チーモの「宮川早生定植」

一学期も残すところあと数日となりました。

梅雨明け間近で蒸し暑い日が続いています。

今日は3年生の実習の日です。

いつものように農場本部の前で点呼をしたあと、各部門の管理室に移動します。

 
  

今日はチーモが果樹部門の専攻生と一緒に鞍懸山に行ってみます。

チーモ「先生、今日の実習ではなにをするのですか?」

先生「今日は鞍懸山にミカンの木を植えに行きます。」

チーモ「ついていってもいいですか?」

先生「それでは一緒にミカンの木を植えに行きましょう」


先生は専攻生たちに指示を出しました。

先生「今日は、鞍掛山に行きます。軍手ひとつずつ持っていて下さい。
あと、雨が降っているので、カッパを着て、準備が出来たらここで待っていて下さい。」


専攻生たちは持ち物の準備をすると、みんなでトラックに乗り込んで倉掛山に向かいました。

  

先生は鞍懸山の果樹園の中腹でトラックを止めました。

専攻生たちは荷台から必要な道具を下ろし、先生はみんなに今日の作業の説明をしました。

 

  
先生「はい、それでは今日も宮川早生(=みやがわわせ。温州ミカンの一種)の定植を行います。一人一本ずつ苗とスコップを持って、前回植えたところの続きの所に植えていきます。移動して下さい。」

チーモ「大きい苗ですね。今日はこれを植えるのですか?」

先生「これは2年ものの苗を買ってきて、農場の方で1年置いておいたものです。チーモも一本植えてみる?」

チーモ「植えてみたいです!」

先生「では、チーモも苗とスコップを持って、専攻生たちについて行って下さい。」

チーモ「はーい♪」


ミカンを植える辺りに移動すると、専攻生たちは、適度に間隔を取って植木鉢を置き、ミカンを植える位置を確認します。

先生「それでは、あなたはこの辺り、あなたはここに植えて下さい。」

専攻生は指示された場所にスコップで穴を掘り始めました。

 
   
先生「チーモは、この辺に植えてみよう。」

チーモ「はーい。…まずは穴を掘るんだな。どのぐらい掘ればいいのかなぁ。」

専攻生「苗が植わっている植木鉢の土の高さより少し深いぐらいだから、たいたい膝の少ししたぐらいまでの深さの穴を掘るといいよ。」

専攻生は、定植する場所の草を抜き、植木鉢より二回りぐらい広い穴を掘っています。

チーモも穴を掘り始めました。果樹園の土は硬く、石も混じっているので大変です。

チーモ「今日は雨が降っているからまだましだけど、晴れていたら暑くて大変だなぁ。」

専攻生「こないだ植えに来たときは、暑くて大変だったよ。」

そうこうしているうちに、適当な大きさの穴が掘れました。

先生「それでは、トラックの荷台からバーク堆肥を一人一袋ずつと苦土石灰(=くどせっかい)とようりんを持ってきて下さい。」

専攻生たちは穴が掘れた人からトラックに移動し、バーク堆肥など、必要な堆肥の袋を持ってそれぞれの場所に帰ってきました。

バーク堆肥は樹木の皮を発酵させて作った堆肥で土壌改良材です。

苦土石灰はマグネシウムを含む石灰で土壌の酸度調整のために使います。

「ようりん」も天然の原料から作られた肥料でリン酸を多く含みます。


  
チーモ「これをどうするの?」

先生「それでは、穴の近くにバーク堆肥を一袋全部出して下さい。」

チーモは先生にハサミを借りると、穴の山頂側の場所にバーク堆肥を出しました。

先生「次にこの苦土石灰とようりんを出すので、これらをスコップでよく混ぜて下さい。」

 

 
チーモ「配合の分量は決まっているの?」

先生「バーク肥料1袋に対して、だいたい苦土石灰が3分の1袋、ようりんは5分の1袋が目安です。」

チーモは肥料を混ぜて土を作りました。

先生「それでは、その土を掘った穴に少し入れて下さい。…そう、そのぐらいです。つぎに、苗を植木鉢から外して穴の真ん中に置きます。苗の高さと向きを調整して…苗がまっすぐになっているか確認して下さい。…それで、残りの土を苗の周りに流し込んで下さい。」

チーモは先生の指示をよく聞きながら、宮川早生の定植を終えました。

他の専攻生たちも同じ手順で定植していきます。

 

 

 
     

ここまでの作業をしているうちに雨が本降りになってきました。上半身は雨合羽で覆われているものの、みんなの実習服のズボンは雨水と泥まみれになっています。

先生「それでは、一度下に降りて休憩します。みんな、自分が使った道具と肥料の空き袋を持ってトラックに戻って下さい。」

みんなは自分の周りにある道具を全部もってトラックに移動し、荷物を荷台に積んで、果樹園の倉庫に移動しました。

 


チーモ「雨降りだったけど、おもしろかったなぁ。」

先生「この木を、この子らの弟や妹が入学してきて管理するわけです。そして、この子らの子どもたちが入学する頃には、立派なミカンが収穫できるんです。」

チーモ「ミカンの木は実がなるまでにそんなに時間がかかるんですか?」

先生「いや、来年辺りから実はなるので、数年後には収穫できるようになりますが、たくさん収穫は出来ません。どんどん木が大きくなれば、それだけたくさん実が収穫できます。今この果樹園にあるミカンも30年、50年という木が多いと思いますよ。」

チーモ「壮大な話ですね。」


チーモは「たくさんの先輩たちが長い間、毎年きちんと管理してくれてきたミカンの木を、今年も枯らさないように育てる責任は重大だなぁ。」と思いました。






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