Ⅱ類…酸っぱい梅干しが出来るまで

農経高校には、授業での実習の他に、放課後に行われる「当番実習」があります。

チーモ「先生、今日の放課後の実習当番はなにをするんですか?」

Ⅱ類の先生「今日は、二年生が梅干しの仕込み作業をする予定です。」

チーモ「梅干しの仕込みは、もう始まってたの?」

Ⅱ類の先生「先週からやっていて今日が最後ぐらいかなぁ。チーモも見に来て、いっしょにやってみる?」

チーモ「はい!」

農経高校の食農科学科Ⅱ類〔園芸利用専攻〕では

農経の梅林で収穫した梅を使って、毎年この時期から梅干しを作り始めます。

今回は梅干しを作る過程を見てみます。

①【漬け込み】

今日は、食農科学科2類で梅干しの作業の第一段階の「漬け込み」を行うようなので、

その様子を見に行きます。

チーモ「うわぁ、黄色い梅がたくさんありますね。全部で何キロぐらいあるの?」

先生「これは果樹部門が収穫した梅です。今回は15㎏の梅を仕込みます。」

チーモ「収穫してそのままのものを漬けるんですか?」

先生「まずは梅の実のヘタをつまようじで取ります。ここにあるのは昼間に専攻生がヘタを取ったものです。」

チーモ「これをどうするの?」

先生が今日の当番生徒に指示を出します。

先生「これを全部きれいに洗って下さい。」

当番生徒は梅をきれいに洗い始めました。

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先生「チーモ、洗った梅をこのタオルで拭いて、水気を取って下さい。」

チーモ「はーい。…実に少し傷がついていたりするのは大丈夫なの?」

先生「皮が破れているのはだめだけど、このぐらいならこれから塩漬けにするから大丈夫だよ。」

チーモはみんなが洗った梅をタオルで拭いて水気を取りました。

先生はスーパーでよく見かける梅酒用の焼酎を、空の大きなボールに3/1ぐらい注いでいます。

チーモ「この梅をどうするのですか?」

先生「今からこの焼酎にくぐらせて消毒します。」

先生は度数35度の焼酎に梅をくぐらせ、軽く水気を切ってから、漬物樽に並べていきます。

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あっという間に、漬物ダルの底が見えなくなるほどの梅が樽に入りました。

先生は今度は塩がたくさん入ったボウルを持ってきました。

チーモ「それが今回梅干しに使う塩ですか?」

先生「はい。漬ける梅の重さの15%です。今回は梅が15㎏なので…」

チーモ「塩は2250gですね。」

先生は、桶に入れた梅を平らにならし、その上にひとつかみほどの塩を振りかけました。」

先生「こうして梅と塩を交互に重ねていくんだよ。」

チーモ「ふーん。」

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みんなで15kgの梅を洗い終えたところで、今日の実習当番は終了です。

先生はみんなが洗った梅をすべて樽に入れ、準備した塩を均等に振りました。

先生は大きなビニールを上にかぶせ、その上に漬物石をのせました。

チーモ「これで仕込みは完了ですか?」

先生「梅の重さと同じ重さの重石を乗せ、この状態で梅雨明けを待ちます。2~3日すれば、梅の表面に水が上がってきます。これが梅酢です。梅酢が梅の表面を覆うようになると、梅の実が空気に触れないので腐りません。」

チーモ「ふーん、そうなんだぁ。」

先生「先週仕込んだ梅があるのでちょっと見てみますか?」

チーモは先生について冷蔵室に入ると、梅の仕込みが終わった樽がいくつも並んでいます。先生がその中のひとつの蓋を取り、チーモに見せてくれました。中をのぞき込むと、梅の身の上に5センチ以上、透明な液体がたまっているのが見えます。

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チーモ「きれいな水があがっていますね。これが梅酢ですか?」

先生「そうです。この状態になると、少し重石を軽くして、梅雨明けまで待ちます。」

チーモ「ふーん、楽しみだなぁ。」

【梅干し】

夏休みが終わりに近づいた、8月の下旬。久しぶりに雲一つ無い青空で、暑くなりそうな気配の朝、チーモが加工室の横を通ると、今日のⅡ類の先生と当番生徒が梅干しの作業をしているのが見えました。

チーモ「先生、おはようございます。今日は梅を干しているんですか?。」

先生「そうだよ、チーモ。」

チーモ「今年の梅雨は長かったですね」

先生「梅雨入りに入るのが早かったのに、明けるのは例年並みでしたね。」

チーモ「梅雨が明けたら梅を干す、って言っていましたけど、どうしてこの時期なんですか?」

先生「梅干しを干すのは、今日みたいな快晴が3日間連続で続きそうな頃を選ぶんだけど、今年の夏は、梅雨明け後もなかなか快晴が無かったんだよね。7月に梅雨が明けたのに、その後も雨が続いたり、先生も部活の都合で学校に来られなかったりしてタイミングを逃していたんだ。」

チーモ「なるほど。確かに今年の8月は雨が多かったですよね。」

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梅干しを干すのは、加工室の南側です。この場所は風通しがよく、午前中は日が当たり、昼からは日陰になります。専攻生は梅干しを漬けた樽から、大きめのザルに梅を取り出し、その梅を一粒ずつ網の上にきれいに並べていきます。

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丸一日よく干した梅干しを、この状態のまま夕方に取り込んで、次の日の朝にまた外に出します。梅全体にまんべんなくお日様があたるように、毎朝梅を裏返します。この作業を3日間繰り返し、最後にまたタルの中に戻します。

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タルに戻したあと、今度はⅡ類の畑で育てている紫蘇(しそ)を塩もみし、紫蘇玉にしてタルに入れ赤く色づけしながら、農経祭まで熟成させます。

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【袋詰め】

今日は2年生の専攻生が梅干しを容器に入れる作業をします。

先生「それでは今日は皆さんに、梅干しを容器に入れる作業をしてもらいます。今日は容器に入れてもらった梅干しは農経祭で販売するものです。買って下さるお客様のためにも、心を込めて作業して下さい。」

2年生「はい!」

先生「天日で乾燥した後、つけ汁に戻し、しその葉で着色された梅が入っています。まずこの樽からこちらのボールに梅を移して下さい。」

チーモ「うわぁ、梅が真っ赤になってる。着色に使うのはしその葉だけですか?」

先生「そうです、しその葉だけですよ。」

先生「それでは、これを250グラムずつ容器に入れて下さい。」

2年生の専攻生は重さを見ながら、丁寧に梅を容器に移していきます。

先生「だいたい250グラムになったら、つけ汁と、それからしその葉を入れて下さい。」

   

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容器に入れるものがすべて入ったら、容器の口の周りを拭いて蓋を閉めます。

チーモ「これで完成ですか?」

先生「最後に大事な作業が残っています。はい、それでは蓋を閉めたら、ラベルを貼って下さい。」

2年生「はい。」

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チーモ「いつも食べている「農経梅干し」の完成だ!」

先生「そうですね。これでようやく販売となります。」

梅の実の収穫から約5ヶ月。ようやく皆様の手に届けられる梅干しの完成です。

チーモは「たくさんの人がこの梅干しを食べて「すっぱーい!」と言ってほしいなぁ。」と思いました。