R04~R06校長室

230317 終業式式辞(校長室から)

2023年3月17日 18時00分

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3学期終業式式辞

 昨日のWBC準々決勝戦観ました。大谷選手すごいですね。一球一球、声を上げながらの全力投球、セーフティバントなど、勝とうという気迫が感じられました。その姿に選手も引っ張られるし、応援している私たちも引き込まれました。やはり、何かに一生懸命に取り組んでいる姿に人は魅了されます。本校でも、多くの生徒が部活動に全力に取り組み、その姿に元気づけられている家族や友だちがいるのだと思います。

 この1年、ことあるたびにみなさんに語りかけてきたこと、わかりますか。「掃除をする」「あいさつをする」「遅刻をしない」といったあたりまえのことができるようになることです。坂出高校は、あたりまえのことができたうえで、学習、部活動、学校行事などで、さらに成長しようと切磋琢磨している学校です。4月から新入生が入学します。坂高生のあるべき姿を、みなさんが示し、新入生にも受け継いで欲しいと考えています。学校の姿とは、先輩から後輩に受け継がれて、つくられるもので、先生方がつくるものではありません。ですから、あたりまえのことをあたりまえにできる坂高生であって欲しいと強く望んでいます。卒業した3年生は皆勤賞(無遅刻、無欠席、無欠課)受賞者が59名いました。コロナ禍で大変ななか、立派なことで、その姿を見てきた皆さんもそうあって欲しいです。

 皆さんは、坂出市にイスラーム教の礼拝所(モスク)があることを知っていますか。ちょっとローカルな話になりますが、坂出市のマルナカ、ボーリング場、坂出警察署、かまど本店のある道を東に進んだところにあります。私もよく通る道路沿いにあるので気になっていましたが、昨年の秋には外から見てもモスクとわかるようになりました。設立の中心となったのは、インドネシア人のイスラーム教徒のフィカルさんです。設立に向けて奔走する様子を取材した本が出版されましたので読んでみました。

 フィカルさんは技能実習生として来日し、日本人女性と結婚、現在は溶接工として坂出市で暮らしています。フィカルさんは、日本人と話をしたいと思っても、関わって欲しくないという雰囲気を強く感じましたし、怖がられたり、テロリスト呼ばわりされたりすることもありました。そこで、フィカルさんは、モスクを設立することを決意します。香川県で生活するイスラーム教徒が集う場とすることは当然として、日本人にイスラーム教のことを知ってもらい、日本人との交流の場にしたいと考え、モスク設立に向けて活動を始めました。まず、モスクに使うことを前提として、建物を売ってくれる人を探すのに苦労しました。それ以上に苦労したのが、建物を買う資金集めでした。購入資金を集めるために、まず、県内のインドネシア人に呼びかけて、資金集めを開始しました。県内には900人ほどインドネシア人がいますが、それだけでまかなうことはできませんでした。そこで、SNSを駆使して、全国のインドネシア人にも呼びかけ資金を集め、今から2年ほど前の2021年2月23日建物を取得しました。そして、内装や外観を整え、今では外から見てもモスクとわかるようになりました。

 この本を読んでみると、私とは異なる世界観を持った人が、自分たちの宗教を大切にしつつも、地域社会に溶け込もうとする様子が伝わってきましたし、多様性を受け入れる姿勢を学びました。これからの社会では、多様性を受け入れる姿勢はますます大切になっていきます。そのためにはどうあったらいいのか、フィカルさんの活動から話をします。まずは、人への優しさです。フィカルさんは、坂出市に一人で暮らしているお年寄りがすごく多いことに心を痛め、力になりたいと考えます。やはり優しい気持ちが他者を受け入れる大前提となります。そしてもう一つが、自分の考えを相手に伝えようとすることです。フィカルさんはイスラーム教のことを日本人にわかって欲しいと強く思っています。私たちの多くは、自分の意見をはっきりと示すことが苦手なのかもしれません。多様な価値観や考え方が存在する中では、自分の意見や考え方をしっかりと伝えることも必要となってきます。

 年度替わりは、新しい出会いがあります。新しい出会いから、皆さんの世界が広がるチャンスとなります。私もそうですが、4月の新しい出会いを楽しみに迎えたいです。