【ものづくり技術部(自動車)】全日本ゼロハンカ―大会 参加報告
2024年1月15日 08時51分ゼロハンカ―レース紹介
ゼロハンカーレースとは毎年12月に岡山県で開催される50ccのエンジンを使った自作バギーのレースです。全国から30校、約60台のマシンが集結し、製作技術とドライビングテクニック・チームワークを競う競技です。熾烈な争いの3次予選までを勝ち抜いたマシン10台のみが決勝の24分耐久レースに参加することができます。大会は今年度で21回目を迎え、本校は12回目の出場となります。途中何度か決勝に残り、4位入賞を果たすことができました。
今年度の大会の様子
昨年度の2台のマシンをそれぞれグレードアップして大会に臨んだ。一台は5速マニュアルミッションの「LUCKYSAKAKO」もう一台は坂工伝統のオートマチックエンジンを搭載した「ZK-1」だ。昨年度とは会場が異なり、高速テクニカルコースとなるため、フレームの補強・エンジンのチューンナップ・トランスミッションの変更を中心に昨年度より戦闘力をアップして「2台そろっての決勝進出」を目標に取り組んできた。
LUCKYSAKAKO
2次予選 1位/4台
3次予選 1位/4台
決勝24分耐久レース 10位/10台
《最後の指令》
「ここまで持って来られるか?」それはあまりにも過酷で残酷なものであった。「さあ行くぞ!」ピットイン後の後半戦に気合を入れた声が聞こえた直後のことであった。第一コーナに突っ込んだマシンは、そのままスピンして止まってしまった。ドライバーからは「何が起こったかわからん!」インカムのスピーカーに悲鳴が聞こえてくる。なんと右フロントタイヤのベアリングがロックしてタイヤが動かなくなっているのだ。開始から15分残り9分の出来事であった。しかしドライバーは諦めなかった。自分たちのピットから一番遠い200m余りの距離をゼロハンカーの動かなくなったフロントを持ち上げ全力で運んでくる。ここまで持って来られたらという気持ちとあまりにも過酷な指令に心が揺れ動く。「もうだめだ」という声が聞こえたら「よくやった。もういいぞ!」と言おうかという考えも頭をよぎる。ピットが手伝ってよいゾーンまで残り40m。ドライバーの苦しい息遣いが無線機から聞こえてくる。時間も迫ってくる。24分プラス3分以内にチェッカーフラッグを受けなければリタイヤ扱いになり記録なしになってしまう。「あと少し、帰ってこい!皆が待つピットまで!」観客も一緒になって叫ぶ「あと少し!がんばれ!」。いつの間にか応援に来ていたOB達の叫び声も聞こえる。最後の力を振り絞るドライバー。ピットクルーがマシンを奪い取るように受け取る。ピットまで50m。クルーがさらに全力で走る。修理完了残り2分。再び動き出したマシンにボロボロになったドライバーが皆の心と共に乗り込む。そして決勝最後のドライバーとして温かい拍手に迎えられた。表彰台が手の届くところにあったのに。戦いの女神は我々に更なる試練を与えた。
ZK-1
1次予選 13位/62台(タイムアッタック)
2次予選 1位/4台
3次予選 1位/4台
決勝24分耐久レース 5位/10台
《雄叫び》
5位入賞。スクーターのオートマチックのエンジンでチューンナップのしにくい燃料噴射。誰もがそれでは勝てないと二の足を踏む。そんな坂工伝統のマシンは決勝の舞台に立っていた。担当メカニックは何度も何度もマシンをバラし、改良し、少しでも早いマシンを作ろうとドライバーと入念な打ち合わせをしながら最高のマシンになるよう育てていった。
自分たちの立ち位置がわからないままの公式練習。加速仕様にチューンナップされたマシンは、去年よりも明らかに速い。オートマチックのマシンが苦手な、スタートやコーナーの立ち上がりも十分通用する。決勝進出をかけた3次予選。第一レーンは昨年の優勝マシン。練習したのは、このマシンでのスタートダッシュ。シグナルが青に変わりアクセル全開。何度も練習した独特のスタートがバッチリ決まった。第3レーンのマシンも追いついてくる。「行け―!」メカニックが叫ぶ。思いは届いた。第一コーナーにトップで入ったのは、なんとオレンジのマシンZK-1。ここから2周の戦い。公式練習ではだれよりもコースを走り込んだ。そのドライバーに誰も追いつくことはできなかった。「ヤッター」無線機に響く歓喜の雄叫び。すぐ横のピットクルーからも大歓声が沸き上がった。それは今までのOB達がいくつもの悔し涙を流し、洗練された究極のオートマチック。
勝利のためにはいくつもの条件が重ならなくてはならない。そのピースを一つでも埋めていくのが我々にできる最大限のことだ。
大会の様子は、1月24日(水)RSK系列のテレビ番組19:00よりで1時間枠で放送されます。