本日、9月22日(日)科学へジャンプというイベントを本校を会場に実施しました。科学へジャンプは、視覚に障害のある生徒の理系離れを防ごうと、科学に関する実験や実習を通して興味関心を高めることなどをねらいとし、2008年に宿泊を伴う活動が東京で実施されたのが始まりです。現在は全国のいくつかの地域で日帰り形式の地方版科学へジャンプも行われています。今日は、中国・四国地区の盲学校や弱視学級等に通う児童、生徒や保護者が参加してくれました。中四国の盲学校の教員の他、広島大学総合博物館の学芸員の方や県内の企業の方にワークショップの指導をしていただきました。液体窒素を使った実験や化石に触れるなどのワークショップでは、「おもしろい!」など、時折子どもたちの大きな歓声が聞こえてきました。参加された児童、生徒の皆さんには、科学への興味関心が今後も継続することを期待します。
音訳とは、視覚に障害のある方のために、墨字(活字)で書かれている本や広報誌などの内容を読んで音声に変えることで、多くのボランティアの方が関わっています。本日、公益財団法人鉄道弘済会四国支部主催の「朗読録音奉仕者感謝の集い」に出席してきました。四国地区で長年に渡って音訳ボランティアに携わってこられた方13名が表彰されました。全盲の視覚障害者の方のためには点字図書もありますが、大人になってから視覚を失った人にとっては点字の習得は難しく、音声図書はとてもありがたいようです。受賞者代表の挨拶に、やがてはAIの音声が普及し、私たちボランティアが必要なくなるかもしれませんとの話がありました。最近は、ニュースの読み上げもAI音声のものが使われています。視覚障害者の方にとっては情報を得やすくなるのかもしれませんが、「少しでも人のためになれば」と思う機会がAIに置き換わっていく未来の社会はどうなるのでしょうか。思いやりのあふれる社会であってほしいものです。
学校給食法に学校給食の目標が7項目書かれています。栄養摂取、望ましい食習慣、学校生活を豊かにする、生命や自然の尊重、伝統的な食文化の理解などです。本校では各座席のテーブル上にメニューによって異なるものの、お椀やお皿、牛乳、スプーンなどを、できるだけ毎回同じ配置になるように置いています。全く見えないまたはほとんど見えない幼児児童生徒は、手で探って食器を手に取り、食べています。具材の大きさや形状、硬さなどがメニューによって異なるため、多くの幼児児童生徒が、隣にいる教員から必要に応じて支援をしてもらい、こぼさないで食べることができるように努めています。また、視覚以外の感覚を研ぎ澄まし、味覚や嗅覚、聴覚で感じることや食感などを学ぶ機会でもあります。時々おしゃべりもしながら楽しく食べていますが、食べることを通して多くのことを学んでいます。
8月28日(水)に、本校の教員、生徒、保護者の希望者と一緒に、国立ハンセン病療養所である大島清松園に行ってきました。自治会長さんの講話を聞いたり、社会交流館の展示を見たり、施設を見学させていただきました。参加者は、理不尽な隔離政策と言葉では言い尽くせない厳しい生活実態等について、初めて知ったり、再認識したりしたものと思います。展示資料の中に、本校にもある点字を書くための道具がありました。ハンセン病になると、手足の末梢神経の麻痺の他に、失明することがあるからです。失明して指先の神経が麻痺している場合、指先で点字を読むことができません。その場合、舌先で点字を読む(舌読)のです。読めるようになるまでには、何度も出血するなど、大変な苦労があったようです。「何もそこまでしなくても…」と思いましたか?健常者のみなさんは、スマホの画面から様々な情報を得たり、自分の感じたことを文字にして他の人に伝えていると思います。そんなことができなくなった自分を仮定し、舌読をしている人の気持ちを想像してみてください。
視覚障害者を安全に誘導するための点字ブロックは、正式名称を「視覚障害者誘導用ブロック」といいます。点字ブロックには、突起の形状が点状の「警告ブロック」と線状の「誘導ブロック」の2種類があり、いずれも弱視の方が認識しやすいように原則、黄色になっています。「警告ブロック」は、注意した方がよい場所である、横断歩道前、階段前、駅のホームの端、誘導ブロックが交差する分岐点等に設置されています。線状ブロックは、進行方向を示すブロックで、線状の突起が誘導する方向に向くように並べて設置されています。みなさん、路上や多くの人が利用する施設の室内等で、点字ブロックの「点と線」がどのように配置されているか確認してみてください。

本校校長室入口前の点と線
8月5日(月)に本校主催の研修会で、愛知教育大学の相羽大輔先生に講演をしていただきました。講演の中で「目が悪いという言い方は止めてほしい」と言われたとき、「暗いところで本を読んでいたら目が悪くなるで!」と何も気にしないで言っていたことを思い出しました。
講演後、「悪い」の意味を確認しました。質が低い。能力が劣っている。美的な面で劣っている。正常な状態でない。不当である。不親切である。人と人との間が円満でない。不足している。(行動が)正しくない。不吉である。などなど。こんな意味をもつ言葉が自分の体について使われることはもちろんのこと、他の人に使われているのを聞くことも嫌な気持ちにさせるのだろうと気が付きました。他にも同じように障害のある方を嫌な気持ちにさせている表現がないか、見直してみたいです。
最近はレストランや回転ずしなどで、タッチパネルを使って注文する店舗が増えました。手を挙げて「すみません」と大きな声を出して店員さんに来てもらって注文する方法に比べたら、席に着いた瞬間から注文できたり、店員さんの聞き間違いの問題もなくなり、利用者・店舗側双方が便利で、みんなにとって良くなったと思っていました。ところが本校に赴任して考えが変わりました。タッチパネルは見える人を前提に作られており、見えない人にとっては使い物になりません。スーパーのセルフレジ、コンビニの支払い、ホテルのチェックイン・チェックアウトなど、様々なところにタッチパネルが増えました。見えない人にとっては、どんどん不便な社会になっているのです。「誰もいないホテルのロビーは本当に困る」と本校教員が言っておりました。助けてくれる人が近くにいれば、何とかなるのです。タッチパネルが置いてあるだけの環境を「これもありだな」とは思わないようにしてください。
昨日、小中学生を本校に招いて、視覚障害について学んでもらうイベントを行いました。点字で自分の名刺を作ったり、視覚障害者が使っている便利な道具に触れたり、視覚障害者が楽しんでいるスポーツを体験したりしました。最後に視覚障害のある本校の教員から、日常生活で不便に思うことやうれしかった体験等の話がありました。交差点で信号が変わるのを待っているときに、小学生から信号が「青に変わりましたよ」と言ってくれただけで、すごく安心する。視覚障害者を専門的に案内する方法はあるけれども声をかけてくれるだけいい、その優しい気持ちがうれしいという話でした。みなさんも白杖を持っている方が立ち止まっていたりしたら、「何かお手伝いすることはないですか?」と声をかけてください。
教師、漁師、看護師、美容師…〇〇師という名称の職種はたくさんありますが、「あはき師」は聞いたことがないかもしれません。これは、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の頭文字をとった略称で、理療とか三療という呼び名も聞くことがあります。明治時代から盲学校の職業教育に取り入れられ、多くの視覚障害者が従事する職業です。現在は文部科学省や厚生労働省が指定した学校や養成施設で、解剖学や生理学等の基礎医学系科目や東洋医学系科目等を学習し、国家試験に合格すると免許を取得します。私はときどき、廊下から授業の様子を見ていますが、専門的でとても難しいことを学習しているなと感心しています。もうすぐ夏休みですが、本校においても国家資格取得を目指して課外授業を行う予定です。資格を取得すると、個人で開業したり、医療機関等で働くことができます。あん摩やマッサージ、鍼灸のご利用をお考えの方は、ぜひ、視覚支援学校(盲学校)で学んで国家資格を取得している方を選んでいただければ、本校生徒の励みにもなります。よろしくお願いします。
7月6日(土)、7日(日)に島根県で開催された「中国・四国地区盲学校体育大会」の応援に行ってきました。本校の生徒は、全国大会への出場は叶いませんでしたが、スポーツに取り組むことで様々なことを学んでくれたと思います。さて、ここではあえて試合とは関係のないことを書きます。
6日(土)開会式前の休憩時間に、香川県の控室に他県の生徒がやって来て、本校の生徒と親しげに話をしたり、一緒に写真を撮ったりしていました。「何で知っているの?」と思いましたが、過去の大会で一緒になったり、オンラインで交流をしているので知っているということでした。本校に限らず、他県の視覚支援学校も在籍者数が少なく、校内で同年代の生徒同士が一緒に学んだり、刺激を受けたりすることは限られています。それをオンライン交流で補っているのです。県外の生徒のことも時々思い浮かべ、ともに切磋琢磨してほしいと思います。
7月6日(土)、7日(日)に島根県で開催される「中国・四国地区盲学校体育大会」の壮行会を行いました。本校からは、フロアバレーボールに5人とサウンドテーブルテニスに1名が出場します。壮行会では、司会進行、生徒代表激励の言葉、応援エールを、それぞれ異なる生徒が担当し、出場選手も一人一人が大会に向けての抱負等を言いました。緊張して前もって考えていた言葉がなかなか出ないこともありましたが、大勢の前で話をするという良い経験ができました。この生徒たちが、もし、本校よりも大きな学校に行っていたとしたら、こんな役割を任されることやスポーツの選手として大会に出場していないかもしれません。本校の幼児児童生徒は少ないため、集団にうずもれることなく、このような経験を積み重ねられることが、小さい本校の良さの一つだ思います。
昨日、本校では防災訓練を行いました。南海トラフの巨大地震を想定し、緊急地震速報後の身を守る行動、初期消火、校舎や人的被害の確認・報告、119番通報、津波避難、不明者の捜索、負傷者の担架移送など、様々なことを想定し、各自の任務を実践を通して確認しました。集合・点呼後、私からは、「実際に巨大地震が起きたら、ガラスが割れたり、落下物があると思うので、見える人が見えにくい人に避難路の状況を言葉で伝える必要があること。不安を和らげるために適宜状況を言葉で伝える必要があること」などを言いました。また、訓練に特に大きな問題があったわけではないですが、最後に考え方として、「本校には視覚障害教育のプロが集まっているので、見えていたら助かったのにとか怪我をしなくてすんだのにということが決してあってはならない。」という趣旨のことを伝え、それぞれの任務を見直すように締めくくりました。
今回は、視覚障害に関する基本的な用語をいくつか説明します。
【晴眼(せいがん)】 はっきり見える目のことをいいます。「障害者」に対して「健常者」という言葉があるように、視覚障害のない人のことを「晴眼者」といいます。
【墨字(すみじ)】 点字に対して視覚を使って読み書きする文字のことをいいます。多くのみなさんが通常見ているインク等で書かれた文字のことです。墨字で書かれた文書を点字や点図にすることを「点訳」、音声にすることを「音訳」、点字を墨字にすることを「墨訳」や「墨字訳」といいます。
【白杖(はくじょう)】 視覚に障害のある人が路面の情報を収集するために持っている杖、、、と思われるでしょうが、他にも役割があります。視覚障害があることを周囲に知らせる役割です。白杖を持っている人を見かけたら、より安全に通行をしてほしいと思います。また、白杖を頭よりも上に上げる動作は、SOSサインになります。そういう人を見かけたら声を掛けてください。
本校には寄宿舎があり、視覚に障害のある生徒が規律ある生活習慣や生活技術を身に付けたり、集団生活へ適応することなどを目的に生活をしています。先日、寄宿舎自治会の行事で、ボウリング場に行ってきました。(写真等の様子は「視覚支援学校だより」のページを見てください。)中学生や高校生にあたる世代から成人の生徒までが世代の垣根を越えて、ボールを投げるたびに一緒に喜びあったり、励まし合ったりしていました。目の前の集団がもう一つの家族のようにも見えました。視覚に障害があるために交友関係が狭くなりがちな生徒にとって、単なる遊びかもしれませんが、心を通わせる有意義な体験であると思いました。これらの経験を通して、健常者と一緒に日常生活や社会生活を送ることができる自信や技術を身に付けてほしいと思います。