校長からみなさまへ

見えない書道

2026年1月22日 10時00分

 墨字(いわゆる文字全般のことで、点字に対して使う単語)が見えない人にとっても、世の中の多くの人たちが、平仮名や漢字を使って情報のやり取りをしていることを知ることは大切です。また、文字を美しく書く書道は日本文化の一つでもあります。本校では墨字を見ることができない生徒に、点字の読み書きを教えることに加えて、書道も教えています。教え方は、指導者が工夫をして3段階に分けています。①文字の形を紐で作りボンドで固めたものを触察させて形を理解させ、書き順の通りに指でなぞらせる。②なぞった文字の形を思い浮かべ、ボールペンでレーズライターに文字を書かせる。※レーズライターとは、ボールペンでなぞった部分が凸状に盛り上がる特殊な用紙で、書いた形を触察で確認することができます。③シェービングクリームに絵具と木工用ボンドを混ぜたものを筆につけ、紙(半紙ではない)の上に文字を書かせる。これも固まると触察して書いた形を把握することができます。墨で書いたのでは触察できません。本校では、一般の学校ではやっていないような指導上の工夫が要求されるのです。

店員呼び出しボタンもタッチパネル

2026年1月16日 09時30分

 今週は、14日(水)に本校教諭が坂出高校の人権講演会に招かれ、視覚障害に関する講演をしました。また、15日(木)には、高松南高校福祉科の2年生が来校し、視覚障害についての学習をしました。内容は、点字についての講義や体験、視覚障害の概要についての講話、ロービジョン(弱視)の体験(視野を狭くする眼鏡やかすんで見えるような眼鏡等の体験等)、視覚障害者のための生活用具の紹介、サウンドテーブルテニスの部活動見学等です。私は、ちょうど校外の会議と時間帯が重なっており、最初と最後の一部しかようすを見ることができませんでした。最初の講義の中で、最近タッチパネルが社会の色々なところに広まっていて、飲食店でもタッチパネルによる注文方法が普及し、視覚障害者が注文できなくて困っていること、お客さんが困ったときのためにある「店員呼び出しボタン」もタッチパネルの中にあるという笑えないオチをつけて、高校生に印象に残るように本校教諭が説明をしていました。高校生には、視覚障害者に対しても適切な配慮のできる人として、将来の活躍を期待しています。

心が変われば、・・・運命が変わる

2026年1月8日 17時00分

 本日、3学期の始業式がありました。始業式では、心理学者ウィリアム・ジェームスの言葉を紹介しました。「心が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる。」 成人の生徒であれば、この表現で意図を理解してくれると思いますが、子どもにとっては、人格や運命という単語は難しいので、分かりやすく伝えられるように優しい表現にすることに苦労しました。今回は、花子さんという架空の人を想定して、花子さんが「自分から元気よく挨拶をしよう」と心に決めて、毎日元気な挨拶をしていると、周りの人は、「花子さんはいつも元気な挨拶をする素敵な人」と思うようになります。そして、こんないい人とお友達になりたいなとか、ぜひ、うちの会社で働いてほしいと思う人が現れるかもしれません。というようにしてみました。その後、点字を覚えること、白杖を使って歩くこと、国家試験に向けて勉強をすることなど、人それぞれやってみることが異なりますが、まず何かをやってみてそれを続けてほしいとし、先生方は心から応援をしていることも伝え、3学期のスタートの言葉としました。

就労選択支援

2025年12月25日 12時00分

 昨日、終業式の後、現場実習報告会を行いました。本校ではこのような報告会を今年度から初め、7月に続いて2回目です。現場実習とは、特別支援学校の高等部の生徒が、将来の自立や就労に必要な力を身に付けるため、企業や福祉施設などで、実際に働く経験をするものです。このような取組みをしながら、自分に適した企業や施設を選択していくわけですが、新しい制度が始まります。「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」の改正により、令和7年10月から就労選択支援という制度が始まっています。この制度は、作業を通じて本人の適正や課題等を事業所が主体となってしっかりと評価し、自分に合った働き方や就労系福祉サービスを選択できるよう支援するもので、ミスマッチを防ぐことが期待されています。ただ、始まったばかりの制度ですので、自治体による運用方法やアセスメントの評価基準等の違いにより、生徒の居住地によって就労選択支援の負担や質に差が生じることや、生徒及び教員の負担が増加すること等を懸念しています。他の特別支援学校や自治体の障害福祉課、事業所等と情報交換を密にして、生徒にとってより良い制度に育てていく必要性を感じています。

あとはアドリブで

2025年12月18日 15時00分

 この時期は、役職上校内で赤い服を着て子どもたちと一緒に遊んだり、プレゼントを子どもたちに渡したりすることがあります。今年度は外部の会議と日程が重なり、学部によってはできませんでしたが、本日幼小学部で役を演じました。校長になるまで高校で勤務していた私は、本校に来るまでしたことはありませんでした。今日のマニュアルには、登場時のセリフは示されていますが、ゲームが始まると「あとはアドリブで」と書いてあります。これまで培ってきたものが試されると思いました。相手が幼児でも高校生でも、興味関心を惹くための要素は共通していると思っています。声の強弱、抑揚、間の取り方、これに見える子については、アイコンタクトや表情、ジェスチャー等の要素が加わりますが、本校の幼児・児童には有効ではありません。幼児・児童の反応を見ながら、声だけを使っていかに惹きつけるかが試されるのです。本校の先生方は、授業内容によっては幼児・児童・生徒の手を取って物に触れさせることもしておりますが、言葉でいかに状況を理解させるか、興味関心を惹くかなどに努めています。

声のトーン

2025年12月10日 14時00分

 本校を卒業して、あん摩マッサージ指圧師として働いている卒業生から、仕事のようすや就職先を決めた経緯、本校に在籍していたときにもっと取り組んでいれば良かったと思うことなどについて、先日、生徒や教員に対して講話をしてもらいました。働いてみて感じたこととしては、施術の技術にはある程度自信があったものの、お客さんと天気などの何気ない会話を、その人の人柄に合わせて多くしたり少なくしたりしなければならないという話がありました。最初はうまくできなかったが経験を積みながら徐々にできるようになってきたようでした。また、生徒から「お客さんの施術に対する満足度をどのようにして判断していますか」という質問に対しては、例えば「気持ちいいです」と言われても、その声のトーンで、満足度を判断しているという話がありました。施術はただ技術が良ければいいというものではなく、人を相手にすることなので、コミュニケーションの大切さを実感されていたようでした。話を聞いた生徒たちの今後の取り組み姿勢に良い変化が出ることを期待したいです。

12月3日

2025年12月3日 09時00分

 世の中には様々な記念日がありますが、12月3日は、「視覚障害者ガイドヘルパーの日」です。視覚障害者ガイドヘルパーとは、視覚に障害のある方の外出をサポートする支援者のことで、「同行援護従事者」とも呼ばれます。屋外での移動の補助や周囲の状況を言葉で伝えたり、代筆・代読を行ったりすることが業務内容です。皆さんの中には、スーパーで買い物の支援を受けている視覚障害者の方を見かけた人もいるのではないでしょうか。目が見えない状態でスーパーで買い物をすることを想像してみてください。ガイドヘルパーがいかに重要な存在であるかが分かると思います。社会福祉法人日本視覚障害者団体連合のリーフレットによると、ガイドヘルパーの不足が続いているようで、新たなガイドヘルパーの養成が喫緊の課題となっています。ガイドヘルパーの必要性を広く社会に知ってもらうために、この記念日が制定されたようです。ガイドヘルパーになるためには、「同行援護従事者養成研修」を受ける必要がありますが、県内でも研修を受けることができます。興味のある方は、「同行援護従事者養成研修」を検索してみてください。

静かな訓練

2025年11月28日 16時30分

 本校では、6月と11月に学校全体で、地震・火災・津波を想定した防災訓練をしています。これとは別に寄宿舎でも毎月防災訓練をしています。先日の25日(火)に、自分としては4回目となる本校全体での防災訓練がありました。4回目となると最初の緊張感が薄れ、見えてくるものがあります。地震の後、校舎損傷確認担当がそれぞれの校舎に行き、本部の事務室にいる教頭先生が報告を受ける段取りです。教頭先生がもっている訓練マニュアルには、どこが損傷しているかは書いていませんので、正確に聞き取る必要がありますが、トランシーバー越しの音声が聞き取れず、何度か聞き直したことがありました。その間、事務室に集合している職員は、黙って静かに待っていたり、訓練マニュアルに目を通しています。この状況を見て、「実際に大地震が来たときに、みんな黙っておれるかな」と思いました。余震の揺れに悲鳴をあげたり、〇〇が壊れたとか誰かが怪我したとか、津波はいつ頃来るのかなど、集まっている人が口々に何かを話して、大事な情報の整理がやりにくいのではないか思いました。そこで、避難完了時の校長による講評では、「静かに黙っていることも大事」ということを、幼児児童生徒及び職員に伝えました。

長官

2025年11月21日 08時45分

 11月15日(土)に東京2025デフリンピックが開幕しました。デフリンピックは、聴覚に障害のある選手を対象とした国際的な総合スポーツ競技大会で、ニュースにもよく取り上げられ、手話についても多く目にするようになりました。聴覚障害に対する社会的な認知度が上がる良い機会になっており、視覚障害教育に携わる者としては、少しうらやましく思います。スポーツ分野での障害者の活躍という点では、10月1日(水)にスポーツ庁の長官に就任された全盲の河合純一さんに注目しています。スポーツ庁のホームページによりますと、河合さんは、平成4年のバルセロナパラリンピックから平成24年のロンドンパラリンピックまでの6大会に水泳選手として出場し、多数のメダルを獲得されています。また、大学を卒業された後、静岡県で中学校の教諭をされ、静岡県総合教育センターで指導主事もされており、教育現場にも理解がある方と思っています。全盲の方が政府組織の責任者になることは異例のことで、スポーツの振興を通して様々な社会課題の解決が進むことを期待しています。

衝撃

2025年11月13日 14時30分

 11月7日(金)、本校のPTA研修会に参加しました。内容は、本校の卒業生とその保護者を招いて、幼児・児童・生徒だったころに苦労したことや本校卒業後の進路、現在の仕事などについて、本校の保護者と情報交換をする座談会です。目が見えないハンディがありながら、現在、県外のベンチャー企業で責任ある立場を任され活躍されているようすを聞き、自分の好きなことを貫いて今の仕事を獲得した強い心と努力に感心しました。その他様々なことが話題になりましたが、私が最も印象に残ったことは、差別のことです。「目が見えない子は、こんな混雑しているところに連れてこないで、家におらしたらええんや。」と心無い言葉をかけられたこととか、子どもが使っていた白杖が幼い子に当たって、その親に白杖を取り上げられ、投げ捨てられたことがあるなどの話題が出て、私は大きな衝撃を受けました。会の中では、内容によっては犯罪として扱うこととか、差別に負けてはいけないという話になりましたが、一般の人々への理解啓発が全く足りていないということを痛感しました。

落とし物

2025年11月7日 13時30分

 非常に暑い日が長く続いた日が嘘のように朝晩は寒くなり、校内で虫を見かけなくなりました。私は授業の様子や敷地内に危険な状況がないかなどを確認するために、できるだけ1日に複数回、校内を歩いて回っています。夏から秋にかけて歩いていたとき、点字ブロックの上に、カナブンがいたり、イモムシが木から落ちてはっていたりしたことがありました。また、近所には野良猫が複数いて時々校内に入ってますが、猫か何か動物が落とした物も見かけたことがあります。気が付いたときには、点字ブロックの上から取り除いています。点字ブロックの上に自転車を停めたりすると通行の邪魔になるからやめましょうというようなことはよく聞きますが、このように踏みたくないものがある場合に取り除きましょうという話は聞いたことがありません。晴眼者であれば、自然とよけることができても、視覚に障害があると気づかないで踏んでしまうこともあるでしょう。誰でも虫の命をむやみに奪いたくはないはずですし、靴も汚したくないはずです。皆さんも街中で、点字ブロックの上に何か落ちていたものを見かけたときは、踏まれない場所へ移動させるか、取り除いていただければと思います。

感動と感心

2025年11月5日 15時00分

  11月1日(土)に「笑顔満祭 ~歌って奏でて輝いてみんなで楽しく挑戦~ 私が主役の文化祭2025」のテーマのもと、文化祭を開催しました。歌ったり、演奏したり、演技をしたり、事前に作成した物品を販売したりするなど、幼児児童生徒が一生懸命取り組む姿には、昨年度と同様にたいへん感動しました。私にとって2回目の本校文化祭ですが、昨年度からの幼児児童生徒の成長を感じ取ることができたり、普段は見られない成人の生徒が熱唱する姿は新鮮でした。障害の状況に合わせてできることに一生懸命取り組み、それぞれが主役になったときがあり、うれしく思いました。また、昨年度なかった書道パフォーマンスや琴の演奏、幼児による演奏やダンスなどの他、作品展示や販売物品も昨年度にはなかったものがほとんどで、新しいことにたくさん挑戦していました。幼児児童生徒がよく頑張っていたことに加えて、手前味噌ではありますが、それを支えていた本校の先生方が時間をかけてよく指導できているなあと感心しました。

拡大読書器

2025年10月24日 16時00分

 拡大読書器とは、拡大して見たい物を置く台の上に、大きなモニターがついている機器で、弱視の生徒が教科書やプリントを拡大して表示し、学習に使っています。拡大倍率や明るさ、コントラストの調節等ができ、生徒それぞれが自分の見えやすい条件に設定できます。多くの生徒が文字の白黒反転をさせて利用しています。拡大読書器を用いると、紙の本やプリントにメモやアンダーライン等の書き込みができ、書き込んだものを次の学習の機会に用いることができます。11月1日の文化祭が近づいて来ましたが、先日、文化祭の予行を行いました。体育館行事の司会を担当している生徒が、司会原稿を拡大することにも使っています。生徒や視覚障害のある教員によっては、毎日使っている大切な支援機器です。公的予算や企業団体等の寄付によって、このような支援機器が整備されています。感謝の気持ちをもって大切に使っています。
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背筋が伸びる

2025年10月20日 16時50分

 10月16日(木)と17日(金)に開催された、全国盲学校長会秋季研究協議会石川大会に参加してきました。全国の盲学校(視覚支援学校)の校長先生が集まって、講演を聞いたり、協議をしたり、情報交換等を行う会です。昨年度は香川県での開催で、校長の会ですから、前日の会場準備以外の準備のほとんどを私一人でやり遂げましたが、「校長になったばかりで、初めて特別支援学校、視覚支援学校に勤務するのに、いきなり全国大会の準備とは…」と口にすることもありました。今年の大会で印象に残ったことの一つは、前筑波大学附属視覚特別支援学校の校長先生で、現在、淑徳大学教授の青木隆一先生の講演です。校長先生方にお伝えしたいこと11策の一つ、「校長は視覚障害教育の経験者でなければならないの?」という話で、「専門的なことはわからないのでお任せします。」とか言ってないですかと問いかけられ、背筋が伸びる思いがしました。「専門外だから」を言い訳にせず、しっかりと様々な課題に向き合っていかなければならないと思った大会でした。

歩行訓練の指導者研修

2025年10月9日 15時00分

 今週月曜日に半年間もの長い間、大阪で研修を受けていた教諭が帰ってきました。受けていた研修は、「教育関係者視覚障害リハビリテーション研修会」というものです。主催は社会福祉法人日本ライトハウスで、歩行を中心とした視覚障害生活訓練等の指導者として必要な知識や指導技術を学習することが目的です。今回、若手の教諭が研修を終えたことで、この研修を受けた教員の年齢バランスがよくなりました。研修を受けた成果として、より的確に本校の生徒に、白杖を使った歩行の指導をすることはもちろんのことですが、外部の団体から研修の指導者として呼ばれることもあります。以前、視覚障害のある方から「一人で移動できることがどんなにうれしいことか」という話を聞いたことがあります。本校の生徒に限らず、自由にかつ安全に移動できる人が増えることに貢献してほしいと思います。