R04~R06校長室

240305卒業式式辞(校長室から)

2024年3月5日 16時16分

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式辞

 校庭の木々の蕾もほころび始め、春の息吹が感じられるこの佳き日に、香川県教育委員会教育委員・木下敬三様、香川県議会議員 尾崎道広様を始めとする、ご来賓の方々のご臨席と、保護者の皆様のご列席を賜り、令和5年度香川県立坂出高等学校卒業証書授与式を挙行できますこと、感謝の念に堪えません。

 只今、卒業証書を授与した 241名 の皆さん、卒業おめでとう。心からお祝い申し上げます。

 皆さんの高校生活を語るときに、新型コロナウイルス感染症を抜きに語ることはできません。皆さんが入学したときには、部活動の公式戦以外では県外の選手との交流ができないなど多くの制約がありました。その後、感染症対策は緩和されてきましたが、今年度5月に、5類感染症の扱いに変わるまで、緊張した生活を送らざるを得ないところがありました。そのような厳しい環境で、皆さんは前向きに学校生活を送り、今日の卒業を迎えました。教職員一同敬意を表します。

 この3年間には、新型コロナウイルス感染症以外にも、多くの人命が失われるつらいできごとがありました。ロシアのウクライナ侵攻、武装組織ハマスとイスラエルとの軍事衝突では、私たちは絶対に戦争をしてはいけないという強い意志を持つことの大切さを感じました。また、能登半島地震では、自然を前にしたときの人間の非力さを感じました。しかし、戦争や自然災害を前にしても、助けあう人間の素晴らしさも感じました。

 さらに、この3年間は、若い人の活躍に励まされることもありました。藤井聡太さんや大谷翔平さんの活躍は言うまでもありませんが、本校卒業生も活躍しています。向畑憲良さんは、生成AIを使い対話で注文できる日本初の買い物支援システムの構築に坂出市で取り組んでいます。本多達也さんは、聴覚障害者だけでなく、多くの人にとって役に立つエキマトペを開発し評価されました。遠山将吾さんは、ビスケットブラザーズを結成し、キングオブコント2022で優勝するなど、多くの人に笑いを届けています。先輩たちも生活と心を豊かにするために、さまざまな分野で活躍しています。卒業する皆さんも、社会の創造者として羽ばたいて欲しいと切に願っています。

 孔子は「知これに及ぶも、仁能くこれを守らざれば、これを得といえども、必ずこれを失う(どんなに多くの知識を得ても、胸に仁愛を宿していなければ、いつかは知の働きもだめになる)」と教えてくれています。AIが人間を超える日も近いのではと言われていますが、AIにはない、優しさ、しなかやさ、共感する力、楽しむ力、勇気を奮う力を発揮してください。皆さんにはこれらの力が備わっています。また、真面目でコツコツ努力することができる人もたくさんいます。ぜひ、その良さを、誰かのために生かしてください。

 そのためにも、学び、行動し続けてください。変化し続ける社会において、新しい情報を学ぶことは大切ですが、すぐに役に立つものばかり学ぶのではありません。先人たちの思考や研究を通して「新しい視点を手に入れる」ことも学びです。それは、自分の判断のよりどころとなります。そして、自分が正しいと思うことを試してください。失敗に終わる可能性もありますが、成功よりも失敗から学ぶことのほうが多いのです。ですから、悲観することなく行動してください。その人が学んできたこと、チェレンジしたこと、失敗したことが、その人のオリジナリティであり他の人にはないもの、自分を支える強いバックグラウンドになっていきます。

 さらに、本校で培った「社会の変化に柔軟に対応し主体的に行動できる力、心豊かでたくましい心」が、これからの人生を力強く生きていく力となると信じています。これからの社会では、助け合って生きていくことが今まで以上に求められます。ぜひ、まわりの人に対する優しさや感謝の気持ちを忘れないでください。今日の卒業を迎えることができたのも、ご家族を始めとする多くの人の支えがあってのものです。

 終わりになりますが、保護者の皆様、お子様が卒業を迎えられましたことに、心からお喜びを申し上げます。また、これまで賜りました、さまざまなご支援に、この場をお借りし、全教職員を代表し、厚く御礼を申し上げます。そしてこれからも、大きく成長するお子様をあたたかく見守りください。

 卒業生の皆さんが、「高邁自主」・「パティマトス」の精神を忘れず、それぞれがめざす理想に向けて、邁進すること、そして、健康で幸多からんことを心から祈って、結びとします。

令和6年3月5日

香川県立坂出高等学校長 真下拓也