第10回 留学体験記
2025年12月10日 18時30分帰国まで残すところ40日弱。 早送りみたいに過ぎていく日々に唖然としながら、 それでも取り零さないようになんとか過ごしている。今月( 十一月)の終わりには、学校での授業がすべて終了し、 夏休みに突入。友達のおかげで、 辛うじて追試を受けることなく落ち着いて過ごせている。 週末には家族や友達といろんな場所に行き、 いくつかの体験をした。 今回はそれらのことをメインに書いていこうと思う。
・スカウト活動
スカウト活動は毎週土曜日の夕方四時から行われる。 これは普通の活動で、次のボランティアで何をするか、 とか次のキャンプのための道具の点検などを行うためのものだ。 大きくまとめれば、 チームメイトやほかの年代との話し合いや遊びを通じて親交を深め る、というものだ。私のグループの宗派はカトリックなので『 信仰を深める』ともいえるかもしれない……失礼しました
今月初めのボランティアでは、ビンゴ大会のお手伝いがあった。 このビンゴ大会での私の仕事は、 一つのテーブルに張り付いてお水やジュースの補充をしたり、 番号がl聞こえなかった場合に再び言ってあげるというものだった 。正直、こういった仕事はかなり好みである。 テーブル同士の感覚が狭く、行動できる場所が少ない中で、 いかに早く飲み物を持って行ったり、 欲しそうなものを尋ねたりして補充したりするのはゲームみたいで 好きなのだ。なのでそこまで苦に思うこともなく、 楽しく活動できた。敬語の使い分けが難しかったが、 何度か失敗した後で対処できるようになった。
ちなみにこのビンゴ、かなり難しくて私が担当したテーブルでは、 ついぞ景品を獲得できた人が出なかったほどだ。 全部のマスが埋まらなければならない上に、 同じタイミングでビンゴした他の人とくじを引いて、 より大きい数が出た場合景品を獲得できるという、 はたから見てもかなりの難易度だった。
中盤には、教会のミサにも参加した。 スカウトの代表メンバーとして、 キリスト像の神輿のようなものも担がせてもらったし、 貴重な体験だった。また、なにより驚いたのは、教会の中に『 懺悔室』と呼ばれる、 タンス大ほどの大きさのボックスがあったことだ。漫画『 岸部露伴は動かない』で知ってはいたのだが、 生で見たのは初めてだった。入る時間はなかったが、 今後機会があれば入ってみたい。
また、二十一日には次の日のキャンプへの準備があり、 ロープの素早い結び方や火の起こし方などを学んだ。 火おこしの方法はご想像の通り、 木を摩擦で熱しそこに綿毛などの燃えやすいものを置いて火をつけ るというものだった。実際にやってみるとかなり難しく、 煙を出すのがやっとだった。
・ロデオへの旅行
私が現在滞在しているサンフアン州はかなり大きい。 香川県の四十七倍なのだから当たり前だ。 家の周りの散歩にしてもかなり歩かなければならないし、 中心街に行こうと思ったらバスにⅠ時間は乗らなければならない。 それほど大きいのだ。
今回、週末にRodeoという場所に行った。 観光地ではないけれど大きくて綺麗な湖と古い茅葺の教会があった 。車で三、四時間移動したところにあり、 チリにも結構近い場所だ。往路で山道を通るのだが、 この山道も日本のものとはかなり違う。まず、 森がなく山肌がしっかり見えている。 地層の重なりがはっきりと見て取れてこのあたり一帯は隆起したん だなとか、かなり分かりやすかった。 そして傾斜が大きいのもあって、 右に左にぐーんぐーんと何度も揺れた。金曜の夜に出発したので、 ライトのない夜空には星々が輝き、流れ星も二回見た。
Rodeoでは、 ホストファミリーとその親戚で一つのゲストハウスを借りて、 アサードを焼いたり、野菜と鶏肉のスープを作ったりした。 赤いスープは Pollo al disco という料理で、濃い味噌煮込みの西洋風の味がした。 下に写真があるのでぜひ見てほしい。とっても美味しかった。
湖では魚釣りをした。 魚を釣るために魚を細かく切ったものを使ったのだが、 今までゴカイとちっちゃいエビくらいしか使ったことがなかったの で結構驚いた。ここの家族は「カニバリズムだね~」 と言っていた(笑)。結局魚は一匹しかつれなかったが、 ゆったりしながら楽しめたのでよかった。 私はどうしても本能に逆らえず、 石を組んで湖に幾らか進出した足場を組んでいた。
また、ちょうど前日に日本からの荷物を受け取っていて、 そのなかにじゃがりこがあったので持って行った。 私も久しぶりに食べて「小さくなってるなぁ」と思った。 材料費とかの高騰で小さくなるのは仕方がないが、 どうせなら量をそのままに価格のほうを上げてほしい。なんてね。
・友人の誕生日会
ここの親友の一人が十八歳の誕生日を迎えた。アルゼンチンでは、 男性は十八歳になると大きくお祝され、 髪をすべて剃る習慣があり、それをすることで大人の仲間入り、 となるのだ(女性の場合は十五歳に大きな誕生日会を行う)。 私も彼の誕生日会に呼ばれ、彼の髪を切らせてもらった。 今年初のプールにも入り、お昼ご飯はエンパナーダ( オリーブが入っているバージョンで私の好きなやつ)で、 私も誕生日会を楽しんだ。( 写真は全員上裸なのでアップロードしないでおく)
もう一度一応書いておこう。誕生日おめでとう!
・La Fiesta Del Sol
さて、今月一番のイベントを紹介しよう。もしかすると、 私の留学生活において一二を争うイベントかもしれない。
このお祭りは「太陽のフィエスタ」という名前で、大量の出店と、 三日間に及ぶさま座なアーティストたちのコンサートが目玉だ。 今回のフィエスタには"Ciro y nos Persas", "Estelares" といったアルゼンチンでもトップの人気を誇るバンドが来ていた( ここには来ていなかったが、私は”Fito Paez"という歌手が一番好き)。
屋台をいくつか物色し、Lomoを夜ご飯にとった後、 コンサート会場に向かった。前座として出ていた"Los Mentidores"を聴いた後、"Estelares" の曲を聞いた。どちらも事前には知らなかったが、 リズムと落ち着きつつも熱のある雰囲気にはまった。そして、 この会場に来た全員が待ち望んでいた"Ciro y los Persas" の演奏が始まると同時に、周りの観客が水をぶちまけたり、 跳ね回り始めた。 こんなに激しいコンサートになるとはあんまり思っていなかった( つまり、知っていたが理解はしていなかった)ので、もみくちゃにされながらここの家族の手をつかんでなんとか耐えてい た。始めは恥ずかしかったが、 せっかくだしと思い飛び始めてみると前より曲が聞こえやすくなっ た。 なんとなくコンサートでたくさんの人が飛び跳ねる理由が分かった 気がした。
楽しかったコンサートは四曲のアンコールによって熱を保ったまま 幕を閉じ、とっても楽しかった。本当に来てよかったし、 初めにいろんな人にぶつかりだした人にも幾らか好感を持てるよう にさえなっていた。不思議だけれど。(ただし、 持ってたビールを飛ぶと同時にあたりに振りかけやがった人は許さねえ)
家に帰ったのは朝四時。 あたりがだんだんと明るくなりだした頃だった。 ほんとうはこの日にスカウトの日帰りキャンプがあったのだけれど 、体力が残っていなかったので行かなかった。
ぜひ聞いてみてほしい曲として、Ciroの" Caminando" と、"El Farorito" 、Los Mentidores の "Tengo Todo" をお勧めする。
・ホストマザーの誕生日
タイトル通りだ。なにかプレゼントできるものはあるかな、 と考えた末、胡桃とアーモンド、Dulce de leche を使ったパウンドケーキを作ることにした。 以前に抹茶のパウンドケーキを作っていたので、 そのレシピを流用して作った。実際に作って発生した問題として、 生地を混ぜすぎて焼き上がりが硬くなってしまったことと、 焼いている途中でdulce de leche が生地の株に沈んで行ってしまったのだ。 レシピでも懸念されていたので、やっちまったなぁと思った。 ただ、考えていた通りのものが出来たし、味もおいしかった。 何よりホストマザーが喜んでくれたので、本当によかった。 帰国したら日本の母にケーキでも作ろうかしらん。
・エンパナーダ作り
アルゼンチンの料理と聞いて何を思い浮かべるだろうか? おそらく大部分の人は出発前の私と同じように、 アンデス山脈の伝統服を着ている人たちが、 じゃがいもとトウモロコシなどの入った野菜スープ鍋を囲んでいる 姿を想像するかもしれない。あるいは、 詳しい人ならアサードやエンパナーダを想像するかもしれない。 そんな人には拍手をおくろう。パチパチ。
今月末にはエンパナーダを作る機会がAFSのミーティングと同時 にあり、 ほかの留学生たちとともに初めてのエンパナーダ作りに挑戦するこ とになった。 エンパナーダというのは餃子を大きくしたような料理で、 アルゼンチンでとっても親しまれている料理だ。まぁ、 検索したらばすぐに分かるのだが、まんま餃子のパイ生地版だ。 フライパンで焼くかオーブンで焼くか、 という違いこそあれどほぼ同じだ。 それこそ隣で一緒に作業していたイタリアからの生徒が「 これ餃子に似てるよね?」と聞いてくるくらいに( 彼は地元で餃子を作ったことがあるらしい)。
かねてよりエンパナーダのつくり方を知りたいと思っていたのだが 、家のほうではなかなか予定が合わず出来ていなかった。 なので今回で作り方が分かってよかった。 まずはピザ窯を作らなければならないが(笑)。
今月はこんな感じだった。留学生活も残すところ一か月。 時間は足りないが、それでも楽しく日々を過ごしていきたい。
では。