10月16日(木)と17日(金)に開催された、全国盲学校長会秋季研究協議会石川大会に参加してきました。全国の盲学校(視覚支援学校)の校長先生が集まって、講演を聞いたり、協議をしたり、情報交換等を行う会です。昨年度は香川県での開催で、校長の会ですから、前日の会場準備以外の準備のほとんどを私一人でやり遂げましたが、「校長になったばかりで、初めて特別支援学校、視覚支援学校に勤務するのに、いきなり全国大会の準備とは…」と口にすることもありました。今年の大会で印象に残ったことの一つは、前筑波大学附属視覚特別支援学校の校長先生で、現在、淑徳大学教授の青木隆一先生の講演です。校長先生方にお伝えしたいこと11策の一つ、「校長は視覚障害教育の経験者でなければならないの?」という話で、「専門的なことはわからないのでお任せします。」とか言ってないですかと問いかけられ、背筋が伸びる思いがしました。「専門外だから」を言い訳にせず、しっかりと様々な課題に向き合っていかなければならないと思った大会でした。
今週月曜日に半年間もの長い間、大阪で研修を受けていた教諭が帰ってきました。受けていた研修は、「教育関係者視覚障害リハビリテーション研修会」というものです。主催は社会福祉法人日本ライトハウスで、歩行を中心とした視覚障害生活訓練等の指導者として必要な知識や指導技術を学習することが目的です。今回、若手の教諭が研修を終えたことで、この研修を受けた教員の年齢バランスがよくなりました。研修を受けた成果として、より的確に本校の生徒に、白杖を使った歩行の指導をすることはもちろんのことですが、外部の団体から研修の指導者として呼ばれることもあります。以前、視覚障害のある方から「一人で移動できることがどんなにうれしいことか」という話を聞いたことがあります。本校の生徒に限らず、自由にかつ安全に移動できる人が増えることに貢献してほしいと思います。
10月1日(水)~10月3日(金)の2泊3日で、中学部の生徒が福岡に修学旅行へ行っています。学習指導要領で、修学旅行は「特別活動」の「学校行事」に位置付けられており、学校行事の中では「旅行・集団宿泊行事」に当たります。この行事の内容は、次のように記載されています。平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、集団生活の在り方や公衆道徳などについての望ましい体験を積むことができるような活動を行うこと。修学旅行前の全校集会で、修学旅行に行く目的は何でしょう?と問いかけた後に、この学習指導要領の内容を、できるだけ平易な表現にして、生徒らに話しました。自分の中学校での修学旅行で最も印象に残っていることは、阿蘇山の噴火口を見たことです。視覚の思い出ですね。修学旅行を引率している教頭先生から、1日目の生徒の様子として、「アシカやペンギンの鳴き声に大興奮していた。」との連絡がありました。さて、どんなことが最も印象に残ったのか、帰ってきたら聞いてみたいです。
全国特別支援学校文化祭は、全国の特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の文化・芸術活動の充実と向上を図ることを目的として、全国特別支援学校文化連盟(全文連)が毎年開催し、日頃の文化・芸術活動の成果を発表する場となっています。造形・美術部門、書道部門、写真部門があり、各都道府県から優秀な作品が推薦され、各部門の専門家の審査を経て、受賞作品が決定されています。受賞作品については、りそなグループ東京本社において2月に表彰式が開催され、作品展示も行われています。また、文部科学大臣賞、全国特別支援学校文化連盟会長賞及びりそなグループ賞の14作品は、今年の7月に香川県で開催された全国高等学校総合文化祭においても展示されました。また、来年度の全文連作成のカレンダーにも掲載されます。昨日、本校に全文連事務局から、香川県内の特別支援学校分のカレンダーと記録集が届き、今回この内容をここに掲載することにしました。入賞やカレンダーへの掲載が、少しでも幼児児童生徒の創作意欲を高めることにつながればと思います。
参照:令和6年度第31回全国特別支援学校文化祭記録集
医ケアとは、医療的ケアの略です。「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」の第二条で、「医療的ケア」とは、人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為をいうと定義されています。本校は、視覚に障害のある幼児児童生徒が学ぶ学校ですが、視覚以外の障害を併せ有する者も在籍しており、中には医療的ケアが必要な者もおります。そのような幼児児童生徒が安心して学校で学べるように、本校には看護師の資格を有する医療的ケア看護職員(学校看護師)が配置されています。医療的ケア看護職員はどんな医療的ケアでもできるわけではありません。まず、保護者の申請に基づいて学校と保護者が主治医から具体的な指示を受けます。その指示内容を校内で審議するまで新たな医療的ケアは実施できません。当該の幼児児童生徒の成長や障害の状態の変化に伴って、指示内容が変わることがあります。本日、校内で医療的ケア実施委員会を開き、関係職員が新たな指示内容について審議し、共通理解を図りました。この後、医療的ケアの内容を保護者に通知し、保護者の承諾を得ます。また、県教育委員会へ新たな医療的ケアの開始を文書で報告します。更に、緊急時の対応マニュアルも作り直します。個人的な思いや判断で動くことがないような仕組みになっています。
9月12日(金)、公益財団法人鉄道弘済会及び社会福祉法人日本盲人福祉委員会主催の第55回記念「朗読録音奉仕者感謝の集い」に参加してきました。この会は、視覚障害者のために、活字で書かれた書籍や広報誌などを音読し、その音声を録音するボランティアの個人や団体を表彰し、感謝の意を表する会です。ある受賞者の方が「今でも、どのように読むのがいいのか考えながら取り組んでいます。」とコメントされました。10年以上の経験を積んでも、まだ試行錯誤するようなことがあるのかなあと思いました。後で、その受賞者の方に個別に話を聞きますと、「表やグラフをどう読めばいいか難しいです。」と聞き、ハッとしました。私は理科が専門で、晴眼の高校生に表やグラフの意味を読み取らせる説明を長年してきた経験から、見えない人が理解できるように言葉だけで表やグラフの意味を表現することの難しさがよくわかりました。表やグラフの中には、注目すべきところとそうでないところがあったり、作成者の意図があったりするので、言葉だけで伝えるのは大変難しいと思います。ただ、活字を文字のまま読むだけが音訳ではないんですね。音訳ボランティアの方に感謝です。
本日、始業式での式辞では、この夏の高校野球全国大会で、左手の指がないハンディを抱えながら大活躍をしていた、県立岐阜商業高校の横山選手を話題にしました。私は、当初話の内容を考えているとき、守備での素早い動きの描写を入れていましたが、よく考えると、あの動きは映像を目で見ないとそのすばらしさが分からないと思い、原稿を書き直しました。本校の幼児児童生徒が自分事として想像できるように、もし左手の指がなかったら、日常生活で困りますよねと問いかけを入れました。その後、横山選手が野球で活躍できた理由を、①練習すれば自分が成長すると信じていたこと、②ハンディを抱えているので、他の人よりもたくさん練習をしないといけないと考えていたこと とし、本校の幼児児童生徒には、視覚にハンディを抱えていても、自分の可能性を信じて、繰り返し練習をし、できることを増やす2学期にしてほしいと締めくくりました。
県内の二つの高校から視覚障害について学習するために、8月27日(水)に2年生が12名、28日(日)に1年生が27名、本校に来てくれました。2校で学習内容は異なりますが、視覚障害に関する講話の他、視覚障害のある生徒が授業で活用しているICT機器や日常生活に役立つ道具(便利グッズ:8月6日にこのサイトに記載)、弱視の状態になる眼鏡をかけて教科書を見たり、点字ブロックをたどって歩く体験、アイマスクをしてゴールボールというスポーツの体験、点字を読む体験など、様々な体験を通して、視覚障害について学んでくれました。本日、参加してくれた高校生の代表者からは、今回学んだことを校内で他の生徒に広める活動をしてくれると聞きました。また、本校の教員が県内の高校へ出向いていき、視覚障害について講話をしたり、体験活動の指導をすることも毎年数校で実施しています。このような活動を通して、少しでも視覚障害者に対する理解が進むとともに、視覚に限らず様々な障害者に対して適切な配慮ができる若者が育ってくれることを期待しています。
8月19日(火) 弱視児童とその保護者や学校関係者を対象に、「視覚支援学校サマースクール」を行いました。弱視児童どうしの交流の機会とし、連帯感や安心感を醸成したり、保護者に対しては、今後の学びや支援の在り方について情報提供することなどを目的としています。児童の活動としては、ボッチャやフルーツ牛乳寒天づくりを行いました。保護者に対しては、学びの場の種類(通級、特別支援学級等)についてや当事者の体験談を聞いてもらったり、座談会を行いました。当事者の体験談では、小学生のとき担任の先生が常に近くにいて、困ったことがあっても自分から発信しなくても助けてくれたため、自分から発信する力を十分に身に付けることができなかったかもしれないという話が印象に残りました。本校の教育の根幹に通ずる話で、支援の在り方について考えさせられました。
昨日、小学生とその保護者を本校に招いて、視覚障害について学んでもらう行事「視覚支援学校探検」を実施しました。点字ブロックを伝う歩行や点字の名刺作成、ゴールボールというスポーツの体験など、様々な体験と講話を行いました。視覚障害者のために作られた「便利グッズ」の体験コーナーでは、物の色を音声で教えてくれる道具や針に触って時刻を知る腕時計など、日常生活に役立つ道具の他、点字のついたトランプや色ごとに異なる形状の突起がついたルービックキューブなど娯楽のための物品も見てもらいました。本校教員からの工夫されている点についての質問に、参加してくれた小学生が元気よく答えてくれていたことが印象的でした。最後に、視覚障害のある本校教員からの講話があり、視覚に障害があっても他の人と同じことをして普段過ごしていること、困っている人がいたら声を掛けてくれるだけでうれしいなどの話がありました。小さいことではありますが、視覚障害に対する理解者が増えたことをうれしく思います。
全国総文は、全国高等学校総合文化祭の略で、文化部のインターハイのような大会です。今年度は、7月26日(土)から31日(木)の日程で、香川県内の各地で23部門が開催されています。大会名は「高等学校」となっていますが、特別支援学校高等部の生徒も参加しています。これまでの大会では「特別支援学校部門」が高校生の部門とは別に独立してあったらしいですが、今回のかがわ総文祭では、特別支援学校高等部の生徒は、参加可能な部門等に高校生と一緒に参加しているようです。26日(土)に、総合開会式とパレードを観覧してきましたが、特別支援学校高等部の生徒も元気に活躍していました。後日、本校の生徒の作品が展示されていることもあり、美術・工芸部門の作品を見に行ってきました。県内の高校と特別支援学校高等部の生徒が共同で制作した瀬戸内海の生き物のワイヤーアートの展示が壁一面にあり、絵画については高校生と特別支援学校の生徒の作品が区切られることなく、同じ並びで展示されていました。インクルーシブの考え方を象徴するような展示でした。
私は、昨年度から初めて特別支援学校に勤務していますが、子どもへの支援内容を説明した書類に「VOCA」という表現が出てきたとき、「これは何ですか?」と、昨年の1学期に若い教諭に聞いたことを覚えています。VOCAとは、Voice Output Communication Aidの略で、言葉でのコミュニケーションが難しい人が、ボタンを押すことで、あらかじめ録音された言葉を再生し、意思を伝えるための機器です。本校には、視覚障害に知的障害を併せ有する幼児児童生徒が在籍しており、授業や行事、給食などの様々な場面で、自分の意思を伝えたり、場に応じた適切な表現を覚えてもらうためにVOCAを活用しています。来週、東京で開かれる全国の盲学校の先生方の研究発表会で、本校の寄宿舎指導員がVOCAを使った寄宿舎でのコミュニケーション支援について、発表をする予定です。自分の意思を伝えることは、生活の基盤となるものですので、在学中に少しでも向上してほしいと願っています。
特別支援学校では、生徒が将来の自立や就労に必要な力を身に付けるため、企業や福祉施設などで、実際に働く経験をする現場実習をしています。本校では、高等部の2年生の2名が、1週間ないし2週間、5月末から6月にかけて、就労支援事業所で現場実習を行いました。就労支援事業所とは、障害があるために一般の企業に就職することが困難な人を対象に、生産活動やその他の活動の機会を提供し、知識や能力向上のための訓練を行う所で、雇用契約の有無でA型とB型の2種類があります。本日、7月18日(金)終業式の後に、二人の生徒による現場実習報告会を行いました。この報告会には、やがて現場実習に参加することになる中学部の生徒や保護者も参加しました。発表では、やりがいのあった作業や作業で手が痛くなったことなど作業に関することのほか、本校を卒業して就労するまでに身につけておかなければならない自分の課題やこれからの学校生活についての決意などを聞くことができ、大変良かったと思います。