校長からみなさまへ

校長からみなさまへ(3月31日付)

2021年3月31日 12時52分

香川県立盲学校のWebサイト(ホームページ)をご覧いただき、ありがとうございます。

 

<運動場の傍らに咲くソメイヨシノが満開になりました>

 

今年の春の訪れは、例年になく駆け足でやってきた感じがします。いつも入学式のころに満開となり、桜吹雪を舞い踊らせる運動場の傍らに咲く樹齢数十年?のソメイヨシノも、すでに満開となっています。

3月23日、県内の教職員の異動発表がありました。本校でも事務職員の方も含め4名の方がご退職、8名の方がご転任となりました。転任職員の中に校長である私も含まれていました。転任のみなさんのうち教諭・講師の先生は5名おり、そのうち4名は20代というフレッシュな先生方が異動することとなってしまいました。いずれも3年から6年という比較的短い勤務年数でしたが、どの先生方も本校にとっては貴重な戦力であり、本校にとっては大きな痛手となりました。しかし、若いうちに他校を経験することはたいへん意義あることだと思います。新しい学校でのご活躍を大いに期待したいと思います。

私は平成31年4月に新任校長として本校に赴任して2年というたいへん短い勤務でした。明日からは、さぬき市長尾にある香川東部養護学校で勤務することとなりました。本校在任中にたくさんのみなさまからいただいたご指導、ご支援、ご厚情に深く感謝申し上げます。

 

本校に勤務して2年間続けたことがあります。毎朝早めに出勤して学校の周囲を散歩しながらついでにゴミを拾う、そして、ご近所の方やすれ違うみなさんにこちらから「おはようございます」とお声がけさせてもらいました。「おはようございます」と挨拶を返してくれる人もいれば、黙って会釈だけしてくれる人もいます。誰だこの人といった少し怪訝そうな視線を向ける人もいました。人それぞれだなあと思いながら、挨拶を返してくれなかったからといって相手にそれを求めるような仕草もしませんでした。でも挨拶を返してくれるとこちらも気持ちがいいですし、今日はきっといい一日になるぞと私も元気をいただいていました。

本校の周りの道は、近隣中学校の通学路になっていて、私も大体同じ時間帯に歩いているので、よくすれ違う生徒もいました。生徒もそれぞれで、こちらが挨拶をする前に向こうからはきはきと挨拶してくれる女子生徒、こちらが挨拶をするとボソッと挨拶を返してくる男子生徒、それらの生徒たちの中に、いつも二人並んで楽しくおしゃべりをしながら登校している男子生徒たちがいました。最初はこちらが挨拶をしても、二人とも何の返答もなく無視している感じでしたが、ある時から二人のうちの一人が、小さな声ではありますが「おはようございます」と挨拶を交わしてくれるようになりました。4月からも根気よく声をかけて、何とかもう一人も、会釈だけでもいいから返してほしいなあと欲が出てきたところで、今回の転勤となりました。

 

人を育てるということは、簡単な道のりではありません。繰り返し繰り返し長い時間をかけて、根気よく取り組まなければならないことを、この二人組の中学生から改めて学ばせてもらいました。もしこの二人の中学生に会うことができたら、今度は「ありがとう」と言ってみようと思います。

いよいよ今日、盲学校を去ることとなります。たくさんのみなさまに恵まれて勤務できたこと、本当に感謝の一言です。どうぞみなさま、ご健康には十分気をつけられて、盲学校、視覚障害教育を盛り上げていってほしいと思います。2年間、本当にありがとうございました。

 

令和3年3月31

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(3月19日付)

2021年3月19日 15時17分

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<令和2年度 第3学期が終了しました>

 

終業式の前々日、3月17日(水)に令和2年度幼稚部の修了式を挙行しました。晴れの式に臨んだのは年長組の幼児1名で、平成31年4月に年中児から本校に入学し、2年間の教育を経て今日の修了となりました。式には小学部在校生、幼稚部・小学部の全職員、学校看護師さんを始め、保護者だけでなくおじいちゃん、おばあちゃんも出席され、多くのみなさんが修了児のまわりを温かく囲むようにお祝いしました。

本児が入学した2年前、医療的なケアが必要ということで学校看護師の配置などを県教委に要請し、学校では専用教室の確保など環境整備に取り組みました。入学当時は風邪などの感染症にもかかりやすいということでしたので、活動にも様々な配慮をしました。しかし、経験を重ねてみれば、本人も気持ちいい表情を見せたり、うれしそうに笑ったりすることがだんだんと分かり、担任も積極的に活動できる環境づくりに努めました。教室の外での活動もたくさん経験し、夏には校外保育としてJRに乗り津田の松原まで行って、海からの風や磯の香り、打ち寄せる波の感触などを楽しむことができました。姿勢の保持などの自立活動にも、専門的知識の高い他の特別支援学校の先生に来てもらいアドバイスを受けたりして、根気強く取り組みました。難しかったことが少しずつできるようになり、この2年間の成長に保護者も大変喜んでおられました。「やってみよう!」という言葉がぴったりの2年間だったと思います。4月からは本校小学部に進学します。これからもいっぱいの経験をして、豊かに成長してくれると思います。修了、おめでとう。

 

3月19日(金)快晴。校庭の桜も、今にも満開になりそうな勢いでたくさんの花を咲かせています。春が一足先にやってきた感じの今日、第3学期の終業式を行いました。卒業生・修了児がいないので、全校で10名という少し寂しい式になりましたが、全員が元気に出席してくれました。各部の代表者に修了証を渡したあと、幼児児童生徒のみなさんに少し話をしました。

この1年間の経験は、確かに「大変」な経験でした。時が経てば、この大変さもいずれは収まって、「あの時は大変だったなぁ」と過去の出来事の一つになるかもしれません。しかし、この出来事、自分自身の経験をとおして感じたこと、考えたことを、ぜひこれからの生活、これからの生き方に役立ててほしい。新型コロナウイルス感染症の流行によって、世界中でたくさんの人の命が失われたことは、たいへん悲しいことですが、この流行によって人種差別などの人権問題、北半球と南半球の経済格差や貧困の問題、エネルギー問題やグローバル経済の問題など、地球規模で考えなければならない問題が私たち人類に突き付けられたこと。解決は難しい問題かもしれないけれど、時々でもいいから一人一人が考え続けることが大切で、もしできることがあったら行動しよう、みんなで力を合わせれば、何かが変わる…そんな話をしました。

小学部や中学部の子どもたちには少し難しい話になりましたが、最後は、3学期、そしてこの1年間の頑張った成果に、「ありがとう」の感謝の言葉を伝えて話を終えました。

 

この校長からのメッセージも、今年度はこれで最後になるかなと思います。4月からまた心機一転、頑張って掲載を始めたいと考えています。拙文を読んでいただきありがとうございました。

では、また、4月にお会いしましょう。

 

令和3年3月19

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(3月10日付)

2021年3月10日 15時48分

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<令和2年度 卒業証書授与式を挙行しました>

 

3月10日(水)、令和2年度の卒業証書授与式を挙行しました。今年度は小学部2名、高等部普通科3名、合計5名が晴れて卒業の日を迎えることができました。朝から春を告げるような暖かい光が体育館に差し込み、用意してあったストーブを稼働することもありませんでした。感染症対策として開放した2階の窓からも、春を感じるやさしい風が時折カーテンを揺らしながら、門出の日を祝ってくれているようでした。

当日はKSB瀬戸内海放送から取材が入りました。1年半ほど前、盲学校に興味を持たれていたKSBの記者さんと知り合いになりました。盲学校に赴任したばかりの私も、本校の教育活動をもっと広く皆さんに知っていただきたいという強い気持ちもあり、取材に来てもらうこととなりました。それからのご縁です。その時に制作してくれた番組は、学校の様子だけでなく本校の卒業生も取材し、あん摩マッサージ指圧師鍼師灸師(通称:あはき師)として活躍している丸山さんや、県庁正規職員として頑張っている三野田さんの働く姿もあわせて盛り込まれ、昨年2月18日夕方のKSBスーパーチャンネルで6分半程度の特集『盲学校は今』として放映されました。この番組で紹介された高等部卒業生の山本華さんが、この春卒業しますよと記者さんにお伝えしたところ、ぜひ卒業式の様子を取材させてほしいという話になり、カメラマンの方を伴っての来校となりました。

 

さて、式は予定通り午前10時から、厳かな雰囲気のなか始まりました。来賓はPTA会長様と学校評議員様のみに限らせていただきましたが、在校生、教職員も全員が体育館に入り、あとはほぼ例年どおりの式次第で行いました。これも少人数の学校だからこそ可能なことで、ありがたいことです。式の準備の段階ではできるだけ時間を短縮しなければということから、校長式辞や来賓祝辞、送辞や答辞なども短くすることが検討されましたが、卒業生の思い、在校生の思いも強く、それぞれが自分の言葉で綴った思いの丈を短くするのは忍びない、そのままいこうということになりました。校長式辞も、思いの丈をしっかりと伝えさせてもらいました。

式の最初は卒業証書の授与、5名一人一人に手渡しました。続いて校長式辞。その中で卒業生へのはなむけの言葉として私が話をしたのは、これからの生き方、行動の在り方についてであり、こんな話をしました。

 

『さて、卒業するみなさんには、これからの信条として、心にとめておいてほしい、人としての三つの生き方について話をします。

一つ目は、自分の可能性を信じ、主体性のある生き方。

二つ目は、相手の幸せを考えて、正義感と勇気と思いやりの心をもって行動する生き方。

三つめは、連帯し協力し合う生き方です。

人間は、自然界の中では弱い存在であることが、件の感染症により改めて明らかになりました。弱い存在だからこそ、横へのつながり、縦へのつながりを広げていって、しっかりと織られた布のように強く団結していきたい。分断があってはなりません。

そして、連帯し協力し合うには、自分の幸せも考えるが、相手の幸せも考えられる、相手に思いを致す心が必要です。一方で、正しいことは正しい、間違っていることは違うといえる勇気も必要です。勇気のある行動をするためには、自分に自信を持つ、自信というのは自らの可能性を信じるということから始まります。自信ができれば、人生は主体的に生きられます。どうぞ、諦めないで行動してください。』

 

月並みで判り切っている内容かもしれませんが、言葉に出して唱えることで日々の生活が変わり、だんだんと生き方や行動もそれに沿ったものになっていく。これから彼ら彼女らが遭遇するであろう様々な困難や試練に立ち向かわなければならないとき、そういえば校長がこんなことを言っていたなぁと少しでも心に留めておいてくれたらうれしく思っています。

次にPTA会長山本さんから祝辞をいただきました。その言葉がまた素晴らしかったので、一部紹介します。

 

『でも、大人も失敗します。それに偉い人ほど失敗が多いのです。それは誰よりもチャレンジしているからです。だから卒業生の皆さん、失敗を恐れず新しいことにチャレンジして、頑張っている自分を褒めてあげましょう。』

『生きていくうえで、私が一番大切だと思っていることは「バランス」です。自分にとってちょうど良い加減と、相手にとってちょうど良い加減。一生懸命も大事だけれど頑張りすぎると疲れます。たまにはいい加減になることも大事です。食べることや寝ることも同じです。バランスが崩れると体調も悪くなります。平均台でバランスをとるように少しずつ前へ進み、落ちてもまた、そこからやり直せばいいのです。変化を恐れず、様々な変化に柔軟に対応できるバランス感覚を身につけていってください。』

 

分かりやすくてたいへんいいお話に私も感動しましたし、卒業生たちもきっと勇気づけられたことでしょう。大概の失敗はやり直せるもの。やらないで後悔するより、とりあえずやってみようという気持ちと行動を支えてくれる、一人の親御さんとしての温かい心を感じました。

在校生代表による送辞、卒業生代表山本華さんの答辞も、5名の卒業生一人一人の思いをしたため、とても感動的なものでした。本校で学べたことへの感謝の言葉、何よりも私たち教職員にとっての褒美であることが改めて心にしみました。


 では、卒業生のみなさん、特に本校を離れることとなる高等部を卒業する3名のみなさん、まずは健康で、
自分だけしか歩めない自分の人生を、自分らしく胸を張って生きてください。

みなさんのこれからに、幸多かれと願っています。

それから…、困ったことがあってもなくても、いつでも学校においで‼

 

令和3年3月10

香川県立盲学校長 田中 豊

 

<補足>

※本校の卒業式の様子が、3月10日(水)2054分からのKSB瀬戸内海放送のニュースで流れました。見逃した方は、下記URLにて視聴できます。よろしければご覧ください。

 

https://www.youtube.com/channel/UCH9jlbggZY_mRx7Q0k49TuQ

校長からみなさまへ(2月25日付)

2021年2月25日 13時35分

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<第2回学校評議員会を開催しました>

 

2月24日(水)午後から、今年度第2回目の学校評議員会を開催しました。年度末の開催ということで、令和2年度の本校の取組等について報告し、各委員さんからご意見やご助言をいただきました。当日は本校理療科卒業生でデイサービスセンターにて機能訓練指導員をされている評議員さんが急なご都合で欠席されましたが、あとの3名、視覚障害者福祉センターの館長さん、眼科医の先生、本校元校長の各評議員さんが出席されました。

最初に、校長から今年度の取組の概要と次年度の学校のグランドデザインについて説明し、続いて教頭より重点目標に対する成果や学校評価結果の報告、教育研究部からの授業力向上の取組、進路指導部から進路状況等の報告をしました。また、本校の重要な役割である「視覚障害教育支援センター(見えにくさと学びの支援センター)」の取組については、少し時間を長めにとって担当より報告させていただきました。

各評議員さんからは様々な質問が出ました。GIGAスクール構想で具体的に学校はどう変わるのか、UDブラウザを使ったPDF版拡大教科書を地域の学校の生徒が使うにはどのような手続きが必要か、県内初のヘルスキーパー採用となったがその仕事状況はどうか、臨時休業中のリモート授業の状況はどうだったか…、などなど。一つひとつ丁寧にお答えしたつもりですが、どうだったでしょうか。評議員さんからの質問を聞きながら、評議員さんは真に本校のことを考えてくれていると実感し、ありがたく思いました。そしてそれらの質問に的確に答える各担当の先生方もたくましく感じられ、自画自賛になってはいけないと思いつつ、少しうれしい気分になりました。

会の最後に指導助言として、「地域に学ぶ子どもたちへの支援ができる学校であり続けてほしい」というご意見をいただきました。来年度、本校で学ぶ幼児児童生徒数は減少しますが、地域の小・中・高等学校で学ぶ視覚障害のある児童生徒の数は増えることとなります。今後ますます、視覚障害教育の「支援センター」としての役割が大きくなってきます。かといって、本校で学ぶ子どもたちへの教育が疎かになっては本末転倒です。校内の教育実践により先生方一人ひとりの専門性や教師としての力量を高め、それを礎に地域支援に臨む。地域支援を実践することで、また先生の力量が上がる。それが子どもたちへの教育効果となって表れる。正のスパイラルとでも申しますか、相乗効果を高めていかなければなりません。それにはやはり教員の数も必要です。在籍者数には表れない本校の全県的使命を果たすためにもです。

また、「本校の専門性のある先生が地域の学校を支援することで、その学校で教えている先生方や周囲の子どもたちへの(視覚障害に対する)理解が進んでいくことは素晴らしいこと」というエールもいただきました。来年度も『香川県立盲学校グランドデザイン2021』の学校運営方針のなかに示す「県内の視覚障害のある幼児児童生徒の教育に責任を持つ気概で地域支援に取り組む」ことができるよう頑張らなければと思いも新たに、そして勇気をいただいた時間でした。評議員のみなさま、お忙しい中ありがとうございました。

 

令和3年2月25

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(1月29日付)

2021年2月1日 16時48分

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<防犯訓練を行いました>

 

1月29日(金)の放課後、体育館で教職員対象の防犯訓練を実施しました。高松北警察署生活安全課から警部補、巡査長の2名の警察官に来ていただき、不審者が校内に侵入して来たときの初期対応の方法やさすまたを使った撃退法、そしていざというときの護身術等の研修に取り組みました。

 

学校現場で防犯訓練が積極的に行われるようになったのは、平成13年6月に大阪教育大学附属池田小学校で起きた侵入者による殺傷事件が契機かと思われます。それまでも学校に不審者が侵入して事件を起こすことはありましたが、この事件は衝撃的で現場の教員の対応にも様々な意見や批判がありました。この痛ましい事件のあと、児童生徒が在校している時間帯の学校の門は閉ざされることとなり、国立大学附属の各学校においては正門に警備員を常駐させるなどの対応をしました。

私が小学生だった昭和40年代後半、小学校はとても開放的で、学校の門はいつも開いていました。学校には泊り勤務の用務員さん(当時の表現)がいて、学校を守ってくれているイメージがありました。また昼休みに運動場で遊んでいた私たちの様子を、近所のお年寄が運動場の端にあったベンチに腰掛けて眺めていた、そんな記憶もあります。のんびりした時代を懐古しても仕方がありませんが、いま学校内の安全も組織的に確保していかなければならない社会状況であり、学校を支える地域の力も、昔のように自然発生的に何となくというのではなく、組織的に機能させていく時代になっています。学校現場だけでなく、地域社会にも昔のようなゆとりや余裕、余力というのが随分減ってきているように感じます。

 

さて、不審者への対応訓練の様子です。今年は感染症対策で接触を控えるということもあって、昨年度実施した防犯訓練のように、不審者役の警察官をさすまたで取り押さえる実戦的な訓練ではなく、学校に入ってきた不審者を発見したときの最初の声かけと誘導の訓練でした。不審者役には身長180センチ超え、体重も優に100キロはあろうかという巡査長さんが担当。正門から入って来たとの想定で、第一発見者の教員による声かけ、続いて応援が一名、そしてもう一名が応援に来て、三名で対応し事務室へ誘導するという訓練でした。巡査長さんの不審者役も板についていましたが、本校の先生方の対応も良かったと思います。まずは用件を聞くこと、さり気なく手を前に出して相手との距離を取ること、複数の応援が駆けつけたら誰かがさり気なく事務室に行って通報することなど、警部補さんからも事後の講評で褒めていただきました。私が良いと思ったのは、三人目に応援に駆けつけた女性の先生が、「ここは寒いので、事務室で温かいものでもどうですか?」と話しかけたことでした。ひょっとしたら、相手は危害を加えてやろうと懐に凶器を忍ばせた凶悪な人間かもしれません。それでも、相手を落ち着かせる、人間の「良心」に働きかける温かみのある良い声かけだと感心しました。

 

初期対応訓練のあとは、3グループ程度に分かれてさすまたの使い方を指導していただき、グループ内で模擬的に使ってみました。そのあと、女性でも簡単にできる護身術のデモンストレーション、不審者、特に女性に対する犯罪を防ぐためのVTR視聴をして研修を終えました。

最後に校長より謝辞ということで、警部補、巡査長のお二人にお礼の言葉を述べました。校内で見知らぬ人に出会い、それに対応するというのは、ある程度の「胆力」も必要です。いざとなったら(きも)を据え、周囲の状況を俯瞰し判断し行動する。簡単にできることではありませんが、訓練を積み重ねていくことで少しはできるようになると思っています。加えて、普段からのイメージトレーニングも大切です。実際にそういう場が生じないことを祈りますが、いざというときには、何はともあれ私も現場に駆けつけたいと思います。公務お忙しいなかご指導いただいた警部補さん、巡査長さんには改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

令和3年1月29

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(1月8日付)

2021年1月8日 16時50分

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<令和2年度3学期が始まりました>

 

2021年、令和3年が幕を開けました。新年おめでとうございます。本日1月8日、学校では第3学期の始業式が行われ、令和2年度のまとめとなる3ケ月がスタートしました。

今年の元旦はたいへん寒い朝でしたがお天気も良く、私が東かがわ市のとらまる公園から見た初日の出は、神々しく無心で合掌するほどでした。昨年の初日の出とは何か違う、平穏な日常が戻ってほしいという祈りを込めていたかもしれません。とにかく、太陽は今日も明日も昇り続ける、古代から人は太陽を神と崇めてきたということが実感できたような瞬間でした。

 

今日から始まった3学期、始業式は、前日からの寒波到来でストーブを焚いても冷蔵庫のような体育館でしたが、そこで実施しました。昨日の積雪のため登校できなかった生徒もいましたが、そのほかの児童生徒は元気に参加してくれました。

 

さて、時間は遡りますが、2学期の終業式講話では「事実を知る」、「事実を知る努力をする」ことの大切さについて話をしました。この感染症が拡大し特に情報過多となっている今の世の中で、たくさんの情報に対して、まずは、なぜ?どうして?本当?という「疑問」や「疑念」を持って自分で調べてほしい、探求してほしいと言いました。情報の真偽をよく確かめずにそれを信じて、もしそれが事実と違う情報であると分かったとしても、‟裏切られた“と相手に責任を押し付けてしまえば楽かもしれません。しかし、それを何も考えずに鵜呑みにした自分はどうなのか…。すべてのことに疑心暗鬼になっては、なかなか前に進めませんが、何かがおかしいと感じたときに「疑問」や「疑念」を持ち、想像力をいっぱい働かせて、事実やその先にある真実を知る努力をしてほしいという話でした。

生徒たちにこのような話をした手前、冬休みは私もこれまで以上に「疑問」や「疑念」を持って過ごそうと考えました。そして「なぜ」と思ったのが、元旦に煌々と昇ってきた太陽でした。初日の出を見終えて、朝日を真正面に受けながら自転車を漕いで家路につきましたが、ふと、太陽は本当に永遠に昇り続けるのだろうかという疑問がわいてきました。そして、その疑問に答えられない自分に気づきました。関心を持って調べたことがないがために、知識がありませんでした。帰宅してから早速インターネットで検索し、とりあえず分かりやすく説明してあるような書籍を調べ、年始に書店が開いてから買い求めにいきました。いま宇宙について勉強中ですが、分かったことの一つは、太陽にも永遠はないということ、当然地球にも永遠はないということです。

 

3学期の始業式の講話では、宇宙について「疑問」を持って、いま勉強していることを話したうえで、地球上のあらゆる生命、人間もウイルスも地球という太陽系にある奇跡の惑星に存在する自然の一部であること、その存在全てが数えきれない奇跡が重なって、いまここにあること。みなさん自身も宇宙の大きな営みの中で生まれ育まれた奇跡の存在であることを自覚すれば、自分の生き方も変えることができる。変われる自分の可能性を信じて、3学期も怠らず努力してほしいという内容の話をしました。

 

2021年、まだしばらくは様々な活動が制限され、不安な日々が続くかもしれません。しかし、いまが連帯して行動するチャンスだと思います。みんなで知恵を出しあって協力して、できることは前向きに取り組んでいきたいものです。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

令和3年1月8日

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(12月17日付)

2020年12月17日 16時32分

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<人権講演会を開催しました>

 

1216日水曜日、「絆創膏の会」代表の大湾 昇さんを講師としてお招きし、人権講演会を開催しました。本校児童生徒だけでなく、保護者、教職員も対象とした研修の場でした。

講師の大湾さんは、徳島県の出身、地元の市の教育委員会で学力向上支援指導員としてのご勤務などを経て、今では全国各地で同和問題を中心とした様々な人権課題について積極的に講演活動をされています。当日の午前中は農業経営高校での講演を終え、午後から本校に来てくださいました。

講演テーマは『あることをないことにしない』。今日は人権や同和問題についてのお話でしたが、このテーマを聞いて、今の世の中、万人が見ても実際にあったのではないかと思われることが、さも無かったことのように、うやむやのまま、腑に落ちないまま流れていくことがあまりに多いように感じます。白黒はっきりさせることがすべてよしとは思いませんが、ついつい疑念を抱いてしまいます。

 

さて、大湾さんの講演の内容について、この紙面で詳しくお伝えすることは難しいですが、「無知」や「無関心」がいかに怖いことであるか、想像力が欠如すると知らない間に人を傷つけてしまっている、そしてそれにも気づかない人間になってしまうこと。おかしいなと疑問に思ったことをそのままにしないこと。ご自身の体験や生きざま、全国の講演で出会った中学生や高校生の話を織り交ぜながら、大きな熱量をもって私たちに語ってくれました。児童生徒とのやり取りも楽しく、あっという間の90分でした。講演の最後は「絆創膏の会」の名前の由来のお話。大湾さんはある学校の保健室の先生(養護教諭)から、「けがをして保健室にやってくる子どもたちは絆創膏を貼ると安心する」という話を聞いて、絆創膏の意味を考えたそうです。絆創膏は傷の手当だけでなく、心の手当てもしてくれる、傷を負った子どもに目に見える、触って分かる安心感を与えてくれる、気軽に誰もができる人への思いやりが絆創膏には詰まっている。そんな絆創膏のような存在になりたいとの思いから、名付けたとのことでした。

講演会は密集を避けるため、会場は体育館とし窓を開けてスタートしました。ストーブは4台用意しましたが、あいにく当日は日本中に寒波到来、高松も初雪が観測されるなど今年一番の冷え込みでした。あまりの寒さに途中に窓を閉めたりもしましたが、大湾さんは、講演の冒頭から半ズボン姿で着席していた児童がずっと気になっていたようで、話の合間には「大丈夫?寒くないかい」と声を掛けてくれていました。そして、講演途中の短い休憩時間に、自分が来ていたダウンジャケットを脱いで、「膝にかけとこう」とその児童に手渡してくれていました。子どものことを考えると、居ても立っても居られない、その気持ちを行動に移す大湾さんの心根の優しさと心遣いに感服させられるとともに、気づいていても行動できなかった私たち周囲の教員の行動力の鈍さを、とても恥ずかしく思いました。子どもたちの「絆創膏」にはなれていなかったことを、改めて反省しました。

 

講演が終わった後、校長室でしばらく談話の時間をいただきました。会話の中で大湾さんがぽろっと「本当は学校の先生になりたかった」という話をしてくれました。私は今からでも遅くないと言おうと思いましたが、その言葉を飲み込みました。今の大湾さんは、余人をもって代えがたい素晴らしい教師であり、学校という枠の中には納まらない今の活動を、もっともっと全国の子どもたちに届けることが大湾さんの使命だと勝手に納得しました。学校を発つ前には、もう一度生徒の顔が見たいと言って、音楽室で楽器の練習をしていた3名の高等部生徒と会い、励ましの言葉を。やっぱり子どもが好きなんだなあと感心しました。

 

今日17日は、三重県名張市の中学校で講演をするとのこと。またたくさんの生徒の心に絆創膏を貼ってくれることでしょう。大湾さん、ありがとうございました。

 

令和2年1217

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(11月24日付)

2020年11月24日 17時22分

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<第3回かがわロービジョン研修会を開催しました>

 

1121日土曜日、今年度第3回目となる「かがわロービジョン研修会」を本校会議室で開催しました。今回は京都府立盲学校教諭の藤井則之先生をお招きして、『障害の受容と盲学校教育』と題して講演をしていただきました。研修会には、本校職員以外に10名の方が参加され、その中には地域の学校に通う視覚障害のある小学生と高校生がそれぞれ一人ずつ出席してくれました。

 

さて、講演の内容について少し紹介したいと思います。講師の藤井則之先生の専門教科は数学、京都府立盲学校に勤務される前は、京都府立の高等学校2校で教鞭を執られていました。進行性の眼疾患があることは小学5年生の時に医師から告げられたそうですが、自分に視覚障害があること、それが段々と進行していることがなかなか受け入れられず、大学生になってようやく病気と向き合う準備ができたそうです。信頼する医師の勧めもあって教師の世界へ。ただ、このとき、ご自身が視覚障害をすべて受け入れたかというとそうではなく、高校教師になってからも周囲の先生方には見えにくさは伝えていたものの、管理職には言えなかったそうです。ところが、2校目の高校で人権学習を担当したとき、自分に視覚障害があることを生徒に語れなかった、視覚障害者と思われたくない、障害があることを隠そうとしていた自分に気づいたことで、自分は変わるきっかけを持つことができたと話してくれました。このあと管理職にも相談して、京都府立盲学校に転勤、その後は盲教育、視覚障害教育に教師生命をかけようと一念発起され、ありとあらゆる研究会に参加したり、発表したり、勉強に励んだそうです。

盲学校に勤務後、京都ライトハウスで受けたピアカウンセリングのこと、出会った盲学校の生徒たちのこと、近畿地区盲学校弁論大会で心打たれた弁論のことなどを話されました。特にピアカウンセリングは自身の障害受容にも大きな変化を与えたようで、詳しく話してくれました。この変化も、同じ視覚障害のあるピアの方の話や問いかけに対して、その電波を受信する藤井先生のアンテナ側の感性がよくないと何も変わらなかったのではないかと思います。藤井先生の積極的に生きようとする姿勢があって、自身の障害に対する化学変化が生じていったのではないでしょうか。

まとめとして、「障害の受容」とは、その環境や背景により一律に定義することは難しいと前置きしながら、藤井先生は以下の3点を示されました。

(1)諦めでもなく居直りでもなく、視覚障害者であることが人間の価値を下げるのものではない。

(2)悲観的でもなくて楽観的でもなくて、自分の障害を正しく認識し、それを少しでも良くしようと心穏やかに取り組めること。(克服ということではなく)

(3)やりたいことややりがいのあること、打ち込めるものがあること。それをやっている、やろうとしていること。

また、何が自分を変えたのかを振り返ったとき、これから成長していく子どもたちに何が必要で大切であるかについても、以下の3点に整理されました。

〔1〕視覚障害のある人といっぱい出会うこと(それも様々な職種の人と)。

〔2〕自分のために一生懸命になってくれる先生と出会うこと。

〔3〕視覚障害のある同年代の友だちに出会うこと(自分より年下の子と)。

そして、子どもたちの成長に必要な上記3点すべてがそろっている学校が盲学校であるとも言ってくれました。しかしこの3つの要件、果たして本校はすべてそろっている学校といえるのか。特に2つ目の「自分のために一生懸命になってくれる先生に出会う」という言葉は、私たち教師への問いかけでもあり、私たちは一人一人の子どもたちや生徒のために一生懸命になって視覚障害に係る専門性を高める努力をしているかどうか、改めて考えさせられる言葉でした。加えて藤井先生がおっしゃったのは、『教員という仕事は人の心を支えること』で『子どもにとって命の恩人』でもあること。『盲学校に出会わなければ、私は命を絶っていたかもしれない』との一言は、ずっしりと胸に響き、正直身体が震えました。予測が困難な時代、生きづらさが漂う世の中、そして感染症に襲われ、なおさら混迷を極める時代にあって、「人の心を支える」仕事である教師としての責任の重さを自覚し、日々自己点検を怠らないようにしなければと身が引き締まる思いでした。

本当に素晴らしい講演でした。拙文では内容について一部の紹介に留まりましたが、藤井先生のゆったりとした京都弁の語り口と言葉の端々にあふれる人間的魅力は、やはり生身でなければ体感できないことで、オンラインにしなくてよかったと思いました。

 

講演のあとは、福祉・医療・教育関係者協議会ということで、「障害の受容」ということについて眼科医から、視覚障害者福祉センターの方から話をいただきました。眼科医の星川先生からは、「障害を受容している人は、視覚障害がその人の一部になっている人、受容できてない人は視覚障害がその人の全部となっている人」との話で、これは分かりやすい表現だと感心しました。福祉センターの中口さんからは、「障害受容ができているかどうか急いで答える必要はないのでは。人それぞれ」との話で、たくさんの視覚障害者の生活に寄り添ってきた中口さんならではの答えだとこれも感心しました。

会の最後に、参加した高校生から、ご自身の「障害開示」について話を伺いました。彼はこの4月に地域の県立高校に入学して、自分の見えにくさをクラスメートや部活動の仲間、先輩などに伝えることで、周囲から自然な形でサポートを受けられるようになった体験談を話してくれました。それを聞いた藤井先生からは「自分のことを語れることは素晴らしいし、そういう人になれたらいいなあ。どうしてもできないことは、素直に援助を求められたらいいなあ。でも自分でできることは精一杯頑張ってほしいなあ。でも頑張り過ぎない。自分の力を一歩一歩伸ばしてくれたらいいなあ。」と満面の笑みで優しく言葉をつづってくれました。本当に子どもが好きなんだなあと思いました。

縁起の法則ではないですが、何かに導かれてこの講演会が実現し、藤井先生の話が聞けたようにも思います。やはり「ご縁」という見えない意思の力が、それも人をいい方向に変える力、生かすエネルギーが働いていたことを実感しました。遠路お越しいただいた藤井則之先生、本当にありがとうございました。

 

令和2年1124

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(11月18日付)

2020年11月18日 11時40分

香川県立盲学校のWebサイト(ホームページ)をご覧いただき、ありがとうございます。

 

<新番丁小学校5年生よりお手紙をいただきました>

 

1029日、30日の2日間、新番丁小学校5年生が総合的な学習の時間の授業として本校を訪れてくれたことについては、以前の校長からのメッセージでお話したところですが、一昨日、その5年生のみなさんからたくさんのお手紙をいただきました。1通1通ゆっくり読ませてもらいましたが、それぞれ個性豊かな筆致で、本校を見て、体験して、思ったこと感じたこと考えたことをそれぞれの表現で記していて、とてもほっこりとしたうれしい気持ちになりました。

 

子どもたちが共通して書いていたことは、盲学校と新番丁小学校との施設面での違いでした。校内の動線に沿って敷設された点字ブロック、点字ブロックを確認しやすい廊下の色、階段の境目が分かりやすいような配色のコントラスト、手すりの位置など校舎の外から見たのでは分からない学校の様子について、まずみなさん驚いたようでした。次は便利グッズコーナー(支援機器などの展示コーナー)を見学した感想で、ある子は『ユニバーサルデザインは、不自由な人のために作られているんだと思っていたけど、みんなのためにあることが分かりました。』との気づきを書いてくれました。二人一組になって体験した視覚障がい者への手引きについてもたくさんの感想がありました。『困っている視覚障がい者がいたら勇気を出して声をかけたい』、『この町でこまっている人がいたら、視覚障がい者はもちろん、お年よりや車いすの人など、話を聞いてだれかの役に立ちたい』など同じような言葉がたくさん見られました。一歩踏み出す決意にもとれる素直な思いに頼もしさを感じました。大人になっても、どうぞこの思いを忘れずいてほしいです。

 

いずれの手紙も素晴らしく、もっと紹介したいのですが、私が興味を惹かれた手紙をちょっと紹介します。『ぼくは、盲学校の前を通るとき、いつも「盲学校の中はどうなっているのだろう。」となぞがたくさんあったのですが、先日見学させてくださったおかげで、そのたくさんのなぞがとけました。』と書いていました。この子にとって、盲学校は「なぞの学校」だったようで、1年生のときから本校の前を歩いて小学校に通っていたとするなら、積年のなぞが解け、とてもすっきりした気持ちになったのではないかと思いました。見学して解けたなぞも多かったようですが、その文章の最後は、『くわしく調べてみます。』と締めくくっていました。この子は本校訪問のあと、また新たな「なぞ」を発見したようです。この子の知的好奇心や探究心は素晴らしい。これこそ教科書のない総合的な学習の可能性と広がりを示すものとも言えます。

 

子どもたちの手紙を読んでふと考えたこと。段々と歳を重ねてきて少しは世の中のことが分かったような気になり、世の出来事に「なぞ」を感じても何となく蓋をして、挙げ句に「しょうがない」とやり過ごすことが多くなってきたように思います。子どもたちの手紙をもう一度読み直して、世の中に渦巻いているたくさんの「なぞ」にきちんと対座し、それを探究していかなければだめですね。

 

令和2年1118

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(11月3日付)

2020年11月3日 18時37分

香川県立盲学校のWebサイト(ホームページ)をご覧いただき、ありがとうございます。

 

<令和2年度 文化祭を開催しました>

 

本日、11月3日、令和2年度の文化祭を開催しました。本校の文化祭は少なくとも15年以上前から祝日である文化の日をその開催日と定めています。毎年同じ日にすると決めておけば、卒業生や保護者のみなさまも予定が立て易くなりますね。

 

昨年4月盲学校に赴任し、初めて文化祭に参加しましたが、幼児児童生徒数が少ないなか先生方も工夫を凝らし、それぞれが活躍できる場をたくさん設けてくれて、たいへん活気のある文化祭でした。体育館での学習発表を中心に、幼児児童生徒・保護者・教職員による作品展、理療を学ぶ生徒によるクイックマッサージ、点訳ボランティアサークルによる点字体験教室、屋外ではPTAによるうどんの販売、高松信用金庫さんのくじ引きコーナー、作業学習等作品の展示等、加えて野外ステージでの演奏もあり盛りだくさんの内容でした。しかしながら、今年は(くだん)の感染症拡大防止により規模を縮小せざるを得ず、体育館での学習発表、幼児児童生徒の作品展、学習成果の発表としてのお店屋さんなどに限定し、来賓や卒業生、一般の方々の来場はご遠慮願い、ご家族のみの公開としました。

 

当日は、さわやかな秋晴れの好日。一日中降り続いた前日の雨も明け方には上がり、暖かい日差しに恵まれ、おじいちゃん、おばあちゃん、兄弟姉妹も含め40名を超えるみなさんが来場してくれました。今年の文化祭テーマは「~DELIGHT みんなでひろげる『きずな』の輪~」、生徒たちが決めました。開会の生徒会長山川君の挨拶では「新型コロナウイルスの影響で臨時休校期間が長く続きましたが、学校が再開して『人に会える喜び』を強く感じています。この『喜び』を表現し、改めて人と人との『きずな』を強めるよう思いを込めました。」と、今まで経験したことがないコロナ禍という事態をとおして、生徒自身が感じたこと、よく考えたことがテーマとして表現されました。当たり前にできることに感謝の気持ちを持ち、みんなで絆を深めてこの困難な状況を乗り切っていこうという思いが伝わってきました。

 

文化祭の詳しい様子は、また写真も含め近々ホームページで公開される予定ですのでここでは割愛しますが、子どもたちの頑張りに大きな大きな拍手を送りたい。そして、一人一人が輝くよう創意工夫してくれた先生方のアイデアと努力にも感謝、感謝です。子どもたち一人一人、先生方一人一人がかけがえのない存在であることを改めて感じました。

やり直しがきかない、この時この瞬間にしかできない経験もあります。これからも、子どもたちの教育活動ができるだけ制限されないよう、みんなで智恵を出し合って、議論して、熟慮しながら前向きに取り組んでいきたいです。

 

令和2年11月3日

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(10月30日付)

2020年10月30日 15時08分

香川県立盲学校のWebサイト(ホームページ)をご覧いただき、ありがとうございます。

 

<高松市立新番丁小学校の児童が本校にやってきました>

 

1029日、30日の2日間にかけて、新番丁小学校5年生の子どもたちが本校を訪問し、学びの機会を持ちました。新番丁小学校の5年生は4クラスあるそうで、それを半分に分けて66名ずつの児童がやってきました。新番丁小学校は本校に一番近い小学校で、本校小学部児童も新番丁小学校に伺って、クラブ活動などの時間に参加させてもらうなど以前から交流を深めています。今回の訪問は、5年生の「総合学習(総合的な学習の時間)」の授業としての取組で、視覚障害をメインにしてバリアフリーやユニバーサルデザインなどについて学ぶというのが目的です。

 

「総合的な学習の時間」というのは、平成14年から実施された学習指導要領に初めて登場し、「総合的な学習の時間においては、各学校は、地域や学校、児童の実態等に応じて、横断的・総合的な学習や児童の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うものとする。」と示されました。平成14年といえば学校完全週5日制が実施された年で、いわゆる「詰め込み教育」から「ゆとり教育」への転換の年でもありました。総合的な学習の時間の内容については、「例えば国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的・総合的な課題、児童の興味・関心に基づく課題、地域や学校の特色に応じた課題など」とだけ示され、基本的には各学校の裁量に任されています。小・中・高とそれぞれの成長段階に応じたテーマで取り組むことにより、子どもたち自身が自分の生き方を見つける、時には運命を変えるくらい可能性のある時間になると私は考えています。(補足:最新の学習指導要領では、高校(高等部)については「総合的な探究の時間」という名称に変わっています)総合的な学習の時間の在り方については、創設当初から現在までゆとり教育に絡めて様々な議論がなされ、時間数の減少など紆余曲折もありましたが、脱ゆとり教育に舵を切った現在にあっては、今後も大切にしたい授業だと個人的には思っています。

 

さて、新番丁小学校5年生の子どもたち、みなさんとても礼儀正しく、挨拶もはきはきとできており素晴らしい。3グループに分かれ、授業の様子や支援グッズ展示コーナーの見学、アイマスクをつけて手引きの体験をしました。にぎやかに真剣に取り組んでくれました。バインダーに挟んだメモ用紙に一所懸命書き込んでいる子どももたくさんいて、すごいなあと感心しながら、本校での見聞や体験が、この子どもたちの今後の人生にどんな影響を与えるのだろうかとしばし考えました。以前、旧四番丁小学校で開設している「しうんまんまる広場」という子ども食堂に、縁あってお邪魔したことがあります。そこで一人の中学生と出会い、私が盲学校に勤務していることを伝えると、「小学校の時に行ったよ」と新番丁小学校時代に本校に来たことを笑顔で話してくれました。彼にどうだった?と聞くと、「(目が見えないのは)大変だなあと思った」と、心に留めてくれていたようで少し嬉しい気持ちになったことを思い出しました。

 

感性や記憶というのは人それぞれ、来校した130名あまりの子どもたちも感じ方や思いは様々です。小学校に戻ってから昨日今日の振り返りやまとめをすると思いますが、本校で一人一人が感じたこと、心に残ったことを画一的なフレームの中に押し込めることなく、子どもたちの様々な感性や思い、考えをつないで、知的創造が広がるような素敵な時間や空間をつくってくれたらいいなぁと思います。

 

令和2年1030

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(10月9日付)

2020年10月9日 20時41分

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<全国盲学校長会秋季研究協議会函館大会(オンライン)が開催されました>

 

今日は全国盲学校長会(愛称:全盲長)について、少しご紹介します。

 

今年度の全国盲学校長会秋季研究協議大会が、10月9日(金)の午後からオンラインで開催されました。当初の計画では、10月8日~9日の2日間にかけて北海道函館の地で開催される予定でしたが、やはりこのご時勢、全国各地から函館に集合するということが難しく、10月9日の午後に期間を短縮し、オンラインにより一部の内容に限定して実施することとなりました。

主管校の函館盲学校を始め旭川盲学校、帯広盲学校、札幌視覚支援学校の北海道地区4校の校長先生方、全国盲学校長会会長の文京盲学校木村校長先生はじめ事務局の校長先生方が、何とか函館で開催できないものかと8月初旬まで検討してくれましたが、各校の安全・安心な学校運営を考え、現地での開催は断念することとなりました。

しかし、「顔の見える全盲長」がこの校長会のいいところですので、Web上での開催を検討準備していただき、大会当日まで2回の接続確認の機会、10月5日にはプレ大会の開催ということで、2時間ほどの情報交換等の時間を設けてくれました。プレ大会では、校務の都合で全員の先生方が参加することは難しかったようですが、全国盲学校長会会員67名のうち38名の校長先生が参加され、参加者一人ずつの自己紹介と簡単な現状報告から会が始まりました。昨年1010日、11日に長崎市で開催された全盲長秋季大会で親交を深めた先生方の元気そうなお顔も拝見でき、プレ大会とはいいながら、もうすでに本番の大会が始まっているようなワクワクした気持ちになりました。

 

全国の盲学校(視覚支援学校)は県立63校、市立2校、大学附属1校、私立が1校となっています。公立・市立65校のうち、「盲学校」または学校名に「盲」という文字が入っている学校は42校、「視覚(特別)支援」が校名にある学校は17校、校名変更により「盲」、「視覚」の文字は無くなりましたが、視覚障害部門だけの学校が2校、知的とか肢体不自由とか複数の障害に対応する部門を設けている学校が4校となっています。徳島視覚支援学校は徳島聴覚支援学校と併置されており、両校で校長先生は一人という学校もあります。大学附属も私立の学校も視覚障害教育単独校で、全国的にみても単独校がほとんどです。盲学校という校名を残している学校の割合も、6割を超えています。長年親しまれてきて、100年以上の伝統と歴史のある「盲学校」という校名ですが、私個人としてはそろそろ変更したほうがいいかなと思っています。100年以上の歴史があるにもかかわらず、世間一般的には「全く目が見えない人の学校」という印象が今でもあるように感じます。幼児児童生徒数の少ない本校でさえ、全盲の生徒と弱視の生徒の割合は半分半分です。教育の世界でも「盲教育」と「弱視教育」はそれぞれの研究分野を確立しています。両方を合わせて「視覚障害教育」と理解していますので、いつまでも「盲学校」という校名にこだわらなくてもいいと考えています。あくまで個人の意見ということを申し添えますが。

視覚障害を広くとらえると、見え方に困難があるということ、発達障害などに起因する読み方や見え方に困難を抱える子どもたちへの支援についても、視覚障害教育が今まで培ってきたノウハウは必ず役に立つと思います。そういう困り感覚を持っている子どもたちも支援していく、守備範囲の広い学校をめざしていくのも有りではないでしょうか。

 

さて、個人の思いが少し強くなってきましたので、今日のオンライン函館大会に戻ります。大会は開閉会式、シンポジウムと全体指導という構成で、全体指導は文部科学省初等中等教育局特別支援教育課調査官の森田浩司先生による指導助言でした。シンポジウムのテーマは「新型コロナウイルス感染症対策と共存する学校経営の在り方」で、各校より事前に提出された感染症に係る取組状況等の資料を全盲長事務局長八王子盲学校の山岸校長先生が集約され、大会用資料として電子データで事前送付してくれました。今日は、パソコン画面の大会用資料を難しい顔をして確認しながら、脇においたオンライン用のタブレット端末には笑顔を見せるといった二つの顔を駆使しながら、各校長先生方からの話に聞き入りました。

シンポジウムでは、全盲長会長の木村校長先生が司会をされましたが、打ち合わせなしのリレー形式で、最初に指名された校長がランダムに次の発言者を指名するという方法でした。まず指名はないだろうと油断していましたが、山梨県立盲学校の成田校長先生より指名を受け、私も少し発言させていただきました。12名のみなさんが発言しましたが、気がついたら2時間ほど経過していました。

シンポジウムでの話、また送っていただいた各校の取組状況の資料を読んでいろいろ勉強になりました。感染拡大の地域差により、臨時休業の期間や対外行事等の実施についてはやや違いがみられますが、衛生面を中心とした対策は、どの学校もほぼ同じような取組がなされています。また、ほとんどの学校には「あんま・はり・きゅう」を学ぶ理療に関する学科が設置され、臨床実習という授業の形で校外から患者さんを受け入れ施術していますが、自粛期間中には、全ての学校が患者受け入れを中止していました。しかし、9月以降徐々に受け入れを再開する学校が増えてきている状況です。ちなみに本校の状況ですが、患者を受け入れるための感染症対策ガイドラインを作成し準備は進めていますが、生徒の技術がまだ十分でないという判断で受け入れはできていません。また準備ができればホームページ等でお知らせします。

学習面については、感染症による臨時休業があったがゆえに、オンラインによる授業や盲学校間のオンライン交流が展開できたという話題など、教育活動が制限された中にあっても新しい発見と取組がなされていることが分かりました。安直に「災い転じて福となす」というのも憚られますが、ウイルスとの共生・共存をもっと前向きに捉え、今後の可能性を明るく考えていきたいなぁと思いました。

全体指導では、森田調査官より国の方針等の全体的な説明をいただきましたが、本来でしたら6月の全国盲学校長会、そして今回の全盲長秋季大会と二度に分けて説明する内容を、加えてコロナ対策の内容もありましたので、これを1時間で要点を絞って話すのは大変だったと思います。総じて感じたのは、この感染症は教育界の変化を加速化させたということです。中央教育審議会特別部会の中間まとめの資料の中に、「日本型学校教育」は世界から高い評価を受けているとの表現がありましたが、これは現場の先生方の「子どもたちのために」という献身的な努力があってのことです。学校現場出身の森田調査官は十分わかっていただいていると思いますので、今後とも学校現場のために頑張ってほしいと思います。

まとまりのない拙い文章になってしまいましたが、今日の思いは今日のうちに…。また、全盲長の先生方に直接お会いできる日を楽しみにしています。今日は大変お世話になりありがとうございました。

 

令和2年10月9日

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(9月26日付)

2020年9月26日 18時56分

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<第1回目の学校公開(授業参観)を実施しました>

 

9月26日(土)、今年度第1回目の学校公開(授業参観)を開催しました。盲学校の‟今“を広く一般のみなさまにも知っていただく機会として、第1回目は9月下旬頃、第2回目は1月下旬頃に毎年開催しています。今年はご多分に漏れず、コロナ禍という如何ともしがたい状況ではありましたが、保護者も含めた来校者全員の健康チェック、検温、手指消毒、氏名や連絡先等の記入など十分な感染症対策に取り組むことで実施することといたしました。

公開の時間帯は、1時間目から6時間目までの8時45分から1515分の間、全ての授業を見ることができます。ただし、外来患者の予約があった場合の保健理療科、理療科の臨床実習は非公開としています。(今年度はまだ外来患者の受付はしていませんが)学校公開日は保護者のみなさまの授業参観日でもあり、自分のお子さんだけでなく、他学部の授業も参観できるとあって、ほとんどの保護者が参加してくれています。同時に希望する保護者を対象とした給食試食会も開催し、感染症対策もしながら美味しい給食をいただきました。学校公開ですから希望があれば併置する寄宿舎も見学可能で、そこで生活する児童生徒の様子もパネルで展示しています。また、視覚障害のある人が、生活したり学習したりするうえで役に立つ「便利グッズ」の展示と職員による生の紹介も行っています。この「便利グッズ」コーナーは、年がら年中常設の展示スペースを設けており、資料館とまではいきませんが、新しい「便利グッズ」が発売されたりすると、展示に加えるなど情報を更新しています。

 

さて、今日の学校公開、本校保護者のみなさんがご兄弟も含めて25名、保護者以外の方々が48名来校してくださいました。コロナ禍の中ですので、保護者以外の参加はほとんどないのかも…と想像していましたが、例年にない参加者数になりました。48名のうち、約半数の23名が坂出高等学校の教育創造コースの生徒のみなさんでした。坂出高校の教育創造コースは、将来、教員をめざす生徒を育てることを目的に、平成29年度に新設された課程です。1年次から教職への理解を深めるための大学教員による授業や、小学校での体験活動などに取り組んでいるそうです。今日来校された生徒のみなさんは、初めての盲学校参観だったようで、どなたもたいへん熱心に参観し、感じること、考えたことも多かったようです。そのほか、教育関係者や福祉関係者の方々、次年度に本校への就学を考えてくれている小学生とその保護者の方など、たくさんの方々に参観いただきワクワクした一日になりました。

 

参観後、来校者のみなさまにアンケートを書いていただきました。すべて読ませていただきましたが、初めて盲学校を見学した高校生からのアンケートがとても印象的でした。盲学校では一人一人の状態に合わせて様々な工夫がなされて教育活動が行われていること、先生方が明るく授業の雰囲気が良かったなどの感想が複数ありました。特別支援学校では当たり前に行われている個別の支援や指導について、高校生には新鮮であったようです。また、UDブラウザを使ったタブレット端末による授業を見て、私たちも授業で使えるようになればいいのに…との感想もありました。

学校というところは、温かい雰囲気の中で、生徒が教師を信頼し、教師も生徒の可能性を信じるというお互いの信頼関係と安心感の土壌があって、生徒の学ぶ意欲や姿勢が育ち、それにより教師も人間的に成長していくと考えます。将来教員を目指す生徒のみなさんが、今日の参観によってそのことを肌で感じることができたのであればうれしく思います。

 

令和2年9月26

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ(9月18日付)

2020年9月18日 11時35分

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<校内グループ研修を行いました>

 

9月17日(木)の放課後、校内グループ研修がありました。本校では、教員の「現職教育」として、寄宿舎の先生も含めた全教員が年間をとおして複数の研修グループに分かれ、月に1回程度、放課後に研修の時間を設けています。グループの研修内容等については年度ごとに見直していますが、今年のグループは「歩行指導」「点字指導」「情報支援機器」「(視覚障害者)スポーツ」「重複障害教育」の5グループです。いずれも盲学校らしいグループの名称で、盲学校にとって必要不可欠な教育をテーマに研修が行われています。

今日の校内グループ研修は、毎月のグループ研修とは別に開催されました。テーマは『重複障害のある子どもの図画工作~主体的に関われる造形活動~』。小学部の新進気鋭の若手教員2名が2年間の研究成果を発表しました。実はこの研究、本年7月30日から31日にかけて松山市で開催されることになっていた「第95回令和2年度全日本盲学校教育研究大会」(通称:全日盲研)で、中国四国地区代表として実践報告される予定になっていた内容でした。全日盲研は毎年全国各県持ち回りで開催されており、昨年度の第94回京都大会では470名を超える参加者があるなど、視覚障害教育に携わる教員等にとっても全国最大規模の大会です。95回ということは、95年以上続いている研究大会であり盲学校での教育の歴史を感じるところですが、やはり今年は感染症拡大防止を理由にやむなく中止となりました。主管校であった愛媛県立松山盲学校の先生方には、早くから準備を進めていただき、いざ本番という矢先にこの状況となったこと、心中察するに余りあります。中国四国地区として協力校でもあった本校も、大変残念でした。

こうしたことから、せっかくの研究成果を校内で共有しようと、この研修の実施となりました。

研究に取り組んだのは小学部重複学級の図工の授業で、個性豊かな児童3名が在籍する学級です。平成30年度・令和元年度の2年間、図工の中でも「造形」活動に焦点を当て、子どもたちの成長と先生方の試行錯誤の様子がよく分かる実践発表となりました。盲学校では、目が見えない、見えにくい子どもに対して、積極的に触覚が活用できるように指導します。でも想像してみてください。目隠しした状態で、知らないモノを触るには結構勇気が必要です。触るモノに対する知識を自分が持っていれば、躊躇なく触ることができますが。未知のモノを既知のモノにしていくこと、そのモノの概念を子どもたちの中に作り上げていくことが様々な学習を進めていく上でとても大切になってきます。この実践、まず子どもたちにモノを触ることへの安心感を与え、感覚的な遊びの段階を踏まえてモノに対する概念を形成し、造形活動による表現力の育成にまで高めることができました。一人の児童は、自分の作品を家族に見せたい、作品を説明したいと鑑賞を楽しむまでに成長していることも報告されました。子どもたちのこれからますますの成長が期待できます。研究発表に向けて一生懸命取り組んだお二人の先生に、改めて拍手を送るとともに、発表を支えサポートしてくれたベテランの先生方にも感謝したいと思います。

学校というところは、よく閉鎖的と言われます。たぶん学校での取組についての発信が十分でないのかもしれません。でも、先生方は目の前の子どもたちのことを一番に考え、日々悩みながら一生懸命に努力しています。これからも、生徒の成長や先生方の頑張りを(校長目線かもしれませんが)発信していきたいと思っています。

 

令和2年9月18

香川県立盲学校長 田中 豊

校長からみなさまへ

2020年9月7日 12時42分

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ALTの先生が来校しました>

 

9月7日(月)の午後からALTAssistant Language Teacher)の先生が来校し、「コミュニケーション英語」の授業に取り組んでいただきました。ALTの先生が、中・高等学校で英語の授業補助を行うようになったのは1987(昭和62)年からで、「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」という国際交流事業として始まりました。詳しくは一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR/クレア)のホームページ【http://www.clair.or.jp/index.html】を読んでいただければと思いますが、この制度が始まってもう34年目になるということです。平成23年度から実施された小学校の学習指導要領に「外国語活動」が位置づけられてからは、小学校にもALTの先生が訪問するようになっています。

さて、今日来ていただいたのは、Geraldine Repolidonさん(ご本人は『ジー』と呼んでくださいと言っていました)というフィリピン共和国出身の女性の方で、本校に来ていただくのは初めてでした。初めてのALTの先生が来られる時には、スーパーバイザーの先生が同行してくれるとのことで、トニー先生というベテランの先生も一緒に来てくれました。アメリカ出身のトニー先生は本校3回目の訪問だそうで、日本に住んで18年、日本語も流暢に話されていました。

本校のALTによる授業は、月に1回、学部を併せての授業として行っています。学部や学年をまたいでいますので、教科書は使わず、各ALTの先生方がオリジナルの教材を準備し、英語によるコミュニケーションの楽しさを味わうことを目標として取り組んでいます。普通校のように、ALTの先生に毎週来ていただくことは難しく、ジーさんも普段は高松高校での授業が主で、週1回は志度高校にも出かけているとのことでした。

今年度は感染症の影響もあり、今回が年度初めての授業となりました。今日の授業に参加したのは、英語の授業を受けている小学部6年生1名、高等部普通科2年1名、3年1名、保健理療科2年1名の計4名でした。授業の様子を教室の外から少しだけのぞかせてもらいましたが、笑顔と笑いと拍手が起こる、とても楽しそうな授業でした。授業のテーマは「Show and Tell」、自分の好きなもの、得意なものなどをお互いに紹介し合うことから始まったようで、ジーさんは得意な歌を、トニーさんはエレキベースを持参しての生演奏と、場を盛り上げてくれたようでした。生徒にはそれぞれタブレットを用意し、ジーさんやトニーさんが準備した写真なども手元で拡大して見ることができるよう配慮していました。生徒にとって、生きた英語を学べる大変貴重な時間でした。

授業が終わったあと、ジーさんとトニーさんには校長室に来ていただき、本校の英語担当の先生と4人で授業の振り返りと次回の打ち合わせという名目で、しばらく歓談をしました。ジーさんは日本に来てまだ半年、コロナ禍の渡航制限がかかる前ぎりぎりで日本に来ることができたそうです。ジーさんはまだ日本語が十分でないようで、私も英語での会話にチャレンジしようとちょっとだけ心構えをしていたのですが、トニーさんがあまりに流暢な日本語を話し、ジーさんにさっと英語で通訳してくれるので、そこでの会話はほとんど日本語になってしまいました。思い切りの足りない自分が情けなかったですが…。

歓談の最後に、ジーさんに将来の夢を聞いてみました。ジーさんは、日本で働いて日本で家庭を持つこと、そして家族を日本に招待したいとキラキラした瞳で話してくれました。日本はいい国、魅力的な国であると評価してくれているようで、うれしく思いましたが、日本に住んでいる我々日本人は、日本という国をどう捉えているのでしょう。これからどういう国にしたいのでしょうか。自戒も含めてですが、決して人任せにはせず、我々一人一人がよく考え行動しなければとあらためて思いました。

 

令和2年9月7日

香川県立盲学校長 田中 豊