校長からみなさまへ

表やグラフの音訳

2025年9月12日 16時00分

 9月12日(金)、公益財団法人鉄道弘済会及び社会福祉法人日本盲人福祉委員会主催の第55回記念「朗読録音奉仕者感謝の集い」に参加してきました。この会は、視覚障害者のために、活字で書かれた書籍や広報誌などを音読し、その音声を録音するボランティアの個人や団体を表彰し、感謝の意を表する会です。ある受賞者の方が「今でも、どのように読むのがいいのか考えながら取り組んでいます。」とコメントされました。10年以上の経験を積んでも、まだ試行錯誤するようなことがあるのかなあと思いました。後で、その受賞者の方に個別に話を聞きますと、「表やグラフをどう読めばいいか難しいです。」と聞き、ハッとしました。私は理科が専門で、晴眼の高校生に表やグラフの意味を読み取らせる説明を長年してきた経験から、見えない人が理解できるように言葉だけで表やグラフの意味を表現することの難しさがよくわかりました。表やグラフの中には、注目すべきところとそうでないところがあったり、作成者の意図があったりするので、言葉だけで伝えるのは大変難しいと思います。ただ、活字を文字のまま読むだけが音訳ではないんですね。音訳ボランティアの方に感謝です。

左手の指

2025年9月1日 16時30分

 本日、始業式での式辞では、この夏の高校野球全国大会で、左手の指がないハンディを抱えながら大活躍をしていた、県立岐阜商業高校の横山選手を話題にしました。私は、当初話の内容を考えているとき、守備での素早い動きの描写を入れていましたが、よく考えると、あの動きは映像を目で見ないとそのすばらしさが分からないと思い、原稿を書き直しました。本校の幼児児童生徒が自分事として想像できるように、もし左手の指がなかったら、日常生活で困りますよねと問いかけを入れました。その後、横山選手が野球で活躍できた理由を、①練習すれば自分が成長すると信じていたこと、②ハンディを抱えているので、他の人よりもたくさん練習をしないといけないと考えていたこと とし、本校の幼児児童生徒には、視覚にハンディを抱えていても、自分の可能性を信じて、繰り返し練習をし、できることを増やす2学期にしてほしいと締めくくりました。

高校生の学び

2025年8月28日 16時00分

 県内の二つの高校から視覚障害について学習するために、8月27日(水)に2年生が12名、28日(日)に1年生が27名、本校に来てくれました。2校で学習内容は異なりますが、視覚障害に関する講話の他、視覚障害のある生徒が授業で活用しているICT機器や日常生活に役立つ道具(便利グッズ:8月6日にこのサイトに記載)、弱視の状態になる眼鏡をかけて教科書を見たり、点字ブロックをたどって歩く体験、アイマスクをしてゴールボールというスポーツの体験、点字を読む体験など、様々な体験を通して、視覚障害について学んでくれました。本日、参加してくれた高校生の代表者からは、今回学んだことを校内で他の生徒に広める活動をしてくれると聞きました。また、本校の教員が県内の高校へ出向いていき、視覚障害について講話をしたり、体験活動の指導をすることも毎年数校で実施しています。このような活動を通して、少しでも視覚障害者に対する理解が進むとともに、視覚に限らず様々な障害者に対して適切な配慮ができる若者が育ってくれることを期待しています。

自分から発信する力

2025年8月19日 15時10分

 8月19日(火) 弱視児童とその保護者や学校関係者を対象に、「視覚支援学校サマースクール」を行いました。弱視児童どうしの交流の機会とし、連帯感や安心感を醸成したり、保護者に対しては、今後の学びや支援の在り方について情報提供することなどを目的としています。児童の活動としては、ボッチャやフルーツ牛乳寒天づくりを行いました。保護者に対しては、学びの場の種類(通級、特別支援学級等)についてや当事者の体験談を聞いてもらったり、座談会を行いました。当事者の体験談では、小学生のとき担任の先生が常に近くにいて、困ったことがあっても自分から発信しなくても助けてくれたため、自分から発信する力を十分に身に付けることができなかったかもしれないという話が印象に残りました。本校の教育の根幹に通ずる話で、支援の在り方について考えさせられました。

便利グッズ

2025年8月6日 10時30分

 昨日、小学生とその保護者を本校に招いて、視覚障害について学んでもらう行事「視覚支援学校探検」を実施しました。点字ブロックを伝う歩行や点字の名刺作成、ゴールボールというスポーツの体験など、様々な体験と講話を行いました。視覚障害者のために作られた「便利グッズ」の体験コーナーでは、物の色を音声で教えてくれる道具や針に触って時刻を知る腕時計など、日常生活に役立つ道具の他、点字のついたトランプや色ごとに異なる形状の突起がついたルービックキューブなど娯楽のための物品も見てもらいました。本校教員からの工夫されている点についての質問に、参加してくれた小学生が元気よく答えてくれていたことが印象的でした。最後に、視覚障害のある本校教員からの講話があり、視覚に障害があっても他の人と同じことをして普段過ごしていること、困っている人がいたら声を掛けてくれるだけでうれしいなどの話がありました。小さいことではありますが、視覚障害に対する理解者が増えたことをうれしく思います。

全国総文

2025年7月30日 10時30分

 全国総文は、全国高等学校総合文化祭の略で、文化部のインターハイのような大会です。今年度は、7月26日(土)から31日(木)の日程で、香川県内の各地で23部門が開催されています。大会名は「高等学校」となっていますが、特別支援学校高等部の生徒も参加しています。これまでの大会では「特別支援学校部門」が高校生の部門とは別に独立してあったらしいですが、今回のかがわ総文祭では、特別支援学校高等部の生徒は、参加可能な部門等に高校生と一緒に参加しているようです。26日(土)に、総合開会式とパレードを観覧してきましたが、特別支援学校高等部の生徒も元気に活躍していました。後日、本校の生徒の作品が展示されていることもあり、美術・工芸部門の作品を見に行ってきました。県内の高校と特別支援学校高等部の生徒が共同で制作した瀬戸内海の生き物のワイヤーアートの展示が壁一面にあり、絵画については高校生と特別支援学校の生徒の作品が区切られることなく、同じ並びで展示されていました。インクルーシブの考え方を象徴するような展示でした。

VOCA

2025年7月25日 13時30分

 私は、昨年度から初めて特別支援学校に勤務していますが、子どもへの支援内容を説明した書類に「VOCA」という表現が出てきたとき、「これは何ですか?」と、昨年の1学期に若い教諭に聞いたことを覚えています。VOCAとは、Voice Output Communication Aidの略で、言葉でのコミュニケーションが難しい人が、ボタンを押すことで、あらかじめ録音された言葉を再生し、意思を伝えるための機器です。本校には、視覚障害に知的障害を併せ有する幼児児童生徒が在籍しており、授業や行事、給食などの様々な場面で、自分の意思を伝えたり、場に応じた適切な表現を覚えてもらうためにVOCAを活用しています。来週、東京で開かれる全国の盲学校の先生方の研究発表会で、本校の寄宿舎指導員がVOCAを使った寄宿舎でのコミュニケーション支援について、発表をする予定です。自分の意思を伝えることは、生活の基盤となるものですので、在学中に少しでも向上してほしいと願っています。

現場実習

2025年7月18日 12時00分

 特別支援学校では、生徒が将来の自立や就労に必要な力を身に付けるため、企業や福祉施設などで、実際に働く経験をする現場実習をしています。本校では、高等部の2年生の2名が、1週間ないし2週間、5月末から6月にかけて、就労支援事業所で現場実習を行いました。就労支援事業所とは、障害があるために一般の企業に就職することが困難な人を対象に、生産活動やその他の活動の機会を提供し、知識や能力向上のための訓練を行う所で、雇用契約の有無でA型とB型の2種類があります。本日、7月18日(金)終業式の後に、二人の生徒による現場実習報告会を行いました。この報告会には、やがて現場実習に参加することになる中学部の生徒や保護者も参加しました。発表では、やりがいのあった作業や作業で手が痛くなったことなど作業に関することのほか、本校を卒業して就労するまでに身につけておかなければならない自分の課題やこれからの学校生活についての決意などを聞くことができ、大変良かったと思います。

水の流れを感じる

2025年7月10日 11時00分

 川や海での水の事故で子どもが命を失うニュースに心を痛めています。1955年の紫雲丸沈没事故で多くの児童が亡くなったことを契機に、全国の学校にプールが設置され、水泳の授業が始まりました。最近では、プールの老朽化や連日の猛暑のために、学校でプールの授業ができない状況があることもニュースになっています。本校には屋内プールがあり、屋外のものに比べて、プールサイドが熱くなりにくく、窓を開けていると涼しい状態で授業ができます。先日、授業の様子を見ると、幼稚部から高等部の子どもたちが、それぞれ浮き具をつけたり、ビート版を使って、安全に授業を受けていました。一人ひとりの障害や運動能力に応じて、水に慣れる練習からバタ足や息継ぎの練習までレベルの異なる練習を、それぞれに一人の教員がついて、指導を受けていました。授業の最初は、プール内をみんなで歩いて水流を起こし、その後水流に向かって進むなど、見えないために分からない水流や水の圧力を全身で体感しています。視覚に障害があっても水の事故で命を失うことなく、水に親しんでほしいと思います。

STT

2025年7月3日 15時00分

  STTは、サウンドテーブルテニスの略で、視覚障害者が行う卓球です。ボールの中に4つの金属球が入っていて、転がると「シャリシャリ」と音がします。ボールは、ネットの上を飛んでコートを行きかうのではなく、ネットと台のすき間(4.2㎝)をくぐりぬけて行き来します。ラケットは、打った時の音が分かりやすいようにラバーを貼っていません。台のエンドラインとサイドラインにフレームがついていて、打ったボールが相手のエンドフレームに当たって、コートにボールが触れている場合や、相手が返球できなかった場合に得点となります。音を頼りにするスポーツなので、試合中は応援者も音を立てることができず、静寂の中で戦いが繰り広げられます。この土日に中国四国地区の盲学校体育大会が広島中央特別支援学校で開催され、本校から部活動で練習に取り組んでいる2名の生徒が出場します。本日、5時間目には、その壮行会を行いました。運動技能だけでなく、様々な点で成長につながる大会であってほしいと願っています。

参照ホームページ:パラスポーツスタートガイド

視覚障害教育の専門性の向上と継承

2025年6月19日 13時30分

 昨年4月この場所に「G研」について書きました。G研とは、本校に初めて転勤してきた教員と希望者が対象で、視覚障害教育全般について、基本的な内容を学ぶ研修で、年間10回程度放課後にしています。専門家のスペシャリストではなく、ジェネラリストを目指すということでG研と言います。それに対して、少し専門性の高い内容を学ぶ「グループ研修」というものもしています。今年度の場合、①歩行指導(日常生活動作)②点字指導③スポーツ④重複障害教育⑤情報支援機器の5つのグループのいずれかを先生方に選んでもらい、年間を通して一つのテーマで月1回程度の研修を放課後にしています。このグループ研修での成果を他の研修グループの教員に広げるために、更に夏休みを中心に「校内研修講座」という研修を10回程度予定しています。この他、先生方によっては、県外の研究会やオンラインの研修に参加するなどし、視覚障害教育の専門性を高めたり、校内での継承に努めています。

素晴らしい演奏に感謝

2025年6月12日 10時00分

 6月11日(水)に、高松市が主催する学校巡回芸術教室が本校の体育館で行われました。希望が叶って瀬戸フィルハーモニー交響楽団の方々が20人余り来てくださいました。見えない・見えにくい人に配慮された各楽器の説明があり、その後演奏をしていただきました。一つだけの楽器の音を生でじっくり聴く機会はあまりないため、それぞれの楽器の音の特徴がよく分かりました。本校の校歌を演奏してくださり、生徒職員みんなで校歌を歌いました。オーケストラによる伴奏の校歌は豪華な印象で、気持ちよく歌うことができました。3人の生徒が、ハンガリー舞曲第5番で指揮体験もしました。自分の手の動きに合わせて演奏のテンポが変わる、不思議な感覚を味わったのではないかと思います。生徒が演奏を聞いたり、指揮体験で喜んでいる姿を見ると、本当に来てくださって良かったと思いました。個々の楽器の美しい音色、合奏による美しいハーモニーと迫力など、質の高い芸術の素晴らしさを体感する機会に恵まれたことに感謝しています。

交流

2025年6月5日 16時30分

 地方にある多くの視覚支援学校(盲学校)の幼児児童生徒数は、本県と同じように少なくなっています。専門的な支援・指導を受け、学力を付けて大学に進学したり、あん摩マッサージ師などの仕事に就けることは、視覚支援学校の大きな利点ですが、集団での学校生活を通して学ぶ機会は、一般の学校(園)と比べて少ないことは否めません。たくさんの友達と一緒に過ごすことで学ぶことも多くあると思います。その欠点を補う方法の一つが交流です。交流には、本校の幼児児童生徒が本校近くの学校(園)に行き、一緒に活動する場合と、本校の幼児児童生徒が居住地の学校(園)に行く場合があります。本校では、昨年度まで部活動で交流をしている生徒がいましたが、今年度は、週に1回程度の居住地での交流を行っています。この他、県外の視覚支援学校(盲学校)の児童生徒とオンラインで交流することも可能です。いろいろと工夫をしながら、幼児児童生徒の自立と社会参加に向けて尽力しています。

通級による指導

2025年5月30日 14時30分

 「通級による指導」とは、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒が、大部分の授業を通常の学級で受けながら、一部の授業について、障害に応じた特別な指導を特別な場(通級指導教室)で受ける指導のことです。指導形態には、①自校通級:通級指導教室設置校の教員が自校の児童生徒に指導 ②巡回による指導:通級指導教室がない学校へ教員が出向いて指導 ③他校通級:児童生徒が通級指導教室を設置している特別支援学校等へ移動してその学校の教員が指導 などがあります。本校は今年度から通級指導教室を設置しましたが、今年度は、上記の②巡回による指導として、県内の小学校へ本校教員が出向いていき、児童の指導を行っています。本校教員が行う指導は児童生徒の障害の状態で変わりますが、例えば、提示された文字や図に素早くルーペを近づけて読み取ったり、黒板の文字を単眼鏡で素早く読み取ったり、拡大読書器やタブレット端末等の使い方について指導をしています。これらの指導によって、指導を受けている児童生徒が障害による学習上や生活上の困難を改善又は克服できることを願っています。

音源走

2025年5月21日 10時00分

 5月17日(土)の体育祭は、雨天のため体育館ですることになりました。楽しみにされていた来賓の皆様には申し訳ありませんが、スペースの関係で、参観者は、幼児児童生徒のご家族と旧職員のみにさせてもらいました。本校の体育祭には、視覚支援学校ならではの特徴的な競技がいくつかありますが、そのうちの「音源走」を紹介します。スタート地点に生徒が一人立つと、ゴールの後方で教員が生徒の名前を呼び、手ばたきをします。その音を頼りに生徒は走っていく方向を把握します。笛の合図で走り始め、走っているときも手ばたきの音を頼りに真っすぐ走ってゴールを目指します。ゴールの方向やゴールまでの距離は、手ばたきの音を頼りに把握するため、周囲の人は走っている間は黙って静かに見守っています。  ゴールした瞬間、会場全体から大きな拍手が送られました。室内であったこともあり、拍手が大きく響き、会場全体に一体感がありました。体育祭全体を通して、自分の子ども以外にも声援を送る保護者、学部や担任の枠組みを超えて頑張りをたたえる教員など、参加者全員がそれぞれの幼児児童生徒全員にエールを送った温かい体育祭でした。