第15回 チーモの「豚舎の水洗い&蜘蛛の巣取り」

今日も1年生の実習にチーモが来ています。

チーモ「今日も暑いなぁ。さて、今日は久しぶりに養豚部門に行ってみようかな。」

1年生が農場本部前に集合完了しました。
いつも通り点呼を受け、先生の話を聞きます。

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暑さ対策や貴重品についての注意を受けた後、養豚部門に移動しました。

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先生「大分暑さが和らいできましたね。豚にとっても過ごしやすい季節になりました。我々にとっても豚にとっても過ごしやすいということは、豚舎に来る迷惑な生き物たちにも快適な季節になったということです。豚舎にも大量のクモが発生して大変なことになっています。そこで、今日は豚舎の水洗いと、蜘蛛の巣取りをします。」

豚舎には「繁殖豚房」「肥育豚房」「分娩豚房」「育成豚房」があります。
1年生はそれぞれ分かれて豚舎の水洗いをします。

高圧洗浄機を持った先生が、豚舎の水洗いの仕方を説明します。

先生「まずはノズルの先から出る水を広範囲に出るようにして、全体にぬらして乾いた糞をふやかします。」

チーモ「豚にかかっても大丈夫ですか?」

先生「少しぐらいは大丈夫です。ただし、餌箱はぬらさないようにして下さい。」

先生「全体に水をかけたら、次はノズルから出る水を細くし、床や壁にこびりついた糞を強い水圧で流します。」

先生「先週は時間に余裕を持って集合できていましたが、今日はギリギリの人が多かったです。今まで出来ていたことが出来ないというのはどうしてですか?授業でも実習でも、気持ちを緩めることなく取り組んで下さい!」

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1年生は床や壁を水洗いして、柵にこびりついた汚れも根気よく落としています。

先生「柵の中がきれいになったら、最後に通路をきれいにします。ノズルの先から出る水の範囲を広くして、通路をきれいに水洗いして下さい。」

肥育豚房には出荷を間近に控えた豚房があります。

チーモ「この豚は、そろそろ出荷ですね。出荷が近いから餌やりを控えているんですね。オリーブ豚ですか?」

先生「はい。こちらに並んでいる二つの豚房の豚はどちらもオリーブ豚で、明日出荷予定です。」

チーモ「二つの豚房の違いはなんですか?」

先生「こちらには壁にクサリを付けています。これは豚にとっての『おもちゃ』です。これに触ってジャラジャラさせて遊ぶことで、ストレスを減らし、それによって肉質がよくなるかどうかという課題研究に取り組んでいるんです。」

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チーモ「この豚は出荷されたらどうなるの?」

先生「これを食農科学科の三類が買い戻してベーコンにします。」

チーモ「うわぁ、楽しみ。背中の印はなんですか?」

先生「これは豚熱ワクチンの接種が済んでいるというしるしです。」

豚舎の外では、蜘蛛の巣取りを担当することになった背の高い男子が蜘蛛の巣取りに追われています。長いほうきを持って豚舎の外回りをぐるっと一周し、それが終わると豚舎の中の蜘蛛の巣を取ります。蜘蛛の巣取りが終わると今度は飼料タンクの掃除です。

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チーモ「蜘蛛の巣を取り除いたり、水洗いをしたり、そんなに清潔にしなければいけ
ない理由はなんですか?」


先生「きれいにしておかないと、目に見えない雑菌が大繁殖するからです。」

先生が豚舎の中の餌箱の蓋を手に取って説明してくれました。

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先生「この餌箱の蓋を見て下さい。このフタは手前に引かないと開かないようになっています。豚の側から強い力で引いても動きません。こっちの餌箱の蓋は取っ手を持ち上げながら横に動かさないと動かないような構造になっています。餌やりをする生徒には簡単に動かせますが、力の強い豚には動かせないようになっているんです。何回も改良を重ねて、この形になりました。」

チーモ「餌箱のフタは売っていないの?」

先生「ちょうどいいものはなかなか売っていません。だから、豚の大きさや頭数など、この豚舎の実情に合うように、私が作りました。工夫してこういうのを作るのも楽しいんですよ。」

チーモ「なるほど。このフタがないとどうなるの?」

先生「この豚舎は夜の間にネズミが動き回っている形跡があります。朝、豚舎を見回ると餌箱にネズミが入って出られなくなっていることもありました。当然そこで糞をすることもあるし、不衛生な環境になります。このフタを付けることで餌箱にネズミが入ることがなくなりました。」

チーモ「豚舎にネズミがいると、変な病気が広がるかもしれないから、絶対いやですね。」

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先生「餌箱に蓋をすると、ネズミは今度は餌用の一輪車に向かいます。だから、一輪車の周りにネズミ捕りを設置します。ネズミの発生箇所を限定すれば、そこに至る通路が特定されるので、そのネズミの通り道にネズミ捕りを仕掛けて、ネズミを効率的に駆除できるんです。」

チーモ「そんなにうまくいくんですか?」

先生「けっこうとれますよ。でも、大物はなかなか掛かりません。やはりボス級のネズミは賢いんです。害獣との戦いはたいへんだけど、上質な豚を育てるためには、豚舎を衛生的に保つことが大事なんです。」


そうこうしているうちに時間が来たので、今日の1年生の実習は終了です。
1年生はきれいに長靴を洗ってから、集合します。

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先生「実習をしていると長靴が汚れます。長靴が汚れているのは実習を頑張っている証拠だと思っている人がいますが、それは違います。豚舎で作業したあと、その汚れを付けて鶏舎に入ると、どうなりますか?その長靴をきれいに洗わずに畑に入るとどうなりますか?動物科学科のそれぞれの畜舎はフェンスで囲まれていて、その入り口には、長靴を消毒する消毒槽が必ずあります。そこで長靴をきれいにしてから入ることで、動物が感染症にかかるのを防いでいるのです。長靴をきれいに保つことがとても大切だということを忘れないで下さい。」

1年生「はい。脱帽!気をつけ、礼!ありがとうございました!!」

チーモは今日の実習で、時間を守ることも、長靴をきれいにすることも、豚舎を清潔に保つことも、とにかく気持ちを緩めずにひとつひとつきちんとすることが大切なんだなあ。」と思いました。