校長からみなさまへ

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2020年6月25日 09時29分

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<第1回かがわロービジョン研修会を開催しました>

 

今週初め6月22日の午後から、コロナ禍で延期していた「第1回かがわロービジョン研修会」を開催しました。昨年度までは、「弱視教育担当者研修会」の名称で本校のセンター的役割を担う視覚障害教育支援センター(見えにくさと学びの相談センター)が中心となって、県内の弱視学級を担当する先生方を主な対象として、視覚障害教育の専門性をお伝えすべく年間3~4回ほどの研修会を開いてきました。しかし、この研修会も年々回を重ねるうち、教育だけでは解決できない課題がたくさんあることが分かり、医療、福祉等の関係する方々だけでなく、本校生徒も含め弱視のある児童生徒、社会で活躍する当事者にも参加して話をしていただくなど、中身を発展させてきました。こうしたことから、今年度新たに研修会の名称を「かがわロービジョン研修会」に変更し、学齢期から社会参加後まで途切れることのない支援体制をつくるための学習の場、連携の場を目指すこととしました。

 

因みに、ロービジョン(Low Vision)とは、何らかの原因により視覚に障害を受け、見えにくさのために日常生活において不自由さをきたしている状態を指します。元々医学用語として使用されてきた弱視とほぼ同じ意味で使われています。

 

当日は、小学校から2名、高等学校から3名の先生方、医療の立場から、かがわ総合リハビリテーションセンター病院の眼科医の先生、福祉の立場から、香川県視覚障害者福祉センターで歩行訓練や生活支援を担当している職員の方、そして本校の担当者が参加しました。最初は「視覚障害のある子どもの理解と支援」と題して、本校教員より教員向けのお話をしました。そのあと、香川県視覚障害福祉センターの紹介と相談事例の紹介がありました。

福祉センターの方の相談事例をとおして考えさせられたのは、「障害受容」ということでした。視覚障害に限らず、人間の身心を考えたときに、身心の一部の機能が著しく低下して、今まで誰の援助もなく普通にできていたことが急にできなくなる、それが医療等によっても改善する見込みがない場合、その状態を素直に受け入れられるかということです。正直、自分がそのような状態になったとき、それをすぐに受け入れられるか、自信はありません。教師として過去の自分を振り返ってみたとき、障害のある生徒たちに対して「自己理解」や「自己受容」の大切さのみを前面に出して、それを乗り越える努力が当然のことのように生徒と向き合ってきたのではないかと考えさせられました。確かに自分の苦手なことやできないことを理解して、その後の人生を歩んでいくことは大切です。得意なことやできることに視点を当て、その力を伸ばし、本人に自信をつけることで、生徒たちは社会参加を果たしてきたと思ってきましたが、果たして本当にそうだったのでしょうか。「自己受容」をしても安心して前に踏み出すことができる周囲の環境を、教師として整えることができていたのでしょうか。「障害受容」の話を聞きながら、何人もの生徒の顔が頭の中に浮かびました。

私の頭の中はこれくらいにして研修会の様子に戻しますが、センターの方の話のあと、眼科医の先生より、眼科を受診してから学校も含めた関係機関につないでいくまでの流れについて、事例をもとにお話がありました。また、ロービジョンケアのために医療、教育、福祉、行政等が連携して組織している『よつばネットかがわ』の紹介もありました。『よつばネットかがわ』については、次の機会に詳しくお話しします。

それから、本校若手教員によるUDブラウザの使用方法や申請方法などの説明も行い、最後には研修会参加の小学校、高等学校の先生方と本校職員との間で、各校に在籍するロービジョンの児童生徒のことについての情報交換がなされました。

第2回目の研修会は8月17日(月)、ロービジョンの当事者で愛知教育大学の特別支援教育講座で教鞭をとられている相羽大輔先生をお招きして、講演を中心に開催します。関係の皆さまには、追ってお知らせいたします。どんなお話が聞けるか、今から楽しみです。

 

令和2年6月25

香川県立盲学校長 田中 豊