校長からみなさまへ

校長からみなさまへ(12月17日付)

2020年12月17日 16時32分

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<人権講演会を開催しました>

 

1216日水曜日、「絆創膏の会」代表の大湾 昇さんを講師としてお招きし、人権講演会を開催しました。本校児童生徒だけでなく、保護者、教職員も対象とした研修の場でした。

講師の大湾さんは、徳島県の出身、地元の市の教育委員会で学力向上支援指導員としてのご勤務などを経て、今では全国各地で同和問題を中心とした様々な人権課題について積極的に講演活動をされています。当日の午前中は農業経営高校での講演を終え、午後から本校に来てくださいました。

講演テーマは『あることをないことにしない』。今日は人権や同和問題についてのお話でしたが、このテーマを聞いて、今の世の中、万人が見ても実際にあったのではないかと思われることが、さも無かったことのように、うやむやのまま、腑に落ちないまま流れていくことがあまりに多いように感じます。白黒はっきりさせることがすべてよしとは思いませんが、ついつい疑念を抱いてしまいます。

 

さて、大湾さんの講演の内容について、この紙面で詳しくお伝えすることは難しいですが、「無知」や「無関心」がいかに怖いことであるか、想像力が欠如すると知らない間に人を傷つけてしまっている、そしてそれにも気づかない人間になってしまうこと。おかしいなと疑問に思ったことをそのままにしないこと。ご自身の体験や生きざま、全国の講演で出会った中学生や高校生の話を織り交ぜながら、大きな熱量をもって私たちに語ってくれました。児童生徒とのやり取りも楽しく、あっという間の90分でした。講演の最後は「絆創膏の会」の名前の由来のお話。大湾さんはある学校の保健室の先生(養護教諭)から、「けがをして保健室にやってくる子どもたちは絆創膏を貼ると安心する」という話を聞いて、絆創膏の意味を考えたそうです。絆創膏は傷の手当だけでなく、心の手当てもしてくれる、傷を負った子どもに目に見える、触って分かる安心感を与えてくれる、気軽に誰もができる人への思いやりが絆創膏には詰まっている。そんな絆創膏のような存在になりたいとの思いから、名付けたとのことでした。

講演会は密集を避けるため、会場は体育館とし窓を開けてスタートしました。ストーブは4台用意しましたが、あいにく当日は日本中に寒波到来、高松も初雪が観測されるなど今年一番の冷え込みでした。あまりの寒さに途中に窓を閉めたりもしましたが、大湾さんは、講演の冒頭から半ズボン姿で着席していた児童がずっと気になっていたようで、話の合間には「大丈夫?寒くないかい」と声を掛けてくれていました。そして、講演途中の短い休憩時間に、自分が来ていたダウンジャケットを脱いで、「膝にかけとこう」とその児童に手渡してくれていました。子どものことを考えると、居ても立っても居られない、その気持ちを行動に移す大湾さんの心根の優しさと心遣いに感服させられるとともに、気づいていても行動できなかった私たち周囲の教員の行動力の鈍さを、とても恥ずかしく思いました。子どもたちの「絆創膏」にはなれていなかったことを、改めて反省しました。

 

講演が終わった後、校長室でしばらく談話の時間をいただきました。会話の中で大湾さんがぽろっと「本当は学校の先生になりたかった」という話をしてくれました。私は今からでも遅くないと言おうと思いましたが、その言葉を飲み込みました。今の大湾さんは、余人をもって代えがたい素晴らしい教師であり、学校という枠の中には納まらない今の活動を、もっともっと全国の子どもたちに届けることが大湾さんの使命だと勝手に納得しました。学校を発つ前には、もう一度生徒の顔が見たいと言って、音楽室で楽器の練習をしていた3名の高等部生徒と会い、励ましの言葉を。やっぱり子どもが好きなんだなあと感心しました。

 

今日17日は、三重県名張市の中学校で講演をするとのこと。またたくさんの生徒の心に絆創膏を貼ってくれることでしょう。大湾さん、ありがとうございました。

 

令和2年1217

香川県立盲学校長 田中 豊