校長からみなさまへ

校長からみなさまへ(3月10日付)

2021年3月10日 15時48分

香川県立盲学校のWebサイト(ホームページ)をご覧いただき、ありがとうございます。

 

<令和2年度 卒業証書授与式を挙行しました>

 

3月10日(水)、令和2年度の卒業証書授与式を挙行しました。今年度は小学部2名、高等部普通科3名、合計5名が晴れて卒業の日を迎えることができました。朝から春を告げるような暖かい光が体育館に差し込み、用意してあったストーブを稼働することもありませんでした。感染症対策として開放した2階の窓からも、春を感じるやさしい風が時折カーテンを揺らしながら、門出の日を祝ってくれているようでした。

当日はKSB瀬戸内海放送から取材が入りました。1年半ほど前、盲学校に興味を持たれていたKSBの記者さんと知り合いになりました。盲学校に赴任したばかりの私も、本校の教育活動をもっと広く皆さんに知っていただきたいという強い気持ちもあり、取材に来てもらうこととなりました。それからのご縁です。その時に制作してくれた番組は、学校の様子だけでなく本校の卒業生も取材し、あん摩マッサージ指圧師鍼師灸師(通称:あはき師)として活躍している丸山さんや、県庁正規職員として頑張っている三野田さんの働く姿もあわせて盛り込まれ、昨年2月18日夕方のKSBスーパーチャンネルで6分半程度の特集『盲学校は今』として放映されました。この番組で紹介された高等部卒業生の山本華さんが、この春卒業しますよと記者さんにお伝えしたところ、ぜひ卒業式の様子を取材させてほしいという話になり、カメラマンの方を伴っての来校となりました。

 

さて、式は予定通り午前10時から、厳かな雰囲気のなか始まりました。来賓はPTA会長様と学校評議員様のみに限らせていただきましたが、在校生、教職員も全員が体育館に入り、あとはほぼ例年どおりの式次第で行いました。これも少人数の学校だからこそ可能なことで、ありがたいことです。式の準備の段階ではできるだけ時間を短縮しなければということから、校長式辞や来賓祝辞、送辞や答辞なども短くすることが検討されましたが、卒業生の思い、在校生の思いも強く、それぞれが自分の言葉で綴った思いの丈を短くするのは忍びない、そのままいこうということになりました。校長式辞も、思いの丈をしっかりと伝えさせてもらいました。

式の最初は卒業証書の授与、5名一人一人に手渡しました。続いて校長式辞。その中で卒業生へのはなむけの言葉として私が話をしたのは、これからの生き方、行動の在り方についてであり、こんな話をしました。

 

『さて、卒業するみなさんには、これからの信条として、心にとめておいてほしい、人としての三つの生き方について話をします。

一つ目は、自分の可能性を信じ、主体性のある生き方。

二つ目は、相手の幸せを考えて、正義感と勇気と思いやりの心をもって行動する生き方。

三つめは、連帯し協力し合う生き方です。

人間は、自然界の中では弱い存在であることが、件の感染症により改めて明らかになりました。弱い存在だからこそ、横へのつながり、縦へのつながりを広げていって、しっかりと織られた布のように強く団結していきたい。分断があってはなりません。

そして、連帯し協力し合うには、自分の幸せも考えるが、相手の幸せも考えられる、相手に思いを致す心が必要です。一方で、正しいことは正しい、間違っていることは違うといえる勇気も必要です。勇気のある行動をするためには、自分に自信を持つ、自信というのは自らの可能性を信じるということから始まります。自信ができれば、人生は主体的に生きられます。どうぞ、諦めないで行動してください。』

 

月並みで判り切っている内容かもしれませんが、言葉に出して唱えることで日々の生活が変わり、だんだんと生き方や行動もそれに沿ったものになっていく。これから彼ら彼女らが遭遇するであろう様々な困難や試練に立ち向かわなければならないとき、そういえば校長がこんなことを言っていたなぁと少しでも心に留めておいてくれたらうれしく思っています。

次にPTA会長山本さんから祝辞をいただきました。その言葉がまた素晴らしかったので、一部紹介します。

 

『でも、大人も失敗します。それに偉い人ほど失敗が多いのです。それは誰よりもチャレンジしているからです。だから卒業生の皆さん、失敗を恐れず新しいことにチャレンジして、頑張っている自分を褒めてあげましょう。』

『生きていくうえで、私が一番大切だと思っていることは「バランス」です。自分にとってちょうど良い加減と、相手にとってちょうど良い加減。一生懸命も大事だけれど頑張りすぎると疲れます。たまにはいい加減になることも大事です。食べることや寝ることも同じです。バランスが崩れると体調も悪くなります。平均台でバランスをとるように少しずつ前へ進み、落ちてもまた、そこからやり直せばいいのです。変化を恐れず、様々な変化に柔軟に対応できるバランス感覚を身につけていってください。』

 

分かりやすくてたいへんいいお話に私も感動しましたし、卒業生たちもきっと勇気づけられたことでしょう。大概の失敗はやり直せるもの。やらないで後悔するより、とりあえずやってみようという気持ちと行動を支えてくれる、一人の親御さんとしての温かい心を感じました。

在校生代表による送辞、卒業生代表山本華さんの答辞も、5名の卒業生一人一人の思いをしたため、とても感動的なものでした。本校で学べたことへの感謝の言葉、何よりも私たち教職員にとっての褒美であることが改めて心にしみました。


 では、卒業生のみなさん、特に本校を離れることとなる高等部を卒業する3名のみなさん、まずは健康で、
自分だけしか歩めない自分の人生を、自分らしく胸を張って生きてください。

みなさんのこれからに、幸多かれと願っています。

それから…、困ったことがあってもなくても、いつでも学校においで‼

 

令和3年3月10

香川県立盲学校長 田中 豊

 

<補足>

※本校の卒業式の様子が、3月10日(水)2054分からのKSB瀬戸内海放送のニュースで流れました。見逃した方は、下記URLにて視聴できます。よろしければご覧ください。

 

https://www.youtube.com/channel/UCH9jlbggZY_mRx7Q0k49TuQ