良 ブログ」で検索してください。
講演の内容が挙げられています。(https://note.com/muka_ms2004/n/n6e4ea5cafc79

 向畑さんの話にあった、高校で学ぶことについて、私もそう思いました。経験から学ぶことは大切です。しかし経験から学ぶことができるのは、狭く限定的なものです。身近な問題に対応するだけであれば、自分の経験だけで大丈夫かもしれません。しかし、新しい世界に飛び込んだ時や、全く新しい問題に対応する場合には、自分の経験だけでは対応できません。やはり、学校での学びは必要となります。授業などから学ぶ内容は、すぐには役に立たないことが多いのかもしれませんが、学んでいる内容は、先人たちの思考や研究を通して得られたものであり、それを学ぶことによって、皆さん方は「新しい視点を手に入れる」ことになります。その視点をもって、新しい世界で活躍できるのです。

 明日から冬休みです、3年生は間近に迫った共通テスト、その後の私立大学の試験や、国公立大学の個別試験に向けて、待ったなしです。そして、現在行っている演習は学んだことの再確認です。高校での学びの総決算として、しっかりと取り組んでください。

 1年生は、学習支援アプリを使って、学習時間の確認をすると聞きました。2年生は、各自に任されていると思いますが、自分の行動を振り返り、記録することは重要です。なんとなく1日を過ごすのではなく、振り返りをしながら、今日できたこと、できなかったことは何か、明日は何をすべきなのか、見通しを持った生活を送ってください。

 最後にプライベートなことから話します。私は一旦、地元宮崎県で就職しましたが、香川県に来ることになり、家族と会うことは少なくなりました。30歳を過ぎた頃から、家族との時間をもっと大切にすればよかったなどと思ったりします。皆さん方の中にも、ゆくゆくは県外で就職する人も多いのではないかと思います。県外で働くようになると、今、皆さんと一緒に暮らしている人、親、祖父母など、あなたたちの生活を支えている人と、ゆっくりと過ごす時間は、ほとんどなくなってしまいます。この冬休み、大掃除を手伝うなどして、家族との時間を大切に過ごしてください。3年生も、気分転換を兼ねて少しでもいいですから、家の手伝いをしてください。

 それでは、いい冬休みにしてください。以上で式辞を終えます。

2201003 10月全校集会(校長室から)

2022年10月3日 17時26分

10月全校集会講話

 ちょうど1年の折り返し点となりました。ここまでを振り返って、後半の過ごし方を考えて欲しいところです。今日はそのヒントとなることを話します。

 この半年間、皆さん方には具体の場面がわかるような話、皆さん方の生活に結びつくような話を主にしてきました。今回は、抽象的な話をします。頑張ってわかりやすく話をしますから、しっかりと聴いてください。

 皆さんは生きていくなかで、さまざまな場面で決断や判断が必要となります。生きることは、判断の積み重ねで、その結果が今の人生となっています。そして、これからどのような判断をしていくかで、今後の人生を決めていくことになります。

 そこでちょっと考えてみてください。さまざまな場面で判断するときに、何をもとに判断していますか。効率(こっちの方が楽だとか、有利だから)、まわりの多くの人がそうしているから、親が言うからなどで、判断をしている人もいるのではないでしょうか。そのような判断では、一貫性がなく、いきあたりばったりの判断になってしまい、後で後悔することもあるかもしれません。そこで、自分なりの判断基準を持てば、迷ったときにはそこに立ち返り判断することができます。

 今日は、稲盛和夫氏の考え方を紹介します。稲盛氏は、半導体や太陽電池などの製造で有名な京セラという企業を創業し、後に通信事業にも乗り出し、auをブランドとするKDDIも創業し、50年以上、経済界に大きな影響を与えた人物です。また、稲盛氏はしっかりとしたものの考え方を持ち、会社経営にあたったので、その考え方に惹かれ、若手経営者が教えを請いに集うようになり、多くの経営者にも影響を与えました。稲盛氏は8月末にお亡くなりになりました。ご逝去のニュースで、稲盛氏の考え方が再注目され、2004年の初版ながら稲盛氏の著書『生き方』は宮脇書店の週間ランキング(9月15日~21日)で4位にランクインしていました。

 稲盛氏の考え方を端的に表しているのは、人生や仕事の結果は、考え方×熱意×能力 によって得られる。というところです。仕事などの結果は、考え方、熱意、能力の3つの要素のかけ算によって表すことができるというのです。足し算ではなくかけ算です。能力が高くても熱意がなければよい結果は得られません。逆に能力が高くなくても熱意が高ければ、能力が高い人よりもよい結果が得られることもあります。そして、3つの要素の中で最も重要なのが「考え方」です。考え方とは、理念とか哲学という言葉で表すことができる、心のあり方をさします。数値化した場合、能力と熱意は、0~100で表すことができます。一方、考え方は、マイナス100~プラス100で表します。つまり、能力と熱意にあふれていても、考え方が間違っていると、結果はマイナスになってしまうのです。では、プラスとなる考え方にはどのようものがあるのかというと、思いやり、優しい気持ち、努力を惜しまないこと、みんなと一緒にやっていこうとすること、利己的でないことなどをあげています。これらはあたりまえの道徳です。ただ、それを頭で理解するだけでなく、常に実践し、体にしみこませることで、考え方となっていくと説いています。わかっているだけで実行できないことは、その人の考え方とは言えないのです。

 この公式を持つに至った経緯には、稲盛氏の挫折の多い人生経験があります。中学受験に失敗、その直後に結核にかかります。大学受験にも失敗、就職活動もうまくいかず、自分の不幸を呪い、ヤクザになろうと思ったこともあるようです。ようやく、小さな碍子製造メーカーに就職します。いつつぶれてもおかしくない会社で、同期入社の仲間は次々と辞めて、稲盛氏のみが残されてしまいます。そこで吹っ切れて、自分の運命を呪うことをやめて、前向きにやってみようと研究開発をはじめた。するとよい結果が出て、さらに前向きになって、ますます仕事に熱中し、さらによい結果が生まれる好循環が生まれてきた。考え方を変えることで、悪い循環をたって、よい循環が生まれだした。この経験によって、稲盛氏は、人生は自分の考え方で良くも悪くもできるという境地に至ります。

 稲盛氏はこうも言っています。原理原則に基づいた考え方に従って生きることは、物事を成功に導き、人生に大きな実りをもたらすが、それは楽な道とは限らない。己を律することで苦しみを伴うこともあるからです。しかし、長い目で見れば確固たる考え方に基づいて起こした行動は、決して損にはならない。一時的には損に見えても、やがて必ず利になって返ってくるし、大きく道を誤ることもありません。その場限りで見れば損をしているが、それでも守るべき考え方、苦を承知で引き受けられる覚悟、それが自分の中にあるかどうかが、成功できるかどうかの分かれ道となっていると語っています。

 「苦を承知で引き受けられる覚悟」、これを皆さん方の身近な言葉に言い換えると「パティマトス 英知は苦難を通じてきたる」です。坂高生の大半は、道徳心がある程度、身についているように思われます。ただ、その場限りで見れば損をしているが、それでも実行しようとする覚悟「パティマトス」は、まだまだ備わっていないようです。ここにたどり着くには、まだ時間がかかるのかもしれません。稲盛氏にしても、2学期の始業式で紹介したファミリーマート元社長の澤田貴司氏も、高校生のころには、うまくいかず、苦しい思いをしていました。

 まずは一つ一つの行動から変えていきませんか。その時に、目の前の損得勘定ではなく、正しいと思ったこと実行することを心がけてみましょう。そうした判断の積み重ねによる行動が増えてくれば、よりよい「考え方」は、皆さん方の中にしっかりと定着し、人生がより良いものになると信じています。

 稲盛氏の著書「一日一言(いちげん)」を図書室で購入してもらいました。私が話したこと以外、たくさん稲盛氏の考えが記されています。関心を持った人は是非読んでください。

220901 2学期始業式(校長室から)

2022年9月1日 12時47分

令和4年度二学期始業式講話(放送による)

                         R04.09.01

 みなさんおはようございます。

 夏季休業中の約40日間、どのように過ごしましたか。私は学校以外で仕事をする機会がありました。その中で特に印象に残っていることから皆さんに話をします。1つ目は香川県も会場となったインターハイ、2つ目は東京で開催された全国高等学校総合文化祭、そして3つ目が石川県の金沢市で開催されたPTA活動の全国大会です。

1つ目のインターハイについては、出場した生徒の活躍もうれしかったのですが、競技を支える裏方として多くの生徒、先生方が、バスケットボール、バレーボール、カヌー、登山、新体操の大会を支えてくれました。私が参加したカヌー競技では、出場選手、応援の家族がとても満足した様子でした。全国のカヌー競技の会長さんも、こんなに運営がスムーズな大会は珍しいと、運営にあたった方々をねぎらっていました。カヌー競技では、高校生と教員の競技役員に加えて、香川県カヌー協会の皆さんが大会運営にあたっていました。カヌー協会の皆さんは大人でご自身の仕事もありますが、インターハイを成功させるため、6日間も自分の仕事を休んで大会運営にあたってくれました。しかもカヌー協会のメンバーの大半はカヌーの経験がなく、子どもがカヌー部に入部したことがきっかけでカヌー協会のメンバーとなり、子どもが卒業した後も、今回のインターハイだけでなく、県総体や県新人大会、国体予選など、カヌー部が出場するすべての大会を支えてくれています。それぞれの部活動でも、部活動の顧問の先生以外に、大会運営を支えている人たちがいると思います。このようにボランティアとして動いてくれる人がいて、社会活動はうまくいっていることを再確認しました。皆さん方高校生も社会を支える人材として期待されています。学校へは、さぬき子どもの国や県立ミュージアム、坂出市社会福祉協議会、そして子育て支援施設などでのボランティア活動募集の案内が来ます。この夏は感染症罹患者が増えたため、子育て支援施設でのボランティア活動が中止したことは残念に思います。しかし、これからも社会の出来事に関心を持って、ちょっと気になることがあれば、自分にできることはないかという意識を持ち、可能であれば行動してみてください。

2つ目は全国高等学校総合文化祭についてです。今回は総合開会式、パレードなどを見てきました。それは令和7年度に、香川県で全国高等学校総合文化祭が開催されるから、その準備のためです。令和7年度ですから、次に入学した1年生が3年生になる時に開催される大会で、皆さん方に直接の関係はありません。ただ、もう準備が始まっています。1学期にはスローガンの募集がありました。本校生徒の作品ではありませんが、スローガンは「讃岐に咲は才の花たち」に決定しましたし、大会ポスターの募集が始まっています。そして、東京大会などを参考に香川大会をどのような大会にするのか検討も始まっています。このように、先人の取り組みを参考にし、積み重ねていくことから伝統は築かれます。学校も皆さん方の生活の積み重ねが、坂出高校の伝統となっていきます。後輩は先輩がやってきたことを参考としながら高校生活を送っています。2学期であれば次のようなことがあります。3年生がクラスの仲間たちと切磋琢磨しながら受験勉強に取り組む姿、2年生がクラスで団結して文化祭に取り組んでいる姿や文武両道を実現させようと努力する姿は、下級生に大きな影響を与えます。今までの先輩方も実現してきた坂高生としてのあるべき姿、今年も積み重ねてください。

3つ目は、PTA活動の全国大会についてです。大会で、ファミリーマート元社長の澤田貴司氏の講演を聞きました。澤田氏はユニクロに入社しフリースの開発にも関わり、その後ファミリーマートの社長に就任、サークルKサンクスとの統合を実現させ、ファミリーマートを業界第2位のコンビニに育て上げた方です。澤田氏は、「自分がやりたいことをやる」という信念を持つに至り、ファミリーマートの社長時代には、「客のためそして加盟店のためになっているか」という視点から正しいことは何なのか判断し、「自分がやる」と決断します。そして、自分がやりたいことをやるためには、周囲の理解と協力が必要ですから、自分の考えを周囲に伝えることにも力を入れたそうです。高校では部活動を途中でやめ、なにをするでもない中途半端な生活を送ったのですが、浪人生活を経て、大学でアメリカンフットボール部のキャプテンを務めたこと、最初に入社した総合商社、そしてユニクロでの経験などから「やりたいことをやる」という信念を持つに至ったように、話を聞いて感じました。高校生の皆さんに急にそんなことを要求しても難しいかもしれませんが、「まわりのせい、人のせい」ではなく、「自分なりの明確な考えを持ち、失敗しても成功しても自分のせい、だから自分のやりたいことをやる」という覚悟が持てるようになって欲しいです。特に3年生は実際の進路、1年生は文系と理系の選択について決めていく必要があります。その時に「親が言うから」ではなく、「自分はこうしたい」と言えるようになって欲しいのです。

最後に、学業に全力を注ぐことは当然として、「あいさつ」「遅刻をしない」「掃除をする」といった社会の一員として必要なマナーの徹底、そして、学校生活の中で何かに主体的に取り組むこと、これを意識して今学期も学校生活を送ってください。私たち教職員も全力で応援します。まずは、坂高祭を自分たちの力で成功させてください。

あいさつについては、学校周辺の人から、坂高生がよくあいさつをしてくれてうれしいとのお褒めの言葉をいただきます。坂出高校を応援してくれる人が増えることは、うれしいことです。

以上で、式辞を終わります。

2207201学期終業式(校長室から)

2022年7月20日 14時47分
1学期終業式式辞(校内放送による)

みなさん、おはようございます。

学校生活に全力を注ぎながらも、新型コロナウイルス感染症対策にくわえて、梅雨が早く明けたことにより、渇水対策、熱中症対策と、多くのことに気遣いしながらの1学期だったのではないでしょうか。

さて、終業式を迎えるにあたり、自分自身が頑張ったこと、出来ていなかったことなど、各自でしっかりと振り返りをしてください。始業式で、皆さん方に求めることとして、社会の一員として生活するために当然必要とされるマナーである「あいさつ」「遅刻しない」「掃除をする」こと、そして、学校生活の中で、何かに主体的に取り組むことにつて、しっかりとやって欲しいと話をしました。現時点でどうでしょうか。振り返りをすることは大切です。その節目として終業式があります。

私も、1学期の振り返りをします。うれしかったことが多かったので、そのいくつかを紹介します。

●地域の人から感謝されたこと(ソフトテニス女子の部員が自転車で転倒して出血しているお年寄りを助けてくれました。また7月にも音楽科3年生がお年寄りを助けてくれました)学校にお礼の連絡があったもの以外にも、きっと他にも、このようなことをしてくれているのだと思います。

●ボランティア活動や国際交流の校外での活動を呼びかけたら、多くの生徒が手を上げたこと。

●インターハイの運営のためにも多くの生徒が協力してくれること。高校運動部の最高の舞台を支えてくれて、ありがとうございます。

●あいさつをしてくれる生徒が増えたこと。みんなと元気にあいさつを交わすことで、私はさらに元気になれます。

●部活動では、結果だけでなく、みんなの頑張っている姿をみることができたこと。

●負けてはしまいましたが、野球応援で多くの生徒が一緒に喜びを分かち合うことが出来たこと。感染症対策で一堂に会して活動する機会が減っています。それだけにみんなとメガホンをたたいて応援できて、私はうれしかったです。

明日から夏休みです。現在はエアコンが整備され、夏休みを短くすることは可能なのかもしれません。しかし、夏休みを40日間とる学校がほとんどです。それはなぜか。皆さん方の自主性を育てたいからです。ゼミや部活動があるとはいえ、かなりの時間の過ごし方を皆さん方に任せます。

3年生はやるべきことは当然わかっていることと思います。6月のマーク模試の結果を見ましたが、自分の志望校に手が届かない人もいました。しかし、それは、県総体が終わった直後の模試での判断です。この夏休みで、どれだけやったかで大きく変わります。学習の成果はすぐには現れませんが、秋には成果が現れてきます。それを信じて、この夏はとことん勉強してください。また、部活動を続けている皆さん、まさに文武両道を実現して欲しいところです。

1年生と2年生ですが、学校が出す課題をすることは当然として、残りの時間をどう使うのかが重要です。1学期の学習で不十分であったところをやり直すことや、さらに力を付けるための学習に加えて、部活動、文化祭の準備と、やることはたくさんあります。自分は何をすべきなのか、しっかりと考えておいてください。そして、1~2年生には、もう一つやって欲しいことがあります。総合的な探究の時間で取り組んでいる内容(2年生なら自分たちが調べて気になったこと、1年生なら職業について)、とことん調べてみてください。必要であれば、実際の会社などに出向いて調べてください。学校での学習、友達同士から入ってくる情報以外の、実際の社会の情報にふれて欲しいのです。

 先日、学校評議員会が開かれました。これは坂出高校を支援してくれる外部の有識者(坂出市役所の職員、保育士、香川大学の先生、坂出商工会議所の役員)から構成され、本校の活動について報告し、助言をもらうための会議です。評議員さんから、生徒が実社会で学ぶことは大切で、高校で学ぶ意欲が高まることや、大学進学などでのミスマッチを防ぐことにもつながる大変意義があることだと、助言をいただきました。また、坂出高校の活動であれば、是非協力したいとおっしゃっていただけました。これは、本校の卒業生と皆さん方が築いてきた信頼のおかげです。

最後に、7月8日、参議院選挙の応援演説中に安倍元総理大臣が射殺されました。そのことについて話をします。容疑者の意図は言論を封じることではなかったようですが、選挙運動中に起きた蛮行で、民主主義の根幹を揺るがす出来事です。民主主義を十分に機能させるための重要な要素の一つが、言論の自由です。制限されることなく自分の考えを自由に発することができることです。言論の自由によって、多様な意見が発せられ、その多様な意見をもとに話し合い、答えを出していくことが、民主主義での、ものごとの決め方です。自分と異なる考えを暴力で封じたり、全く受け入れることがなかったりする状況は、健全な民主主義とは言えません。時間はかかりますが、多様な意見をもとに話し合い、答えを導き出すことが、社会の発展、住みやすい社会の形成に必要不可欠なことです。それが出来ることが、現代社会を生きる私たちに求められている力です。

皆さん方の日常生活、たとえば、部活動、文化祭の準備など、自分たちで考えて行動する機会がたくさんあります。そのような場面で、意見を言うことが尊重され、そこから納得する答えを導き出すことができる集団であって欲しいと思います。

それでは、9月に充実した表情の皆さん方に会えることを楽しみにしています。

220407入学式(校長室から)

2022年4月7日 12時00分
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式  辞

桜花爛漫となった本日、ここに、PTA会長 大林朋美 様のご臨席と、保護者の皆様のご列席を賜り、香川県立坂出高等学校 令和4年度入学式がこのように盛大に挙行できますことを、教職員一同を代表し心から御礼申し上げます。

只今、普通科230名、音楽科19名、合計249名の入学を許可しました。皆さん、入学おめでとう。心からお祝い申し上げます。

皆さんが入学した坂出高校は、大正6年、1917年に、香川県立坂出高等女学校として開校しました。戦後の昭和24年、高等学校再編成により現在の校名となり、男女共学の学校となりました。また、昭和42年には音楽科が設置され、現在の学校の形になりました。今年度、創立106年目を迎え、国内外の様々な分野で活躍する29000名を超える卒業生を輩出してきた伝統校です。そのような坂出高校の一員として、本日皆さんを迎えることができ、大変うれしく思っています。

さて、坂高生となった皆さんが、高校生活の指針として欲しい言葉があります。それは、坂出高校のモットーであり、校歌にも歌われている「高邁自主」という言葉です。「高邁」とは、「気高く高潔な、こころざし」という意味ですから、「高邁自主」とは、「高いこころざしを掲げ、自らの判断で自ら行動を起こす」姿を現します。坂高生はこの言葉を胸に、学業、部活動、学校行事などに向き合い、成果を挙げてきました。「高邁自主」が坂高生の精神、坂高スピリットと言えます。

 「高邁自主」を実践するうえで、大切となる心構えが「パティマトス」です。

「パティマトス」とは、正門に入って正面にある石組みに刻まれた言葉です。今から57年前に、創立50周年を記念して、当時の校長が本校で学ぶ生徒に贈った言葉です。「パティマトス」はギリシア語で、「英知は苦難を通じて来たる」という意味です。つまり、楽しいことばかりではなく、つらいことやしんどいことに向き合って、高い志は実現できるのです。「高邁自主」だけでなく、「パティマトス」も心にとどめ、高校生活を送ってください。

現代社会は、情報通信技術の発展により、社会変化のスピードが急激に早まりました。さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大やロシアのウクライナ侵攻など、私たちが予想しなかったことが起き、その対応に苦慮しています。新たな生じた問題に対して解決策を考え、実行する力が求められる時代となっています。

具体的には、自らの問題として、社会の様々な問題に向き合い、解決に向けて他者と協力して粘り強く取り組んでいく力です。この力は、「高邁自主」を基盤においた本校の教育活動によって培うことができると確信しています。皆さんが、学業、部活動、学校行事や生徒会活動に十分に励み、社会で活躍できる人材に成長することを望んでいます。

保護者の皆様、お子様の入学、おめでとうございます。民法の改正により、18歳になると、法律的には、成人、大人として扱われ、自分で判断し行動することが求められるようになります。それだけに、高校3年間でお子様に自立する力をつけさせることが求められます。ご家庭においては、べったりや突き放しではなく、少しの距離を置くことで、お子様の様子を、時にあたたかく、時に毅然と見守ってください。また、家庭と学校が十分に連絡を取り合い、お子様の教育を進めてまいりたいと思いますので、ご理解とご支援を賜りますよう、お願いいたします。

最後に、新入生の皆さんが今日の感激と感謝を忘れることなく、学業に、また人間形成に大いに励み、充実した素晴らしい学校生活を送ることができるよう期待し、式辞とします。

令和4年4月7日

香川県立坂出高等学校長 真下拓也

校長室から(H30~R03)

ご挨拶 ~坂出高校の現況と全国からの生徒募集について~

2022年3月21日 09時24分

黒島校長 

坂出高等学校ホームページへお越しくださいまして、誠にありがとうございます。

 令和2年度は本校にとって創立103年目、音楽科創設53年目に当たります

 今年は年明け早々から新型コロナウィルスという未知の敵の攻撃にさらされ、3月から5月までの間、学校は臨時休業が続き、授業や学校行事、部活動などの教育活動をほとんど行うことができませんでした。このことは、どの学年にも深刻な影響を与えました。1年生にとっては、入学式はできたものの、高校の授業未体験に加え、部活動への入部やクラスの友人との人間関係を築くといったことができないままの休業中は、どれほど不安であったことかと推察します。2年生にとっては学校の中心として活躍するはずだった、体育祭や文化祭そして総体やコンクールなどの出場機会をすべて奪われました。生徒会で活躍を期していた皆さんにもその機会を奪うことになりました。そして3年生。受験が近づく中にあって、受験の出題範囲の授業がまだ終わっていない教科・科目も多く、問題演習等も全く不十分、しかも入試制度自体が大きく変わる令和3年度入試初の受験生となるというプレッシャーは大変なものであったと思います。

 6月から学校は再開したものの、まずは授業の遅れを取り戻すためにほとんどの行事をカットしました。これには新型コロナウィルス感染拡大防止という狙いもあったわけですが、生徒の皆さんにとっては、面白みのない学校生活だと感じたに違いないことでしょう。県総体をはじめ、野球部の夏の大会や音楽(合唱・吹奏楽)関係のコンクールもほぼすべてが中止になりました。運動部についてはほとんどの競技で代替大会が開催されたわけですが、県レベル以上につながる大会もない中で悔しい思いをした人も多かったはずです。そのような中で私は生徒の皆さんに、「前を向いて頑張ろう」という言葉しかかけることができませんでした。非常に残念な気持ちは、今も私の中でくすぶっています。

 さて話題は変わりますが、香川県の人口が95万人ほどに減少しました。20年ほど前には103万ほどであった人口が約8万人減ったということです。さらにはこのままの減少傾向が続けば、20年後には80万人程度になるという推計データもあるようです。このような状況下、香川県教育委員会は、令和3年度高校入試から「全国からの生徒募集」を行うことを決めました。

 私たちの学校でも普通科・音楽科ともに、この募集を行うことになりました。香川県教育委員会は、ホームページで「他県の生徒と本県の生徒が共に学ぶことにより、多くの刺激を受けることで、異なる価値観を受け入れ理解しようとする姿勢や自分の意見を他者に伝えるためのコミュニケーション能力を育成するために、全国からの生徒募集を実施します。」とし、概要と学校紹介も掲載しています。このページからもリンクを張っていますので、県外の中学生の皆さんは是非のぞいてみてください。坂出高校としては、この全国募集をさらなる飛躍のチャンスととらえ、今後ますますの発展の起爆剤としたいと考えています。これまでも音楽科では県外生徒を受け入れてきましたが、次年度入試からは自己推薦選抜での受検も可能になります。また普通科は一般選抜のみとなりますが、特色がある「教育創造コース」(将来教師を目指す)や、「文理コース」(クラス全員で国公立大学を目指す)で学び自分の可能性を広げてみませんか。県内生はもとより、多くの県外の皆さんが受検されることを心待ちにしています。「香川県内生と県外生がともに切磋琢磨して行ける環境が坂出高校にはある。」と自信を持って言えます。坂出高校で夢を叶えましょう。

   令和2年10月6日

                                              学校長 黒 島 俊 哉

令和2年度第2学期始業式辞(8月19日(水))

2022年3月21日 09時23分

 今年の2学期は例外的に早く始まることになった。文化祭も行えないが、3年生にとっては本格的な進路選択に向かって動き始める時期となった。とは言え、国公立大学を志望する皆さんにあっては、来年3月の後期試験まで見据えた根気強い努力が求められるということは忘れずにいてほしい。また、1年生と2年生の皆さんには、坂出高校のモットーである「高邁自主」の精神の下で、学業と部活動や生徒会活動等を両立させるという気持ちを忘れず日々精進していってほしい。
 さて、今回から数回にわたって皆さんに香川県が生んだある偉人の話をしようと思う。その人の生涯は、時代背景とも相俟って実に波乱万丈なものであるとともに、その思想等について大いに学ぶべきところがあると思うからである。
 そのある人というのは、南原繁(なんばら しげる)先生である。坂出という中讃地域にあっては、その名を知る人は少ないと思うし、香川県でもその名を知る人はごく限られていると思う。その理由の一つは、南原先生が現在の東かがわ市(以前の大川郡引田町)相生(あいおい)という香川県の東の端、徳島県との県境のご出身だからである。  私がなぜ南原先生の話をするかというと、先生の出身である三本松高校にかつて勤務した経験があり、坂出高校の校長室に『我が歩みし道 南原繁』という650ページにも及ぶハードカバーの本を発見したからである。なぜその本が坂出高校にあるかはさほど重要でもないので、早速先生の略歴について紹介する。
 南原先生が生まれたのは、明治22年(1889年)なので今から132年前。坂出高校の開校が大正6年(1917年)なので、本校よりも年齢がいった方ということになる。尋常小学校、高等小学校等に学んだ後、12歳で香川県立高松中学校大川分校(2年後に大川中学校として独立)に入学。自宅から片道3里ほど(約10km)を徒歩通学で通う。無欠席だったとのこと。17歳で卒業後、第一高等学校(現在の東京大学教養学部)に入学。20歳で東京帝国大学法科大学政治学科(現在の東京大学法学部)に入学。大正3年に24歳で卒業するわけだが、その年に第一次世界大戦が勃発している。卒業後は文官高等試験(現在の国家公務員試験上級)に合格し内務属(現在の総務省)に入る。27歳で志願して富山県射水郡の郡長(市長と県知事の間のような職)になるも、2年後に内務属に呼び戻され「労働組合法」草案の作成にかかわる。31歳の時、内務属をやめ東京帝国大学法学部助手となる。元々、研究に身を置きたいという希望があったとのことである。2年間ほどの留学期間中の大正12(1923年)に関東大震災が起こっている。その後帰国し、35歳で東京帝国大学教授となる。時代は昭和へと移り、昭和6年(1931年)の満州事変、翌年の五・一五事件、昭和12年(1937年)の盧溝橋事件、そしてついに昭和16年(1939年)の第二次世界大戦、2年後の太平洋戦争へと進む。まさに「戦争の時代」と言われることがある昭和の激動期である。その昭和20年3月、太平洋戦争末期(終戦は8月15日)に法学部長に選出される。さらにその年の12月に東京帝国大学総長となり、62歳まで6年間の任期を全うした。戦後は昭和21年に公布された現在の日本国憲法の下での教育改革にも影響を与えた。亡くなられたのは昭和47年(1974年)、84歳の時であった。
 南原先生の講演や随筆をまとめた『我が歩みし道 南原繁』は先にも言ったように650ページにも及ぶものであるが、私がそれを読み通せたのは先生の言葉や生き方・考え方に共感するところが多々あったがためで、生徒の皆さんや先生方にもぜひ紹介したいと思ったからである。
 先生は、「相生」という地が香川県でも高松以西の地方(「西讃」と呼んでいる)に比べて道路交通網が不便で文化も発達が遅れていたとか、自身の家が没落しており読む本もなかったというふうに何か所にも書かれているのだが、言葉遣いや使っている漢字が非常に難しく、私も解釈に苦労したことがたびたびあった。今日は一つだけ、南原先生が、第二次大戦後の紀元節(現在の建国記念の日)に東京大学の学生に向かって話したことを紹介する。原文ではわかりにくいと思うので、私の解釈を交えて紹介する。
 日本人が今回の戦争で敗北し、自己に対する尊敬や自信を失い、自暴自棄に陥っているようなところはないだろうか。振り返ってみれば、満州事変以降軍部の台頭以来、日本民族の神話や伝統を濫用し、曲解し(曲げて考えること)日本民族の優越性を大げさに叫び、アジアとひいては世界を支配するべき運命を持っているかのように言ってきた。しかし、それは「日本人のみが選ばれた民族である」という誇大妄想以外の何物でもない。このような考えの下で第二次大戦が始まり、現在の国の崩壊に至ったのである。このような事態に至ったのは、軍や一部官僚、政治家の無知と野心からではなく国民自身の内的欠陥にある。そしてその欠陥とは、日本人一人ひとりが一個独立の人間としての人間意識の確立と人間性の発展のなかったことである。元来人間の思想の自由と政治的社会活動の自由は、この人間意識から生まれるものである。しかしながら、日本においては人間個人が固有の国の形の枠にはめられ、個人の良心の権利と自己判断の自由が著しく拘束を受け、人間性の発展はなされなかった。国民は少数派の虚偽に導かれその指導に盲従してきたのだ。この点において、日本は近代西洋諸国が経験したルネッサンスを見ることがなかったと言えるだろう。
 すなわち、日本を戦争へと導いたのは軍部の言論統制や思想の統制によるところが非常に大きく、個々人で自由にものを考えることが許されなかったせいであるということを言っている訳である。
 このような演説を終戦後間もない時期にしたこと自体、南原先生が日本を戦争へと導いた軍部の存在がないかのように堂々と持論を展開した度胸が窺われるとともに、何よりも現在ではごく当たり前に考えられているヒューマニズムの精神を見て取ることができると感じる。少し難しいと感じる人もいるかもしれない。この話は、また本校のホームページに掲載しておくので、興味がある人は読んでもらいたい。
 今日からの学校生活、皆さんの一人ひとりがしっかりと目標をもって最後まであきらめないという気持ちで頑張ってくれることを期待している。

令和2年度1学期終業式講話(放送による)(7月31日(金))

2022年3月21日 09時22分

 今年度は開始早々からコロナに悩まされた。まずは勉強の遅れをずいぶん心配していたが、文化祭を始めとして行事の精選を図ることや夏休みの短縮等で、ある程度挽回できる目途が立ってきた。しかし、取り返しがつかない状態になってしまったのは部活動、とりわけ県総体から始まるインターハイ、全国高等学校野球大会、合唱コンクール、吹奏楽コンクール等である。中には代替大会が開催されたところもあったが、所詮は「代替」であり、本大会ではなかった。悔やんでも悔やみきれない人がいることだろう。

 しかし、皆さんの頃には「人生100年」。歳を重ねた時に、「ああいうこともあったな。」と、「災難にあった若い人を勇気づけられる経験になった」くらいに考えてほしいものである。学校再開前日の5月31日に皆さんに一斉メール配信したとおり、前を向いて頑張っていただきたいと願っている。

 さて、今年度の大学入試においては、坂出高校からは117名の国公立大学合格者を出した。昨年の124名には少し及ばなかったが、大まかな話をすればここ3か年は、3年生のうち40%を超える生徒が国公立大学合格を果たしたことになる。先輩がなしえたことは皆さんもなしえる。学校の伝統というのはそういうものである。

今日は進路指導部の先生方が編集してくださった「進路資料」の中の合格体験記に目を通して、印象に残ったところを話したいと思う。もう読んだ人もいると思うが、私が特に印象に残った箇所を挙げたい。

【坂高の環境(授業・友人・先生方)】
・ 学校の教室に残って勉強することを奨めます。先生方の添削指導が丁寧です。教室でおしゃべりすることで、ストレス発散や試験に対する不安を紛らわせることができる。(複数名)
・ 授業にしっかり真面目に取り組み、定期テストを大切にすること。受験では教科書の範囲から問題が作られる。(複数名)
・ 私が勉強しているときに使っていた教材は、ほとんど学校で買ったものや教科書ばかりです。プリントやワーク類も有効に活用しました。(複数名)
・ 受験勉強も二次対策も、学校を中心にしてきました。
   ⇒ 坂出高校中心の生活を真面目に送ること、本校の先生方の指導を信じてやり抜くことで、受験を突破する力が付くということがわかる。

【塾との関係】
・ 1年生の時、途中でやめた。理由は10時に塾が終わって翌朝7時に起きるまで、自分が使える時間は睡眠時間も含めても最大9時間しかありません。
・ なぜ合格できたのか、一番の理由はやっぱり普段の勉強にあったと思います。私は塾に通っていなかったので、授業をしっかり聞いたこと、定期テストは理解できていない箇所がないように勉強していた。
   ⇒ 「大学合格=塾通い」という図式は成立しないと言える。

【部活動との関係】
・ 私は吹奏楽部に所属しており、10月末までフルに部活動に取り組んできました。時間はとにかくなかったですが、部活が忙しいことを言い訳にはしたくなかった。部活をやり切ったということが合格に導いてくれた理由の一つだと思う。
・ 部活動をやらない方が成績は上がると考えている人もいますが、自分には当てはまらないと思います。「小人閑居して不善をなす」という言葉があるように、時間ができたらダラダラしてしまい、勉強もはかどりません。私にはハードスケジュールの方が勉強に身が入ると思いました。(複数名)
   ⇒ 文武両道は実践できることが証明されている。

【受験全般】
・ 受験は本当につらく厳しいもので、何度も投げ出したくなります。でも受験は自分を人間的に成長させてくれるものだし、この苦しい一年を乗り切ったということは人生における自信につながります。苦しいこともたくさんあると思いますが、大学生になった自分の姿を思い描きながら、希望する自分の進路に向かって精いっぱい頑張ってください。
・ 模擬試験での判定が悪くても(DでもEでも)、最後まで後悔しない選択を。=第一志望貫徹という気持ちで。
・ 合格までの道のりを逆算して、すぐに行動に移すべきです。
・ 最後まであきらめずに頑張ってほしい。受験は長く、とてもしんどいです。でも諦めずにコツコツ勉強すれば絶対に力らはつきます。
   ⇒ 私も3年生の担任をしていた時に感じた。「実るほどこうべを垂れる稲穂かな」とも言われる。受験は人間力を高める機会でもある。

【推薦入試関係】
・ 公募制推薦で受験する人は、まず自分のやりたいことを明確にしておくこと。面接で自分の言葉で伝える必要がある。
・ 総合的な学習の時間では、自分の学んでみたい分野である地域活性化に関する本を読んでレポートにまとめたり、瀬戸内国際芸術祭に足を運んでスタッフや観光客の方に取材をしたり、地域の現状について坂出商工会議所の方からお話を聞いたりしました。
   ⇒ 今後はますます、ペーパーテストで少々点が取れるだけでなく、何に興味をもって、総合的な探究の時間などで、どういう活動をしてきたかが大学入試において求められる。総合探究にしっかりと取り組んでほしい。

 今年は大変短い夏休みとなる。しかしその間に、1学期の自らの生活を振り返り、至らなかった点があればそれを反省して今後改善してほしい。もちろんうまく1学期が過ごせた人は、そのペースを崩さないように生活してほしい。

 皆さんが、「短かったけれどいい休みだった」と言えることを期待して話を終える。

令和2年度5月31日 学校再開にあたって ~生徒の皆さんへ、全校集会に代えて~

2022年3月21日 09時21分

 このたびの新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中に大きな影響を与えました。まず、世界で558万人を超える感染者と35万人を上回る死者を出したこと。(アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学の5月27日の集計による。)そして、経済への計り知れないダメージを与えたということです。

 私たち坂出高校の日常も、ほぼすべてがストップしました。4月6日に始業式を、7日に入学式を行い、その後2日間授業をしただけで臨時休業の措置となったからです。通常であれば年度初めに行われる様々な団体や組織の「総会」というのも、ほぼすべてがなくなり、書面による議決が多く行われました。本校のPTA総会の中止もそのうちの一つです。

 人間は一人では生きていけないものですが、お互いが物理的に過度に寄り添うこともできなくなってきたと感じます。それは、今回国の専門家会議から「新しい生活様式」というものが提言されたからです。まず、基本的感染対策として、「人との間隔はできるだけ2m(最低1m)空ける」。食事については、「大皿は避けて料理は個々に」「対面ではなく横並びで座ろう」「おしゃべりは控えめに」。冠婚葬祭の場面でも、「大人数での会食は避けて」。働き方の新しいスタイルとして、「テレワークやローテーション勤務」、「会議はオンライン」、「名刺交換はオンライン」。そして、「対面での打ち合わせは換気とマスク」。

 このウイルスに打ち勝つまでの期間限定だとは思いますが、少し前に見たテレビで、ある感染症の専門家が、「3年から4年くらいはこのような生活をする必要があるのではないか。」と言っているのを聞き、愕然としました。治療薬やワクチンができていない現状では、私たちには「生活様式を変える」しか手はないということです。

 さて、5月25日に全国の緊急事態宣言が解除され、私たちの坂出高校でも明日6月1日(月)から「学校再開」ということになりました。生徒の皆さんにあっては、木曜日、または金曜日にHRで配布された『感染症予防を意識した学校での過ごし方』をよく読んで、感染防止のための基本的な習慣(手洗いの励行やマスクの着用、そして咳エチケットを守ること、ソーシャルディスタンスを確保すること等)を、できる限り意識して行い、「自らが感染者にならない、あるいは、すでに感染しているが症状が出ていないだけかもしれない、そして周囲にいる大切な人を感染させない」ということを常に念頭に置いた生活を送ってください。そして、体調不良の時には、ためらわずに学校を休んでください。  しかし一方では、社会的距離をとりつつも、級友らとの親交を深め、生涯にわたって付き合っていけるような友だちを見つけてほしいと願っています。高校時代の友人は、一生ものです。特に1年生の皆さんは、可能な限り部活動に入部し、「高邁自主」や「パティマトス」の精神の下、自己鍛錬にも励んでいただきたいと思います。

 そして、これが私からの一番のお願いです。万が一、皆さんのだれか、先生方のだれかがこのウイルスに感染するようなことがあっても、決してその人を責めないでください。だれもこの病気にかかりたいわけではありません。決して、二次被害を出してはならないのです。

 文化祭、体育祭もなく勉強中心の生活となります。インターハイも県総体も、合唱や吹奏楽のコンクールも、いろいろなイベントや大会がなくなり、それを楽しみに、また励みにしていた皆さんの心中を察すると、本当に胸が張り裂けそうな思いです。特に3年生。「総体等で区切りをつけて受験勉強に切り替える」というのがこれまでの典型的なパターンだったわけですが、今回はそれがかなわない可能性があります。競技ごとに、県総体の代替の大会開催を模索中のようではありますが。

 本当に厳しい状況ですが、ひとまずは学校再開です。これは喜ばしいことです。生徒の皆さん一人ひとりが、しっかりと前を向いて頑張ってくれることを期待しています。私たちも、皆さんを懸命にバックアップしていく覚悟です。

                                     令和2年5月31日 坂出高等学校長 黒島俊哉

令和2年度1学期始業式辞(4月6日(月))

2022年3月21日 09時20分

 まずは、今日、皆さんと再会できたことを、大変嬉しく思っている。新型コロナウィルスの感染拡大を防止するという観点から、3月2日以降ずっと皆さんには自宅待機をお願いし、春休みに入ってからさえも、部活動も禁止が継続された中にあって、ずいぶんと心細い日々を送ってきた人が多いのではないかと心配していた。

 皆さんが実際にどのような生活を送って来たかは分からないが、旧1年団と旧2年団から3月25日の教科書販売の前に、それぞれの学年主任の先生が送信したメールには、いいことが書かれてあったと思う。

 皆さんの携帯電話に直接送られたわけではないので、もしかすると家族の方から聞いていない人もいるかもしれない。こういう内容が書かれてあった。

お子さまに対して
 「今回の休業は、誰も過去に経験がなく、学習活動、部活動禁止、各種大会中止など多くの混乱も招いています。しかし、こんな時こそ、今、何ができるのかを考える機会ではないでしょうか。(入学してからの1年間を振り返る)、学習内容を復習する、苦手科目を集中的に復習する、進路について考える・調べる、読書するなど、できることをやり、自分を成長させる機会にしてはどうでしょうか。ぜひ、お子さまに伝えていただきたいと考えています。」

 今回のような非常事態は、だれも経験したことがないというのは事実である。私も、これまで経験したことはない。世の中の多くの人も同じだと思う。こういう事態が起こった時、すなわちピンチに陥った時、それをチャンスに変えることができるかどうかということが、人間の成長にとっては非常に大きな、まさに自分が試される時ではないかと思う。そういったことが、先に紹介したメールには書かれてあった。

 さて、この新型ウィルスの感染拡大が完全に終息するのがいつになるのか。今のところでは誰にもわからない。オリンピック・パラリンピックも1年程度の延期ということではあるが、果たしてそれで本当に1年後に開催できるかというと、実際にはどこにもその保証はない。何となく、「そこまでには何とかなっているのではないか。」という漠然とした呑気さからこのような決定がなされたように私には感じられる。

 学校行事についても、まさかこのような事態になると想定することなく、昨年末あたりから年間計画を策定してきた。事態の急変に伴い、予定変更がたくさん起こるかもしれない。感染拡大が絶対に起こることがないようにするという観点から、皆さん一人ひとり、そして周囲の人たちの健康を守るという観点からそれは仕方がない、いやむしろ当然のこのことと理解してほしい。

 今決定している行事予定の変更を伝えておく。先生方や保護者の方とも協議しての結果である。まず、①4月15日から予定していた音楽科新2・3年生の海外交流演奏旅行は、事態終息が見えるまでの間、無期限の延期とした。②4月下旬に予定していた遠足は、当面の間延期とした。これら2件はいずれもキャンセル料がかかってくることもあっての判断であった。さらには、体育祭や文化祭など、皆さんが楽しみにしている行事についても、見直す必要が生じることが考えられる。

 県総体、それに続く四国選手権については、今のところ特段の連絡はない。繰り返しになるが、今回の事態はおそらく歴史上に名を残すことになるだろう。皆さんが残念に思う気持ちは察して余りがあるが、「みんなが元気で、かつ感染を広げない」ということを至上命題にした対応が求められているということを十分に理解してほしい。

 いずれにしても、今日皆さんの元気な顔を見られたことは、私だけでなくすべての先生方にとって大変うれしいことなのだが、同時に、このあとで保健主事の橋本先生がお話しされることを徹底して守ってほしい。一人でも感染者が出たら、即、再び臨時休業となることは確実である

 新年度初めから大変緊張を強いる話をしたが、時節柄ご容赦願いたい。

 さて、令和2年度が始まる。明日の入学式では251名の新入生を迎え、坂出高校は生徒768名、補習科生4名、教職員68名、時間講師・SC等30名の総勢870人でスタートを切る。勉強の面でも部活動の面でも、皆さんのそれぞれの場所で、一生懸命に頑張ってほしい。先生方には皆さんをバックアップするようにお願いしている。

 特に皆さんには、「志望を高く掲げて努力する」ことを求めたい。健闘を期待している。   

令和元年度2月全校集会講話(2月3日(月))

2022年3月21日 09時19分

 今日からは3年生が家庭学習に入った。これは、3年生の多数が大勢大学等の受験に出かけるために学校で授業することができないということから始まったものであろうと思うが、歴史は古く、私が高校生の時には既にあった制度である。今日からは完全に2年生は3年生の役割を、1年生は2年生としての役割を自覚して生活してほしい。

 さて、私は年齢を重ねるにつれて、感動することが少なくなってきたと感じる。悲しいことである。その私が、最近大変感動したことがある。それは大相撲初場所での徳勝龍関の幕内優勝である。今年の初場所は、横綱の白鵬と鶴竜がともに序盤で途中休場して不在であったが、徳勝龍関は初場所の幕内力士42名中、西の前頭17枚目といういわゆる「幕尻」という最も地位が低いところにいた。私も詳しくは知らないが、大相撲で最も地位が高いのは東の横綱ということで、初場所では白鵬がその位置にいたわけである。

 徳勝龍関は、14日目に優勝争いをしていた前頭4枚目の正代関に勝利して、翌日の千秋楽での正代関と自身の勝ち負けいかんでは優勝の可能性が出ていた時にも、報道陣に向かって「全く意識していない」と言っていた。

 しかし、千秋楽で優勝が決まった直後には土俵上で号泣し、インタビューでは「数日前からものすごく優勝を意識していたし、緊張していた。」と明かした。これには報道陣も一杯喰わされたという格好になったわけであるが、皆さんもよく考えほしいのだが、大相撲の幕内優勝できるかどうかという瀬戸際で緊張せずにいられる人が果たしているのだろうか。大相撲の歴史に名を残し、国技館にも大きな絵が掲げられるという大変な名誉を手にする前にだ。

 千秋楽は大関の貴景勝関との相撲だったが、解説者とNHKのアナウンサーが取組前に、「変化する-真正面から当たるのを避けて、素早く横にそれる-こともありうるか」と言っていた言葉を覆し、真正面から当たっていき、最後には堂々の寄り切りで勝利したその勝ち方も非の打ちどころがなかった。正々堂々と大関を破ったわけである。

 徳勝龍関は、近畿大学相撲部出身の力士だそうで、初場所中に大学時代の恩師が亡くなり精神的につらかったということで、監督が土俵で一緒に戦ってくれたと語っていた。貴景勝に勝った直後に土俵の上で号泣したのは、その恩師への想いもあったのだということである。また、インタビューで「もう33歳ではなく、まだ33歳だ。」と語ったことも私には印象深かった。

 その一方で、徳勝龍関と同じ33歳の大関、豪栄道関がカド番であった初場所での負け越しを理由に引退を表明した。初場所が終わってすぐのことである。また、同い年には、昨年引退した元横綱の稀勢の里関もいる。人生は本当にさまざまだなと思う。

 私が今日この話をした理由を皆さんはもう分かっていると思うが、  前例がない(ほとんどない、少ない)ことでも起こりえる。前例がないからといって、何かをやる前に諦めるべきではない。いかなる可能性も否定できない。つまり「幕尻の力士の優勝はないだろう」とか、「33歳の力士の初優勝はないだろう」というような思い込み(決め込み)である。確かに、徳勝龍関が初優勝を決めるまでは、それはほぼなかった。ただし、幕尻での優勝は過去に一度だけ例があった。

 ただ、こういった少ない例や前例がないというのを覆すところには、必ず存在するものがある。それは何だと思うか。それは、私は「信念」と「努力」ではないかと思う。

 以前にも話したことがあると思うが、自分の成長を阻害しているのは自分である。勉強でも部活動でも、「自分はここまで。」と決め込んでしまう。一旦そう決め込むと、それ以上の進歩は絶対にない。

 だから、みなさんもやるべきこと1つ1つに対して、人からどういわれようが思われようが、自分の限界を決めずに、とことん自分を信じて一生懸命に取り組んでほしい。もしかするとその努力が報われないということがあるかもしれない。しかし、努力することなくして成功や成長はありえない。

 繰り返すが、これは勉強の面でもそうだし、部活動の面でもそうである。本校で弓道部の顧問をしていただいている英語科の泉田先生は明確に仰る。「てっぺん(日本一)をとるつもりで弓道を指導しているに決まっている。」また、野球部の監督をお願いしている数学科の上原先生も「甲子園出場が目標である。」と明確に仰っている。皆さんもそういった気概をもってほしい。そうすれば自ずと道は開ける。

 こういう考え方は、英語圏にもあるようである。それは、このことわざに見て取れる。 Where there is a will, there is a way. 日本語では「精神一到何事か成らざらん。」というように訳されることが多いが、直訳すれば、will(意志)があるところに道ができる(拓ける)という意味である。逆を言えば、意志がなければ道など拓けないということだ。

 坂高生である皆さんの生活ぶりに大きな注文があるわけではないのだが、敢えて言うならばこういった点である。夢を持ち、それをつかもうと自ら努力する姿勢である。「高邁自主」。忘れてはいまいか。次の学年への切り替えの時期、今一度確認してほしい。

令和元年度3学期終業式講話(1月8日(水))

2022年3月21日 09時18分

 令和2年、2020年が幕を開けた。今年は全国的に見れば、オリンピック(7/24~8/9)とパラリンピック(8/25~9/6)が昭和39年(1964年)以来56ぶりに日本で開かれる年であり、それが最大のビッグイベントということになるだろう。

 一方で高校生に目を転じれば、そのオリンピック東京開催のために、高校総体(インターハイ)が全国に分散させて開催されることになる。本来は北関東地区が担当して行うはずだったものが、オリンピックの開催時期に日程が近く、会場や選手の宿泊等に支障があるというのがその理由のようである。

 そのうち坂出市では府中湖がカヌーのインターハイ会場になる。本校と坂出工業高校にはカヌー部があるが、カヌー部のない坂出商業高校と坂出第一高校にも応援を要請して、「高校生活動」と称した、式典運営や放送、記録係や案内係、美化係や弁当係といった活動をお願いすることになる。3学期中にはどの学校でどの係を担当するかを話し合うので、特に現在の1年生(新2年生)と今年入学してくる新入生にはお手伝いをお願いしなければならないことを予告しておく。期日は8/10~8/15の6日間で、1日当たり20名程度となる見込みである。

 さて、今年はねずみ年であるが、干支というのは皆さんも古典の授業で習ったと思うが、「十干十二支」の十干の「干」と十二支の「支」をとったものである。今年の十干は「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」のうちの7番目の「庚」である。したがって今年の干支は『庚子(かのえ・ね)』というのが正確である。この干支については、インターネットで調べただけでもかなり深い意味があるようだ。いくつかのサイトから総じて言えることは、この「庚子(かのえ・ね)」が表す意味は、新たな芽吹きと繁栄の始まりである。つまりは、新しいことを始めると上手くいく、大吉であると指し示しているとのことである。

 3年生にとっては大学入試センター試験本番まで残り10日となった。風邪などひかないように体調を整えておいてほしいが、個別試験まで見据えて粘り強い受験をすることを期待する。前期試験は2月25日、後期試験は3月12日と、卒業式を超えても試験があるが、そこまで見据えて、自分を安売りすることのないように、また自分で勝手に合格や不合格を決めないように、「あと3か月」という気持ちで精進してもらいたい。

 受験というのは本当に苦しいものだが、そこを乗り越えた先にはきっと楽しいことが待っている。人生が苦しいことの連続であるわけがない。そう信じてほしい。 1年生や2年生にとっても、今日から始まる3学期は学年の総決算であるとともに、次の年へ向けての準備の時である。この3学期というのは次の学年の0学期というふうに言われることもある。つまり、学年が一つ上がったつもりで勉強に励む、特に2年生はすでに受験生であるという意識のもとで学業に取り組むことによって現役合格が果たせる、またはワンランク上の大学に合格できるということだ。

 2年生にとっては、大学共通テストが導入される。大人の都合で、英語の民間試験や国語と数学で導入予定であった記述式問題について大幅な軌道修正があった。教育についてさまざまな改革が進んでいるところではあるが、確実に言えるのは実力があれば制度変更は恐れるに足りないということである。やればできる坂高生であるから、大人の事情に振り回されることなくしっかりと実力をつけてほしい。

 1年生にとっては、2年生になり学校の中心として活動する年になる。部活動でも2年生の先輩は間もなくいなくなり、皆さんが引っ張っていかなくてはならない。付いて行くのは簡単だが、引っ張っていくというのは難しい。実力をつけて、後輩を引っ張っていけるようになってもらいたい。

 最後に、3学期というのはあっという間に終わる。1日1日を大切に過ごしてもらいたい。

令和元年度2学期終業式講話(12月24日(火))

2022年3月21日 09時17分

 2日前は冬至だった。1年で最も寒さが厳しい折だが、体調は良いか。風邪やインフルエンザには気を付けてもらいたい。

 さて、令和元年の終わりに当たり、今年度初め(4月8日の始業式と翌日の入学式)に皆さんに話したことを振り返りたい。これは先生方にも4月の年度初めにお願いしてきたことでもあった。つまりは、「今年度の坂出高校をこのような学校にしますよ。」という私のマニフェスト(選挙公約)のようなものである。 最近では大人の世界(学校も例外ではない)では、「PDCAサイクル」という言葉が大変よく使われる。PはPlan、要するに「計画」、DはDo「実行」、CはCheck「点検」、AはAction「不十分だったところの改善」そしてまたPDCAというのを続けていくという訳である。年末はCheckというのをすべき時期である。 4月に皆さんに話したのは、大きく3点である。

 1つ目。「坂高での学業に軸足を置いた生活を送ること。」それがひいては皆さんの希望進路実現につながる。この3月の卒業生は、ここ20年ほどでは最高の進学実績(国公立大学合格者 現役103、浪人を含めて124。一橋1、東北1、阪大2などは特に顕著)を出した。「第一志望を貫く」という強い意志を持っての日々の精進、そして本校の先生方の指導力の賜物である。これに続いてほしい。

 皆さんのこれまでの生活はどうであったか。坂高での学業に軸足を置いた生活をしてきたか?学業をさぼっては来なかったか?あるいは本校での勉強よりも、塾頼りになっていなかったか?一人ひとりが自分のことだからよくわかるはず。大事なことだからもう一度繰り返す。「坂高での学業に軸足を置いた生活を送ること。」

 2つ目。「最後まで部活動を頑張ること。」「高邁自主」や「パティマトス」の精神を受け継いだ皆さんである。学業との両立をしながら、部活動での結果にもこだわってほしい。

 いくつかの運動部では、インターハイ出場を果たした。卓球部、弓道部、テニス部、ソフトテニス部(いずれも個人。)文化部でも合唱部、吹奏楽部、写真部が全国大会に出場した。これらの部は非常に顕著な成果を挙げたが、必ずしも成績には表れなくてもよい。最後まで頑張れたか?部活動で頑張ることにより心身が鍛錬される。特に大学受験というのはかなり精神的にきつい。そこを鍛えてくれるのが部活動である。1、2年生は今後とも継続を。

 最後3つ目。「生活態度の維持を。」皆さんの生活態度はおおむね良好であると思っている。しかし、一部の人に遅刻や携帯電話の使用ルール違反も見られた。また、校外に出たら一番見えるのがこの部分。本校のバッジをつけるにふさわしい言動をし、坂高の品位を汚さないこと。

 これについては概ねできていたのかなと感じる。しかし、欠席者数の多さ、いまだに携帯電話で指導を受ける人の数を見ると暗い気持ちになる。

 最初に言ったPlan「計画」とDo「実行」の部分は終わっている。2学期末でしっかり自分の行動の検証、すなわちCheckを行い、不十分なところを改善(Action)してほしい。明日から始まる冬休みの前半部分で、こういう作業を行ってもらいたい。そして、次のPlanを策定し、Doにつなげてほしい。

 令和元年の最後1週間。私が今言ったことを十分に考え、新たな決意を持った令和2年を迎えてほしい。

令和元年度11月全校集会講話(11月1日(金))

2022年3月21日 09時16分

 旧体育館の取り壊し期間を含めて、約1年6か月かかってこの体育館が完成した。今日は現在の2年生の入学式を行って以降初めてこの場所に全校生が集まった。まだ暗幕類などが整備されていないが、この真新しい体育館、大切に使ってほしい。名称は第一体育館とし、これまで新体と呼んでいた体育館を第二体育館と呼ぶことにする。まだ北校舎からの通路部分と第二体育館への通路、食堂回り、南校舎南側が完全には整備されていないが、今月末頃には整備完了の予定である。私も楽しみにしている。

 その一方で、間もなく音楽ホールの改修工事が始まる。工期は約1年。来年の今頃まではかかるだろうとのことで、音楽科の皆さんだけでなく自転車で通学している人たちにもさらなる迷惑をかけるが、吊り天井改修というのは国からの指示なので了解してほしい。    さて、今日は10月上旬に報道された事件について、自分なりの考察を加えながら話をする。「いじめ」という報道もあったが、これは明らかに「事件」であるという認識が必要であると思う。その事件とは、神戸市の小学校で起こった教員間の暴行のことである。

 昨年度から今年度の7月頃にかけて、4名の小学校の教員が、複数の同僚(年下)の教員に対して、「侮蔑的なあだ名で呼ぶ」「ロール紙の芯で尻をたたく」「背中やわき腹を小突く」「被害教員の車の上に乗ったり車内でわざと飲み物をこぼしたりする」「抵抗する被害教員を羽交い絞めにして激辛カレーを食べさせ、その様子を動画で撮影する」等といった行為を行っていたことが新聞等で報じられた。さらには、これらのことを訴え出た先生に対して「そんなことはないよな。」と前校長が言っていたことも明るみに出た。

 加害教員たちは「そこまで嫌がっているとは思わなかった。悪ふざけが過ぎた。」と説明したらしい。被害教員の一人が9月から学校を休み、家族からの相談で今回の事件が明らかになったようである。    私だけではないと思うが、こういった低レベルの教員がいる、しかも結構なベテランの域に入っている教員が、これらの行為を「悪ふざけ」程度としてしか認識していないということを深く憂慮する。しかも、当該小学校やその学校を指導する立場にある市教委育委員会もその兆候を知りながら対応が遅れていた~結果的には放置していた~ようであり、つくづく呆れかえる話である。同じ仕事をしている者として、本当に腹立たしくあまりにひどい「事件」である。

 10月10日付けの朝日新聞には次のような記載があった。「教育現場にとどまらず、働く人が職場で嫌がらせやいじめを受けたという相談は、ここ10年で倍増している。2009年に35,759件だったのが、2018年度には82,797件になった。約2.3倍である。厚生労働省の雇用環境・均等局の担当者は「労働者が自分の受けている行為を、職場環境の問題としてとらえる意識が広がったことも大きい。」と分析している。」

 私は、この分析は少し違うように思う。労働者が、「自分が受けている行為を職場環境の問題として考える」結果として、いじめや嫌がらせを受けたと相談する人が増えたのだろうか?教育評論家の尾木直樹さん(尾木ママ)が指摘しているが、「近年は成果主義が持ち込まれ「タテ社会」の論理が強まっている。ともに助け合う意識が損なわれ、未熟なものを見下すような風潮があるのではないかと危惧する。」私はこの指摘こそが的確だと思う。特に、学校という成果主義を持ち込むべき場所でないところにそういう考え方を持ち込み、ベテラン教員が未熟な教員を見下しいじめるという、本当に情けない事態であると思う。

 さて、翻って皆さんはそういった行為に及んでいないだろうか。クラスで、部活動で。自分あるいは自分たちが優勢に立っていることを根拠に、他人あるいは他のグループに嫌がらせをしているということはないだろうか。また、兄弟間ではどうだろうか。

 人間は集団でないと生活できない。だからさまざまな集団(生活単位)~家族、クラス、部活、大人になれば同僚~がある。その中ではいつも自分の立場をわきまえて、少なくとも他のメンバーを見下すようなことがないようにしないと、どの集団でもうまく機能しなくなる。その集団の中で辛い思いをしている人がいないような社会を作ることは私たちの責務である。  先月も話したが、友だち同士でまたこの問題について話してほしい。

令和元年度10月全校集会講話(10月1日(火))

2022年3月21日 09時16分

 今日は大きく2つのことを話す。 1つ目。9月の始業式で持ち越した話。8/22・23と京都市で行われた全国高等学校PTA連合会京都大会に出席した時のことである。9月では非常識な参加者の話をしたが、今日は講演の中身について紹介する。紹介すると言うか、皆さんに話を投げかけるので、もし時間があったらあとで友達やクラスの人などとネタにしてほしい。つまり、「なあなあ、今日校長先生が言いよった話やけどな。どう思う?」という具合に。

 最初に、高校生の人間関係について、初日に参加した分科会で大学の先生が講演で話されたこと。それは、高校生は「同じ価値観を持つ者としか交流しない」、「友だちというのは必ずしも同じクラスや部活の人ではなく、LINEに登録している人」皆さんにとっても、この話は本当か?本当に同じ価値観を持ち、しかもLINEに登録している人しか友だちでないのか?私も学級担任という立場を離れているのでよくわからない。ただ、もしそれが事実であるとすれば、「何か変だ。何か間違っている。」と思う。私が言わんとする「変で間違っている何か」というのが何なのかを、是非あとでネタにして話してほしい。もし、「何も間違ってはいない。」と考える人がいればその理由を聞かせてほしい。 それと同じ先生が言ったこととして、「高校生にもなると、親を『ありがたい存在』として認識している」ということ。もし、本当に親をありがたい存在と思っているのならば、朝の挨拶をしたり、お弁当を作ってくれることなどに対してきちんと「ありがとう」という言葉を言ってほしい。

 次に、これは大会2日目の講演会で聞いたことである。日本電産というモーターの会社を知っているか?ジャイアンツの打者のヘルメットにも広告が出ている。その会社の取締役会長(CEO)の永守さんという方のお話。一代にして会社を興し、今や世界43か国に従業員14万人を抱える大企業のトップである。さらに、自らの信念を実践すべく75歳にして新たに大学経営にまで乗り出した方である。その方の話は、皆さんよりも先生方や保護者の皆さんにする方が適切な部分が多いと思うので、皆さんに話しておいたらいいと思うことのみを話す。皆さんの多くは大学進学するわけだが、英語・専門・人間としての礼儀作法ができていない者は、どんなに偏差値の高い大学に行っても使い物にならないという話である。いわゆる大学のブランド主義というのを痛烈に批判された。私もこれには共感した。大学に行ってしっかり英語が話せるように訓練をし、自ら選択した専門にしっかりと磨きをかけ、同時に人としての礼儀作法を身につける。皆さんの胸にしっかりと刻んでほしいことである。

 2つ目。9月の最終週は授業参観週間だった。先生同士で授業を見せ合い、感想を伝えるというのがおもな狙いである。坂出高校では以前から行事として残っているらしいが、先生方は多忙なことに加えやはりお互いに遠慮があるのか、あまり多くの先生方が相互参観はしていないようだとかねてから思っていた。私は、授業はいつ見に行ってもいい(自分が教えていた時にも、いつ見に来られてもいい)と思っていたので、朝の打ち合わせ時にいきなり予告して、その日のうちに1年から3年までほぼすべてのクラスの授業を見せてもらった。その感想としては、「自分ももう一度高校生に戻って学んでみたい。特に坂高の先生方の授業を受けてみたいなあ。」というものだった。皆さんは、学校で勉強するのは当たり前で、そんなことの何が羨ましいのかわかる人はおそらくいないと思う。むしろ、「勉強しなくていい大人になりたいわ。」と思っているかもしれない。まず断わっておくが、勉強しなくていい大人というのは存在しない。今日はこの話は置いておくとして、なぜ私がそのように思ったか。それは、社会で-大人としてと言ってもいいかもしれないが-生きていくには基礎的な知識として高校時代に学ぶ程度のことは知っておかなければならないからだ。見て回った授業のうち、特に印象に残ったのがまず古典の源氏物語の一節。国語総合の「崖」という詩。倫理の仏教の宗派の話。数学の問題演習。私が学校の先生という道を選んだのは、まさに高校の授業が楽しかったから。先生方の大変熱心な話を聞いているうちに、自分が高校生に戻ったような大変楽しい気持ちになった。私が高校時代に受けたのと多分同じレベルの授業が展開されていた。ただ、私が高校生の頃には、家庭科の授業は女子に対してしかなかった(男子は体育をしていた)。男女共修になったのは、確か平成6年度からのはず。だから、2年4組で長尾先生がじゃがいもの芽の毒についてお話しされているのを聞き、生活していくのに必要な知識はまさにそれだと思った。今こうして話しても、まだ皆さんはぴんとは来ないはずだ。それは、自分が高校生という学びの渦中にいるからだ。歳を重ねれば必ずわかる。大学受験は抜きにしても、高校時代はどの教科・科目もしっかりと学ぶこと。それが将来の皆さんの土台となる。

 今日は以上大きく2つの話で終える。これから3年生は受験に向けて、1・2年生は部活動の新人大会等に向けて努力を重ねてほしい。また、合唱部と吹奏楽部にあっては、3年生も含めて全国大会での健闘を祈念する。

令和元年度2学期始業式講話(9月2日(月))

2022年3月21日 09時15分

 2学期の始まりに当たり、まず8/22・23と京都市(みやこメッセ・ロームシアター)で行われた全国高等学校PTA連合会大会に出席した時のことを話そうと思う。校長という立場上、結構出張が多いが、その中でも印象に残ることがいくつかあったからだ。

 1つ目。初日の昼頃JR京都駅に着いて、会場近くまで移動して昼食を食べようとした時のこと。全国から10,000人もの人が集まる大会であることに加えて、会場付近には食事をする店がほとんどなかった。私はある店に行って、順番待ちのために名前と人数を書いて待っていた。するとそこへ、私の前に名前を書いていた5人のグループと知りあいらしき2人がやって来た。何をしたと思うか。何と「5」と書いていた数字をさっと消して「7」と書いた。私は余りのことに唖然とした。この大会は、高校のPTAの全国大会なので、全国からP(親・保護者:主には会長・副会長)とT(先生方:主には管理職)が参加する大会である。ちなみに、その人たちの言葉遣いからして関西の方ではないように感じた。また、先生方ではない雰囲気であった。「旅の恥はかき捨て」という言葉があるが、まさにそれを目の当たりにした訳である。

 2つ目。今話したような嫌な思いをした後に、自分が参加を希望した分科会の会場(約2,000名の出席)で席に座り、「高校生の人間関係について考える~高校生の本音を聞いてみませんか?~」という講演を聞き始めた時。その講演はある大学の先生なのだが、話術が巧みで内容も興味深かったので、「さてどんな話が聞けるかな、楽しみだな」と感じ始めた時。私のすぐ後ろに座っていた2~3人の女性がおしゃべりに夢中で、講演には一切関心がない様子。自分の後ろの席なので見えないが。余りにも話がやまず、私も楽しみにしている話に集中できないので、振り返り「すみませんが、お静かに願えませんか。」と一言。さすがにそれ以降おしゃべりはなかったが。

 今話した2つの件についてもう少し深く考えてみた。それは、「人は一人でいるときにはしない、あるいはできないこと」が、「集団でいるときには何となくしてしまう、あるいはできてしまう」ということである。これは皆さんにも当てはまるのではないか。私も同じ時があると思うが。坂高生の皆さんは、一般的には、常識的な振る舞いをすべきことやその振る舞い方を知っている訳だが、集団になると知らないうちに周囲に無頓着になるというのか、自分たちの輪だけしか見えなくなって、電車の中で大きな声で話しているというような場合である。本の時折だが学校に苦情の電話が寄せられるのは皆さんが集団でいるときであろうと思う。今週末には文化祭で校外からもたくさんの方がいらっしゃる。今話したことを念頭に置いた行動をお願いしたい。今日は本来ならば、全国高等学校PTA連合会大会内容についてもみなさんに紹介したい話があったのだが、話が長くなるので、来月の全校集会に回そうと思う。

 さて、2学期はどの学年にとっても大事な学期である。まず1年生。今月27日にコース選択説明会があり保護者の方にも来ていただく。「なぜ保護者まで?」と思う人があるかもしれない。学校としては保護者の方に来ていただくというのは、それだけ大切な用件があるからだ。「文系・理系の選択」というのは、おそらく高校の3年間で最も重要な選択である。最終決定まではいましばらく時間があるので、よくよく考えた選択をしてほしい。一度決めたら変更は認められないので。1年生の担任の先生とっては、これは最も重要な指導事項である。

 2年生。皆さんから大学入学共通テストが実施されることと併せて、英語の4技能の検定試験を受ける必要がある。その試験を受験するための「共通ID」の取得が今月から始まる。手違いで受験できないということがないように、先生方も随分と気を遣ってくれているが、最終的には「自分のこと」。高校受検と違い大学受験は、先生が何かをしてくれるのではなく、自分からすべてを手配するのが大原則。きちんと心に留めて間違いのないように。これは1年生と3年生にも言っておく。

 3年生は言わずもがな。最終的な進路決定に向かって実際に動く時期となった。センター試験受験の1月まではまだ時間的にも余裕があるが、まずはセンター試験の出願を確実に行わなければならない。また、AOや推薦入試も行われる。最後までぶれることなく自ら選んだ道を進んでほしい。皆さんの先輩がそうだったように、強い気持ちをもって最後まであきらめずに初志貫徹してほしい。そして、余計なプレッシャーを与えるつもりはないが、「見ている人は見ている」。何をか?進学実績を。私は、8月23日に行われた市役所坂高会という、本校の卒業生で坂出市役所に勤めていらっしゃる方たちの親睦会の年に一度の総会に招待され、学校の現況報告の中で今春卒業生の進路実績を披露した。「昨年度の実績は素晴らしい。今後も頑張らせてください。」という励ましの言葉を何名かのOBからいただいた。

 最後に、文化祭が近づいている。どのクラスも最後の頑張りどころだと思う。事故がないように気を付けるのはもちろんだが、完成度の高いものを制作してほしい。今言った進路実績の話と同じだが、「見ている人は見ている」もの。坂出高校の知的・創造力のレベルや生徒の皆さんの一致団結力の程度が見られている。クラスや文化部での結束を期待して、始業式での講話とする。

令和元年度1学期終業式講話(7月19日(金))

2022年3月21日 09時14分

 先日の高校野球県大会。2-1という結果で本校野球部が久々に勝利し、レクザムスタジアムで校歌を歌えた。相手の方が上ではないかという下馬評を覆しての勝利だった。しかし、私は「高校生がやることなのだから結果など予想できない」と考えていた。また、その試合で私の知る限り初めて背番号1を背負った細川君。これまでの下積みが認められた格好で、最後の夏に初めてのスタメン。それに投打で応えたわけだが、入学からこれまでの約800日に渡る努力と悔しさを思うと、私自身も感無量であった。努力は報われるもの。また、「自分の上限はここまで」と決めつけない気持ちがその試合での活躍につながったのではないか。次の試合は高松商業。自分たちが勝手に勝敗をつけないように最後まで平常心を貫いてほしい。  また、インターハイに出る人、写真部、合唱部、吹奏楽部の皆さんも同じである。先の壮行会でも話した通り、最後まで堂々と平常心で臨んでいただきたい。そして、「勝つ」自分をイメージしてほしい。

 さて、年度で言えば3分の1、1年でいえば半分以上が過ぎた。皆さんの時間の使い方はうまくいっているか。いつものように話すことだが、Time and tide wait for no man.(歳月人を待たず)である。1日1日を大切に過ごしてほしい。特に明日からの夏季休業中は、ある意味で「自分との闘い」である。坂高生として、充実した日々を過ごしてほしい。  このように言うと、皆さんの中には「3年生に言っているのだろう。大学受験が近づいているから。」と思った人はいないだろうか。  6月に進路指導部の先生方が中心になって作ってくれた「進路資料」(1年生が緑色、2年生が黄色、3年生が青色)を読んだか?先生方は非常に手間暇をかけて作成してくれたもので、学年によって記載されている内容が異なる。共通しているのは、合格体験記である。  私が読んでみて印象に残った部分を抜粋する。 ・ 私は古典と数学がまったくできませんでした。理由は1年や2年の頃に授業を真剣に受けていなかったからです。3年になってやろうとしても、基礎学力が不安定なので努力に比例して成績の伸びは緩やかでした。思い立った日から、毎日15分でも机に向かうように心がけると、見える世界が変わってくると思います。(浪:一橋大:法)

・ 僕の合格は1、2年生の頃の積み重ねです。先生方が言っていた通りに、3年生になってから始めるのでは、時間が命の受験勉強では本当に命取りになります。受験勉強は大変なものでありますが、文字のとおり『大きく変わる』時でもあります。(阪大:外)

・ 塾に入った理由は8割友だちを作るため、2割基礎を固めるためでした。本格的に受験を意識し始めた頃に、塾に行く時間さえもったいなくなり、塾をやめました。あと、絶対に先生に質問した方がいい。私たち学生より確実に賢くて、教えるプロです。(阪大:経)

・ 最後までやり切った身として言えるのは、部活を最後までやりきるべきだということです。今苦しいけれど、その中でどうすれば両立できるのか、勉強していくのかを自分なりに考えやり通すことで、それが自信となって受験時に必ず役に立ちます。実際、僕は大学に落ちるとは全く思いませんでした。成功のイメージを忘れないことが一番大切です。自分の思う成功を常にイメージすることでモチベーションが上がり、取り組む姿勢が変わり、結果が変わります。僕の思い描いていたイメージは、大阪市立大学に合格し合格体験記を書くことでした。(大阪市大:経)

・ 部活は最後まで続けるべきです。部活をしていない人との差がつくと焦るかもしれませんが、勉強への切り替えがしっかりできるので、その後の受験勉強にとても集中して取り組めます。(大教大:教)

・ 「センターC判定からの逆転、やっぱ二次は学校の先生」 現役は最後まで伸び続けます。(東北大:工)

・ 「『当たり前』で合格へ」私が現役曲線を感じたのは、センター本番でした。センター前最後の模試でも目標点に届いていなかった私が、本番では過去最高得点をとることができたのです。塾にも行っていません。注意されたくないという理由だけでまじめに受けていた授業。通学の間、暇だから読んでいた単語帳。周囲に便乗した休み時間の勉強。どれもみんなが実践している当たり前のことです。受験をするということは苦しいことがたくさんあります。しかし、この期間ほど成長できるときはないと思います。(岡山大:法)

   こういったことは、私たち学校の教員が皆さんにアドバイスをする、あるいは親御さんから話をされると思わず耳をふさぐ人も多いと思う。それは、高校生という発達段階にある若者として至極自然なことである。

 しかし、今紹介した話はすべて皆さんの直接の先輩からのメッセージである。素直に耳を貸すべきであろうと思う。

 次に、皆さんの善行について紹介しておく。

① 6月上旬、丸亀市内のある小学校の校長先生より電話があった。内容は、丸亀の塩屋駅の近くで徒歩で登校していた小学1年生の子どもが座り込んで駄々をこねていた。そこを通りかかった本校の女子生徒が、その子の話を聞いて学校まで送ってくれたというもの。

② 6月中旬、綾川町内のある会社員の方から電話があった。内容は、朝の通勤時の車で混雑する道路上に「ネコ」がおり、渋滞に拍車がかかっていた。そこを通りかかった本校の女子生徒が押しボタン信号を押して車を止め、その隙にネコを救助した。心温まる行為だったとのこと。

 これら2つとも該当生徒は分かっているが、本人の了解をとっていないので名前は伏せることにする。最近よく言われる「不寛容な時代」にあっても見ている人はちゃんといる。

 最後に工事の関係について。現在白壁の工事中。すべての完成は10月中旬の予定。夏休み開始とともに、松濤会館から南校舎・体育館までの舗装工事が行われる。また、8月中旬頃から9月末にかけて、建設中の体育館周辺の通路の整備が行われる。通路が封鎖されたりして迷惑をかけるが、工事関係の指示に従って安全にお願いしたい。 

令和元年度5月全校集会講話(5月7日(火))

2022年3月21日 09時13分

 10連休の間に元号が変わった。  「平成」は、日本が戦争をしなかった時代であったことは大変良かったが、大きな自然災害が多かった時代であったとの評価もある。  平成生まれの皆さんにとっては、2つ目の元号を生きることになるわけだが、昭和生まれの私にとっては3つ目の元号を生きることになる。  平成という時代は、私にとっては教員として活躍した、まさに脂の乗り切った時代であったと同時に、結婚し子どもに恵まれ、家を建て、また父が他界するという人生における大きな転機があった時代である。平成の終わりということを考えるとき、大変感慨深く、本当に「一つの時代=自らの全盛期が終わったな」という感想を持つ。

 さて、今月からは「令和」という時代になる。この令和の意味については、4月1日の発表の際にテレビや新聞で大きく報道されたが、この時代の始まりに当たり、この元号が持つ意味やその背景について話しておきたい。  まずは、今回の元号「令和」は、 1 これまでの元号(248番目)の中で、初めて国書である万葉集が典拠であること。 2 歌人である大伴旅人が大宰府長官時代(紀元730年 奈良時代)に、公邸で九州一円の医師らを招いた宴を開いた時につくった。その宴は、庭に咲く梅を詠み比べる宴だった。 3 旅人が詠んだ開園の辞、「初春の令月にして、気よく風和らぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす」の箇所の「令月」の「令」と「和らぎ」の「和」である。 その意味は、「時あたかも新春の佳き月、空気は美しく風はやわらかに、梅は美女の鏡の前に装う白粉のごとく白く咲き、蘭は身を飾った香の如きかおりをただよわせている」というもの。 安倍総理大臣は、記者会見で、「厳しい寒さの後に見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりの日本人が、明日への希望とともにそれぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした願いを込めた。」と述べた。 「令」には、「上から下に指図する」という意味のほかに、令嬢とか令夫人と使われるように、「姿かたちが良い・美しいという」意味がある。「和」は、「穏やかとか、和やか」という意味である。

 現在15歳~18歳の皆さんにとっては、この令和の時代は、人生で最も輝き活躍する時代になることだろう。 この令和の時代に実施されることが決まっている事柄について、いくつか紹介する。

1 2019年(令和元年)7月 参議院議員選挙 ・・・ 18歳を迎える人はぜひ投票を。前回の統一地方選挙では、18歳と19歳の投票率が非常に低かったとのこと。私たちは、投票ということでしか国の政治の動向を左右できない。小さな一票だが、まとまることによって大きな流れを作るもの。選挙権があるという自覚を持って行動を。 2 2020年(令和2年)7月~9月 東京オリンピック・パラリンピックの開催

3 2021年(令和3年)1月 大学入学共通テストの実施 ・・・ 現在の2年生が受験する。これまでの大学入試センター試験は廃止。2020年(令和2年)4月から、英語の外部検定試験を2回受検。

4 2022年(令和4年)4月 18歳成人 ・・・ すでに18歳選挙権は始まっているが、その他の事柄についても飲酒や喫煙を除き、「大人」として扱われる。現在の1年生は、19歳になったら成人と見なされる。国が心配しているのは、消費者としての行動。自分の判断で「契約」を結べるようになる。「成人」になる前に家庭科で消費者保護について学ぶことが求められている。

5 2022年(令和4年)4月 新学習指導要領による新課程での授業開始 ・・・ 地歴では、日本史Bとか世界史Aがなくなり、「歴史総合」「日本史探究」というような科目が登場する。教科「情報」が大学入学共通テストに入るかも?

 もう少し大きな視点から話すと、現在国は、「高等学校普通科の見直し」とか「文理分断からの脱却」ということを言っている。さらにAIの時代はもうすぐそこまで来ている。一方で、本校では今秋ごろにはやっと校内にwi-fi環境と、タブレット端末が数台導入されることになっている。学校は時代についていきかねている状況である。 しかし、皆さんが活躍する「令和」の時代には、これまでとは全く違った価値観や技術が登場してくる。まさに不確かで、見通しがきかない現状にあるという気がする。ただ、間違いないのは、語学力をはじめとする高等学校で学ぶ基本的な知識がないと、令和の時代は非常に苦労するであろうということである。大学受験は大事なのだが、「大学に合格する」ことを一歩超えた「生涯学び続ける」という意識をもって行動することが求められる時代になると思う。

 最後にいい話を一つ紹介しておく。4月17日(水)の朝の登校時。附属小学校の女子児童が登校時に道路で転んで足をすりむいていたところに、本校生5名が手当てをしてくれたとお礼の電話があった。5名は、音楽科の2年生2名と3年生3名だった。大変善い行いをしてくれた。ありがとう。 こういった行為が坂出高校の名をあげてくれる。「困った人がいたら手を差し伸べる。」当たり前だと思われることだが、今後も続けてほしい。

平成31年度1学期始業式辞(4月8日(月))

2022年3月21日 09時11分

 私たち学校の教員が1年のうちでも慌ただしい日々を過ごすのが、春休みの期間。前年度のことをすべて片付け、新年度の準備をしてきた。平年であれば、忙しさのために本格的な春の到来にも気づかず、「気がつけば春真っ盛り。」というのが学校に勤める私たちの常である。しかし、今年の春は、異動発表が早かったことに加え、昨日一昨日が土日だったこともあって、桜の花が少しずつ咲いていくのを間近に見ることができた。

 皆さんの春休みの過ごし方はどうだったか。充実していたか。昨年度の終業式からは20日足らずだが、今日から新学年の始まりである。新年度というのは、生徒の皆さんにとってはクラス替えもあり、落ち着かない人もいるだろう。それは、先生方も同じ。新しクラスを担任し、授業を担当し、校内での仕事や部活動も変わった先生がいる。だから、先生方にも話したが、昨年度5月の全校集会で私が話したとおり、「置かれた場所で咲く」という気持ちで(-置かれた場所というのは、新しいクラスや担任の先生や教科の先生のこと。そこで咲くというのは、それが自分の定めと覚悟を決めて一生懸命頑張るということ-)やってほしい。新しいクラスで、新しい友だちを見つけ、今まで自分にはなかった人たちと交流する中で、何かを吸収し、成長してほしい。坂高には個性的で、才能を持った友がたくさんいる。

 さて、新年度の始まりに当たり、私から先生方にお願いしたことを皆さんにも話しておこうと思う。それは坂出高校を、そして君たち坂高生を、こういう学校・生徒にしてほしいというお願いである。18歳で選挙権を持ち、3年後(2022年4月)からは「18歳成人」が間近に迫る中、皆さんを「限りなく大人に近い存在」と考えているので、あえて話しておく。

 1つ目。「坂高での学業に軸足を置いた生活を送ること。」それがひいては皆さんの希望進路実現につながる。この3月の卒業生は、ここ20年ほどでは最高の進学実績(国公立大学合格者 現役104、浪人を含めて124。一橋1、東北1、阪大2などは特に顕著)を出した。「第一志望を貫く」という強い意志を持っての日々の精進、そして本校の先生方の指導力の賜物である。これに続いてほしい。  2つ目。「最後まで部活動を頑張ること。」「高邁自主」や「パティマトス」の精神を受け継いだ皆さんである。学業との両立をしながら、部活動での結果にもこだわってほしい。  最後3つ目。「生活態度の維持を。」皆さんの生活態度はおおむね良好であると思っている。しかし、一部の人に遅刻や携帯電話の使用ルール違反も見られた。また、校外に出たら一番見えるのがこの部分。本校のバッジをつけるにふさわしい言動をし、坂高の品位を汚さないこと。

 実はこの3つというのは、先生方には昨年度からお願いしてきたことである。生徒の皆さんに言うと、少し言葉遣いは異なるが、私が考えている坂出高校の進む道である。皆さんへの期待が大きいと感じる人もいるかもしれないが、私から見れば大きな無理を言っているつもりはない。しっかりとがんばってほしい。

 さあ、新3年生にとっては、いよいよ勝負の年。高校卒業後の進路決定路いうのは、将来を大きく左右する。部活動に入っている人は、特に早くからの受験準備をしてほしい。 この3月の卒業生で、県立保健医療大に進学した皆さんの先輩が、ある時に「面接の練習をしてください。」と校長室に来た。ありきたりだが必ず聞かれる、志望の動機を聞き、その次にこのような質問をしてみた。「あなたの学校の部活動(吹奏楽部)は全国大会にまで出場したと聞きますが、勉強との両立はどのようにしていましたか。」するとその生徒はこのように答えた。「その部に入った時点で、全国大会に行くことは織り込み済みだったので、早くから受験勉強を始めました。」この受け答えには感動した。まさに高校生の本来あるべき姿である。先輩ができたことは、皆さんもできるはず。それが伝統の力というもの。新3年生には、その生徒に続いてほしい。

新2年生にとっては、はじめて「先輩」と呼ばれるようになる。皆さんがどのように行動するかを新入生はお手本にする。それをしっかりと意識した言動をとることを望む。それは、部活動や生徒会活動ももちろんだが、勉強の方もそうである。昨年度の終業式でも話したように、高校生には勉強する義務がある。きちんと後輩を導いてほしい

いずれにしても、「一年の計は元旦にあり」と言う。学校にあっては、元旦は今日のことであると思う。しっかりと目標を持ち、私が皆さんに期待しているような皆さんの活躍を願っている。  

平成30年度3学期終業式式辞(3月19日(火))

2022年3月21日 09時10分

 1年が過ぎた。あと2週間ほどで1つ上の学年に上がる。  この1年間を振り返って「長かった」という人はどれくらいいるだろうか。大部分の人は「早かった、短かった」と思っているに違いない。「100年」などと言われる人生というのも、このように過ぎていくものであると、心しておくべきであろう。人生は長いようで短く、本当に「あっ」と言う間に過ぎてしまうものなのだろう。私自身57歳という年齢になってつくづくそう思う。皆さんには信じられない話だろうが、「高校を卒業したのもまだ10年かそこら」という気持ちがどこかにある。実際には40年近くたとうとしているのに。

 「少年老い易く、学成り難し」ということわざもある。その意味は、若いうちはまだ先があると思って勉強に必死になれないが、すぐに年月が過ぎて年をとり、何も学べないで終わってしまう、だから若いうちから勉学に励まなければならない、という意味のことわざである。

 さて、31.2.24(日)の朝日新聞に「日曜に思う」というコラムが掲載されていた。引用する。

 「人手不足」。だから入管法を改正して外国人をもっと受け入れる必要があるとされた。でもこの言い方にはちょっとごまかしがあると思う。問題の本当の名前は「国民不足」ではないのか。  いたるところで働き手が足りない。工場でもスーパーでもレストランでも農地でも介護や医療の現場でも。人手不足が深刻なのは間違いない。 けれども人が不足し始めているのは経済活動の現場だけではない。 市町村議会では議員のなり手不足があちこちで問題になっている。警察にとっても自衛隊にとっても採用対象の若年層は小さくなる一方だ。どれも国民にしか担えない役割だ。働き手だけではない。消費者も納税者も減っている。(以下略。)

 私はこれを読んで「はっ」とした。確かに不足しているのは「人手」ではなく「国民」である。皆さんも知ってのとおり、日本の人口は減少期に入っている。総務省統計局のデータによると、平成31年2月1日現在の我が国の人口は1億2,633万人で、前年同月に比べ27万人減少しているそうだ。日本の人口が最も多かったのは今からおよそ15年前-皆さんが生まれたころ-の平成16年12月で、その時には1億2,784万人だった。現在のところでは、そう大きな減少にはなっていないものの、出生率の低下とともに、高齢化率が上がっている状況にある。ちなみに、日本の人口は今から約30年後には9,500万人程度に減少することが見込まれているようだ。その一方で、国連の推計によると、現在の世界の人口約73億人は、約30年後には97億人にまで増加するという予測である。人口の増加はアジア、アフリカが中心となりそうであるとのことである。

 このような人口の変動は、私たちにどういった影響があるのか。まずは「日本の人口の減少」。日本人の寿命が長くなっていくのは、喜ばしい話である。その一方で、年金や医療費といった社会保障費については、おもに現役世代が負担することになる。現役世代が多い時には、例えば4人で1人の高齢者を支えればよかったものが、やがては現役2人で高齢者1人を支えなければならないような計算になる。こんなことが果たして可能か。

 また、世界規模での人口増加も、それに対応できる食料の供給が可能かという問題がある。

 今挙げたのは、SDGsの課題例である。SDGsというのは国連がいう「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals)という意味で、2030年までの達成を目指すものである。「貧困をなくそう」「働きがいも経済成長も」「住み続けられる街づくりを」「ジェンダー平等を実現しよう」「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」など全部で17の目標が掲げられており、今言った日本における人口減少や世界規模での人口増加にどのように対処し、日本をそして世界を持続させていくかということはSDGsの一つと言ってよいと思う。ちなみに、香川県もSDGs日本モデル宣言の賛同自治体である。

 今日このような話をするのは、4月に入学してくる1年生から、皆さんがやっている「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に変わり、SDGsなどについて探究活動をしていくことになるから。

 大学入試が大きく変わるのは現1年生からだということは認識にあると思うが、平成34年4月の入学生から高校での学習内容が変更になる。各教科・科目の実施に先行して「総合的な探究の時間」に変更になる。

 「なんだ。自分たちには関係ない。」と思う人も多いと思う。しかし、こういった学習内容の変更を受けた後輩と、もしかしたら同じ年に受験することになるかもしれないし、皆さんが就職した際には確実に皆さんとは異なった教育を受けた世代とともに仕事をするという状況になることは確実である。    卒業式の式辞でも触れたが、皆さんは、世の中がものすごい勢いで変化する中を生きることになるのは確実である。その中でもしっかりと生き抜ける力をつけるよう、学業に励むのはもちろんのこと、社会の変化に柔軟に対応できる人間でなければならない。それを肝に銘じておいてほしい。

 新学年、次年度は暦の関係で4月8日(月)。元気に再会できることを期待している。