川や海での水の事故で子どもが命を失うニュースに心を痛めています。1955年の紫雲丸沈没事故で多くの児童が亡くなったことを契機に、全国の学校にプールが設置され、水泳の授業が始まりました。最近では、プールの老朽化や連日の猛暑のために、学校でプールの授業ができない状況があることもニュースになっています。本校には屋内プールがあり、屋外のものに比べて、プールサイドが熱くなりにくく、窓を開けていると涼しい状態で授業ができます。先日、授業の様子を見ると、幼稚部から高等部の子どもたちが、それぞれ浮き具をつけたり、ビート版を使って、安全に授業を受けていました。一人ひとりの障害や運動能力に応じて、水に慣れる練習からバタ足や息継ぎの練習までレベルの異なる練習を、それぞれに一人の教員がついて、指導を受けていました。授業の最初は、プール内をみんなで歩いて水流を起こし、その後水流に向かって進むなど、見えないために分からない水流や水の圧力を全身で体感しています。視覚に障害があっても水の事故で命を失うことなく、水に親しんでほしいと思います。
STTは、サウンドテーブルテニスの略で、視覚障害者が行う卓球です。ボールの中に4つの金属球が入っていて、転がると「シャリシャリ」と音がします。ボールは、ネットの上を飛んでコートを行きかうのではなく、ネットと台のすき間(4.2㎝)をくぐりぬけて行き来します。ラケットは、打った時の音が分かりやすいようにラバーを貼っていません。台のエンドラインとサイドラインにフレームがついていて、打ったボールが相手のエンドフレームに当たって、コートにボールが触れている場合や、相手が返球できなかった場合に得点となります。音を頼りにするスポーツなので、試合中は応援者も音を立てることができず、静寂の中で戦いが繰り広げられます。この土日に中国四国地区の盲学校体育大会が広島中央特別支援学校で開催され、本校から部活動で練習に取り組んでいる2名の生徒が出場します。本日、5時間目には、その壮行会を行いました。運動技能だけでなく、様々な点で成長につながる大会であってほしいと願っています。
参照ホームページ:パラスポーツスタートガイド
昨年4月この場所に「G研」について書きました。G研とは、本校に初めて転勤してきた教員と希望者が対象で、視覚障害教育全般について、基本的な内容を学ぶ研修で、年間10回程度放課後にしています。専門家のスペシャリストではなく、ジェネラリストを目指すということでG研と言います。それに対して、少し専門性の高い内容を学ぶ「グループ研修」というものもしています。今年度の場合、①歩行指導(日常生活動作)②点字指導③スポーツ④重複障害教育⑤情報支援機器の5つのグループのいずれかを先生方に選んでもらい、年間を通して一つのテーマで月1回程度の研修を放課後にしています。このグループ研修での成果を他の研修グループの教員に広げるために、更に夏休みを中心に「校内研修講座」という研修を10回程度予定しています。この他、先生方によっては、県外の研究会やオンラインの研修に参加するなどし、視覚障害教育の専門性を高めたり、校内での継承に努めています。
6月11日(水)に、高松市が主催する学校巡回芸術教室が本校の体育館で行われました。希望が叶って瀬戸フィルハーモニー交響楽団の方々が20人余り来てくださいました。見えない・見えにくい人に配慮された各楽器の説明があり、その後演奏をしていただきました。一つだけの楽器の音を生でじっくり聴く機会はあまりないため、それぞれの楽器の音の特徴がよく分かりました。本校の校歌を演奏してくださり、生徒職員みんなで校歌を歌いました。オーケストラによる伴奏の校歌は豪華な印象で、気持ちよく歌うことができました。3人の生徒が、ハンガリー舞曲第5番で指揮体験もしました。自分の手の動きに合わせて演奏のテンポが変わる、不思議な感覚を味わったのではないかと思います。生徒が演奏を聞いたり、指揮体験で喜んでいる姿を見ると、本当に来てくださって良かったと思いました。個々の楽器の美しい音色、合奏による美しいハーモニーと迫力など、質の高い芸術の素晴らしさを体感する機会に恵まれたことに感謝しています。
地方にある多くの視覚支援学校(盲学校)の幼児児童生徒数は、本県と同じように少なくなっています。専門的な支援・指導を受け、学力を付けて大学に進学したり、あん摩マッサージ師などの仕事に就けることは、視覚支援学校の大きな利点ですが、集団での学校生活を通して学ぶ機会は、一般の学校(園)と比べて少ないことは否めません。たくさんの友達と一緒に過ごすことで学ぶことも多くあると思います。その欠点を補う方法の一つが交流です。交流には、本校の幼児児童生徒が本校近くの学校(園)に行き、一緒に活動する場合と、本校の幼児児童生徒が居住地の学校(園)に行く場合があります。本校では、昨年度まで部活動で交流をしている生徒がいましたが、今年度は、週に1回程度の居住地での交流を行っています。この他、県外の視覚支援学校(盲学校)の児童生徒とオンラインで交流することも可能です。いろいろと工夫をしながら、幼児児童生徒の自立と社会参加に向けて尽力しています。
「通級による指導」とは、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒が、大部分の授業を通常の学級で受けながら、一部の授業について、障害に応じた特別な指導を特別な場(通級指導教室)で受ける指導のことです。指導形態には、①自校通級:通級指導教室設置校の教員が自校の児童生徒に指導 ②巡回による指導:通級指導教室がない学校へ教員が出向いて指導 ③他校通級:児童生徒が通級指導教室を設置している特別支援学校等へ移動してその学校の教員が指導 などがあります。本校は今年度から通級指導教室を設置しましたが、今年度は、上記の②巡回による指導として、県内の小学校へ本校教員が出向いていき、児童の指導を行っています。本校教員が行う指導は児童生徒の障害の状態で変わりますが、例えば、提示された文字や図に素早くルーペを近づけて読み取ったり、黒板の文字を単眼鏡で素早く読み取ったり、拡大読書器やタブレット端末等の使い方について指導をしています。これらの指導によって、指導を受けている児童生徒が障害による学習上や生活上の困難を改善又は克服できることを願っています。
5月17日(土)の体育祭は、雨天のため体育館ですることになりました。楽しみにされていた来賓の皆様には申し訳ありませんが、スペースの関係で、参観者は、幼児児童生徒のご家族と旧職員のみにさせてもらいました。本校の体育祭には、視覚支援学校ならではの特徴的な競技がいくつかありますが、そのうちの「音源走」を紹介します。スタート地点に生徒が一人立つと、ゴールの後方で教員が生徒の名前を呼び、手ばたきをします。その音を頼りに生徒は走っていく方向を把握します。笛の合図で走り始め、走っているときも手ばたきの音を頼りに真っすぐ走ってゴールを目指します。ゴールの方向やゴールまでの距離は、手ばたきの音を頼りに把握するため、周囲の人は走っている間は黙って静かに見守っています。 ゴールした瞬間、会場全体から大きな拍手が送られました。室内であったこともあり、拍手が大きく響き、会場全体に一体感がありました。体育祭全体を通して、自分の子ども以外にも声援を送る保護者、学部や担任の枠組みを超えて頑張りをたたえる教員など、参加者全員がそれぞれの幼児児童生徒全員にエールを送った温かい体育祭でした。
特別支援学校等に在籍している障害のある幼児児童生徒については、「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」というものを作成しています。一般の人がイメージしやすいのは、「個別の指導計画」だと思います。これは、各教科等の年間目標の他、学期や月ごとの目標及び指導方法や支援内容を、個々の幼児児童生徒の障害の状況に応じて記載し、学期末に実施状況を教員が評価・記録するものです。それに対して「個別の教育支援計画」は、①幼児期から学校卒業までの長期的な支援②生活を豊かにするための支援③学校以外の保護者、医者、福祉施設担当者等からの願いや助言等があることが特徴だと思います。例えば、「就学前」の「気になること・苦手なこと」欄に「食事量にむらがある。」と記載があったり、「医療歴」の欄に、いつ頃どのような診断結果が出たかなどの記載があります。学校が関係機関と連携し、幼児児童生徒個々の障害の状況に応じた的確な支援を、長期間一貫して行うために作成しています。
5月2日(金)校内弁論大会を実施しました。中国・四国地区盲学校弁論大会や全国盲学校弁論大会の競技方法や審査基準を意識した大会ですが、生徒が自分の思いを伝える力を育成する良い機会と捉え、弁論とまではいかなくても、学習したこと等を発表する機会としても行いました。こんな立派な内容を堂々と語ることができるのかと感心したり、本校での生徒の成長を感じることができうれしくなりました。多くの先生方も聞きにきてくれ、先生方も生徒の姿に感心したり、生徒が伝えようとしたことの大切さを再認識したのではないかと思います。弁論大会だけでなく、様々な日常生活の場面で、自分の気持ちを言葉で正確に表現して相手に伝えることは大切なことなので、これからも言葉で表現する力をつけてほしいと、校長による講評を締めくくりました。
地域の特別支援教育を推進していく上で、特別支援学校は中核的な役割を担うことが期待されています。そのような役割を「センター的機能」といい、本校では「見えにくさと学びの相談センター」を設置しています。センター的機能は、文部科学省の例示に従いますと、以下のようになります。①小・中学校等の教員への支援 ②視覚障害教育等に関する相談・情報提供 ③視覚障害のある幼児児童生徒への指導・支援 ④福祉、医療、労働などの関係機関等との連絡・調整 ⑤小・中学校等の教員に対する研修協力 ⑥視覚障害のある幼児児童生徒への施設設備等の提供
4月23日(水)に本校で「かがわロービジョン研修会」を開催し、県内の小学校や高校で、視覚に障害のある児童生徒の指導に関わっている先生方に参加していただきました。本校教諭による視覚障害に関する講話の他、眼科医師や香川県視覚障害福祉センターの方から講話をしていただき、その後、相談も行いました。視覚に障害のある乳幼児から成人について、学習や日常生活、進路などのご相談されたいことがありましたら、電話でもメールでも構いませんので、ぜひ本校にご連絡ください。
令和元年に文部科学大臣が「GIGAスクール構想」を発表し、子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けて、1人に1台のタブレット端末の整備が進みました。本校の生徒は授業で、タブレット端末に入れられた教科書等のデータを拡大して読んだり、読み上げ機能で読ませた音声を聞いたりして活用しています。指で簡単に拡大できる機能は大変ありがたいです。本校では、入学式の新入生代表宣誓や卒業式の答辞等でもタブレット端末が活用されています。皆さんは、代表生徒が折りたたんだ紙に書いた文章をめくりながら読んでいく姿を想像すると思いますが、本校では生徒にもよりますが、タブレット端末内の文章を拡大して読むことがあります。読み終わった後、タブレット端末は自席に置き、壇上に上がって紙の包みを校長に手渡します。タブレット端末は、生徒が文化祭等の行事の司会進行をするときにも活用されるなど、授業以外でも大切な、なくてはならないツールなのです。
本日が令和7年度の初日です。私にとっては、本校校長の2年目が始まりました。新しいスタッフを迎えて、今年度最初の職員会議を行いました。職員会議の最初の議題として、「学校運営方針と重点目標」の説明をしました。学校運営方針には二つの柱があり、一つ目の柱は、「視覚に障害のある幼児児童生徒の自立と社会参加に向け、障害の状態や発達段階を十分に把握して、幼児児童生徒一人一人の可能性を信じて、一人一人を大切にする教育活動を推進する。」としています。教職員には、幼児児童生徒と授業等で関わる中、自分の支援が自立と社会参加につながっているのか、一人一人の可能性を信じて関わっているのかなど、節目節目で自分の取組みを見直す基準として、この柱を思い返してほしいと伝えました。この春の人事異動で、教員の数は減りましたが、一人一人を大切にする教育活動を維持、あるいはより充実できるよう、学校運営に尽力したいと思います。
全国に視覚障害特別支援学校(盲学校)は、67校あります。面積の広い一部の道県と人口の多い都府県に複数の学校がありますが、多くは1県に1校しかありません。そのため先生方の指導力を高めるような研究会や研修会を県単位で開催することは難しく、どうしても県境をまたいで他県へ出かけていく必要がありますが、旅費の制約もあり、参加したい会に自由に参加できるわけではありません。そのような状況の中、先日、筑波大学附属視覚特別支援学校の校長先生から、他の元校長先生と協力して作られた研修資料が送られてきました。視覚障害特別支援学校に初めて勤務することになった先生に向けた視覚障害教育の専門性を高めるための資料です。内容が多岐に渡っており、1年間の勤務を終えようとする私にも大変有益な資料です。全国的に学校数が少ないからこそ、このような情報共有の文化があるのかもしれません。早速、本校の教職員に紹介をして、活用させていただきたいと思います。