校長からみなさまへ

校長からみなさまへ

2020年5月15日 17時40分

香川県立盲学校のWebサイト(ホームページ)をご覧いただき、ありがとうございます。

 

 <国の緊急事態宣言は解除、臨時休業は予定どおりです>

 

5月14日、特定警戒都道府県のうち5県も含め39県については国の緊急事態宣言が解除されました。それを受けて翌15日には本県でも対策会議が開かれ、学校の再開時期についても検討されたようですが、県立学校の臨時休業は予定どおり今月末まで継続となりました。

 

6月からの学校再開に向けての準備期間として、県教委より25日(月)から分散登校による授業可能との連絡がありましたが、本日、新たに21日(木)から段階的に授業を実施してもよいとする連絡がありました。本校の21日以降の予定については、5月8日付の保護者配布プリントのとおり(21日は臨時休業日、22日は午前中の登校日)とします。追ってお知らせすることとしておりました25日からは、終日の登校日を毎日設けることにしました。

本校は全校幼児児童生徒17名の学校です。各ホームルーム教室に在籍する児童生徒は多くて2名であり、密集ではありません。2名の教室内でも、児童生徒間、児童生徒教員間に2mの距離、いわゆるソーシャルディスタンスを確保することが可能です。窓を開けて密閉も回避し、心地よい薫風も感じながら授業ができます。できるだけ児童生徒と密接しないよう配慮して授業に取り組みます。しかし、視覚障害児者が移動するときには「手引き」が必要な時があり、「手引き」をするときには言葉かけが重要になります。全盲の生徒であっても校内で手引きをすることはほとんどありませんが、手引きをする場合には十分気をつけたいと思います。

臨時休業中の給食は提供できませんので、25日から29日の間は弁当を持参していただくようになります。弁当の持参が難しい児童生徒は、申し訳ありませんが午前中のみの登校とさせていただきます。寄宿舎については、舎食(朝食・夕食)が準備できず宿泊が難しいため、寄宿舎生は通学をお願いします。風邪症状や微熱があるとか、体調不良のときには無理せず自宅で静養してください。

感染症予防対策には徹底して取り組み、マスク着用や手洗いだけでなく、教室や学校備品の消毒なども全職員で協力して行い、気を緩めず、緊張感をもって幼児児童生徒を迎えたいと思います。校内から感染者を出さないことが第一ですが、万が一感染が出た場合でも、事後の対応を的確に行い感染を広げないことと、感染した人への偏見等が生じないよう暖かく配慮します。

 

この感染症は細心の注意を払っていても、誰もが感染する可能性があると言われています。恣意的な行動により感染してしまった人はさておき、感染したほとんどの人は、ウイルスが引き起こす病への恐怖とまさか自分がというショックを受けるだけでなく、どうしても自責の念を抱いてしまうのではないかと思います。そのような精神状態にもかかわらず、周囲から厳しくまた好奇の眼で見られると、ウイルスに打ち勝とうとする気力も萎えてしまいます。

医師であり作家である鎌田實さんが、いつぞやの新聞に「感染した人に厳しい社会は、感染症に弱い社会」と書いていました。確かに、用心に用心を重ねて感染していない人の側から見ると、感染した人はどこかに油断や隙がある人と映ってしまい、その人への見方は厳しくなる、そんな心理状態になるのも理解はできます。でも、頭の中でそういう考えが過ったとしても、大概の人は感染した人の心情を慮り、当事者意識をもつことで態度や行動に表わさないのが普通です。しかし、これだけ自粛の期間が長くなり、今まで普通にやってきたことができないというストレスが重なってくると、それに耐えられずに態度や行動に出してしまう。結果として感染者を排斥するような他人に厳しい社会、お互いに監視し合うような社会が出現する。この延長線上には、社会的に弱い立場にある人たちまで排除する社会がくるように思います。こうなると、鎌田實さんがいう「感染症に弱い社会」が現実のものになってしまいます。これは絶対に避けなければなりません。

 

人間はまず自分中心に物事を思考します。これは当たり前です。自分が心地いい状態、幸せだと思わなければ他人(ひと)のことなど考えられませんし、ましてや他人を幸せにすることもできません。でも、その他人が自分の大切な他人だったらどうでしょう。また、その大切な他人にとっての大切な他人だったらどうでしょう。そう考えることができれば、きっと他人の幸せも少しずつ考えられ、他人にも優しくできると思います。大切な他人が喜ぶ顔を見て、自分も嬉しいと感じない人はいないはずです。

この感染症を機に、「感染症に弱い社会」ではなく、他人に優しく誰もが取り残されない新たな「感染症にも強い社会」をつくりたい。そのために少しでも力を尽くしたいと思います。

 

令和2年5月15日

 

香川県立盲学校長 田中 豊