校長からみなさまへ

ごぜ

2026年3月11日 16時30分

 私は登山やハイキングが趣味で、NHKの「にっぽん百低山」という番組を見ています。先日、静岡県の金冠山を登るようすが放送されましたが、そこで「瞽女(ごぜ)」が取り上げられていました。私は、視覚支援学校2年目ですが、恥ずかしながら瞽女については知りませんでした。瞽女は、江戸時代から昭和の高度成長期まで活動していた、各地を旅して三味線を弾きながら語り物や歌い物をうたった盲目の女性です(南相馬市のHPより引用)。NHKの番組では、冬に3人の瞽女が金冠山中で遭難し、それを悲しんだ村人たちが彼女たちを弔い、山中に観音を立ててまつったことが紹介されていました。全盲の方が舗装されていない山道をわらじを履いて長時間歩いていたことを想像すると、移動だけではなく、日常生活においても様々な困難があったのではないかと思いました。瞽女は、娯楽だけでなく、豊漁や幸せを運ぶ存在として親しまれていたようです。本校の幼児児童生徒についても卒業後、社会の中で一定の役割を果たし、周囲から親しみや感謝の気持ちをもってもらえるようになってほしいと願っています。

引用:南相馬市のHP「盲目の旅芸人瞽女(ごぜ)さんを知っていますか?」 参考:NHKのHP「にっぽん百低山」

書いていると悲しくなる

2026年3月4日 09時00分

 先週の書き込みに続いて、今週もPTA研修会で印象に残ったことを書きます。先輩保護者から障害年金の話がありました。障害年金は、高齢になって受け取る年金とは違って、障害や長期にわたる病気によって日常生活や仕事が制限される場合に、原則として20歳から受け取ることができる公的な年金です。この年金を受け取るために準備する書類に「病歴・就労状況等申立書」というものがあります。自分の娘が幼いころから3年間ごとに、どこの病院に行ったのか、いつからいつまでどのようなリハビリを受けていたのか等を、娘が20歳前になってから思い出すのは大変なので、早いうちから記録を残しておいた方が良いとのアドバイスを先輩保護者はしていました。障害年金を受け取ることが目的なので、とにかく娘の「できないこと」ばかりを思い出して書くので、書いていると悲しくなるんですとの発言がありました。参加していた保護者から、「時々、自分が世界で一番不幸ではないかと思うことがある。」との発言に、先輩保護者は「私もそういうときがあった」と強く共感していました。先輩保護者は、本校教員の紹介で知的障害の特別支援学校の保護者団体ともつながり、様々な情報を得ているようでした。保護者同士のつながりの大切さを実感した研修会でした。

おいしいお菓子だよ

2026年2月27日 13時00分

 共働き世帯の小学生が放課後、遊びや生活の場として過ごす制度に学童保育があります。それに対して、障害のある小学生から高校生が放課後や長期休業中を過ごす制度に「放課後デイサービス」があります。このサービスを提供している施設には、就労継続支援施設が少なくありません。このような施設では、100円ショップの商品や工業部品の袋詰め作業、パンや弁当づくりなどが行われ、多くの人が知らず知らずのうちに恩恵を受けています。指先の機能向上や将来の就労を見据えて、放課後に生徒が作業を体験することもあります。一緒に過ごしている知的障害のある生徒によっては、かんしゃくを起こして他の人をたたいたり、突き飛ばしたりすることがありますが、視覚に障害がある場合、そのような人の様子を察知して逃げることができないため、けがをするリスクがあります。先日、本校の先輩保護者を招いた座談会形式のPTA研修会に参加しました。知的障害のある人から「おいしいお菓子だよ。」と渡されたナット(輪っか状のねじ)を本校の生徒が口に入れたという事故の話がありました。施設では職員の数が限られ、管理しきれないのかもしれませんが、何とも悲しい話題でした。

昇降

2026年2月18日 13時00分
 本校には、視覚障害の他に肢体不自由の障害を併せ有する児童生徒が在籍しています。歩行が困難なため基本的に車椅子で移動をしています。ホームルーム教室は1階に設定していますが、音楽室や美術室等の特別教室は2階にあります。また、体育館も2階がメインフロアになっています。校舎にも体育館にもエレベーターがないため、車椅子を利用している児童生徒の昇降には、写真のような階段昇降車を使っています。車いすを固定し、更に腹部のベルトをしないと動かない仕組みになっています。また、毎年年度初めに業者の方から操作方法の講習を行ってもらい、この講習を受けた教員のみが、必ず二人体制で昇降を行っています。写真は、もう一人の教員に昇降車の前から一瞬離れてもらって撮影しました。このように安全に昇降はできるものの、エレベーターに比べたら時間がかかりますので、エレベーターがある方が望ましいです。 IMG_1464

筆算

2026年2月12日 11時00分

 筆算とは、足し算や掛け算などの計算を縦に位をそろえて書いて、一桁ずつ順に計算していく方法です。例えば、15足す17の筆算は紙に書かなくても、計算過程の書き込みや答えを思い浮かべることができると思います。この筆算ができるのは、数字の配置を視覚的に活用した学習をしているからです。点字でも筆算ができるのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は困難です。点字は、基本的に左から右へ流れる線的な情報で、直径約1.4mmの小さな点を、行をまたいで縦方向に正確にそろえて書いたり読み取ることが困難です。計算過程での繰り上がりの数字を適切な場所に小さくメモすることも困難です。次が決定的です。点字は針でついて書きますが、へこんだ部分は触れても分からないので、書いている最中に書いた数字を読むことができません。読むときは、書いた紙を裏返して読むのです。

 そんなこともあり、本校では計算の学習にそろばんを使っています。一般的なそろばんでは、少し触っただけで珠が意図せず動いてしまうので、平たい珠を前後に倒す構造の特別なそろばんを使っています。ただ、今年度、このそろばんの部品を作る会社が廃業したとの連絡が入りました。たとえ、需要が少なくても必要な物が必要な人に届く社会であってほしいと思います。

庭木の枝

2026年2月6日 16時30分

 社会福祉法人日本ライトハウス主催の「教育関係者視覚障害リハビリテーション研修会」に、半年間参加していた教諭の研修報告会を、先月の職員会議後に行いました。この研修は、白杖を使った歩行の指導方法を学ぶことを主な目的としています。教え方を身に付けるために、受講者も白杖を使った歩行を体験します。本校教諭がアイマスクをして住宅横の歩道を歩いている動画を見たとき、住宅の敷地から庭木の枝が歩道にはみ出していることに気づきました。白杖は地面を左右にスライドさせたり、軽くたたいたりして、段差や溝などの構造を確認しながら歩きます。白杖を体の前に出しているので、白杖に何かが当たれば、前に何か物があることに気づくことができます。しかし、白杖を持っている手の高さから顔の高さ辺りで庭木の枝が横から張り出していた場合、全盲の方は衝突するまで気付けないのです。幸い動画で見た枝は短かったので問題にはならないと思いましたが、人が歩く場所で横から何か飛び出している構造は、木の枝以外にもあります。看板やトラック後部の荷台、荷台からはみ出した荷物等に顔面をぶつけることがあるようです。「誰でも見たら分かるからよけるでしょ」と思わないでほしいです。この「誰でも」は、全員ではないのです。

指点字

2026年1月30日 09時00分
 昨年の2月14日のこのコーナーで、点字の基本について書きました。右図はそのときに用いたものです。点字は6個の点が一つの単位となっており、点字を打つタイプライターでは、1、2、3の点をそれぞれ、左手の人差し指、中指、薬指で打ち、4、5、6を右手の人差し指、中指、薬指で打ちます。左手の人差し指で1だけを打つと「あ」になり、両手の人差し指で1と4を打つと「う」になります。6本の指で「あ~ん」まで打てるわけです。そこで、目の見えない障害がある人の手の甲に、別の人が手を重ね、左手の人差し指を押したら「あ」、両手の人差し指を押したら「う」ということが伝わるので、この方法を使うと、声を介さずにコミュニケーションをとることができます。声を出して話せばいいのでは?と思いますよね。目が見えなくて、耳も聞こえない障害がある場合を想像してみてください。この方法の意義に気付いたはずです。この方法のことを指点字と言います。全国には、目が見えなくて耳も聞こえない人(盲ろう者)が1万4千人いると推計されているようです。ご理解とご支援をお願いします。 点字基本

見えない書道

2026年1月22日 10時00分

 墨字(いわゆる文字全般のことで、点字に対して使う単語)が見えない人にとっても、世の中の多くの人たちが、平仮名や漢字を使って情報のやり取りをしていることを知ることは大切です。また、文字を美しく書く書道は日本文化の一つでもあります。本校では墨字を見ることができない生徒に、点字の読み書きを教えることに加えて、書道も教えています。教え方は、指導者が工夫をして3段階に分けています。①文字の形を紐で作りボンドで固めたものを触察させて形を理解させ、書き順の通りに指でなぞらせる。②なぞった文字の形を思い浮かべ、ボールペンでレーズライターに文字を書かせる。※レーズライターとは、ボールペンでなぞった部分が凸状に盛り上がる特殊な用紙で、書いた形を触察で確認することができます。③シェービングクリームに絵具と木工用ボンドを混ぜたものを筆につけ、紙(半紙ではない)の上に文字を書かせる。これも固まると触察して書いた形を把握することができます。墨で書いたのでは触察できません。本校では、一般の学校ではやっていないような指導上の工夫が要求されるのです。

店員呼び出しボタンもタッチパネル

2026年1月16日 09時30分

 今週は、14日(水)に本校教諭が坂出高校の人権講演会に招かれ、視覚障害に関する講演をしました。また、15日(木)には、高松南高校福祉科の2年生が来校し、視覚障害についての学習をしました。内容は、点字についての講義や体験、視覚障害の概要についての講話、ロービジョン(弱視)の体験(視野を狭くする眼鏡やかすんで見えるような眼鏡等の体験等)、視覚障害者のための生活用具の紹介、サウンドテーブルテニスの部活動見学等です。私は、ちょうど校外の会議と時間帯が重なっており、最初と最後の一部しかようすを見ることができませんでした。最初の講義の中で、最近タッチパネルが社会の色々なところに広まっていて、飲食店でもタッチパネルによる注文方法が普及し、視覚障害者が注文できなくて困っていること、お客さんが困ったときのためにある「店員呼び出しボタン」もタッチパネルの中にあるという笑えないオチをつけて、高校生に印象に残るように本校教諭が説明をしていました。高校生には、視覚障害者に対しても適切な配慮のできる人として、将来の活躍を期待しています。

心が変われば、・・・運命が変わる

2026年1月8日 17時00分

 本日、3学期の始業式がありました。始業式では、心理学者ウィリアム・ジェームスの言葉を紹介しました。「心が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる。」 成人の生徒であれば、この表現で意図を理解してくれると思いますが、子どもにとっては、人格や運命という単語は難しいので、分かりやすく伝えられるように優しい表現にすることに苦労しました。今回は、花子さんという架空の人を想定して、花子さんが「自分から元気よく挨拶をしよう」と心に決めて、毎日元気な挨拶をしていると、周りの人は、「花子さんはいつも元気な挨拶をする素敵な人」と思うようになります。そして、こんないい人とお友達になりたいなとか、ぜひ、うちの会社で働いてほしいと思う人が現れるかもしれません。というようにしてみました。その後、点字を覚えること、白杖を使って歩くこと、国家試験に向けて勉強をすることなど、人それぞれやってみることが異なりますが、まず何かをやってみてそれを続けてほしいとし、先生方は心から応援をしていることも伝え、3学期のスタートの言葉としました。

就労選択支援

2025年12月25日 12時00分

 昨日、終業式の後、現場実習報告会を行いました。本校ではこのような報告会を今年度から初め、7月に続いて2回目です。現場実習とは、特別支援学校の高等部の生徒が、将来の自立や就労に必要な力を身に付けるため、企業や福祉施設などで、実際に働く経験をするものです。このような取組みをしながら、自分に適した企業や施設を選択していくわけですが、新しい制度が始まります。「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」の改正により、令和7年10月から就労選択支援という制度が始まっています。この制度は、作業を通じて本人の適正や課題等を事業所が主体となってしっかりと評価し、自分に合った働き方や就労系福祉サービスを選択できるよう支援するもので、ミスマッチを防ぐことが期待されています。ただ、始まったばかりの制度ですので、自治体による運用方法やアセスメントの評価基準等の違いにより、生徒の居住地によって就労選択支援の負担や質に差が生じることや、生徒及び教員の負担が増加すること等を懸念しています。他の特別支援学校や自治体の障害福祉課、事業所等と情報交換を密にして、生徒にとってより良い制度に育てていく必要性を感じています。

あとはアドリブで

2025年12月18日 15時00分

 この時期は、役職上校内で赤い服を着て子どもたちと一緒に遊んだり、プレゼントを子どもたちに渡したりすることがあります。今年度は外部の会議と日程が重なり、学部によってはできませんでしたが、本日幼小学部で役を演じました。校長になるまで高校で勤務していた私は、本校に来るまでしたことはありませんでした。今日のマニュアルには、登場時のセリフは示されていますが、ゲームが始まると「あとはアドリブで」と書いてあります。これまで培ってきたものが試されると思いました。相手が幼児でも高校生でも、興味関心を惹くための要素は共通していると思っています。声の強弱、抑揚、間の取り方、これに見える子については、アイコンタクトや表情、ジェスチャー等の要素が加わりますが、本校の幼児・児童には有効ではありません。幼児・児童の反応を見ながら、声だけを使っていかに惹きつけるかが試されるのです。本校の先生方は、授業内容によっては幼児・児童・生徒の手を取って物に触れさせることもしておりますが、言葉でいかに状況を理解させるか、興味関心を惹くかなどに努めています。

声のトーン

2025年12月10日 14時00分

 本校を卒業して、あん摩マッサージ指圧師として働いている卒業生から、仕事のようすや就職先を決めた経緯、本校に在籍していたときにもっと取り組んでいれば良かったと思うことなどについて、先日、生徒や教員に対して講話をしてもらいました。働いてみて感じたこととしては、施術の技術にはある程度自信があったものの、お客さんと天気などの何気ない会話を、その人の人柄に合わせて多くしたり少なくしたりしなければならないという話がありました。最初はうまくできなかったが経験を積みながら徐々にできるようになってきたようでした。また、生徒から「お客さんの施術に対する満足度をどのようにして判断していますか」という質問に対しては、例えば「気持ちいいです」と言われても、その声のトーンで、満足度を判断しているという話がありました。施術はただ技術が良ければいいというものではなく、人を相手にすることなので、コミュニケーションの大切さを実感されていたようでした。話を聞いた生徒たちの今後の取り組み姿勢に良い変化が出ることを期待したいです。

12月3日

2025年12月3日 09時00分

 世の中には様々な記念日がありますが、12月3日は、「視覚障害者ガイドヘルパーの日」です。視覚障害者ガイドヘルパーとは、視覚に障害のある方の外出をサポートする支援者のことで、「同行援護従事者」とも呼ばれます。屋外での移動の補助や周囲の状況を言葉で伝えたり、代筆・代読を行ったりすることが業務内容です。皆さんの中には、スーパーで買い物の支援を受けている視覚障害者の方を見かけた人もいるのではないでしょうか。目が見えない状態でスーパーで買い物をすることを想像してみてください。ガイドヘルパーがいかに重要な存在であるかが分かると思います。社会福祉法人日本視覚障害者団体連合のリーフレットによると、ガイドヘルパーの不足が続いているようで、新たなガイドヘルパーの養成が喫緊の課題となっています。ガイドヘルパーの必要性を広く社会に知ってもらうために、この記念日が制定されたようです。ガイドヘルパーになるためには、「同行援護従事者養成研修」を受ける必要がありますが、県内でも研修を受けることができます。興味のある方は、「同行援護従事者養成研修」を検索してみてください。

静かな訓練

2025年11月28日 16時30分

 本校では、6月と11月に学校全体で、地震・火災・津波を想定した防災訓練をしています。これとは別に寄宿舎でも毎月防災訓練をしています。先日の25日(火)に、自分としては4回目となる本校全体での防災訓練がありました。4回目となると最初の緊張感が薄れ、見えてくるものがあります。地震の後、校舎損傷確認担当がそれぞれの校舎に行き、本部の事務室にいる教頭先生が報告を受ける段取りです。教頭先生がもっている訓練マニュアルには、どこが損傷しているかは書いていませんので、正確に聞き取る必要がありますが、トランシーバー越しの音声が聞き取れず、何度か聞き直したことがありました。その間、事務室に集合している職員は、黙って静かに待っていたり、訓練マニュアルに目を通しています。この状況を見て、「実際に大地震が来たときに、みんな黙っておれるかな」と思いました。余震の揺れに悲鳴をあげたり、〇〇が壊れたとか誰かが怪我したとか、津波はいつ頃来るのかなど、集まっている人が口々に何かを話して、大事な情報の整理がやりにくいのではないか思いました。そこで、避難完了時の校長による講評では、「静かに黙っていることも大事」ということを、幼児児童生徒及び職員に伝えました。