第19回  チーモの「ミカンの缶詰作り」

農経高校の加工室には「巻締機(まきしめき)」という機械があります。
これは缶詰にフタをするための機械で、この学校に設置されたのは昭和45年です。
勤続50年になる現在も、現役でがんばっています。
今日は、その機械を使ったミカンの缶詰の製作を見に行きます。


加工室の園芸実習室のテーブルの上に、ミカンがたくさん入った大きなボウルがひとつ置かれています。


 
チーモ「うわぁ、おいしそう。こんなにたくさんのミカン、どうするの?」

先生「これを今から重さを量って缶に入れて、缶詰にします。」

チーモ「ミカン缶だね。これだけの量だと、皮をむくのも大変だったでしょう。誰が皮をむいたの?」

先生「これは2年生の専攻生がむいたんだよ。」

チーモ「ふーん。きれいにむけているね。」

先生「むいたと言っても、専攻生がむいたのは果皮(かひ)だけで、じょうのう膜(=ミカンの袋)は薬品で溶かすんだよ。」

チーモ「そっかぁ。このミカンには味がついているの?」

先生「いや、このボールに入っているのはただの水です。味付けは缶に入れてからだよ。」

チーモ「そうなんだ。で、これをいまからどうするの?」

先生「ここに缶があるから、まずはこれをハカリに乗せて、乗せた状態で0gにして下さい。」

チーモ「こうですか?」

先生「はい。それでは、このボウルの中から、きれいな実を選んで入れて下さい。」

チーモ「はーい。なんg入れるんですか?」

先生「255~260gです。260gを超えないように気をつけて。」

ミーモ「先生、できましたー。」

先生「では、缶の中の水を切って、こちらの青いコンテナに入れて下さい。たくさんあるから、どんどん作って!」

チーモ「はいよー。」

チーモは先生と一緒に話しながら、手は休めずに作業を続けました。ボウルが空になったら、先生が冷蔵室から次の大きなボウルを持ってきます。そのボウルにも皮をむいたミカンがたくさん入っていて…

チーモ「うわぁ、まだあるのー!?」

先生「まだまだ、冷蔵庫の中にはミカンがたくさんあるからね。さ、どんどん作って、作って!!」

   
    

ミカンをひたすら缶に入れ続けて一時間半。ようやくひと段落つきました。

先生「それでは、次にこの缶にシロップを入れます。」

先生は園芸実習室の奥のガスコンロの上にあった大きい鍋からシロップをすくってヤカンに移し入れ、それを缶の中に注ぎ入れていきます。

チーモ「シロップはどんな味なの?」

先生「ちょっと味見してみる?」

先生がスプーンですくってくれたので、チーモはそれをちょこっとなめてみました。

チーモ「甘~~い!まさに、缶詰の中のシロップの味だね。ただの砂糖水じゃないかんじがするなぁ。」

先生「これは35%の砂糖水に0.2%のクエン酸が入っています。」

チーモ「なるほど。でも、これだとできたての缶詰を食べても甘くないよね?この缶詰はどのぐらいで食べ頃になるの?」

先生「だいたい1ヵ月後ぐらいからが食べ頃かなぁ。」

チーモ「そっか。缶詰だから賞味期限は長いんだよね?」

先生「はい。この状態で今から脱気して密閉するので、この缶詰の賞味期限は1年です。」

チーモ「うわぁ、すごいなぁ。で、これからあの機械で缶のふたをするの?」

先生「そうだよ。」

 

先生はいよいよ奥の巻締機のそばに缶を運ぶと、機械の準備を始めました。
まもなく機械が大きな音を立て始めました。


      

先生は、完成すると缶の底の部分になる丸い金属のフタをミカンが入った缶の上に乗せ、
それを巻締機の中央のくぼみにセットしました。そして足下のペダルを踏むと

「………プシュー!!………ガチャン!!……ガタン!!……」

中央の部分が下に下がり、缶が見えなくなったかと思うとすぐに、圧力がかかる音がして、直後にまた、中央の部分が持ち上がると、完成したピカピカの缶詰が姿を現しました。
(巻締機が動く様子【動画】)

チーモ「うわあ、すごーい!!なんか、…かっこいい!!」

呆気にとられているチーモに、先生が機械の操作を説明してくれました。

先生「中央のくぼんでいるところに缶をセットします。底蓋がずれていないか確認したら手を離して、足下のペダルを踏みます。すると機械が作動します。ものすごい力がかかるので、ペダルを踏んだあとは、もし缶が倒れても、絶対に缶に手を触れてはいけません。」

チーモも、缶を置いて蓋の位置を確かめ、手を離して、おそるおそるペダルを踏んでみました。

「………プシュー!!………ガチャン!!……ガタン!!……」

すごい迫力です。ちょっと怖いので二つだけやってみたあとは先生と交代して、チーモはできた缶詰を運ぶ仕事を手伝いました。

巻締機は順調に動いて、準備していた缶詰は無事に全部完成しました。

チーモ「ミカンの缶詰はこれで完成ですか?」

先生「この後、鍋で80度で20分間の殺菌をして、ラベルを貼ったら完成だよ。」


チーモは、農経高校の缶詰がどうやって作られているのかよく分かって、とても勉強になりました。






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