R04~R06校長室

230303 卒業式 校長式辞(校長室から)

2023年3月3日 16時00分

式 辞

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 校庭の梅の花が満開となり、春の訪れを感じられるこの佳き日に、香川県教育委員会・西部教育事務所長 十河聖司様、香川県議会議長代理・香川県議会議員 植條敬介様を始めとする、ご来賓の方々のご臨席と、保護者の皆様のご列席を賜り、令和4年度香川県立坂出高等学校卒業証書授与式を挙行できますこと、感謝の念に堪えません。

 只今、卒業証書を授与した 244名 の皆さん、卒業おめでとう。心からお祝い申し上げます。

 皆さんの高校生活を語るときに、新型コロナウイルス感染症を抜きに語ることはできません。入学後、わずか3日間の学校生活で臨時休業。臨時休業は2度、延長され、5月31日まで続きました。6月から学校は再開しましたが、体育祭、坂高祭が中止となり、少し寂しい学校生活となりました。2年次から、日常に戻りつつありましたが、感染対策を徹底し、緊張した生活が続いたことに変わりはありませんでした。しかし、皆さんはこの困難な状況を乗り切り、今日の卒業を迎えました。教職員一同敬意を表します。

 皆さんが、坂出高校で学んだ3年の間に、世界は劇的に変化しました。国内では、感染症対策の陣頭指揮を執った安倍総理が令和2年9月に辞任し、その後、総理大臣は菅総理、岸田総理と交代しました。そして、令和4年7月には、安倍元総理が蛮行により暗殺されました。国際社会では、トランプ・アメリカ大統領からバイデン大統領への政権交代時の令和3年1月に、政権交代に反対するトランプ支持派が連邦議会議事堂に乱入する事件が起きるとともに、主張の異なる勢力の対立が激しくなり、民主政治を危ぶむ声が高まりました。さらに、昨年2月からのロシアのウクライナ侵攻により、世界の対立は激化し、話し合いによる解決が難しくなっています。

 現在、ウクライナの問題以外にも、環境問題、貧困の問題など数多くの問題への対応により、民主政治が試されています。民主政治では、ただ多数決で物事を決めるのではなく、多様な立場や考え方の異なる人たちの意見をもとに、議論し納得解を見いだすことが必要です。ただ、解決すべき課題があまり多く、それぞれが難しい課題であるため、諦め、思考停止になる人もいるのかもしれません。しかし、皆さんは、本校の学びの中、総合的な探究の時間、ホームルーム活動、部活動、そして感染症対策をとりながらどのような生活を送るべきかなど、身の回の問題に取り組み、解決策を見いだしてきました。それは、自分事として問題に向き合ってきたからできたことです。最近では、フェアトレードのカカオ豆を使ったチョコレートが、バレンタインの売れ筋商品になっていることが紹介されていました。フェアトレードは貧困をなくすというSDGsがめざす取り組みにつながります。大きなことはできなくても、各自が世の中のことに関心を持ち、自分事として社会に参画することはできます。民主政治は、そのような個々人によりつくりだされるのであり、皆さんにはそうあって欲しいのです。

 これからも社会は劇的に変化し続けることが予想されます。皆さんは、刻一刻と変化する社会の中で、自己と社会の結びつきから進路を考え、自分がめざす道を見いだしたと思います。そして、それがこれからの長い人生の指針となることを望んでいます。指針がゆらいできたときには、立ち止まり、「なぜ、自分はそうありたいのか」見つめ直してください。また、理想に向かい邁進する中で、うまくいかないことや失敗することもあろうかと思います。しかし、皆さんが学び続けることをやめなければ、やり直すことは可能です。

 日本の近代経済社会の基礎を築いた渋沢栄一は次のように語っています。
「卒業後に真の勉強が始まる。学校を出た後でも研究を怠らない者は、思いどおりにならないことがあっても、そのうち必ずうまくいくようになる。世の中に出てから、絶えず情熱と勉強の心がけを失わないようにする。こういう人は向上心をなくした秀才なんかとは、全く比べものにならない。学校で学ぶことは、社会に出てから現実に対応していくための準備に過ぎないのである。」

 本校で培った「社会の変化に柔軟に対応し主体的に行動できる力、そして、心豊かでたくましい心」が、これからの人生を力強く生きていく力となると信じています。また、これからの社会では、助け合って生きていくことが今まで以上に求められます。ぜひ、まわりの人に対する優しさや感謝の気持ちを忘れないでください。今日の卒業を迎えることができたのも、ご家族を始めとする多くの人の支えがあってのものです。

 終わりになりましたが、保護者の皆様、お子様が卒業を迎えられましたことに、心からお喜びを申し上げます。また、これまで賜りました、さまざまなご支援に、この場をお借りし、また全教職員を代表し、厚く御礼を申し上げます。そしてこれからも、大きく成長するお子様をあたたかく見守りください。

 卒業生の皆さん、皆さんが、「高邁自主」・「パティマトス」の精神を忘れず、それぞれがめざす理想に向けて、邁進すること。そして、健康で幸多からんことを心から祈って、結びとします。

令和5年3月3日
香川県立坂出高等学校長 真下拓也