校長からみなさまへ

校長からみなさまへ(10月9日付)

2020年10月9日 20時41分

香川県立盲学校のWebサイト(ホームページ)をご覧いただき、ありがとうございます。

 

<全国盲学校長会秋季研究協議会函館大会(オンライン)が開催されました>

 

今日は全国盲学校長会(愛称:全盲長)について、少しご紹介します。

 

今年度の全国盲学校長会秋季研究協議大会が、10月9日(金)の午後からオンラインで開催されました。当初の計画では、10月8日~9日の2日間にかけて北海道函館の地で開催される予定でしたが、やはりこのご時勢、全国各地から函館に集合するということが難しく、10月9日の午後に期間を短縮し、オンラインにより一部の内容に限定して実施することとなりました。

主管校の函館盲学校を始め旭川盲学校、帯広盲学校、札幌視覚支援学校の北海道地区4校の校長先生方、全国盲学校長会会長の文京盲学校木村校長先生はじめ事務局の校長先生方が、何とか函館で開催できないものかと8月初旬まで検討してくれましたが、各校の安全・安心な学校運営を考え、現地での開催は断念することとなりました。

しかし、「顔の見える全盲長」がこの校長会のいいところですので、Web上での開催を検討準備していただき、大会当日まで2回の接続確認の機会、10月5日にはプレ大会の開催ということで、2時間ほどの情報交換等の時間を設けてくれました。プレ大会では、校務の都合で全員の先生方が参加することは難しかったようですが、全国盲学校長会会員67名のうち38名の校長先生が参加され、参加者一人ずつの自己紹介と簡単な現状報告から会が始まりました。昨年1010日、11日に長崎市で開催された全盲長秋季大会で親交を深めた先生方の元気そうなお顔も拝見でき、プレ大会とはいいながら、もうすでに本番の大会が始まっているようなワクワクした気持ちになりました。

 

全国の盲学校(視覚支援学校)は県立63校、市立2校、大学附属1校、私立が1校となっています。公立・市立65校のうち、「盲学校」または学校名に「盲」という文字が入っている学校は42校、「視覚(特別)支援」が校名にある学校は17校、校名変更により「盲」、「視覚」の文字は無くなりましたが、視覚障害部門だけの学校が2校、知的とか肢体不自由とか複数の障害に対応する部門を設けている学校が4校となっています。徳島視覚支援学校は徳島聴覚支援学校と併置されており、両校で校長先生は一人という学校もあります。大学附属も私立の学校も視覚障害教育単独校で、全国的にみても単独校がほとんどです。盲学校という校名を残している学校の割合も、6割を超えています。長年親しまれてきて、100年以上の伝統と歴史のある「盲学校」という校名ですが、私個人としてはそろそろ変更したほうがいいかなと思っています。100年以上の歴史があるにもかかわらず、世間一般的には「全く目が見えない人の学校」という印象が今でもあるように感じます。幼児児童生徒数の少ない本校でさえ、全盲の生徒と弱視の生徒の割合は半分半分です。教育の世界でも「盲教育」と「弱視教育」はそれぞれの研究分野を確立しています。両方を合わせて「視覚障害教育」と理解していますので、いつまでも「盲学校」という校名にこだわらなくてもいいと考えています。あくまで個人の意見ということを申し添えますが。

視覚障害を広くとらえると、見え方に困難があるということ、発達障害などに起因する読み方や見え方に困難を抱える子どもたちへの支援についても、視覚障害教育が今まで培ってきたノウハウは必ず役に立つと思います。そういう困り感覚を持っている子どもたちも支援していく、守備範囲の広い学校をめざしていくのも有りではないでしょうか。

 

さて、個人の思いが少し強くなってきましたので、今日のオンライン函館大会に戻ります。大会は開閉会式、シンポジウムと全体指導という構成で、全体指導は文部科学省初等中等教育局特別支援教育課調査官の森田浩司先生による指導助言でした。シンポジウムのテーマは「新型コロナウイルス感染症対策と共存する学校経営の在り方」で、各校より事前に提出された感染症に係る取組状況等の資料を全盲長事務局長八王子盲学校の山岸校長先生が集約され、大会用資料として電子データで事前送付してくれました。今日は、パソコン画面の大会用資料を難しい顔をして確認しながら、脇においたオンライン用のタブレット端末には笑顔を見せるといった二つの顔を駆使しながら、各校長先生方からの話に聞き入りました。

シンポジウムでは、全盲長会長の木村校長先生が司会をされましたが、打ち合わせなしのリレー形式で、最初に指名された校長がランダムに次の発言者を指名するという方法でした。まず指名はないだろうと油断していましたが、山梨県立盲学校の成田校長先生より指名を受け、私も少し発言させていただきました。12名のみなさんが発言しましたが、気がついたら2時間ほど経過していました。

シンポジウムでの話、また送っていただいた各校の取組状況の資料を読んでいろいろ勉強になりました。感染拡大の地域差により、臨時休業の期間や対外行事等の実施についてはやや違いがみられますが、衛生面を中心とした対策は、どの学校もほぼ同じような取組がなされています。また、ほとんどの学校には「あんま・はり・きゅう」を学ぶ理療に関する学科が設置され、臨床実習という授業の形で校外から患者さんを受け入れ施術していますが、自粛期間中には、全ての学校が患者受け入れを中止していました。しかし、9月以降徐々に受け入れを再開する学校が増えてきている状況です。ちなみに本校の状況ですが、患者を受け入れるための感染症対策ガイドラインを作成し準備は進めていますが、生徒の技術がまだ十分でないという判断で受け入れはできていません。また準備ができればホームページ等でお知らせします。

学習面については、感染症による臨時休業があったがゆえに、オンラインによる授業や盲学校間のオンライン交流が展開できたという話題など、教育活動が制限された中にあっても新しい発見と取組がなされていることが分かりました。安直に「災い転じて福となす」というのも憚られますが、ウイルスとの共生・共存をもっと前向きに捉え、今後の可能性を明るく考えていきたいなぁと思いました。

全体指導では、森田調査官より国の方針等の全体的な説明をいただきましたが、本来でしたら6月の全国盲学校長会、そして今回の全盲長秋季大会と二度に分けて説明する内容を、加えてコロナ対策の内容もありましたので、これを1時間で要点を絞って話すのは大変だったと思います。総じて感じたのは、この感染症は教育界の変化を加速化させたということです。中央教育審議会特別部会の中間まとめの資料の中に、「日本型学校教育」は世界から高い評価を受けているとの表現がありましたが、これは現場の先生方の「子どもたちのために」という献身的な努力があってのことです。学校現場出身の森田調査官は十分わかっていただいていると思いますので、今後とも学校現場のために頑張ってほしいと思います。

まとまりのない拙い文章になってしまいましたが、今日の思いは今日のうちに…。また、全盲長の先生方に直接お会いできる日を楽しみにしています。今日は大変お世話になりありがとうございました。

 

令和2年10月9日

香川県立盲学校長 田中 豊