R04~R06校長室

241109 3学期始業式 式辞(校長室から)

2024年1月9日 17時00分

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3学期始業式式辞

令和6年、2024年がスタートしました。

年の初めに、能登半島地震や羽田空港での航空機衝突事故という痛ましい出来事がありました。お亡くなりになった人への哀悼の気持ちを持つとともに、天災の恐ろしさ、コンピュータを駆使した安全管理がまだまだ完全ではないことを、改めて思い知らされました。また、能登地方では、厳しい状況下で被災者同士が助け合っています。羽田空港の事故では、客室乗務員の対応と乗客が落ち着いて行動したことで、死者を一人も出さずに避難できました。そこから、人間の強さやしなやかさを実感することにもなりました。私たちも震災で被災した人のためにできることにしていかなければと思いました。

年末年始の新聞には、この1年を総括したり、新年の展望を記したりしたコラムや、専門家の意見が多く掲載されました。その記事を紹介しながら話をします。

まず、令和5年の大きな出来事を「コロナ明け」としたコラムをもとに話をします。新型コロナウイルス感染症対策で人類は、団結の心を学んだはずだ。それまでバラバラであった世界中の人の心が、新型コロナという人類共通の敵に一致団結して立ち向かった。マスクをつける、ソーシャルディスタンスを保つなど、世界が1つの目標に向かって歩みはじめた。コロナをきっかけに、世界は1つの目標、すなわち平和に向かって歩み始めたのかもしれない。そう思い始めた矢先の2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、さらに、昨年の10月にはイスラエルとハマスとの軍事衝突も開始され、人類の悪い部分がクローズアップされるようになった年でもあったと、コラムは記していました。(朝日新聞12月13日掲載の東海林さだお氏の寄稿をもとにしました)

年末年始も二つの紛争のことがニュースで取り上げられています。今日は、イスラエルとハマスの軍事衝突を見てみます。ガザ地区を実効支配している、ハマスと呼ばれる軍事組織が、イスラエルに侵攻し人質を取ったことが、直接的な原因です。イスラエル政府は、人質の救出とハマスを壊滅させるために、ハマスの拠点となっているガザ地区を攻撃しています。1月3日時点でのガザ地区での死者数は2万3000人に迫っていて、ガザ地区の人口220万人の1%にあたります。この惨状に対して、イスラエルに住むユダヤ人がどう捉えているかというと、イスラエル民主主義研究所が行った世論調査によると、ガザ地区の人たちの苦しみを考慮する必要がないと回答した人が81%にのぼっていて、人質の解放やハマスの壊滅のために、軍事攻撃は仕方がないと考えているユダヤ人が多くいます。ロシアのウクライナ侵攻以降、軍事行動による問題の解決もやむを得ないという考えが世界に広まることを私は懸念します。

軍事行動を容認する風潮に対して、「答えを急がない力」が大切なのではと指摘する学者の意見がありました。世の中には明確な答えのある問題ばかりではありません。むしろ、〇か×かのように簡単に答えを出すことができない問題のほうがはるかに多くあります。だからこそ、先が見えずどうしようもない不安に耐えながら、考え、問題に挑み続ける力が必要とされます。特に、国際社会では、複雑で入り組んだ問題が多数あります。国の指導者に、「答えを急がない力」が欠如すると、戦争で解決する選択につながるおそれがあります。また、答えが出なくても問題に挑み続ける力は、人に対する寛容さとしても現れると指摘していていました。(朝日新聞1月3日掲載の帚木蓬生氏へのインタビュー記事をもとにしました)

なるほどなと思いながら記事を読みました。坂高生は、「人に優しい」と褒めてもらえることがよくあります。新年早々に坂出警察署から、陸上部の生徒2名が故障して動けなくなったダンプカーを移動させる手伝いをしてくれて助かったと、感謝の電話をもらいました。私もみなさんの様子を見ていて、坂高生は人に優しいと思います。ただ、人は、既知のもの・自分の考えに近いものには寛容になりやすいが、未知のもの・自分の考えと異なるものには不寛容になりやすい傾向があります。自分の仲間内だけの優しさでなく、自分と違う意見や考え方を持つ人に対して、この人は違うと関係を絶つのではなく、否定せずに受け入れたり、一緒に考えたりして、人とのかかわりを今まで以上に大切にしてほしいと思います。みなさん方の良さでもある「優しさ」をさらによいものできれば、明確な答えがない社会において、みなさんの力が遺憾なく発揮されると信じています。

3学期は1年間の総決算の学期です。3年生は、卒業すること、そして自分の進路を決めるという、3年間の総決算です。1・2年生は、1年間の総決算に加えて、新学年に向けての準備期間、新学年のゼロ学期ともなります。2年生であれば、受験生に向けての準備期間、1年生であれば、後輩を迎え、部活動や学校行事などで学校の中心となる2年生への準備期間です。3学期は祝日や高校入試の休業日があり、みなさんに任せる時間も多くなります。3年生は2月から家庭学習となります。それだけに、自分は何のために、何をしなければいけないのか、再確認して、新学期をスタートさせてください。そして、生活の基盤となる「遅刻しない」「あいさつをする」「掃除をする」も心がけてください。

3年生のみなさん、通常の高校生活を送ることができる日はわずかです。1日1日を大切に過ごしてください。

 以上で式辞を終わります。