第11回 チーモの「梨ジャム作り」
9月に入って最初の金曜日、チーモは加工室にやって来ました。
今日は3年生の専攻生達が梨の過熟果(かじゅくか=熟れ過ぎた果実)を使ったジャムを作るのを手伝います。
先生「それでは、今日の午前中は梨のジャムの試作を行います。まずは梨の皮をむいて、細かく切ります。一部はフードプロセッサーにかけてペースト状にします。細く切った果肉と、ペースト状の果肉を混ぜる割合や、砂糖の分量を変えながら、まずは試作品を作ってみましょう。」
専攻生達はピーラーで梨の皮をむき、8等分に切ると、芯の部分を取り除いて、果肉を包丁で細かくスライスしていきます。チーモもピーラーで梨をむく手伝いをしながら、先生に農経ジャムについて話を聞きいてみました。
チーモ「農経ではいつも梨のジャムを作っているの?」
先生「いや、梨のジャムを作るのは初めてだよ。だから、今日は少量の材料で試作をして味を確かめてから、大量に作るジャムのレシピを決めるんだよ。」
チーモ「ふーん‥農経のジャムの特徴はどんなところなの?」
先生「農経のジャムの材料は基本的には『果物、砂糖、クエン酸』の三つです。素材によって甘さや、粘りが違うから、砂糖の量を考えたり、果汁を使ったり、皮を使ってみたり、いろいろ試行錯誤して作るんだよ。あとは『プレザーブスタイル』といって、果肉がごろごろしているのも特徴のひとつだよ。」
チーモ「今回はどんな感じで試作するの?」
先生「うーん、とりあえず素材の味や水分を見ながら、砂糖の量を調節していく感じで作ってみるよ。」
先生「それでは、鍋を用意して‥フライパンがいいわ。そっちは、果肉を300g量って。」
専攻生「鍋はこれでいいですか?」
先生「OK、それにしよう。」
専攻生「砂糖はどうしますか。」
先生「では、最初は360g量って。はじめは砂糖60%で作ってみよう。」
まず始めに、皮をむいて細かく切った果肉を準備し、それを半分に分けて、半分をフードプロセッサーにかけてペースト状にします。そして、それらの果肉の重さに対して60%の砂糖を用意し、フライパンで煮詰めていきます。
専攻生「この梨は甘くておいしそう‥。」
先生「これは『過熟果(かじゅくか)』なので売り物にはなりません。」
専攻生「こっちの梨はボコボコしてる。」
先生「それも『蜜症(みつしょう)』だねぇ。天候や収穫の時期の影響で、甘いんだけど、水が入ってしゃきしゃき感がなくなったり、見た目が悪くなると、商品としては売れません。でも、加工すればおいしいジャムになります。みんな、一かけずつ食べて、甘さを確認して下さい。」
専攻生達はジャムにする前に梨を少しずつ食べて甘さと水分を確認します。
専攻生「うわぁ、甘い。みずみずしくておいしいです。」
チーモ「たしかに甘いなぁ。」
そうこうしているうちに、鍋の梨が煮詰まってきました。
専攻生「先生、だいぶ煮詰まってきました!」
先生「それでは、糖度計で糖度を確認して下さい。」
鍋をかき混ぜていた男子の専攻生が鍋のジャムをスプーンですくって糖度計に載せると、糖度計を覗いて糖度を確認します。糖度が60度になったのを確認したら、0.3%のクエン酸を加えます。それをよく混ぜながら一煮立ちさせ、そうしてから火を止めました。
先生「みんなで味を確認してみて下さい。」
先生と専攻生のみんなで、できた試作品の味を確かめてみます。
専攻生A「甘―い!ちょっと甘すぎるかも。」
専攻生B「なんか、野菜のジャムっぽい‥。」
チーモも果肉の部分を食べてみました。
チーモ「うわ、リンゴジャムとしか思えない‥砂糖の甘さが強いなぁ。」
専攻生C「俺もこれ、なんにも知らないで食べたらリンゴジャムやと勘違いすると思う。」
先生「いや、リンゴのジャムはもっとリンゴの香りがするよ。」
専攻生D「これはこれで、なんかのお菓子に使えそう。」
専攻生のみんなは試作品の味を確認して、意見を出し合います。
先生はみんなの意見をまとめ、材料の分量を変えながら何度か試作品を作ってみました。
【梨ジャムの試作品~素材の割合とジャムの味の変化】
果肉:ペースト | 砂糖 | クエン酸 | 糖度 | 食味調査の結果 |
1:1 | 60% | 0.3% | 60 | ▲砂糖の甘さが強すぎる。果肉感が足りない。 野菜のジャム? |
2:1 | 50% | 0.3% | 60 | 〇甘さは悪くないが、梨の風味がまだ弱い。 ドロッと感はちょうどいい。 |
3:1 | 40% | 0.3% | 60 | ◎やや水っぽいが、甘さはちょうどいい。 梨の香りがする。 |
3回の試作で、ようやく梨ジャムのレシピが決まりました。「砂糖は40%、果肉とペーストの割合は2:1」が最もおいしいということが分かりました。
ここで昼休憩の時間になりました。梨ジャムの加工は午後からになりました。
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午後はいよいよ梨ジャムを作って瓶詰めまでの作業です。
まずは大量にある梨の皮をむき、一気に刻みます。たくさん出た皮の部分はⅢ類の讃岐コーチンのエサになります。
大きな鍋で煮詰める間に、使った道具の片付けや、作業台の掃除、次の瓶詰め作業の準備をします。専攻生達は忙しそうに作業をしながらも、「‥‥なっしー?」「~‥なっしー!」という会話が飛び交っています。
いよいよ、大鍋の糖度が60度を超え、クエン酸が投入されると、残りの作業は一気に行われます。
ジャムは冷めないうちに瓶詰めされます。
男子と女子がそれぞれ加工台に分かれ、『瓶にジャムを入れる係』『瓶のジャムをすり切りいっぱいに微調整する係』『瓶の周りに付いたジャムを拭き取る係』『瓶にふたをする係』がそれぞれの役目をこなしながらてきぱきと作業が進みます。
瓶詰めが終わったら80~90度程度の熱湯で20分間煮沸消毒します。
チーモ「ガラスの瓶を鍋で煮ても大丈夫なの?」
先生「ぐらぐら煮詰めると中身が膨張して瓶が割れてしまいます。だから、鍋の中のお湯の温度が上がりすぎないように温度を計りながら、20分間消毒します。」
その間、専攻生達は課題研究で作ったメロンのコンポートをどんな加工品にしたらおいしいか話し合っています。
ここでチャイムが鳴りそうになったので、この日の授業は終わりました。煮沸消毒した瓶は先生が鍋から取り出しました。このあと、ゆっくり冷ましてからラベルが貼られるそうです。
チーモは「専攻生が作ったジャムが農経祭でたくさん売れたらいいのになぁ。」と思いました。
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