校長からみなさまへ

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2020年7月17日 22時35分

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<「介護等の体験」に大学生2名が来校しました>

 

7月16日から2日間、徳島文理大学の学生さん2名が「介護等の体験」のため来校し、学んでいただきました。県下の各特別支援学校では、毎年「介護等の体験」の大学生を受け入れており、本校は2期に分けて4、5名の学生に来ていただいていますが、生徒数(学級数)の多い特別支援学校は、年間10名程度の学生を受け入れているところもあります。

そもそも「介護等の体験」とはなんでしょう。教員の皆さんや教員免許取得を目指す学生さんには説明するまでもないことですが、この制度をご存じない方のために少し説明します。

「介護等の体験」は、小学校教諭、中学校教諭の普通免許状を取得するために必要な大学の必修単位で、いわば大学の授業です。平成九年に法律第九十号として成立した「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律」(以下、省略して介護等体験特例法といいます)で、平成1041日に施行され、それ以降に小学校・中学校の教員免許を取得した先生方は、すべてこの「介護等の体験」を経験しているということになります。介護等体験特例法には、介護等体験の内容として「障害者、高齢者等に対する介護、介助、これらの者との交流等の体験」、介護等体験の実施施設として「特別支援学校又は社会福祉施設」その他省令で定める施設とされています。実施時期及び期間については、「十八歳に達した後、七日を下らない範囲」とされていて、7日のうち文科省の通達では特別支援学校で2日、社会福祉施設で5日が望ましいと示されています。制度ができて最初に「介護等の体験」を受けた先生も、教員になって約20年、この経験を生かして、学校の中心となって活躍している人も多いのではないかと思います。

そういえば約20年前、最初に「介護等の体験」という制度と言葉を聞いたときに、違和感を覚えた記憶があります。当時は香川中部養護学校に勤務していましたが、「介護」という表現に、ここは介護のための施設ではない、ここは学校で、我々教員は「教育」をしているという思いが強く、体験に来た学生に対して「介護」とは違うという意識づけにこだわっていたように思います。でも「介護」の「介」という字は、人を両方から二本の柱で支えるという意味や人同士のやり取りを仲立ちするといった意味の会意文字であり、「護」は守るです。「介護」と「教育」の違いにこだわっていた頃の私は、恥ずかしながら「介護」に対する偏見がありましたが、今は考えを改めています。「介護」と「教育」は唇歯輔車であり、お互いの役割を確認し協力し補い合うことで、支援の必要な人たちの人生を支えています。

さて、本校での体験ですが、年度当初は5月中旬の体育祭の日に合わせて実施の予定でしたが、今回の感染症による臨時休業で体育祭を中止にしたため、時期をずらし平常日2日間の実施となりました。2日間の主な内容は、視覚障害の理解のための講話、授業参観や授業参加、点字体験や歩行指導の体験など、学生さんたちにとって中身の濃い時間であったのではないでしょうか。1日目の5校時の時間帯には、高等部普通科生徒のうち大学進学を希望する2、3年生3名と、自由に対話をしてもらいました。大学生活についてまだ具体的なイメージをもちづらい本校生徒にとって、現役の大学生からキャンパスライフの話を聞くことは、大変刺激的で貴重な経験です。私も教室に入って一緒に話を聞きたかったのですが、盛り上がった雰囲気を壊してはいけないと思い遠慮しました。あとでその時間に入っていた先生に話を聞くと、大学生から自分は高校時代に勉強をしなかったので後悔している、後悔しないように今を頑張ってほしいと生徒たちにエールをいただいたとのこと。本校の生徒にも夢があり、お二人の大学生にも夢があります。若い人たちがそれぞれの夢をもって努力できる世の中をつくっていくのは、彼ら彼女らより先を生きる大人の責任でもあります。しかし、大人もその責任を負って苦労するばかりでなく、それぞれの夢に向かって生きることが大切です。若者たちに自分の夢を語り、夢の実現のために努力し続ける姿を見せられる大人でいたいなぁと、この2日間で感じたことでした。体験に来られた二人の学生さんが、本校で感じたこと学んだことを、これからの人生の糧にしていただくことを切に願っています。

 

令和2年7月17

香川県立盲学校長 田中 豊