校長からみなさまへ

校長からみなさまへ(10月30日付)

2020年10月30日 15時08分

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<高松市立新番丁小学校の児童が本校にやってきました>

 

1029日、30日の2日間にかけて、新番丁小学校5年生の子どもたちが本校を訪問し、学びの機会を持ちました。新番丁小学校の5年生は4クラスあるそうで、それを半分に分けて66名ずつの児童がやってきました。新番丁小学校は本校に一番近い小学校で、本校小学部児童も新番丁小学校に伺って、クラブ活動などの時間に参加させてもらうなど以前から交流を深めています。今回の訪問は、5年生の「総合学習(総合的な学習の時間)」の授業としての取組で、視覚障害をメインにしてバリアフリーやユニバーサルデザインなどについて学ぶというのが目的です。

 

「総合的な学習の時間」というのは、平成14年から実施された学習指導要領に初めて登場し、「総合的な学習の時間においては、各学校は、地域や学校、児童の実態等に応じて、横断的・総合的な学習や児童の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うものとする。」と示されました。平成14年といえば学校完全週5日制が実施された年で、いわゆる「詰め込み教育」から「ゆとり教育」への転換の年でもありました。総合的な学習の時間の内容については、「例えば国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的・総合的な課題、児童の興味・関心に基づく課題、地域や学校の特色に応じた課題など」とだけ示され、基本的には各学校の裁量に任されています。小・中・高とそれぞれの成長段階に応じたテーマで取り組むことにより、子どもたち自身が自分の生き方を見つける、時には運命を変えるくらい可能性のある時間になると私は考えています。(補足:最新の学習指導要領では、高校(高等部)については「総合的な探究の時間」という名称に変わっています)総合的な学習の時間の在り方については、創設当初から現在までゆとり教育に絡めて様々な議論がなされ、時間数の減少など紆余曲折もありましたが、脱ゆとり教育に舵を切った現在にあっては、今後も大切にしたい授業だと個人的には思っています。

 

さて、新番丁小学校5年生の子どもたち、みなさんとても礼儀正しく、挨拶もはきはきとできており素晴らしい。3グループに分かれ、授業の様子や支援グッズ展示コーナーの見学、アイマスクをつけて手引きの体験をしました。にぎやかに真剣に取り組んでくれました。バインダーに挟んだメモ用紙に一所懸命書き込んでいる子どももたくさんいて、すごいなあと感心しながら、本校での見聞や体験が、この子どもたちの今後の人生にどんな影響を与えるのだろうかとしばし考えました。以前、旧四番丁小学校で開設している「しうんまんまる広場」という子ども食堂に、縁あってお邪魔したことがあります。そこで一人の中学生と出会い、私が盲学校に勤務していることを伝えると、「小学校の時に行ったよ」と新番丁小学校時代に本校に来たことを笑顔で話してくれました。彼にどうだった?と聞くと、「(目が見えないのは)大変だなあと思った」と、心に留めてくれていたようで少し嬉しい気持ちになったことを思い出しました。

 

感性や記憶というのは人それぞれ、来校した130名あまりの子どもたちも感じ方や思いは様々です。小学校に戻ってから昨日今日の振り返りやまとめをすると思いますが、本校で一人一人が感じたこと、心に残ったことを画一的なフレームの中に押し込めることなく、子どもたちの様々な感性や思い、考えをつないで、知的創造が広がるような素敵な時間や空間をつくってくれたらいいなぁと思います。

 

令和2年1030

香川県立盲学校長 田中 豊