第5回 チーモの「タマネギの収穫」

五月の中旬の金曜日、今日はチーモが3年生の実習の授業を見に来ました。

チーモ「だいぶ暑くなってきたなぁ。今日はどの部門を見に行こうかなぁ…
先生、今日はどんな作業をするんですか?」


果樹の先生「今日は柿の摘蕾(てきらい=柿の花のつぼみを切り取ること)です。たくさんあるから、まだしばらくかかりそうだなぁ。」

野菜の先生「野菜部門では、まだ収穫が終わっていないタマネギの収穫をするよ。」

環境システムの先生「今日は倉庫の裏の斜面の草刈りをしようかなぁ。」


チーモ「…どの部門も楽しそうだけど、今日はタマネギを見に行こうかな。」

 
  
ということで、農場本部前での点呼が終わると、チーモは野菜部門の管理室前で集合している専攻生たちのところに行きました。


先生「今日はタマネギの収穫を行います。週末は天気が悪そうなので、畑に残っているタマネギの収穫をこの時間ですべて終わらせます。それでは、道具を持って畑に集合して下さい。▲▲君たちはハウスから空のキャリーケースを運んで下さい。」

専攻生たちはハウスのキャリーケースをたくさん持ってタマネギ畑に集合しました。


先生「これが葱坊主(ねぎぼうず)です。タマネギはこうなってしまうと固くて売り物になりません。だから、葱坊主ができていないものを収穫して下さい。茎の部分は枯れて弱くなっているものが多いので、茎を引っ張るのではなく、…こうして根元から両手ですくい上げるように収穫します。」
 

専攻生たちは黒いマルチをのけてくれたので、チーモは地表に半分ぐらい出ているタマネギを両手で収穫しました。

 
  
チーモ「収穫したタマネギはどうするの?」

専攻生「こんなふうに……茎と根っこを切り落として、……あのキャリーに入れます。キャリーがいっぱいになったら、向こうに運ぶよ。」

 

 
  
  
チーモ「このタマネギ、どうやって食べたらおいしいかなぁ。」

専攻生「サラダ!新タマネギはサラダがいちばんおいしいよ。」


チーモが専攻生と話しながら、作業をしていると…

専攻生「うわぁ!」

黒い馬「ブルルル…バフッ!!」

見ると、馬場に放牧されていた馬術部のキングデザイアー号が、柵から首を乗り出して、タマネギ畑のあぜに生えている草を食(は)んでいます。すぐ近くで作業をしていた専攻生がびっくりした様子でした。

チーモ「馬も実習の様子が気になるのかなぁ。農場で作業していると、こんなこともあるんだね。」

専攻生「そうだね。チーモ、あれを見て!」

作業の手を休めて顔を上げると、向こうの方で養鶏の専攻生がヤギの散歩をしているのが見えました。

チーモ「さすが農経。こんな近くでいろんな動物が見られるっていうのがいいよね。」




ようやく、収穫が終わり、たくさんのキャリーがいっぱいになりました。

先生「それでは、全員でこれを1号ハウスに運んでください。」

 

 
  
チーモ「収穫したらすぐに袋詰め、ではないんですか?」

先生「この後、ハウスで7日ぐらい乾かします。そして市場へと出荷する予定です。」

チーモ「ふーん、そうなんだ。」




暑かったので少し休憩をして、あとはハウスの周りの片付けをします。

野菜苗の販売の時に使っていた道具を分解して片付けたり、ビニールハウスの横にあったブルーシートをたたんだりと、こまごました作業をしているうちに実習終了の時間になりました。専攻生は野菜部門の管理室前に集合して最後の挨拶をします。


 

先生「みんなも3年生になったんだから、最上級生としての自覚を持って行動しましょう。当番ではなくても毎日農場に来て、課題研究で自分が育てている野菜の管理を怠らないように、気を配って下さい。それでは、実習を終わります」

専攻生「気をつけ、礼。ありがとうございました。」


農場から帰りながら、チーモは「農経の3年生は部活に進路に、農場の管理に、いろいろすることがあって大変だなぁ。」と思いました。






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