本校を卒業して、あん摩マッサージ指圧師として働いている卒業生から、仕事のようすや就職先を決めた経緯、本校に在籍していたときにもっと取り組んでいれば良かったと思うことなどについて、先日、生徒や教員に対して講話をしてもらいました。働いてみて感じたこととしては、施術の技術にはある程度自信があったものの、お客さんと天気などの何気ない会話を、その人の人柄に合わせて多くしたり少なくしたりしなければならないという話がありました。最初はうまくできなかったが経験を積みながら徐々にできるようになってきたようでした。また、生徒から「お客さんの施術に対する満足度をどのようにして判断していますか」という質問に対しては、例えば「気持ちいいです」と言われても、その声のトーンで、満足度を判断しているという話がありました。施術はただ技術が良ければいいというものではなく、人を相手にすることなので、コミュニケーションの大切さを実感されていたようでした。話を聞いた生徒たちの今後の取り組み姿勢に良い変化が出ることを期待したいです。
世の中には様々な記念日がありますが、12月3日は、「視覚障害者ガイドヘルパーの日」です。視覚障害者ガイドヘルパーとは、視覚に障害のある方の外出をサポートする支援者のことで、「同行援護従事者」とも呼ばれます。屋外での移動の補助や周囲の状況を言葉で伝えたり、代筆・代読を行ったりすることが業務内容です。皆さんの中には、スーパーで買い物の支援を受けている視覚障害者の方を見かけた人もいるのではないでしょうか。目が見えない状態でスーパーで買い物をすることを想像してみてください。ガイドヘルパーがいかに重要な存在であるかが分かると思います。社会福祉法人日本視覚障害者団体連合のリーフレットによると、ガイドヘルパーの不足が続いているようで、新たなガイドヘルパーの養成が喫緊の課題となっています。ガイドヘルパーの必要性を広く社会に知ってもらうために、この記念日が制定されたようです。ガイドヘルパーになるためには、「同行援護従事者養成研修」を受ける必要がありますが、県内でも研修を受けることができます。興味のある方は、「同行援護従事者養成研修」を検索してみてください。
本校では、6月と11月に学校全体で、地震・火災・津波を想定した防災訓練をしています。これとは別に寄宿舎でも毎月防災訓練をしています。先日の25日(火)に、自分としては4回目となる本校全体での防災訓練がありました。4回目となると最初の緊張感が薄れ、見えてくるものがあります。地震の後、校舎損傷確認担当がそれぞれの校舎に行き、本部の事務室にいる教頭先生が報告を受ける段取りです。教頭先生がもっている訓練マニュアルには、どこが損傷しているかは書いていませんので、正確に聞き取る必要がありますが、トランシーバー越しの音声が聞き取れず、何度か聞き直したことがありました。その間、事務室に集合している職員は、黙って静かに待っていたり、訓練マニュアルに目を通しています。この状況を見て、「実際に大地震が来たときに、みんな黙っておれるかな」と思いました。余震の揺れに悲鳴をあげたり、〇〇が壊れたとか誰かが怪我したとか、津波はいつ頃来るのかなど、集まっている人が口々に何かを話して、大事な情報の整理がやりにくいのではないか思いました。そこで、避難完了時の校長による講評では、「静かに黙っていることも大事」ということを、幼児児童生徒及び職員に伝えました。
11月15日(土)に東京2025デフリンピックが開幕しました。デフリンピックは、聴覚に障害のある選手を対象とした国際的な総合スポーツ競技大会で、ニュースにもよく取り上げられ、手話についても多く目にするようになりました。聴覚障害に対する社会的な認知度が上がる良い機会になっており、視覚障害教育に携わる者としては、少しうらやましく思います。スポーツ分野での障害者の活躍という点では、10月1日(水)にスポーツ庁の長官に就任された全盲の河合純一さんに注目しています。スポーツ庁のホームページによりますと、河合さんは、平成4年のバルセロナパラリンピックから平成24年のロンドンパラリンピックまでの6大会に水泳選手として出場し、多数のメダルを獲得されています。また、大学を卒業された後、静岡県で中学校の教諭をされ、静岡県総合教育センターで指導主事もされており、教育現場にも理解がある方と思っています。全盲の方が政府組織の責任者になることは異例のことで、スポーツの振興を通して様々な社会課題の解決が進むことを期待しています。
11月7日(金)、本校のPTA研修会に参加しました。内容は、本校の卒業生とその保護者を招いて、幼児・児童・生徒だったころに苦労したことや本校卒業後の進路、現在の仕事などについて、本校の保護者と情報交換をする座談会です。目が見えないハンディがありながら、現在、県外のベンチャー企業で責任ある立場を任され活躍されているようすを聞き、自分の好きなことを貫いて今の仕事を獲得した強い心と努力に感心しました。その他様々なことが話題になりましたが、私が最も印象に残ったことは、差別のことです。「目が見えない子は、こんな混雑しているところに連れてこないで、家におらしたらええんや。」と心無い言葉をかけられたこととか、子どもが使っていた白杖が幼い子に当たって、その親に白杖を取り上げられ、投げ捨てられたことがあるなどの話題が出て、私は大きな衝撃を受けました。会の中では、内容によっては犯罪として扱うこととか、差別に負けてはいけないという話になりましたが、一般の人々への理解啓発が全く足りていないということを痛感しました。
非常に暑い日が長く続いた日が嘘のように朝晩は寒くなり、校内で虫を見かけなくなりました。私は授業の様子や敷地内に危険な状況がないかなどを確認するために、できるだけ1日に複数回、校内を歩いて回っています。夏から秋にかけて歩いていたとき、点字ブロックの上に、カナブンがいたり、イモムシが木から落ちてはっていたりしたことがありました。また、近所には野良猫が複数いて時々校内に入ってますが、猫か何か動物が落とした物も見かけたことがあります。気が付いたときには、点字ブロックの上から取り除いています。点字ブロックの上に自転車を停めたりすると通行の邪魔になるからやめましょうというようなことはよく聞きますが、このように踏みたくないものがある場合に取り除きましょうという話は聞いたことがありません。晴眼者であれば、自然とよけることができても、視覚に障害があると気づかないで踏んでしまうこともあるでしょう。誰でも虫の命をむやみに奪いたくはないはずですし、靴も汚したくないはずです。皆さんも街中で、点字ブロックの上に何か落ちていたものを見かけたときは、踏まれない場所へ移動させるか、取り除いていただければと思います。
11月1日(土)に「笑顔満祭 ~歌って奏でて輝いてみんなで楽しく挑戦~ 私が主役の文化祭2025」のテーマのもと、文化祭を開催しました。歌ったり、演奏したり、演技をしたり、事前に作成した物品を販売したりするなど、幼児児童生徒が一生懸命取り組む姿には、昨年度と同様にたいへん感動しました。私にとって2回目の本校文化祭ですが、昨年度からの幼児児童生徒の成長を感じ取ることができたり、普段は見られない成人の生徒が熱唱する姿は新鮮でした。障害の状況に合わせてできることに一生懸命取り組み、それぞれが主役になったときがあり、うれしく思いました。また、昨年度なかった書道パフォーマンスや琴の演奏、幼児による演奏やダンスなどの他、作品展示や販売物品も昨年度にはなかったものがほとんどで、新しいことにたくさん挑戦していました。幼児児童生徒がよく頑張っていたことに加えて、手前味噌ではありますが、それを支えていた本校の先生方が時間をかけてよく指導できているなあと感心しました。
10月16日(木)と17日(金)に開催された、全国盲学校長会秋季研究協議会石川大会に参加してきました。全国の盲学校(視覚支援学校)の校長先生が集まって、講演を聞いたり、協議をしたり、情報交換等を行う会です。昨年度は香川県での開催で、校長の会ですから、前日の会場準備以外の準備のほとんどを私一人でやり遂げましたが、「校長になったばかりで、初めて特別支援学校、視覚支援学校に勤務するのに、いきなり全国大会の準備とは…」と口にすることもありました。今年の大会で印象に残ったことの一つは、前筑波大学附属視覚特別支援学校の校長先生で、現在、淑徳大学教授の青木隆一先生の講演です。校長先生方にお伝えしたいこと11策の一つ、「校長は視覚障害教育の経験者でなければならないの?」という話で、「専門的なことはわからないのでお任せします。」とか言ってないですかと問いかけられ、背筋が伸びる思いがしました。「専門外だから」を言い訳にせず、しっかりと様々な課題に向き合っていかなければならないと思った大会でした。
今週月曜日に半年間もの長い間、大阪で研修を受けていた教諭が帰ってきました。受けていた研修は、「教育関係者視覚障害リハビリテーション研修会」というものです。主催は社会福祉法人日本ライトハウスで、歩行を中心とした視覚障害生活訓練等の指導者として必要な知識や指導技術を学習することが目的です。今回、若手の教諭が研修を終えたことで、この研修を受けた教員の年齢バランスがよくなりました。研修を受けた成果として、より的確に本校の生徒に、白杖を使った歩行の指導をすることはもちろんのことですが、外部の団体から研修の指導者として呼ばれることもあります。以前、視覚障害のある方から「一人で移動できることがどんなにうれしいことか」という話を聞いたことがあります。本校の生徒に限らず、自由にかつ安全に移動できる人が増えることに貢献してほしいと思います。
10月1日(水)~10月3日(金)の2泊3日で、中学部の生徒が福岡に修学旅行へ行っています。学習指導要領で、修学旅行は「特別活動」の「学校行事」に位置付けられており、学校行事の中では「旅行・集団宿泊行事」に当たります。この行事の内容は、次のように記載されています。平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、集団生活の在り方や公衆道徳などについての望ましい体験を積むことができるような活動を行うこと。修学旅行前の全校集会で、修学旅行に行く目的は何でしょう?と問いかけた後に、この学習指導要領の内容を、できるだけ平易な表現にして、生徒らに話しました。自分の中学校での修学旅行で最も印象に残っていることは、阿蘇山の噴火口を見たことです。視覚の思い出ですね。修学旅行を引率している教頭先生から、1日目の生徒の様子として、「アシカやペンギンの鳴き声に大興奮していた。」との連絡がありました。さて、どんなことが最も印象に残ったのか、帰ってきたら聞いてみたいです。
全国特別支援学校文化祭は、全国の特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の文化・芸術活動の充実と向上を図ることを目的として、全国特別支援学校文化連盟(全文連)が毎年開催し、日頃の文化・芸術活動の成果を発表する場となっています。造形・美術部門、書道部門、写真部門があり、各都道府県から優秀な作品が推薦され、各部門の専門家の審査を経て、受賞作品が決定されています。受賞作品については、りそなグループ東京本社において2月に表彰式が開催され、作品展示も行われています。また、文部科学大臣賞、全国特別支援学校文化連盟会長賞及びりそなグループ賞の14作品は、今年の7月に香川県で開催された全国高等学校総合文化祭においても展示されました。また、来年度の全文連作成のカレンダーにも掲載されます。昨日、本校に全文連事務局から、香川県内の特別支援学校分のカレンダーと記録集が届き、今回この内容をここに掲載することにしました。入賞やカレンダーへの掲載が、少しでも幼児児童生徒の創作意欲を高めることにつながればと思います。
参照:令和6年度第31回全国特別支援学校文化祭記録集
医ケアとは、医療的ケアの略です。「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」の第二条で、「医療的ケア」とは、人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為をいうと定義されています。本校は、視覚に障害のある幼児児童生徒が学ぶ学校ですが、視覚以外の障害を併せ有する者も在籍しており、中には医療的ケアが必要な者もおります。そのような幼児児童生徒が安心して学校で学べるように、本校には看護師の資格を有する医療的ケア看護職員(学校看護師)が配置されています。医療的ケア看護職員はどんな医療的ケアでもできるわけではありません。まず、保護者の申請に基づいて学校と保護者が主治医から具体的な指示を受けます。その指示内容を校内で審議するまで新たな医療的ケアは実施できません。当該の幼児児童生徒の成長や障害の状態の変化に伴って、指示内容が変わることがあります。本日、校内で医療的ケア実施委員会を開き、関係職員が新たな指示内容について審議し、共通理解を図りました。この後、医療的ケアの内容を保護者に通知し、保護者の承諾を得ます。また、県教育委員会へ新たな医療的ケアの開始を文書で報告します。更に、緊急時の対応マニュアルも作り直します。個人的な思いや判断で動くことがないような仕組みになっています。
9月12日(金)、公益財団法人鉄道弘済会及び社会福祉法人日本盲人福祉委員会主催の第55回記念「朗読録音奉仕者感謝の集い」に参加してきました。この会は、視覚障害者のために、活字で書かれた書籍や広報誌などを音読し、その音声を録音するボランティアの個人や団体を表彰し、感謝の意を表する会です。ある受賞者の方が「今でも、どのように読むのがいいのか考えながら取り組んでいます。」とコメントされました。10年以上の経験を積んでも、まだ試行錯誤するようなことがあるのかなあと思いました。後で、その受賞者の方に個別に話を聞きますと、「表やグラフをどう読めばいいか難しいです。」と聞き、ハッとしました。私は理科が専門で、晴眼の高校生に表やグラフの意味を読み取らせる説明を長年してきた経験から、見えない人が理解できるように言葉だけで表やグラフの意味を表現することの難しさがよくわかりました。表やグラフの中には、注目すべきところとそうでないところがあったり、作成者の意図があったりするので、言葉だけで伝えるのは大変難しいと思います。ただ、活字を文字のまま読むだけが音訳ではないんですね。音訳ボランティアの方に感謝です。