校長からみなさまへ

校長からみなさまへ

2020年7月30日 10時57分

香川県立盲学校のWebサイト(ホームページ)をご覧いただき、ありがとうございます。

 

<校内弁論大会を開催しました>

 

昨日7月29日(水)の6校時に、校内弁論大会を開催しました。例年であれば5月の連休明けあたりに開催していましたが、感染症による臨時休業のため延期とし、この日の実施となりました。

 

全国の盲学校(視覚支援学校)では、毎年、学校ごとに弁論大会を実施しています。これは年に1回、全国盲学校長会と毎日新聞社の主催によって開催される「全国盲学校弁論大会」につながっているからです。全国盲学校弁論大会に出場するまでには段階がありまして、校内で最優秀弁論になった生徒は、全国7地区(北海道・東北・関東甲信越・中部・近畿・中国四国・九州)の予選大会に出場します。その各地区の予選大会で最優秀に選ばれた弁士が、全国盲学校弁論大会に出場する資格を得ることとなっています。

昨年度、東京都立文京盲学校で開催された全国盲学校弁論大会は、なんと88回目の大会でした。この大会が最初に開催されたのは1928(昭和3)年で、1923(大正12)年に起きた関東大震災から、東京が新しい都市計画に基づき、ほぼ復興した時代に重なります。太平洋戦争が激しくなった1944(昭和19)年から終戦、戦後にかけての3年間はさすがに中断したようですが、それ以外は毎年開催されています。昨年度の全国大会には、本校高等部2年生(当時は1年)のY君が中国・四国地区代表として出場し、「My True Self」と題した弁論を発表しました。Y君は昨年度の校内弁論大会で最優秀となり、鳥取盲学校で行われた中国・四国地区盲学校弁論大会に出場、参加した各校代表9名のなかで最優秀賞を獲得し、全国大会への切符を手にしました。全国大会では3位までの入賞には届かなかったものの、優秀賞をいただき、本人も大いに自信をつけました。

今年度の全国大会は岐阜盲学校で開催されることとなっていましたが、新型コロナウイルスには敵わず、戦中戦後を除いて初めての大会中止となりました。中国・四国大会は徳島視覚支援学校で行われる予定でしたが、この大会も全国大会に連動する形で中止となりました。中四国の大会も全国の大会も中止となって、校内の弁論大会についてもどうするかの議論はありましたが、高等部3年生の「ぜひ開催してほしい」という熱意もあり、実施することとなりました。

 

昨日の大会、出場した弁士は4名、高等部普通科の2年生が2名、3年生が2名という顔ぶれでした。昨年度中国・四国大会で最優秀賞を獲得し、全国大会に出場したY君も登場しました。この日ばかりは各弁士ともマスクを外し、感染症対策の予算で購入したサブロク板サイズのアクリルボードの前に立って、感情をこめながら熱弁を振るいました。

 

各弁士の弁論テーマは…

高2のM君『17歳になってがんばりたいこと』、高2のY君『日々是好日』、

高3のK君『共生社会を目指して』、高3のYさん『Help ~この気持ち届け~』

 

それぞれが、自分の思いを自分の言葉で、表現することができました。やはりリモートでは味わえない臨場感と感動があり、言葉の力って凄いなあとあらためて感じました。発表後すぐに別室で審査となりましたが、いずれの発表もそれぞれの良さがあり、なかなか甲乙つけ難い審査でした。結果、最優秀となったのは、自分の過去を振り返りながら、本校に入学して仲間ができ、徐々に自分の障害を受け入れることで前向きになり、自分が社会に役立つ人間になることで社会を変えようとの決意を語った弁論でした。最優秀賞の発表は、明日の終業式の前にある表彰式となっていますので、ここでは伏せておきます。

言葉は自分の思いを伝える一つの方法ではありますが、相手に思いを伝える方法は様々です。手話だったり、サインやシンボルだったり、身体の動きだったり。文字だったり、絵画だったり、音楽だったり…、芸術といわれるものを数えればまだまだたくさんあります。その人その人にとって得意な伝え方が理解されることで、コミュニケーションも広がります。自分の伝えたい思いが相手に伝わったとき、お互いに笑顔になります。それが自然につながっていく世の中になればなぁと思います。大会後、来春に卒業を迎える高等部3年生が、「やりきった」という、とても晴れやかな表情だったのが印象的でした。

 

明日はいよいよ1学期の終業式です。年度の初めから、感染症への怖れも十分に感じながら様々な対策をして学校運営に取り組んできました。振り返れば長かったなあというのが実感ですが、今までの教員生活にはない「有難い」経験をさせてもらいました。(何ごともポジティブに考えて‥)幼児児童生徒のみなさん、そして先生方も、今日まで健康で本校のめざす教育活動に取り組めたことが一番の感謝です。保護者のみなさまのご協力にも、深く感謝申し上げます。

いつもより短い夏休みとはなりますが、何もしないだらだらとした時間を過ごすことも大切だと思います。それぞれの方法でリフレッシュしていただいて、8月24日から始まる2学期の始業式に、元気な笑顔を見せてくれることを楽しみにしています。

ありがとうございました。

 

令和2年7月30

香川県立盲学校長 田中 豊