校長からみなさまへ

何で知っているの?

2024年7月9日 16時00分

 7月6日(土)、7日(日)に島根県で開催された「中国・四国地区盲学校体育大会」の応援に行ってきました。本校の生徒は、全国大会への出場は叶いませんでしたが、スポーツに取り組むことで様々なことを学んでくれたと思います。さて、ここではあえて試合とは関係のないことを書きます。

 6日(土)開会式前の休憩時間に、香川県の控室に他県の生徒がやって来て、本校の生徒と親しげに話をしたり、一緒に写真を撮ったりしていました。「何で知っているの?」と思いましたが、過去の大会で一緒になったり、オンラインで交流をしているので知っているということでした。本校に限らず、他県の視覚支援学校も在籍者数が少なく、校内で同年代の生徒同士が一緒に学んだり、刺激を受けたりすることは限られています。それをオンライン交流で補っているのです。県外の生徒のことも時々思い浮かべ、ともに切磋琢磨してほしいと思います。

小さい学校の良さ

2024年7月3日 16時00分

 7月6日(土)、7日(日)に島根県で開催される「中国・四国地区盲学校体育大会」の壮行会を行いました。本校からは、フロアバレーボールに5人とサウンドテーブルテニスに1名が出場します。壮行会では、司会進行、生徒代表激励の言葉、応援エールを、それぞれ異なる生徒が担当し、出場選手も一人一人が大会に向けての抱負等を言いました。緊張して前もって考えていた言葉がなかなか出ないこともありましたが、大勢の前で話をするという良い経験ができました。この生徒たちが、もし、本校よりも大きな学校に行っていたとしたら、こんな役割を任されることやスポーツの選手として大会に出場していないかもしれません。本校の幼児児童生徒は少ないため、集団にうずもれることなく、このような経験を積み重ねられることが、小さい本校の良さの一つだ思います。

見えていたら・・・

2024年6月25日 10時49分

 昨日、本校では防災訓練を行いました。南海トラフの巨大地震を想定し、緊急地震速報後の身を守る行動、初期消火、校舎や人的被害の確認・報告、119番通報、津波避難、不明者の捜索、負傷者の担架移送など、様々なことを想定し、各自の任務を実践を通して確認しました。集合・点呼後、私からは、「実際に巨大地震が起きたら、ガラスが割れたり、落下物があると思うので、見える人が見えにくい人に避難路の状況を言葉で伝える必要があること。不安を和らげるために適宜状況を言葉で伝える必要があること」などを言いました。また、訓練に特に大きな問題があったわけではないですが、最後に考え方として、「本校には視覚障害教育のプロが集まっているので、見えていたら助かったのにとか怪我をしなくてすんだのにということが決してあってはならない。」という趣旨のことを伝え、それぞれの任務を見直すように締めくくりました。

晴眼 墨字 白杖 読めましたか?

2024年6月21日 10時00分

今回は、視覚障害に関する基本的な用語をいくつか説明します。

【晴眼(せいがん)】 はっきり見える目のことをいいます。「障害者」に対して「健常者」という言葉があるように、視覚障害のない人のことを「晴眼者」といいます。

【墨字(すみじ)】 点字に対して視覚を使って読み書きする文字のことをいいます。多くのみなさんが通常見ているインク等で書かれた文字のことです。墨字で書かれた文書を点字や点図にすることを「点訳」、音声にすることを「音訳」、点字を墨字にすることを「墨訳」や「墨字訳」といいます。

【白杖(はくじょう)】 視覚に障害のある人が路面の情報を収集するために持っている杖、、、と思われるでしょうが、他にも役割があります。視覚障害があることを周囲に知らせる役割です。白杖を持っている人を見かけたら、より安全に通行をしてほしいと思います。また、白杖を頭よりも上に上げる動作は、SOSサインになります。そういう人を見かけたら声を掛けてください。

もう一つの家族

2024年6月14日 09時07分

 本校には寄宿舎があり、視覚に障害のある生徒が規律ある生活習慣や生活技術を身に付けたり、集団生活へ適応することなどを目的に生活をしています。先日、寄宿舎自治会の行事で、ボウリング場に行ってきました。(写真等の様子は「視覚支援学校だより」のページを見てください。)中学生や高校生にあたる世代から成人の生徒までが世代の垣根を越えて、ボールを投げるたびに一緒に喜びあったり、励まし合ったりしていました。目の前の集団がもう一つの家族のようにも見えました。視覚に障害があるために交友関係が狭くなりがちな生徒にとって、単なる遊びかもしれませんが、心を通わせる有意義な体験であると思いました。これらの経験を通して、健常者と一緒に日常生活や社会生活を送ることができる自信や技術を身に付けてほしいと思います。

得点チャンスに「沈黙・・・」

2024年6月6日 12時45分

 6月2日(日)グランドソフトボール(盲人野球)の四国地区代表の香川県チームと中国地方代表の岡山県チームが、高松市南部運動場で対戦しました。香川県チームが見事勝利し、10月に開催される全国障害者スポーツ大会に出場することになりました。平成27年、28年と全国盲学校野球大会で準優勝したときの本校の卒業生が主力選手で活躍していることもあり、香川県チームは強そうです。

 このグランドソフトボールの特徴を一つ紹介します。全盲の守備の選手は、転がってくるボールの音を頼りにボールに近づいてつかみます。動いている間にボールを取れば、ゴロでもアウトになります。ボールが転がる音を頼りにするため、得点チャンスに長打が出た場合、野球なら観客席やベンチから「オー!」と歓声がわきますが、グランドソフトボールは、みなさん沈黙して守備の選手の動きを見守ります。その他独特のルールがたくさんありますが、他のスポーツと同じように見て楽しむことができるスポーツだと思います。

「あっち」は、ダメ!

2024年5月31日 17時21分

 「あっちに集合してください。」「そっちに置いてください。」などは、多くの学校で普通に使われている指示だと思いますが、本校では使いません。方向を示す言葉には、左右もありますが体の向きによって変わりますので、本校では、東西南北をよく使います。4月に体育館で新しく転入された先生を紹介するときには、「東端の先生から紹介します。」と言いました。また、先生が机の上の教材や給食の位置を教えるときには、「10時の方向にサラダがあります。」など、時計の針の方向で指示することがあります。本校では、いかに「言葉」が大切であるかを実感しています。

報恩

2024年5月24日 11時22分

 本校の校訓は、「報恩」「自立自営」「反省」です。この中で報恩は、あまり耳にすることがないため、私はこの校訓を知ったとき、新鮮な印象といい言葉だなと思いましたので、今年度の入学式の式辞で、この報恩について話しました。

 報恩とは、これまで自分がいただいてきた、またこれからいただくであろう自然の恵みや周囲の人々からのご厚意などに感謝し、自分ができる範囲でお返しをすることです。本校に入学後は、できることを少しずつ増やしていき、自分ができる範囲で周囲の人々を助けられる人になって欲しい。という趣旨の話を、願いを込めて新入生に送りました。

IMG_7920校訓の石碑とツツジ

THE 視覚支援学校レース

2024年5月18日 16時39分

 本日、好天に恵まれ、体育祭を予定通り実施できました。競技の一つ「THE 視覚支援学校レース」を紹介します。2チームに分かれ、以下の①~⑥をそれぞれ別の人が、たすきをつないで競争します。①目隠しをして白杖を使って障害物をよけて進む。②伴走者と一緒にトラックをランニングする。③鍼治療の実技:細い管に鍼を片手で挿入する。④目隠しをして、ハンドボールを転がして狭い間を通す。⑤手引き歩行で狭い間を歩く。⑥模型化した点字で書かれた先生の名前を読み取り、その先生を呼び(援助依頼)、先生と一緒にゴールまで進む。 それぞれの難しさや魅力を書いているとたいへん長くなるので省略しますが、この競技に限らず、体育祭全体を通して、幼児児童生徒の年齢や障害の状態に応じて競技内容やルールを工夫し、みんなが参加でき、楽しむことができる体育祭で、普段の学びをご家族の方に見ていただく機会にもなっていました。

グランドソフトボール

2024年5月13日 17時51分

 5月12日(日)にグランドソフトボール四国大会が、高松市西部運動センターでありました。視覚に障害のある選手10人(内4人以上は全盲:晴眼者が目隠しをしても可)で、チームが編成されます。ピッチャーは全盲で、ハンドボールくらいの大きさのボールを転がすように投げます。キャッチャーが手を叩いてストライクゾーンを伝え、ストライクが取れるように投げるのですから驚きです。その他にもたくさんの驚きがありましたが、一番印象に残ったのは、「スポーツをしたり、見て楽しむことに障害の有無は関係ない」ということです。本校のOB、生徒、職員からなる香川県チームが見事に優勝し、6月2日(日)に中国地区代表の岡山県チームと対戦します。

点字で勉強しているの?

2024年5月10日 18時06分

 視覚障害は、見えない「盲」と「見えにくい」弱視の二つに大きく分けることができます。盲(全盲)の児童生徒については、学習できる年齢になれば点字の学習を始め、やがて点字で学んでいくようになります。弱視の児童生徒については、文字が拡大された教科書等の他に、最近ではタブレット端末やパソコンのモニタに文字や図等を大きく映して、自分の鼻先が画面につくくらい顔を近づけて学んでいます。そして、視覚障害者の大多数が実は「盲」ではなく「弱視」なのです。「見えない人」よりも「見えにくい人」が多いことを知っておいてください。

通行ルール・マナー

2024年5月2日 17時40分

本校には、視覚に障害のある幼児児童生徒及び職員がおりますので、他の学校には無いような校内を歩くことに関するルール・マナーがあります。そのうちのいくつかを紹介します。

①原則、廊下・階段は右側通行  ②点字ブロック上や廊下の中央、階段で立ち話をしない  ③扉は開けたら必ず閉める。中途半端に開けた状態にはしない。…理由はわかりますか?   右手が入るから「扉が開いている」と思って進んだら、顔や左肩を扉にぶつけるかもしれませんね。  その他、脱いだ靴はすぐに履く場合でも通行の邪魔にならない所に置くとか、そもそも廊下や職員室の床に物を置かないというルールがあります。

視覚に障害のある人の立場に立って考えると「それはそうだ」と思うことでも、普段はなかなか思いつかないですね。視覚に関してだけでなく、いろいろな人の立場に立って考えることができれば、誰もが暮らしやすい社会になりそうですね。

学校は誰のためにある?

2024年4月27日 09時31分

学校は誰のためにあるのでしょうか?当たり前ですが、学校に通う幼児児童生徒のためにあります。

ただ、それだけではありません。本校は、県内で唯一の視覚障害教育専門の特別支援学校です。その専門性を活かし、視覚障害教育のセンター的役割を果たし、地域社会に貢献しています。先日の4月25日(木)には、第1回かがわロービジョン研修会を実施しました。本校以外の小学校や高校に通っている、視覚に障害のある児童や生徒の担任の先生方が本校に集まり、本校教諭や香川県視覚障害者福祉センターの方、眼科医師の方から講話を聞いたり、情報交換を行いました。最後に行った情報交換は、予定時刻を過ぎるまで活発に行われ、有意義な研修会になったものと思います。このような研修会の他、相談活動も行っています。視覚に障害のある乳幼児から成人について、学習や日常生活、進路などのご相談されたいことがありましたら、ぜひ本校にご連絡ください。

G研

2024年4月19日 18時09分

 本校では、視覚障害教育の基本的な内容を学んで、視覚障害教育のジェネラリストになることを目指す通称「G研」と呼ばれる教職員研修を、新転任者と希望者を対象に実施しています。今年度は年間11回が計画され、本日5回目が終わりました。私は毎回新しい気付きがあり、有意義な研修でありがたいと思っています。

 ここでは、4月3日(水)の1回目の研修で印象に残ったことの一つを書きます。研修担当の教員から「コンビニのレジでタッチすること」や「セルフレジが増えてきたこと」は、視覚障害者のためにはなっていない。できないです。と聞いてハッとしました。世の中は、みんなのために便利な方向へ進んでいるものと思っていましたが、目が見えない・見えにくい人のことにまで考えがおよんでいなかったことに気付かされました。本校の幼児児童生徒の自立と社会参加のために尽力することはもちろんのこと、一般の方々にも視覚障害者について理解を深めていただくような働きかけが必要であると思いました。

着任の挨拶

2024年4月10日 18時16分

 香川県立視覚支援学校第31第校長として着任いたしました、池田達治(いけだたつじ)と申します。明治41年に創立した116年という長い歴史と伝統のある視覚支援学校の校長に着任できたことを光栄に思います。

 特別支援学校の勤務は初めてですが、視覚に障害のある幼児児童生徒の自立と社会参加に向け、一人一人の可能性を信じ、その資質や能力を最大限伸ばせるよう、全力を尽くしてまいりたいと思います。本校の教育活動に、ご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げます。