校長からみなさまへ

99回

2026年3月31日 15時00分

 今回が最後の掲載になります。広く一般の方に本校の特長を知ってもらうことや視覚障害に関する理解を深めてもらうことなどを目的として、「週に1回程度の掲載」を目標とし、スマホ1ページ分程度の分量で掲載を続けてきました。「毎回異なる内容で書くこと」にもこだわって、今回が99回目になります。自分が視覚障害教育に関わることが初めてであったため、一般の人への理解啓発よりも、自分の理解を深める効果の方が大きかったように思います。このように頻繁にHPの更新をしている校長は、私が知る限り他にはおらず、2年間続けられたことは自信にもなりました。また、〇〇のテーマの内容が好きですという感想をいただいたり、教員採用試験の参考になったとか、大学の先生が授業に活用しているという知らせは、大きな励みになりました。どこかで回数を調節して、きりよく100回にすることも考えましたが、100回にすると終わったような印象が強いので、あえて「99回」にして、もっとしたかったという不完全な気持ちを残しました。本校を離れても様々な機会に、視覚障害に対する理解が深まるように取り組んでいきたいと思います。このコーナーを読んでくださった方、ありがとうございました。では、さようなら。  香川県立視覚支援学校 校長 池田達治

なんや、見えとんのか!

2026年3月27日 11時55分

 この度の人事異動で本校を転出することになりました。そこで、2年前に本校に赴任した年度当初の校内研修で聞いたことで、悲しすぎてこのコーナーに書くことをずっとためらっていたことを書きます。視覚障害者といえば、一般の人の多くは全く見えない「全盲」の人を思い浮かべると思います。ところが実際は、視覚障害者の8割くらいが見えにくさを抱えている「弱視」の人です。弱視の人の見え方は様々で、見えている範囲(視野)が狭かったり、視野全体に霧がかかったように見えたりと人によって異なります。遠くは全く見えないが近くの物はぼんやりと見えるような人も、安全に歩くためには白杖が必要です。そんな人に向かって自転車に乗った人が近づいてくる場合、弱視の方はぶつかると思うくらい自転車が近くに来て初めて気が付くことになります。自転車をよけようと車道側に動いたとき、自転車の方も車道側によけるつもりでいたとします。そうするとぶつかりそうになるわけです。そんなときに、心無い人が「なんや、見えとんのか!(あんたが動くからぶつかりそうになったでないか)」と怒鳴る場合もあるようです。このようなケースがあるために、本当は白杖を使って歩いた方が安全なのに、白杖を持ちたがらない弱視の方がいるということを聞きました。視覚障害者についての基本的な理解が、広く一般に浸透していないための悲劇です。このようなことが少しでもなくなることを願って、本校を離れても理解啓発の力になればと思っています。

景観

2026年3月18日 09時00分

 3月18日は、世界で初めて点字ブロックが敷設されたことを記念して、「点字ブロックの日」に制定されています。本校では、点字ブロックの理解啓発のためのカードを入れたポケットティッシュを一般の人に配る活動を行っています。中学部が2月24日(火)にスーパーマーケットで、高等部が3月13日(金)に、高松市役所で行いました。

 さて、点字ブロックといえば、全盲の人が、突起を足の裏や白杖で認識し、進む方向や注意すべき位置等を確認するためにあると理解されている人も多いと思います。では、点字ブロックは、どうして黄色のものが多いのでしょうか。それは、すりガラス越しに見ているような見え方や、視野が極端に狭い人等の弱視の方が気付きやすいためです。黄色が景観にふさわしくないというためなのか、時々右写真のような周囲と同系色の点字ブロックを見かけることがあります。まぶしいときや薄暗いときは、より一層見えにくくなると思います。目立つことをねらって黄色にしているので、周囲の環境に溶け込む意味合いの景観とは、相反するかもしれません。最近は、景観と視認性のバランスをとった、黄色以外の点字ブロックも少しずつ出てきているようです。デザインと視認性の両方を満たす点字ブロックが景観重視の場所にも広まってほしいと思います。

灰色の点字ブロック

ごぜ

2026年3月11日 16時30分

 私は登山やハイキングが趣味で、NHKの「にっぽん百低山」という番組を見ています。先日、静岡県の金冠山を登るようすが放送されましたが、そこで「瞽女(ごぜ)」が取り上げられていました。私は、視覚支援学校2年目ですが、恥ずかしながら瞽女については知りませんでした。瞽女は、江戸時代から昭和の高度成長期まで活動していた、各地を旅して三味線を弾きながら語り物や歌い物をうたった盲目の女性です(南相馬市のHPより引用)。NHKの番組では、冬に3人の瞽女が金冠山中で遭難し、それを悲しんだ村人たちが彼女たちを弔い、山中に観音を立ててまつったことが紹介されていました。全盲の方が舗装されていない山道をわらじを履いて長時間歩いていたことを想像すると、移動だけではなく、日常生活においても様々な困難があったのではないかと思いました。瞽女は、娯楽だけでなく、豊漁や幸せを運ぶ存在として親しまれていたようです。本校の幼児児童生徒についても卒業後、社会の中で一定の役割を果たし、周囲から親しみや感謝の気持ちをもってもらえるようになってほしいと願っています。

引用:南相馬市のHP「盲目の旅芸人瞽女(ごぜ)さんを知っていますか?」 参考:NHKのHP「にっぽん百低山」

書いていると悲しくなる

2026年3月4日 09時00分

 先週の書き込みに続いて、今週もPTA研修会で印象に残ったことを書きます。先輩保護者から障害年金の話がありました。障害年金は、高齢になって受け取る年金とは違って、障害や長期にわたる病気によって日常生活や仕事が制限される場合に、原則として20歳から受け取ることができる公的な年金です。この年金を受け取るために準備する書類に「病歴・就労状況等申立書」というものがあります。自分の娘が幼いころから3年間ごとに、どこの病院に行ったのか、いつからいつまでどのようなリハビリを受けていたのか等を、娘が20歳前になってから思い出すのは大変なので、早いうちから記録を残しておいた方が良いとのアドバイスを先輩保護者はしていました。障害年金を受け取ることが目的なので、とにかく娘の「できないこと」ばかりを思い出して書くので、書いていると悲しくなるんですとの発言がありました。参加していた保護者から、「時々、自分が世界で一番不幸ではないかと思うことがある。」との発言に、先輩保護者は「私もそういうときがあった」と強く共感していました。先輩保護者は、本校教員の紹介で知的障害の特別支援学校の保護者団体ともつながり、様々な情報を得ているようでした。保護者同士のつながりの大切さを実感した研修会でした。

おいしいお菓子だよ

2026年2月27日 13時00分

 共働き世帯の小学生が放課後、遊びや生活の場として過ごす制度に学童保育があります。それに対して、障害のある小学生から高校生が放課後や長期休業中を過ごす制度に「放課後デイサービス」があります。このサービスを提供している施設には、就労継続支援施設が少なくありません。このような施設では、100円ショップの商品や工業部品の袋詰め作業、パンや弁当づくりなどが行われ、多くの人が知らず知らずのうちに恩恵を受けています。指先の機能向上や将来の就労を見据えて、放課後に生徒が作業を体験することもあります。一緒に過ごしている知的障害のある生徒によっては、かんしゃくを起こして他の人をたたいたり、突き飛ばしたりすることがありますが、視覚に障害がある場合、そのような人の様子を察知して逃げることができないため、けがをするリスクがあります。先日、本校の先輩保護者を招いた座談会形式のPTA研修会に参加しました。知的障害のある人から「おいしいお菓子だよ。」と渡されたナット(輪っか状のねじ)を本校の生徒が口に入れたという事故の話がありました。施設では職員の数が限られ、管理しきれないのかもしれませんが、何とも悲しい話題でした。

昇降

2026年2月18日 13時00分
 本校には、視覚障害の他に肢体不自由の障害を併せ有する児童生徒が在籍しています。歩行が困難なため基本的に車椅子で移動をしています。ホームルーム教室は1階に設定していますが、音楽室や美術室等の特別教室は2階にあります。また、体育館も2階がメインフロアになっています。校舎にも体育館にもエレベーターがないため、車椅子を利用している児童生徒の昇降には、写真のような階段昇降車を使っています。車いすを固定し、更に腹部のベルトをしないと動かない仕組みになっています。また、毎年年度初めに業者の方から操作方法の講習を行ってもらい、この講習を受けた教員のみが、必ず二人体制で昇降を行っています。写真は、もう一人の教員に昇降車の前から一瞬離れてもらって撮影しました。このように安全に昇降はできるものの、エレベーターに比べたら時間がかかりますので、エレベーターがある方が望ましいです。 IMG_1464

筆算

2026年2月12日 11時00分

 筆算とは、足し算や掛け算などの計算を縦に位をそろえて書いて、一桁ずつ順に計算していく方法です。例えば、15足す17の筆算は紙に書かなくても、計算過程の書き込みや答えを思い浮かべることができると思います。この筆算ができるのは、数字の配置を視覚的に活用した学習をしているからです。点字でも筆算ができるのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は困難です。点字は、基本的に左から右へ流れる線的な情報で、直径約1.4mmの小さな点を、行をまたいで縦方向に正確にそろえて書いたり読み取ることが困難です。計算過程での繰り上がりの数字を適切な場所に小さくメモすることも困難です。次が決定的です。点字は針でついて書きますが、へこんだ部分は触れても分からないので、書いている最中に書いた数字を読むことができません。読むときは、書いた紙を裏返して読むのです。

 そんなこともあり、本校では計算の学習にそろばんを使っています。一般的なそろばんでは、少し触っただけで珠が意図せず動いてしまうので、平たい珠を前後に倒す構造の特別なそろばんを使っています。ただ、今年度、このそろばんの部品を作る会社が廃業したとの連絡が入りました。たとえ、需要が少なくても必要な物が必要な人に届く社会であってほしいと思います。

庭木の枝

2026年2月6日 16時30分

 社会福祉法人日本ライトハウス主催の「教育関係者視覚障害リハビリテーション研修会」に、半年間参加していた教諭の研修報告会を、先月の職員会議後に行いました。この研修は、白杖を使った歩行の指導方法を学ぶことを主な目的としています。教え方を身に付けるために、受講者も白杖を使った歩行を体験します。本校教諭がアイマスクをして住宅横の歩道を歩いている動画を見たとき、住宅の敷地から庭木の枝が歩道にはみ出していることに気づきました。白杖は地面を左右にスライドさせたり、軽くたたいたりして、段差や溝などの構造を確認しながら歩きます。白杖を体の前に出しているので、白杖に何かが当たれば、前に何か物があることに気づくことができます。しかし、白杖を持っている手の高さから顔の高さ辺りで庭木の枝が横から張り出していた場合、全盲の方は衝突するまで気付けないのです。幸い動画で見た枝は短かったので問題にはならないと思いましたが、人が歩く場所で横から何か飛び出している構造は、木の枝以外にもあります。看板やトラック後部の荷台、荷台からはみ出した荷物等に顔面をぶつけることがあるようです。「誰でも見たら分かるからよけるでしょ」と思わないでほしいです。この「誰でも」は、全員ではないのです。

指点字

2026年1月30日 09時00分
 昨年の2月14日のこのコーナーで、点字の基本について書きました。右図はそのときに用いたものです。点字は6個の点が一つの単位となっており、点字を打つタイプライターでは、1、2、3の点をそれぞれ、左手の人差し指、中指、薬指で打ち、4、5、6を右手の人差し指、中指、薬指で打ちます。左手の人差し指で1だけを打つと「あ」になり、両手の人差し指で1と4を打つと「う」になります。6本の指で「あ~ん」まで打てるわけです。そこで、目の見えない障害がある人の手の甲に、別の人が手を重ね、左手の人差し指を押したら「あ」、両手の人差し指を押したら「う」ということが伝わるので、この方法を使うと、声を介さずにコミュニケーションをとることができます。声を出して話せばいいのでは?と思いますよね。目が見えなくて、耳も聞こえない障害がある場合を想像してみてください。この方法の意義に気付いたはずです。この方法のことを指点字と言います。全国には、目が見えなくて耳も聞こえない人(盲ろう者)が1万4千人いると推計されているようです。ご理解とご支援をお願いします。 点字基本

見えない書道

2026年1月22日 10時00分

 墨字(いわゆる文字全般のことで、点字に対して使う単語)が見えない人にとっても、世の中の多くの人たちが、平仮名や漢字を使って情報のやり取りをしていることを知ることは大切です。また、文字を美しく書く書道は日本文化の一つでもあります。本校では墨字を見ることができない生徒に、点字の読み書きを教えることに加えて、書道も教えています。教え方は、指導者が工夫をして3段階に分けています。①文字の形を紐で作りボンドで固めたものを触察させて形を理解させ、書き順の通りに指でなぞらせる。②なぞった文字の形を思い浮かべ、ボールペンでレーズライターに文字を書かせる。※レーズライターとは、ボールペンでなぞった部分が凸状に盛り上がる特殊な用紙で、書いた形を触察で確認することができます。③シェービングクリームに絵具と木工用ボンドを混ぜたものを筆につけ、紙(半紙ではない)の上に文字を書かせる。これも固まると触察して書いた形を把握することができます。墨で書いたのでは触察できません。本校では、一般の学校ではやっていないような指導上の工夫が要求されるのです。

店員呼び出しボタンもタッチパネル

2026年1月16日 09時30分

 今週は、14日(水)に本校教諭が坂出高校の人権講演会に招かれ、視覚障害に関する講演をしました。また、15日(木)には、高松南高校福祉科の2年生が来校し、視覚障害についての学習をしました。内容は、点字についての講義や体験、視覚障害の概要についての講話、ロービジョン(弱視)の体験(視野を狭くする眼鏡やかすんで見えるような眼鏡等の体験等)、視覚障害者のための生活用具の紹介、サウンドテーブルテニスの部活動見学等です。私は、ちょうど校外の会議と時間帯が重なっており、最初と最後の一部しかようすを見ることができませんでした。最初の講義の中で、最近タッチパネルが社会の色々なところに広まっていて、飲食店でもタッチパネルによる注文方法が普及し、視覚障害者が注文できなくて困っていること、お客さんが困ったときのためにある「店員呼び出しボタン」もタッチパネルの中にあるという笑えないオチをつけて、高校生に印象に残るように本校教諭が説明をしていました。高校生には、視覚障害者に対しても適切な配慮のできる人として、将来の活躍を期待しています。

心が変われば、・・・運命が変わる

2026年1月8日 17時00分

 本日、3学期の始業式がありました。始業式では、心理学者ウィリアム・ジェームスの言葉を紹介しました。「心が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる。」 成人の生徒であれば、この表現で意図を理解してくれると思いますが、子どもにとっては、人格や運命という単語は難しいので、分かりやすく伝えられるように優しい表現にすることに苦労しました。今回は、花子さんという架空の人を想定して、花子さんが「自分から元気よく挨拶をしよう」と心に決めて、毎日元気な挨拶をしていると、周りの人は、「花子さんはいつも元気な挨拶をする素敵な人」と思うようになります。そして、こんないい人とお友達になりたいなとか、ぜひ、うちの会社で働いてほしいと思う人が現れるかもしれません。というようにしてみました。その後、点字を覚えること、白杖を使って歩くこと、国家試験に向けて勉強をすることなど、人それぞれやってみることが異なりますが、まず何かをやってみてそれを続けてほしいとし、先生方は心から応援をしていることも伝え、3学期のスタートの言葉としました。

就労選択支援

2025年12月25日 12時00分

 昨日、終業式の後、現場実習報告会を行いました。本校ではこのような報告会を今年度から初め、7月に続いて2回目です。現場実習とは、特別支援学校の高等部の生徒が、将来の自立や就労に必要な力を身に付けるため、企業や福祉施設などで、実際に働く経験をするものです。このような取組みをしながら、自分に適した企業や施設を選択していくわけですが、新しい制度が始まります。「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」の改正により、令和7年10月から就労選択支援という制度が始まっています。この制度は、作業を通じて本人の適正や課題等を事業所が主体となってしっかりと評価し、自分に合った働き方や就労系福祉サービスを選択できるよう支援するもので、ミスマッチを防ぐことが期待されています。ただ、始まったばかりの制度ですので、自治体による運用方法やアセスメントの評価基準等の違いにより、生徒の居住地によって就労選択支援の負担や質に差が生じることや、生徒及び教員の負担が増加すること等を懸念しています。他の特別支援学校や自治体の障害福祉課、事業所等と情報交換を密にして、生徒にとってより良い制度に育てていく必要性を感じています。

あとはアドリブで

2025年12月18日 15時00分

 この時期は、役職上校内で赤い服を着て子どもたちと一緒に遊んだり、プレゼントを子どもたちに渡したりすることがあります。今年度は外部の会議と日程が重なり、学部によってはできませんでしたが、本日幼小学部で役を演じました。校長になるまで高校で勤務していた私は、本校に来るまでしたことはありませんでした。今日のマニュアルには、登場時のセリフは示されていますが、ゲームが始まると「あとはアドリブで」と書いてあります。これまで培ってきたものが試されると思いました。相手が幼児でも高校生でも、興味関心を惹くための要素は共通していると思っています。声の強弱、抑揚、間の取り方、これに見える子については、アイコンタクトや表情、ジェスチャー等の要素が加わりますが、本校の幼児・児童には有効ではありません。幼児・児童の反応を見ながら、声だけを使っていかに惹きつけるかが試されるのです。本校の先生方は、授業内容によっては幼児・児童・生徒の手を取って物に触れさせることもしておりますが、言葉でいかに状況を理解させるか、興味関心を惹くかなどに努めています。